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whisp 2021/09/10 00:00

2021右田ひかりお誕生日記念ショートストーリー「ひかりのスフレチーズケーキ」(進行豹

2021/09/10 右田ひかりちゃんお誕生日記念ショートストーリー
「ひかりのスフレチーズケーキ」 作:進行豹


「あのね、ひかりね、ケーキ、つくってみたいなの!」
「ケーキ……バースデーケーキをか」
「うん!」

にこにこにこ。
ひかりの笑顔にはただ一点の曇りさえない。

それを僕らが曇らせるなど、断じてあってはならないことだ。

(買ってあったものは、明日御一夜鉄道にもっていき、皆で食べれば済む話だ)

ならば唯一の問題は――

「ケーキって、どんなケーキがつくりたいの?」

僕の疑問を、ポーレットがふんわり言葉にしてくれる。
タイミングの良さ、気持ちの一致。それだけで僕も幸せになる。

「あのねあのね、おーるけーき! いちごのしょーとのやつ!!」
「ほう、ホールケーキか」
「そう! ほーるけーき!」


ごくさり気なく誘導すれば、ひかりはすぐさま幼い言い間違いを訂正する。
なんともあどけなく愛らしい。
が――

「そっかー、イチゴショートのホールケーキかー」

「んゆ?」

困り眉。実にポーレットらしくはあるが、この状況では……

「いちごしょーとのほーるけーき、つくれないの?」

ひかりも察する。母から娘へ、困り眉が伝染してしまう。

「作れるは作れるけど、『ひかりが作る』のは今すぐには難しいの――
ええと……あ! そう!! イチゴショートのホールケーキを作るのはね?
列車運転でいったら、蒸気機関車とおんなじくらいにむつかしいから」

「そんなに!!!!」

なるほど。その説明なら僕にも瞬時に理解できる。
つまるところ、イチゴショートのホールケーキをつくるのは、理論だけでは難しい。
実戦経験を重ねてはじめて、形になっていくものなのだろう。


「だから、スフレチーズケーキはどうかな?
これなら、庫内手さんのお仕事とおなじくらいのむつかしさ」

「そっか。ひかりわかったのー。
ケーキ作りも、こないしゅさんからはじめて、きかんじょしさんになって、それからやっときかんしさんで、
いちごしょーとのほーるけーきをつくれるようになるのなの」

「そうそう! だから――そうね、来年のお誕生日にはイチゴショートのホールケーキをつくれるように」

「わかったのー! ひかり、ことしはすふれちーずけーきつくるの!」

「そっか、じゃ、支度しましょう。れいなー! れいなもちょっとお手伝いしてくれる?」

「はぁい、わかりましたぁ」

ぱたぱたぽてぽてじゃぶじゃぶじゃぶ。
居間で書類仕事をしていたれいなが手を洗って合流する。

「じゃ、最初は材料を用意してはかりましょう」

「ざいりょう、なぁに?」

「うふふ、このスフレチーズケーキの材料はみっつだけでいいの。
お砂糖と、卵と、クリームチーズ!」

「わぁあ、すごくシンプルなんですねぇ」

「でもやることはけっこうたくさん。
まずは計量。クリームチーズ150gと卵みっつ、お砂糖120gをそれぞれ、お皿の上にとりわけて?」

「はかり♪ はかり♪ おさらをのせて、スイッチ ぴ! で」

「はぁい、ひかりちゃん。おさとうでぇす」

「おさとうさらさら~ はかりのすうじ、120になるまで~」

……普段からポーレットの料理を手伝っているだけのことはある。
ひかりの手付きは、とても幼児とは思えない。
これは将来、パティシエの道も……
ああ、日々姫に頼んで、いまからパティスリートレインのデザインを起こしておいたほうがいいかもしれん。

「めれんげめれんげ、あわだてあわだて~」

「お砂糖は4回にわけて――そうそう、上手上手」

「ボールをさかさまにしてもおちないくらい、ふわっふわになったら完成ですよぉ」

「ふいい~。ひかり、おててつかれちゃったの~」

「じゃ、ママのおひざで一緒にやる?」

「うん!!」

「ここまで来たらもうひといき。1分間レンジでチンしたクリームチーズに、捨てメレしてからメレンゲあわせて~」

「れいな、オーブン予熱しておきますねぇ」

「160℃でお願い! あと湯煎焼きするから」

「はぁい、おゆもわかしておきまぁす」

……なんとすばらしいチームワーク。なんとすばらしい時間であろうか。

これぞ家族としあわせに――いや、僕一人だけ、なにもしないというわけにもいくまい。ふむ。

「……まだかなー、まだかなー――あ! いい匂いがしてきたのなの~」

「うふふ、もうすぐ焼き上がり! ね、双鉄く――あれ? 双鉄くんは?」

「パパさんだったら、さっきふらってでかけていきましたぁ――あ」


「ただいま」
(チン!)
「わーい! やけたの!!」

ベストなタイミングでかえってこれたようだ。

焼き上がったスフレチーズケーキが……おおおお!!!

「すごいの! これ! ひかりがままとれいなおねえちゃんとつくったのなのー!」

「ひかりちゃん、本当にすごいですぅ! 焼き目も形も、とーってもきれいで」

「ね! お店で買うのよりおいしそお! あとは仕上げのデコレーション」

「ひかり! デコレーションもやるの~!」

「そう? じゃ、まずはパウダーシュガーをこなふるいで」

「ああ、ひかり。おもいっきりたくさんかけてくれ。生クリームで全面をカバーするようなイメージで」

「んゆ」

ポーレットも少し不思議そうに僕を見るゆえ、手にした袋をさりげなくふる。

「あ♪ そか、じゃ、ひかり? パパのいうとおり、全体が真っ白になるまでパウダーシュガーふっちゃって?」

「はぁい! ふりふり~ ふりふり~ こなゆきこんこん! こなざとうざとざと!」

「うふふぅ、これもとっても上手ですぅ」

「さて、ふりおわったところに――じゃじゃん!!!」

「わあああああ! いちご! いちごなのー!!!!」

「すごいですぅ。まだ季節には早いのに、いったいどこから」

「パパの秘密いちご農場からだ」

「ひみついちごのうじょう!!!!」

ひかりの瞳がキラキラ輝く。

秘密いちご農場の正体は、長饅頭だけでなく、いちご大福もレギュラーメニューのにわみさんで。
いちご大福用に解凍してあったいちごをわけてもらっただけだが――秘密農場であるがゆえ、そこは秘密にしておこう。

「ひみついちごででこれーしょん! んしょ、んしょ、んしょ――できたぁ!!!」

「「わああ!」」

ひかりの瞳きらきらが、母と姉にも伝染する。

いや、これは――実に見事で美しい……ホールのいちごチーズスフレだ。

「ひかりのおたんじょうけーき!!! ひかりとままと、おねえちゃんとパパでつくったのーーーー!」


;おしまい

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whisp 2021/08/25 19:18

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