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whisp 2020/05/12 00:31

2020沢井えみお誕生日記念SS「えみのおいわいてりんぐ ~3」(進行豹

2020年5月5日 沢井えみお誕生日記念SS 
『えみのおいわいてりんぐ ~3~』 進行豹

第一話はこちら
https://ci-en.dlsite.com/creator/922/article/259716

第二話はこちら
https://ci-en.dlsite.com/creator/922/article/266305


///////////////


「しーるのばしょ、しーるのばしょ、しーるのば」
「そこから先は村の外にゃ。えみちゃんにはまだ早いちにゃ」

「あ! ヤマネコのやこちゃん!! こんにちわー」

「はいこんにちにゃ。ってか、どこしてこんなとこまで来ちゃったのにゃ?」

「あ、そだったそだった、あのね、えみね。おいわいてりんぐで、ちずのしーるのばしょさがしてたの」

「おいわ……あー! あれにゃ! そか、えみちゃんのお誕生日、今日なのにゃー!
にゃら~! にゃふふ! ハッピバースデーえみちゃんにゃ!」

「わ! かーどだ!!! やこちゃんありがとー!
って、これ! やこちゃんのおしゃしん! えみ! しってる!!
ありすちゃんにとってもらったことある! ぢぇきのおしゃしんだー!」

「そにゃそにゃ。やこもありすさんにとってもらったのにゃ。
やこ、カードなんてもってないから、それあげるにゃあ。
およふくつくってもらうとき、ありすさんからにたくさんとってもらったから、いちまいくらいへいちゃらにゃ」

「ありがとやこちゃん! こんどありすちゃんにたのんで、いっしょに ぢぇきとってもらおーね!」

「そりゃいいにゃ! そのときまでにえみちゃんも、ありすさんにならって、ファッションのお勉強しとくともっといいちにゃ」

「うん! えみファッションのおべんきょうするー! あのね、えみね、つぎのはるにね、いちねんせーになるからね。
すうじとかもじとかもお勉強……って、そーだった。そーだった。かーどのうらのもじは~……『は』」


  * 

「しーるのばしょ、しーるのばしょ、こんどは、うーんとー」

「見て。マコ。金魚が道路を泳いでる」

「あらあらコマちゃん、おかしな冗談。金魚じゃなくて、どうみてもひよ先生の幼稚園のえみちゃんじゃない」

「あ。言われたらたしかにそうかも」

「あ! まこちゃんとこまちゃんだ! こんにちわー!!」

「うふふっ、素敵なご挨拶ね。はい。こんにちわ、えみちゃん」

「『こんにちわー!』」

「きゃ!? どうしたのこまちゃん、出し抜けにおおきな声」

「おかしい。こまもいいご挨拶したのに、まこに褒めてもらえない」

「あはは! おかしー! こまちゃんおもしろいからすきー!」

「(……静かに照れる)――好きと言われたら仕方ない。
もっと面白い話を、特別に」

「わ、わ!? なになに!!?」

「海兵隊出身の四人の」
「こまちゃん! シモネタ禁止よ!!!」
「え”。………………」

「どしたの? こまちゃん。おもしろいおはなしはー?」

「あ、あー、えーーーー。ええと……」

「うふふ。マコはおもしろお話できないけど、
コマちゃんのかわりに、とっても素敵なお話だったらできるわよ?」

「すてきなおはなし!? えみ、それききたい!!」

「その素敵なお話は~――
じゃーん! かわいいかわいいえみちゃんが、今日お誕生日だっていうことです!」

「きゃあ! わーい! まこちゃんありがとー!」

「そう。コマもそれをいいたかった。
そうしてコマとマコからお祝いに、素敵なカードも用意してある」

「わーい! こまちゃんもありがと! わ?! このカードすごい! きらきら!
なぁに、これ」

「うふふ、それはね? アマビエの鱗。
一枚もっていたら、どんな流り病にもかからなくなる素敵なお守りよ」

「すごーい! あまびえっておさかな、おっきいんだねー!
まこちゃんがつったの? こまちゃんがあみにいれたの??」

「そりゃあもう、こまが投網をとうっ! って投げて」

「こまちゃんたらもう~。あのね? えみちゃん。
アマビエは海のあやかしなの。こまとまこの、古い古いおともだちのあやかし」

「そなんだ。おともだちのうろこ、えみがもらっていいの?」

「うん。もちろん。だいじなものだからこそ、プレゼントになる」

「って、こまちゃんってばいいとこだけもってくんだから~」

「わーい!」 まこちゃんもこまちゃんもありがとー!!
それでええっと~うらにかいてある字は~ 『お』!!!!」



  * 

「しーるのばしょ~ しーるのばしょ~……んゆ?
このしーるのばしょって~」

「あ、えみちゃん。こんにちわー。
今日は、えみちゃんのお誕生日だねー。うふふ、お誕生日おめでとお」

「あ! とこたん! ちょおどよかった!
あのね、えみね、このちずのしーるのばしょね」

「あー、ごめんねぇ。とおこ、ちずみたいなむつかしそうなの、わからないよー」

「へいき、わかるよ! えみがおしえてあげるから!
あのね、このしーるのばしょが、ありすちゃんのしんりょうじょでね。
こっちのしーるのばしょは、むらのいりぐちのやこちゃんいるとこでね、
これは、あたらしくできたりょかん――まこちゃんとこまちゃんがよくいる、
『りょかん あやかし』のしーるなんだよ」

「あー、ふーん。そっかー、じゃあ、ここにかいてあるおやまがニシノヤマで……
あれれー、そしたらこのシール。
沢井のおうちと、とおこのすんでる裏山だねぇ」

「だよね! ね! そしたらとこたん、えみのこと、おうちにつれてかえってくれる?」

「いいよお。とおこ、だってさいしょから、えみちゃんを迎えに来たんだもの」

「わーい! じゃ、せなかにのせてのせてー」

「うふふぅ。いいけど、のせてあげるそのまえに、はいこれ」

「わ! カード……わ! これとこたんのひづめのけずったやつだ!!
やったぁ!! かっこいいい!!!」

「えへへー。そんなによろこんでもらえると、とおこ、ちょっぴりてれちゃうよー」

「うらのじはなに? えっと、うーんと~~――『う』!!」


  * 

「さいごのしーるのばしょは~! えへへー!!!
ただいまとおたん! ただいまかあたん! ただいまなつはおねーちゃん!!!」

「おっかえりー! えみちゃん! ハッピバースデー! イエーーーイ!!!!」

(パン! パン! パパン!!!)

「わ! くらっかー!!! ずるーいなつはおねえちゃん!
えみもやりたいーーーー!!!」

「そう言うってわかってたよー! だから、はい!!」

「わーい! えみのくらっかーー!!!」

「おうちの中とか、夏葉に向けちゃダメだからね?
お外に向けて~!」

「おそとにむけてー」

「Go! えみちゃん!!!」
「えいっ!!」

(ぱーーーーーんっ!!!)

「わ! すごいおと~!
えみ、ちょっとびっくりしちゃった!!!」

「こんなのまだまだ、びっくりのうちにも入らないよ?」

「ふえ?」

「その説明のためにも! じゃ~ん!
これ、夏葉からのバースデーカード!!!」

「あいがとなつはおねえちゃん!
すごいかわいい!!! えみとかあたんととおたんとなつはおねえちゃんのえがかいてあるーーー!」

「えっへへ~! 夏葉先生の直筆イラスト! 裏もみて、裏も」

「とこたん!! ありすちゃんもちっちゃくかいてある!
あっ! それから字も~ 『ち』!!!」

「オッケー! とおこさんと一緒にかえってきたってことは、えみちゃん全部のカードあつめたってことだよね。
その全部の文字、並べてつなげてよんでみよう?」

「うん! えっとね、さいしょにひよせんせいにもらったのが――『え』。」

「次のこれは? 『み』。誰からもらったの?」

「おせんたくやさんのめんばーずかーど! おこんさんから!! えみね、さいねんしょうのめんばーなんだよ!」

「すごーい! いいなー! じゃ、そういうふうに、カードをどんどんならべていこー!」

「うん! パロポロちゃんにもらったのが、『ち』で、いんがめおねえさんにもらったのが、『や』――あれ、
この『や』ほかのよりちっちゃいや」

「うんうん、ちっちゃい『ゃ』だね。じゃ、全部を並べて、つなげてよむと~?」

「んと……『え み ち ゃ ん へ の ぷ れ ぜ ん と は お う ち』
――んゆ……!!!! 『えみちゃんへのプレゼントはおうち』!!!」

「大正解じゃ! さすがはわらわの、わらわと透の愛娘じゃ!!!」

「おかえり、えみ。よく頑張った! 凄いぞ!!!」

「わーい! ただいまー! とおたん、かあたん!!!」

「えみちゃんならぜったいできるって、うたれ、信じてましたぽこー!!」

「うたれちゃんもーーー!!!!!」

「と、申すかの。こんかいのオリ……おい――おいわいてりんぐ?」

「オリエンテーリング」

「さ、左様じゃ。そのてえりんぐの発案者は、誰を隠そう、うたれなのじゃ」

「そうなの!? うたれちゃん?」

「そ、そんなたいしたものじゃないですポコ~、
ただうたれ、えみちゃんにどうしてもプレゼントしたくて、
けど、うたれひとりで稼げた人間のお金じゃ、たりなくて」

「うたれちゃん、えみちゃんが一番欲しいものをプレゼントしてあげたくて。
すみちゃんのこと説得して、夏葉にもおにいちゃんにも、他のみんなにも声かけてお願いしてくれたんだよ?」

「わ! そうだったんだー! うたれちゃん! あいがと!!
あのね! えみね! おいわいてりんぐ、とってもとってもたのしくて!
かーどもたくさん、みんなにもらえてうれしいの!!!」

「その上さらに、じゃ。
えみ、うたれが頼み、みなが喜んで協力して整えてくれたえみの今年のお誕生日のおくりものじゃ。
こころしてあけてみるがよい」

「んゆ? なんだろ――おっきなはこ!!
ん――しょっ――よい、しょ――ん……ゆ――ん????
……!!!!!!!!!!!!!!」

「うふふ! やったね、うたれちゃん! えみちゃんすっごい笑顔!!!」

「らんどせる!!!! らんどせる!!! えみがほしかったらんどせる!!
あずきいろの、すっごくかっこいいらんどせる!!!!!!!!」

「……ああ、うむ。この笑顔を見るに、無理に赤を押し付けなくてよかったの。
小豆色のらんどせる、ちと突飛過ぎぬかおもうておったが」

「どう?! どう!? うたれちゃん! なつはおねえちゃん!!」

「にあってますポコ! 素敵ですポコ! かっこいいですポコ!!」

「小豆色、綺麗!!! えみちゃんにすっごくマッチしてる!!!」

「えへへー! そかなー!!!!」

「うむ。不思議なほどにしっくりくるの。
……誇り高きあかしゃぐまの娘ゆえ、赤こそが最も似合う色かと思うておったが――」

「同時にえみは、僕の娘だからさ。
小豆色が似合うのは、当然すぎると思うけど?」

「ふむ? それはいかなる理由で……」

「あ! 夏葉わかったかも!!! あのね、えみちゃん、このスマホみて。
これ、お絵かきアプリなんだけど」

「あ、あぷりだのすまほだのは、わらわには」

「画面、ってか、このパレットだけ見ててくれればいいから。
いーい? すみちゃんの赤に、おにいちゃんの黒をどんどんまぜてくと~」

「わ! えみのらんどせるとおんなじいろ!!!」

「ああ、まこと、じゃの――ふ……ふふふふふっ!
さようか、左様か! えみの一番好む色は――小豆色は!
わらわの赤と透の黒の、ふたつのまじった色であったか!」

「だねー、夏葉もいま気づいた!」

「透はそれをわかっておったのじゃの?
それゆえ、あの日のらんどせる売り場で赤を買おうとしたわらわを止め、
もう少し考えてみよう、と――」

「普段はすみに気づかせてもらってばっかりだからさ。
たまには僕も、すみ気づいてもらえたらうれしいな、って思っただけだよ」

「透……」

「すみ……」

「って、おふたりさーん! 今日の主役は誰でしたっけー???」

「っ!!!」 あ、うむ。こほん。
あー、それではの、えみ。
今更のようではあるが、あらためて」

「んゆ?」

「えみ、お誕生日おめでとう。
産まれてきてくれて――わらわの娘になってくれて。まことに、まことにありがとう、の」

「うん!!! えへへへへー! あいがと! かあたん!!!」


;おしまい

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whisp 2020/05/08 00:12

2020沢井えみお誕生日記念SS「えみのおいわいてりんぐ ~2」(進行豹

2020年5月5日 沢井えみお誕生日記念SS 
『えみのおいわいてりんぐ ~2~』 進行豹

第一話はこちら
https://ci-en.dlsite.com/creator/922/article/259716
//////

「しーるのばしょ、しーるのばしょ、しーるのばしょ……
わっ!?」

「む。あぶない。」

「ふわわ、えみ、ちずみてたらぶつかっちゃったー。ごめんなさい――って、ななちゃん! やったー!!!
えみね、あのね、ななちゃんにあいたかったの」

「ななに。なにゆえ。」

「あのね、えっとね――ん? あれ? どこやったっけ?
えっとー……あ、そだ! かばんのなかだ――んしょ――あった! はい、これ!!」

「む。タガメか。」

「そだよ! ななちゃんタガメのしるおいしーっていってたけど、
えみすったらぺっぺだったから、ななちゃんにあげるー」

「うむ。ありがたい。お礼に。……ではない。
お礼は。また。後日として。」

「んゆ!?? すごーい!  ななちゃんごじらとおれいしてくれるの??」

「今日は。えみの。誕生日ゆえ。
ななは。えみに。誕生日の。贈り物を。おくる。」

「わ! かーど! そだった! えみ、おいわいてりんぐでかーどあつめてるんだった。
ななちゃんのかーど、あかくてすきとおっててきれい~! これ、なにでできてるの?

「もほへほほ。ほほへほほほ。ひひほほ。へいふひ。」

「んゆ~? タガメちゅうちゅうしながらだとなにいってるのか――
あ! カードのうらののじがすけてる。
んと……んゆ~ うらがえさないとわかならいや。
えとえと~~――『の』!!」


  * 

「しーるのばしょ、しーるのばしょ、つぎのばしょ~――は、ここかな?
って、ここ、ひめみやじんじゃだー」

「おお、来たッスねえみすけ。
お誕生日おめでとうっス!!」

「ごかいそちゃんだー! えみとしょうぶして! しょうぶ!!
こんどこそ、えみ、ごかいそちゃんにわんぱんいれるー!!」

「勝負もいいスけど、自分にもなんかないスか?」

「んゆ? なんかってなあに?」

「だって、自分――いや、別に気にして遠見してるとかじゃ全然ないスけど、
さっきたまたま? えみ坊がなな公になんかプレゼントしてるの遠見しちゃって」

「あ! ごかいそちゃんもすうのか! じゃ、えみすぐとってくる!!」

「吸う? 吸うって? なな公が吸うって――
ああ、そういうプレゼントだったっスか?
それなら自分、遠慮しと
「はい! おっきいカナブン!!!」

「って!!? うわ!? なんすかほんとにデカいスね!! これ、外来種じゃないッスか!?
自分の握りこぶしくらいあるスよ?」」

「すいがいありそー」

「いやいや、吸わんス! ってか、アレす! ほら、これ。
バースデープレゼントのカードッス!」

「わーい! あいがと!!! ごかいそかーど、しょうじとかふすまとかみたいなかみでできてる」

「そッス。紙はカミともつながるッスからね。
昔から捧げられ続けてきた紙たちの中から、いいとこ選んでこの星辰ひめみやが手ずから漉きなおした、
漉返紙(すきがえしかみ)のカードっス」

「すきがえしかみ?」

「そすそす。恋愛成就のお守りになるスから、えみすけが恋をするまで大事に

「うらのもじ~うらのもじは~」

「って、聞いてないッスね。こりゃ、ネコに小判、ちまに基盤だったみたいスね」

「うらのもじは、『ぷ』! えへへ! おもしろーい! おならみたーい!!」


  * 

「しーるのばしょ、しーるのばしょ、つぎのばしょは~――
んゆ? ここっておいしゃさんだー」

「あらえみちゃん。ひとりで予防注射うけにきたの? えらーい」

「んひゃう!? ちがうのありすちゃん! えみ、ちゅうしゃうけにきてないの。
えとね、えみね、おいわいてりんぐできたの?」

「おいわいてりんぐ――あ! 例のオリエンテーリングね。
有島さんちのありすちゃんからももちろん!
えみちゃんにバースデープレゼント、用意してあるよ?」

「わーい、うれしい! あいがと! ありすちゃんだいしゅきー!」

「うんうん、ありすちゃんもえみちゃんがだいしゅきだよ~!
だから、はい、これ」

「わ! わ! わ!!! これ、げーむのかーど!!!
『おしゃれでか まつあんどとみー』のかーどなの!!」

「えみちゃんずーっとやりたがってたから、わたしからすみちゃんに頼んで、プレイの許可もらったの。
高知市内にいったとき、一ヶ月に一回だったら遊んでいいって」

「わほーーーーーい!!!! ありすちゃん! こーちしないつれてって!
いまからいこー! ねー! いこー!!!」

「でもほら、えみちゃんオリエン……とと、おいわいてりんぐの最中でしょ?
えみちゃんのお誕生日をお祝いしたくて待っててくれるみんなを、おいてけぼりにしていいの?」

「んゆ……えっとね、それは……おいてけぼりにしちゃいけないの」

「だから、高知市内に遊びにいくのは今度にして。
ね? いまは――」

「そだった! かーどのうらは――あ! はがせるしーるはってかいてある! 『れ』!!!!」


  * 

「しーるのばしょ、しーるのばしょ……しーるのばしょ、こうちしないについてないかなー。
えと、ここのかどまがってー――こーちしないについたかな?」

「残念やけど、ついとらんねー。ここは、ぺろの飴屋やさかい」

「わ! ぺろちゃんだ! こんにちわー」

「んふふー、ええごあいさつやねー。ごほうびに――
やないね。今日はえみちゃんのお誕生日やもんねー。
せやさかい、お祝いのプレゼントあげるなー」

「わーい! ぺろちゃんのあめ、えみ、だいすきー!」

「んふふ、うれしいこというてくれるなー。
それじゃあじゃじゃん!!! ぺろ特製の」

「わ! わ!!! すごおいいいい!!!!
あめのなか、えみのおかおがにこにこしてるー!!!」

「せやでー。金太郎飴やのーて、えみちゃん飴! 切っても切ってもえみちゃんやさかい、
おともだちといっしょに仲よー食べてな」

「うん! そーする!! ね! うたれちゃ――
あううう……うたれちゃんいないんだったー」

「そないにさみしそーな顔せんと。きっともーすぐあえるさかいに」

「そーなの!? やったぁ!!」

「そーするためにも、オリエンテーリングがんばらんよね。
ゆーわけで、はい、カード」

「わ!!! かーどもあめちゃん!! すきとおってきれい~」

「裏の文字たしかめる前に食べたらいけんよー」

「あ! そーだった! うらのもじ。うらのもじは~……『ぜ』!!!」

  * 

「ひーふほはひょ、ほーふほはひょ――(ぺろぺろ、ぼりぼり)
ああ! かんじゃったー!!
えみ、きょうこそあめちゃん、さいごまでかまないでいよーっておもってたのにー」

「あらあら、あんじょう丈夫な歯。ばりばりぼりぼり。ええ音たてるの、上手やねぇ」

「あ! ゆえはん!!!! こんにちわー」

「はい、こんにちわ。えみちゃん、ぺろちゃんとこで飴ちゃんもろーてきたんやね。
せっかくやし、藁で歯磨きしてみいひん?」

「わらで!? わらではみがき、えみしたことない! してみたーい!!」

「そんなら、はい。これ、お誕生日のプレゼント……ゆーほどのもんでもあらしまへんけど」

「わ! わらのぶらしだー! ちっちゃい、かわいい!!
(こしゅーーーーっ)えへへ! おかおこするとちょっとちくちくしてくすぐったーい!」

「それでいつもの歯ブラシと同じに歯ぁみがけますよって。
っと……おちびはんむけのあまぁい歯磨き粉があれへんから――
おうちかえってから磨いたほうがよろしいか」

「うん! えみそーするー!
えみのね、ぶくぶくはね、いちごのあじなの!
だけど、とおたんのとなつはおねえちゃんのはからいから、えみ、つかえないのー」

「おやまぁそない……って、ん?
えみちゃんがいちごの。おとうはんとおねえはんは辛いの。
やったら、えみちゃんのおかあはん――すみはんは」

「あのね、かあたんはえみのととおたんもはんぶんずつまぜてつかってるんだよー」

「あらあら、かいらしことですなぁ。
うふふっ、聞かんかったことにしときますな」

「んゆ、どーして?」

「どーしてもこーしても……って、せやった。
はい。こっちも、オリエンテエリングゆうやつの」

「かーどもわらだー! すごーい! えへへ、ちょっとちくちくするー。
えみ、これすきー」

「うふふっ、おおきに」

「それで、うらは――わ! すみでじがかいてある、かっこいー!! 『ん』!!!!」



  * 

「しーるのばしょ、しーるのばしょ、しーるのばしょー……
んー、えみ、ちょとだけあんよつかれてみちゃったのー」

「あらあら、それは大変ねえみちゃん。
よかったら、わたしのBoy FriendのShoe Shopで足を休めていく?」

「あ! めりーちゃん!!! こんにちわー!
またおふねのおはなしきかせてー!」

「OK! いつでもえみちゃんが元気なときに。
But、今日はゆっくりおはなしするの、厳しいんじゃないの?」

「あ! そだった! しーるのばしょ、えみ、まわらなくっちゃいけなくて、
あと……んゆ――いち、にい、さん、よん、ご! ごかしょもえみ、いくとこあるから」

「あと5check pointsじゃなくて、4check points――4箇所よ、えみちゃん」

「んゆ? えみ、かぞえまちがえちゃった??」

「ううん。間違えてない。けどね、それでも残りは4箇所になるの」

「どーして? メリーちゃん」

「Because――Happy BirthDay Dear Little えみ!!」

「わ!!! わ! おいわいてりんぐのかーど!!!
そっか! めりーちゃんとこがしーるのばしょで、だからのこりはよんかしょなんだー」

「Exactly! 大正解!!」

「わーい! えみだいせかい!!!
っていうか、かーど、これ、なぁに?
ふやふやしてるのに、かたいの」

「Cowhide――牛革ね。She make――靴作りにつかう皮だわ。
そうして、裏に書いたMassageも、Blacking shoe cream――靴墨で書いてあるの」

「ほんとだ! えと、かいあるじは~――『と』!!!
わーい! ありがと!! そうしたらえみ、つぎのばしょにー」

「って、足が疲れてるっていってなかった?
Don't over do it! 無理は禁物。
足、すこしやすめていきなさいな」



(つづく)

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whisp 2020/05/05 22:42

2020沢井えみお誕生日記念SS「えみのおいわいてりんぐ ~1」(進行豹

2020年5月5日 沢井えみお誕生日記念SS 
『えみのおいわいてりんぐ ~1~』 進行豹

///////////////////////////////

「♪ やねよ~り~ た~か~い こいのぉぼぉり~ おおき~いまごい~は おとうさん~
ちいさ~い ひごい~は こどもぉたぁち~ おもぃしろ~ そ~に およい~で~る~
んゆ! うたえたのー!!!!」

「うん。えみちゃんとっても上手やのし。
ひよ先生、花丸あげちゃうぞね」

「わーい! はなまるもらったのー!!!」

「それとな? もひとつ。
えみちゃん、今日お誕生日やろ?」

「うん!」

「やけん、ひよ先生からお誕生日カードのプレゼント。
えみちゃん、お誕生日おめでとさん」

「わーい! かわいい! すずめさんのえのかーど!!!
うたれちゃんにもみせたげ――あ……きょううたれちゃんおやすみなんだったー
つまんないのー……んゆ??」

「あ、気づかはったねー」

「んゆ~。かーどのうらに じがかいてあるの。『え』!」

「そ。あんな? 今日はえみちゃんのお誕生日のお楽しみに、あるひと……
あるあやかしが、オリエンテーリングを準備してくれてはるんよ」

「おり――おい――てー――んゆ?」

「『おりえんてえりんぐ』」

「おり――おい――『おいわいてりんぐ!』」

「まぁまぁそれでかまへんのし。
で、そのおいわいてりんぐの地図が、これ」

「ん……あ! えみわかる! ものべのべののちず!!
ここがおおとちで、こっちがえみのおうち!!!
それでね、あのね、げんじいのおうちはここなの! はしっこ!!」

「地図よめるんなら、話はやいなぁ。
そん地図にな? シールがはってあるやろお」

「えみわかった! こういうのしたことある!!!
ひよせんせい! ありがと!!! えみ、ぜんぶあつめてくる!!
またあしたね! ばいばーい!!!」


  * 

「しーるのばしょ、しーるのばしょ……
あ! えみ! ここしってる! おせんたくやさーん!!」

「あら、えみちゃんいらっしゃい。
今日は、何を汚しちゃったの?」

「おこんさん! こんにちわー!
あのね! えみね! 今日はなんにもよごしてなくて、
おり――おい――あ! 『おいわいてりんぐ』なの」

「おいわい……ああ、オリエンテーリング。
はいはい、あのちっちゃいのに頼まれた」

「んゆ」

「ああ、なんでもないの。うふふっ、えみちゃん、お誕生日おめでとう。
早く素敵なお姉さんになって、初めてのデート服とかお洗濯させてね。
はい、カード」

「わ! おせんたくやさんのめんばずかーど! かあたんももってるやつ!!
これ、えみの? えみのめんばずかーど??」

「ええ。えみちゃん専用の。『洗濯屋・お紺』の最年少のメンバーズカード」

「わ! すごーい! えみ、たからものにする!!!
うたれちゃ――は、いないんだっけ。
えと、あ、そだ、うらをみて~ 『み』!!!」


  * 

「しーるのばしょ、しーるのばしょ……
んゆ? あれれ? ものべのがわのかわらにでちゃった。
えみ、ちずのみかた まちあがえた?」

「まちがえてないっしょ。ここはパロポロの秘密基地の場所だもの」

「あ! えと、パロポロちゃんは~――ぢめんのほうをみて~――
いた!!! こんにちわー! あのね、えみね」

「あははっ! お誕生日おめでとう!!!
お祝いに、また今度ポンポンアイヌしてあげるさ」

「わーい! あれたのしー! すっごくうれしい!!
こんどっていつ? あした? あさって???」

「今度は今度さ。っと――カード渡すんだよね。
オッカイに頼んでつくってあるのがそこの木の枝にささってるしょ」

「きのえだ? んゆ……あ、あった!!!
かっこいい! きのかーどだ!!」

「コタンコロカムイに持ってきてもらった、レタッタッニ――シラカバの樹皮のカードさ。
パロポロたちコロポックルは船を使うのにつかうくらい脂分の多い皮だから、
いざというときは焚付けにもつかえるっしょ」

「えへへー! えみ、たからものにする!!
あいがと――って! そだそだ、カードのうらは~ ――『ち!!』」


  * 

「しーるのばしょ、しーるの――わ!!?
ここ! やったぁ! ゆきさんのあいすくりーむやさんだー!!」

「けんけんけんけんうるさいけん! 人の店の前で騒ぐのは――
って――ああ、あかしゃぐまの家の、えみちゃん」

「うん! えみはえみだよ! こんにちわ、いんがめおねーさん。
ものべのにはもうなれた?」

「あははー、いんがめは招かれてきたわけじゃなかけんね。
なかなか厳したとこはあるとよ?
ばってん、ゆきちゃんのお店で働けることになったけん――って!
いけんいけん! 頼まれごとしとったっけ」

「んゆ?」

「はい、えみちゃん。お誕生日おめでとう!
いんがめはまだ貧しかけんね。カードも手作りでわるかけど」

「わ!!! かっこいい!!! おおかみのあしあとがぺったんしてある!!」

「おおかみやのーて、いんがめについとる狗のやけんど。
ほら、手、こぎゃんすればわんこの手になるけん」

「わ、わ、わ! すごいすごい!!」

「って、こんなところで油売っとってよかと?
聞いた話だと、結構たくさんまわらなくっちゃいけんのでしょお」

「そだった! えと、かあどのうらは~ 『ゃ』!」

「ゆきちゃんもカード準備しとるけん。
お店んなかにもはいってはいって」

  * 

「ゆきおねーさん、こんにちわー!!!」

「うふふっ、えみちゃん。お誕生日おめでとお。
はい、カード」

「わ! アイスクリームやさんのけん!!!
んゆ? ゆきおねーさん、これ、ぺったんぜんぶおしてあるよ?」

「あらまぁ、えみちゃんおおあたり!
スタンプ全部あつまっとるけん、お好きなアイスをひとつプレゼント」

「わーい! えみね、おすきなあいすね、ゆずあいす!!!」

「はぁい――ん……しょ……っと――どうぞ! 柚子アイス」

「えへへー! いただきまーす! あむっ! ……
んふ~! あまぁい! ゆずのにおいがおはなのなかがぷ~んてする~!!」

「うふふっ、そぎゃんよろこんでもらえると、うちも作りがいが……
って、えみちゃん。カード、ちゃあんともってかえらないけんよ?
だって」

「あ! そーだった! えと、んと――カードのうらは~…… 『ん』!!」



  * 

「ちずのばしょ、ちずのばしょ――んゆ~ こんどのばしょはとおい――うひゃ!!?」

「こっただわらすこが、サキの山ん中はいっくっとはええ度胸だ。
なーんてな。よーきたべな、えみ」

「わーーーい! サキちゃん!!! えみね! おすもうね!!
とこたんにたくさん けーこつけてもらって つよくなったの!!!」

「お? おもしれーこというだな。したらいっちょ揉んでやっから、来!」

「はっけよーい! のこった! どーん!!」

「ほいっ」

(ころーーーん)

「あれえ!? またまけたーーーー!!!」

「まんずは、百年ほど早ぇだな。もちっと肉つけて出直して――
っと、えみ、今日お誕生日だってな。おめでとさん。
サキもバースデーカードやらいうの、用意さしとったど。ほれ」

「わーい! サキちゃんありがと――わああああ!
てつのかーど! ピカピカ! つよそう! かっこいい!!!」

「ケガしねぇよに、角っこさ丸めてあっげど、手に持って歩ぐと危ねがら、
お財布かなんかにしまっとけ、な」

「うん! しまう!! えみ、たからものにする!!!
あ! そのまえに――カードのうらがわは~~ ――『へ』!!」


;つづく

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whisp 2020/04/21 20:37

あやかしマニアックス ~「魚麻」「魚古」マコ まことこま~ (進行豹

こんばんわです! 進行豹でございます!!

あやかし郷愁譚!!!!
その原作にあたります「ものべの」の全部入り(R18)が、今500円セールかかっております!
https://www.dlsite.com/pro/work/=/product_id/VJ012820.html


また、ほぼほぼ同じメインスタッフによる作品 

「まいてつ」(R18)
https://www.dlsite.com/pro/work/=/product_id/VJ013396.html

「まいてつHシーン大増量パッチ」(R18)
https://www.dlsite.com/pro/work/=/product_id/VJ013397.html

も、それぞれお得なボイスドラマセットつきで500円セールかかってますので、もしよろしければぜひぜひです!!!


で、上記「ものべの」のすみアフターアフターにあたります『あやかし郷愁譚』も、おかげさまで気がつけばシリーズ(予告作品ふくめ)20作品に到達することができました!!!

まことにみなさまのおかげです!!!

もしよろしければいままでの作品一覧の方、ぜひぜひこちらから
https://www.dlsite.com/home/fsr/=/language/jp/keyword_work_name/あやかし郷愁譚 SRI0000020863/ana_flg/all/age_category[0]/general/per_page/30/without_order/1/page/1/order/release_d
ご確認ください!

そして、あやかし郷愁譚に登場するあやかしたちをご紹介させていただいております、当コーナー、「あやかしマニアックス」も、

https://twitter.com/sin_kou_hyou/status/1252546018769399808?s=20

おかげさまで途切れることなく更新をつづけられております。

こちらもお読みくださるみなさまのおかげでございますので、本当に感謝しております。
重ね、まことにありがとうございます!!!!!

と、いうわけで本日『あやかしマニアックス』でご紹介させていただきますのは、神奈川県は鎌倉に伝承のございます海から来たあやかしの

『魚麻』『魚古』 ――魚偏に麻、魚偏に古と書いて「マ」「コ」と読む、マコでございます!!!

歴代のあやかし郷愁譚あやかしの中でもダントツにマイナーなあやかしではないかと思うのですが、実は!!!
みなさまにめっちゃ馴染みのある道具の中に、その名前が現役ばりばりで息づいておりますのです!!!!
そのあたりのくわしいことふくめたマコの来歴等については、シルバー会員様向けの記事として。

そこまでは踏み込まないマコのプロフィールについては、無料会員登録だけでどなたにもお読みいただける記事として公開させていただきますので、ぜひぜひぜひぜひ! ご確認いただけましたら幸いです!!!

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■マコ まことこまのプロフィール■

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■ マコ まことこまの原典とよしなしごと ■

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whisp 2020/04/20 21:09

2020すみお誕生日お祝いSS「有島ありすからの贈り物」(進行豹

2020年 沢井すみお誕生日お祝いショートストーリー
「有島ありすからの贈り物」 進行豹

////

この物語はあやかし郷愁譚世界線。
すなわち、すみアフターアフターのお話でございますが、「ものべの」か「あやかし郷愁譚」どちらかしかご存知なくても問題なくお読みいただけるかと存じます。

////


「あ、すみちゃん! ちょうどよかった」

「うむ? いかがした有島ありす。『ちょうどよかった』とは、何がじゃ」


「うん。あのね、えみちゃんなんだけ」「ひうっ!!?」

「ひう?」

「う、うちのえみが、なにか……そのっ。なにか……なにか、また、ぞろ……ご迷惑なぞ…………」

「え"っ――なにその反応。……って、えみちゃんそんなにあちこちでなにかやっちゃってるの?」

「う、うむ。先日、学園の少等部の入園式の様子を偶然みかけてしまって、の?」

「うん」

「そのときに、わらわはついつい、
『次の春にはえみも一年生じゃの』と伝えてしもうたのじゃ」

「別に、普通の会話じゃない?」

「であろ!? なのじゃが、そこからのえみの盛り上がりが異常での……
『もうつぎのはるになった!?』『あとなんにちでつぎのはる!?』『えみ、いちねんせーになるの!』と。
いやもう、会う人会う人会うあやかしに」

「ああ、アレかー。
わたしももちろん聞かれたけど、うん。
わりと簡単に誘導できた感じだったから」

「誘導!? それはいかようにして」

「うん。ええっと、たとえば――
『えみちゃんはりんごをよっつもってます。うたれちゃんにいっこ、ありすちゃんにいっこあげました。のこりのりんごはいくつですか?』
とか、今のえみちゃんにならギリギリとけるラインの問題だしてあげて」

「うむっ」

「『それが解けたら、一年生になれる日が、解くのにかかった時間と同じだけ近づくよ?』
って教えてあげたら、夢中になってうんうん考えて、静かになってくれるから」

「おおおおおお!!! さすがは有島ありす! なんと狡猾な詭弁であろうか!」

「あれー、褒められてる気がしないの、なんでかなー」

「いやいや、褒めておる! と申すかむしろ、感謝しておる!!!
そのやりかたはとても良い! えみの質問攻めに悩まされておる面々と共有させてもらおうぞ」

「ご自由にー。ってか、そんなにえみちゃん……あー、えみちゃんだもんねー」

「うむ。えみの顔は、家に付くあやかしであるわらわの顔の何倍も……ああいや。もはや、何十倍も広いであろうの。
わらわがまだ名前さえ聞いておらぬような、ものべのに新しく移住してきたあやかしたちにも親切にしてもらっておるゆえ」

「それってすごくいいことだと思うけど」

「うむ。大変ありがたいことじゃ。
とは申せ……
やれハンカチをお洗濯してもらっただの、やれゆず氷菓をごちそうになっただの、やれお歌を歌ってもらっただの、やれお相撲をしてもらったの――と
そこまではまこと良いこと尽くめなのじゃが……
……誰に世話になったのかをえみがさっぱり覚えていてくれぬゆえ」

「あーー」

「誰に親切にしてもらったものかを訪ね歩いて確認し、お礼の菓子折りを届けることが、わらわにはかなり難しくて……の」

「そっかー、いますみちゃんとこ、旦那さんお仕事でお留守がちだもんね……」

「うむ。居ってくれれば見当もつけやすくなるのじゃが。
……夏葉は人間にこそ顔が広いが、ことあやかしとなると、なかなか接点も少ないようでの」

「そっか。
……でもさ、すみちゃん。それもきっと、考えようじゃない?」

「と、申すと?」

「だってそれって逆からみれば、すみちゃんの交友関係、えみちゃんがひろげてくれてるってことじゃない。
えみちゃん、すっごい親孝行!」

「おお! いわれてみれば左様じゃの!
むぅ……えみの巻き起こすことが多すぎて、その後始末が大変すぎて、そこまでの広い視点……
いや、広いこころを持てぬようになってしまっておったようじゃ。これは反省せねばならぬの」

「まぁまぁ、すみちゃんもそれだけ頑張ってるんだよ。
あ! ていうかそう。わたし、それで来たんだった」

「それで、とは?」

「んっとね……じゃ~ん! これ見て、これこれ!」

「おお! なんと! 桂浜水族館の無料招待券ではないか!
クジラさんがおらぬことこそは残念じゃが、カワウソと握手をしたり、ペンギンやウミガメにごはんをあげたりできる、素晴らしい水族館じゃの」

「だけどこれ、三枚しかなくて。だから、すみちゃんに選んでもらいたいかな~って」

「選ぶ……なにをじゃ?」

「この三枚をそのままプレゼントして、すみちゃんに自由につかってもらうか」

「うむ」

「それか、この三枚でわたしがなっちゃんとえみちゃんを連れてって、すみちゃんに夫婦水入らずの時間をプレゼントするか」

「おおお!? なんと――うむ……。
正直、そうしてもらえるとかなり助かるかもしれぬ。
えみも夏葉もかけがえのない家族でなにより大事ことはまちがいないのじゃが――」

「うんうん」

「ここ最近の、えみの興奮っぷりに夏葉が引きずられてしまっておる毎日は……
あまりにも――あまりにせわしなく、休まらなくて、の」

「オッケーわかった! じゃ、今年のわたしからのお誕生日プレゼントは、『夫婦水入らずの時間』ってことで」
「あ!」
「え!?」

「いや……急になにゆえ、かくも気前のよいことを……と思ったが。
左様か。今日は、わらわのお誕生日であったのじゃな」

「だよ。ってか、それすら飛んじゃうくらい忙しいんだ。
……お母さんって大変なんだね。
――お疲れさまです、本当に」

「いや……うむ。有島ありすにそういわれると、こそばゆうてならぬ。
が――感謝する。
あくる年の3月14日には、盛大にお返しをさせてもらおうぞ」

「あはは、ありがと。
けど、来年の話をするととおこさんとかサキさんとかが笑っちゃうから。
今日は、ね? 今日の話だけ」

「ふふっ、まことじゃの」

「っていことで――あらためまして。こほん。
『すみちゃん! お誕生日おめでとーーーー!!!』」

「うむ! ありがとう、の!!」


;おしまい

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