KLV Canvas & 性DEC 2019/11/08 12:22

【ASMR】【音声作品】【バイノーラル】VR音響に対応しました

じゃんっ

https://twitter.com/Klavistr/status/1191727418001764354

技術的には

Cubase Pro(バージョン10からだったかな)に搭載されているMultiPannerおよび3次Ambisonics対応グループチャンネルと、グラーツ国立音楽大学(オーストリア)が開発/公開しているIEM Plug-in Suiteの合わせ技でやっています。

[モノラル1ch OR ステレオ2chの音源]

[必要に応じて加工]

[1パートごとにMultiPannerで音を置きたい場所を設定]

[3次Ambisonics空間へ、16chの音源として展開]

[必要に応じて加工]

[Ambisonics(16ch)→仮想バイノーラル(2ch)へのデコード]

Cubaseの機能と無料のプラグインだけなので、実はそこそこの数の人がやろうと思えばできる環境を持っていたりします。

でもエロ目的でAmbisonicsを使う人って見たことない。もしかすると僕が世界で初めてかもしれない。少なくとも公言している人はほとんどウチだけでしょう。

Ambisonics(アンビソニックス)とは

「空間を(リスナーを中心とした)球体状にごっそり切り抜いたと仮定したときの、その場所にある音をくまなく記録できる」=シーンベースのイマーシブオーディオフォーマットです。

んーと、まあよくわかんないですよね。

例えばボーカル用のマイク。向けた側の音しかほとんど拾わないようにできています。そうでないとカラオケやライブ会場といったやかましい現場ではハウリングが起きまくって使い物になりません。

例えば肩掛けスピーカー。僕もゲームやるとき用に欲しいんですけど。アレは他の人には聞こえないのに、かけている人の耳元には音が届くようにできていますね。

こうした「どの方向から鳴っている音を拾うか」あるいは「どの方向に音を鳴らすか」という特性を「指向性」と呼びます。

指向性について

指向性にはいくつか種類がありますが、最も基本となるのは「無指向性」と「双指向性」の2つです。

例えば僕らの耳。コイツは節操がないので、左から鳴っている音でも(もちろん頭という構造物を通り越すために音質が変化していますが)右の鼓膜で拾うことができます。逆方向もしかり。多少のブレは生じますが、だいたいどの方向の音でも拾うようにできています。我々には無指向性のマイクがペアで内蔵されているのです。

例えばお笑いコンビの間に立っているマイク。きょうび珍しいかもしれませんが。アレはマイクの表と裏、ないし左と右の両方を捉えます。この特性を双指向性と呼びます。信号としては1本なので編集の上では不利ですが、いっぺんに2人分の音を録れるためお笑いやラジオの現場で使われていました。

(先ほど出たボーカル用マイクが該当するのは「単一指向性」とか「超指向性」と呼ばれる類です。それぞれのマイクは設計の時点で特定の方向からの音が入るように作られていますが、同時に録った無指向性音源と双指向性音源から「単一指向性っぽい音源」を合成することも可能です。)

指向性がどうしたっていうのよ

ところで、1本の無指向性マイクで録った音と、それと垂直に配置した1本の双指向性マイクで録った音を合成すると、1セットのステレオ音源として聴くことができます。直感的にはわかりにくいですし、僕も半分くらいしか納得していないのですが(おい)、Wikipediaによると1934年にイギリスEMIのえらい人が見つけてくれたそうです。ちなみにAmbisonicsは1970年代にイギリス国立研究開発公社が開発しました。イギリスすごい

M/Sプロセッシング - Wikipedia

この「合成次第で任意の向きの音が聴ける」というところがミソで、Ambisonicsでは数の暴力で「観測者を中心とした全方向の音を録り込む」ことを実現しています。

こんな風に。

Ambisonics - 英語版Wikipedia

もう少し踏み込んで

薄々お気付きかと思いますが、このAmbisonicsという技術、マイクが多ければ多いほど精度が上がります。

もっとも、いちばん基本的な(図でいうと上から2番目までを使う)セッティング(1次[1st Order] Ambisonicsと呼びます)で無指向性1本+双指向性3本の4本ですからそこまで多いわけではありません。ただこれだけだと「右/後」とか「上/前」といった、セッティング上の「盲点」にある音の再現性が落ちるため、そこをカバーすべく数が増えるのです。

以前参加したセミナーで聴かせてもらった記憶では、3次Ambisonics(16ch)あたりでだいぶ滑らかになり、5次Ambisonics(36ch)以上ではあまり滑らかさの違いを感じないくらいでした。当然環境にもよると思いますが、後述のような編集を踏まえると3次~4次くらいがコスパ面でもちょうどよいのでしょう。

録音ができるなら、それを編集して出力(デコード)することもできます。

冒頭で書いていた「3次Ambisonics空間へ、16chの音源として展開」というのはまさに、このおびただしい数(今回は16本)の仮想マイクが立っている仮想空間を想定させた上で「この音がこのあたりにあるなら、このマイクに対してこういう音の入り方をしているだろう」という計算をしてもらう、ということなのです。

書いていて不安になっています。え、こんなに難しいことPCにやらせてんのって。こんな難しいことをさせられるなら、生まれ変わってもCPUにだけはなりたくない

バイノーラルへの変換(デコード)

16chのAmbisonics用信号だけではただPC上に保持されている音源データです。これを聴けるようにするためには、たとえばホームシアター/映画用システムをターゲットとする場合、サラウンド用に組んだそれぞれのスピーカーに音を「貼り付ける」工程を通ります。

ターゲットがイヤホン/ヘッドホンなら当然出力はステレオ(バイノーラル)です。ステレオなんだから反映できるのは左右だけじゃないの?と思いがちですが、人の耳は頭や首/肩にかけての形状によって変質した音を拾うものですから、(流石に左右ほどの明瞭さはなくとも)前後や上下の音も、意外とちゃんと聞こえます。というかせっかくAmbisonicsやサラウンドで組むんだからいろいろやりましょうよ。

面白いのは真下からの音ですね。Ambisonicsは「全球」型で音を捉えますから、3m上の音が録れるなら、3m下からの音を扱うことももちろんできます。当然使いどころは限られますが…そうですね、机の下でヒロインがフェラチオしてくれている音がちゃんとVR仕様で作れるのは夢があると思います。


ここからはディープな話になるのでフォロワー限定で。

既存のバイノーラルとの違い

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