KLV Canvas & 性DEC 2018/08/24 04:15

VTuber/リッチコンテンツで扱ういろんな音

Twitterに掲載したものをこちらでも。

TLで見かけたVTuber技術マップ(https://twitter.com/ikko/status/1032442986846507008)に「音声」の内訳がもっと欲しいなと思ったので、様々な映像+音声コンテンツでも使われるD-M-Eという概念からブロック図を作りました。VTuberなので声/会話(Dialog)に比重を置いています。

同人エロゲ作家さんとかでもVTuber的PRを計画している方をちょくちょく見かけるので、参考になればなぁと。これらひとつずつでもレベルを上げると、「ガワを見ているときはそうでもなかったけど、作業用BGMにした途端普通のオタクの喋りに聞こえてきた…」みたいな興ざめがぐっと減るはずです。

ここからはそれぞれの項目について、少し詳しめに解説します。

Audio Sweetening

直訳すると「音響を甘く(味付け)する」でしょうか。下記DMEの各要素を統合、編集する作業のことです。日本の放送業界等では和製英語でMA(Multi Audio)と呼ぶことがほとんどです。MAD動画などを作ったことのある方はAviUtlやAudacityで音声をペタペタ貼り付けたと思いますが、あれのもっと細かい版だと思えばOKです。

SMPTE タイムコード同期

これは映像や他の編集機器との同期に関することなので、ある程度の規模にならないと使いません。映像と音声を別ルートで録る場合、何分何秒何フレーム目かを合わせる必要があります。編集機器同士の同期にも使います。SMPTEはシンプティと読みます。

バイノーラル/サラウンド

同人音声でもおなじみのバイノーラルですが、M(音楽)やE(効果音)も録音/オーディオ編集次第でバイノーラルにできます。厳密にいえばステレオさえ立体音響の一種です。VTuber企画でサラウンドはやりすぎでしょうが(一応ステレオ向けコンバージョンという手もある)、各種VRコンテンツの制作でもバンバン使われていますし、なにがしか試してみると面白いでしょうね。

Dialog, Music, Effects

Audio Sweeteningに使う各種素材です。音響制作の現場ではたいていDialog = 声/会話、Music = 楽曲、Effects = 効果、というふうに区分しています。

収録

基本の発声が良くても設備がダメでは没入感は得られませんし、逆もしかりですね。ボイチェンは設備や整音の方でも関わりますが、ボイチェン越しの演技も大事なので収録カテゴリに入れました。

整音

「せいおん!」という漫画が出たらサウンドデザイナー増えませんかね。(唐突な思い付き)

特に声の活動が浅い方だとリップノイズが多く含まれてしまいます。下記ノイズリダクションやコンプレッションも有効ですが、それでも残るもの、あるいはこれらに先んじてわかりやすい雑音は手作業で取り除いてしまうのもアリです。面倒くさいかもしれませんが、お料理でいうと「骨まで食べられる魚を圧力鍋など用意して作るより手で骨を抜くほうが楽、かもしれない」みたいなものです。

ノイズリダクション

ノイズ対応としてノイズゲート(音量が一定以下の範囲を無音にする)をかけている方は多いのですが、パラメーターの設定が適切でないと声の境目などでブツブツとしたノイズの「ぶり返し」が発生してしまいます。

これはアタックタイム(ゲートの効きはじめから完全に無音にするまでの時間)を増やしたり(これを長くとると今度はセリフ本体を削ってしまうので、波形の先読みに対応したプラグインが必要)、リリースタイムを伸ばしたりすることで対応できます。

また、ノイズ成分がどの帯域にあるかを学習した上で除去するというプラグインもあります。Waves X-NoiseはDSKB Vol.1の開発でも使用しました。

コンプレッション

音量差を少なくすることです。いくらささやき声でもボリュームつまみをいじる必要があるほど小さいまま収録しては聞きにくいものです。同じトーンで喋っていても、言葉の境目などで「もう少し大きければ聞きやすいのに」と思いうる場面は多々あります。適切にコンプレッションしておくことで、こうしたリスクの少ない、はっきりとした明瞭な声を届けることができます。

また、これに伴いディエッシング(De-essing)も行うと更に良いでしょう。(ただVTuberでここまでやる人は多くないと思います) 日本語でいうサ行は高音にものすごく鋭いピークが現れるため、そのままでは耳に刺さってしまいがちです。これを抑えるのがディエッサー(De-esser)で、多くのプラグインバンドルにも含まれています。

選曲

放送局などでは選曲もひとつのお仕事です。どこにどういう楽曲を割り当てるか、鉄板の使い方か、思い切って攻めるかを決める大事な部分です。素材を探し、必要なら作曲家に発注することになります。ある程度の音楽リテラシーに加え、フェードやカットといった編集も必要となるため、この作業そのものを音楽に詳しい人や作曲家に頼むこともひとつの手です。

作曲

自分で自分の音楽を作ってアピールする人もいますが、そういった人はこの記事など読んでいないでしょう。

アンビエンス

環境音ともいいます。先のノイズリダクションを経てすっかりきれいになった音源は、そのままではあまりに味気ないものです。ここに部屋の中の暗騒音(エアコンの音、換気扇の音、窓の外の音、etc.)を加えるだけでぐっとリアリティが生まれます。実はほとんどのAAAタイトルや映画にも常にアンビが敷かれているのです。さりげないので気付かれませんが、気付かれないことこそがキモとなる、そんないぶし銀の音です。

弊サークルの素材パックではDSKB Vol.2に環境音を収録しています。ぜひお役立てください。年末までアップデートを予定しております。

ワンショット

一般に効果音といえば思い浮かべる「デュクシ」とか「ガーン」とかのことは、アンビに対してワンショット(単発もの)と呼びます。

Foley

映像を見ながら生演技を重ねて効果音トラックを作っていく作業のことで、フォーリーと読みます。この手法を確立した、映画音響の第一人者の名前にちなんでいます。モンスターハンターや龍が如くといった、「足音」がたくさん出るような作品では、フォーリーも職人(Foley artist)が靴を履き替え砂を敷き替え、様々な音を収録することになります。特に映画的手法で魅せていくことを検討する場合、フォーリーサウンドの存在感は大きくなるでしょう。


思ったより長々と書いてしまいました。少なくとも今回書いたものに関してはくらびすた自身Audio SweeteningからFoleyまで対応しておりますから、VTuber企画やリッチコンテンツ、音声作品のサウンドのことでお困りのことがありましたら是非聞かせていただければと思います。

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