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投稿記事

音リテラシーの記事(3)

サウンド体験(SEX)デザイナーとプルースト効果

やあ(´・ω・`)
実に8か月近く放置していました。その間にそれはもういろいろなことがありまして、全部書くのもアレなのですが、転職したり炎上プロジェクトに参加したり大きなお仕事をいただいたり映画でQueenにハマったりあろうことかボラプを3回観に行ったりM3に参加したりしていました。(順不同)

というかこんなさびれたクリエイターよくフォローしますね皆さん。30名くらい新たにフォローいただいてしまっています。何も更新していないのに。

さて、久しぶりの更新となるこの記事では「サウンド体験(SEX)デザイン」についてお話します。サウンド体験(SEX)ってどういうことなんだという話ですが…

サウンド体験 = Sound EXperience

お前らこういうの好きだろ。

というわけで、とあるイラストレーターさんとのメールで書いた文章から抜粋し、ためになるお話(自称)をさせていただきます。一人称が普段の「僕」から「私」になっているのはご愛敬。


「サウンド体験は『匂い』体験に近い」というものです。

夕方、駅からの帰り道、住宅街で。カレーや煮物の匂いが漂ってきて、懐かしむのは「おかあさん」の背中姿。
そのような体験はよく語られます。「プルースト効果(Proust effect)」と呼ばれるものです。
これとほとんど同じようなことが「思い出のBGM」に起こるのです。

詳しくは脳科学の分野になると思いますが、シンプルな仮説として私は「音も匂いも空気を伝わるから」と考えています。
あるいは「耳鼻科というものがあるように、たぶん耳と鼻はいろいろ近いのだろう」とも。
(五感の中では嗅覚のみが大脳と直結しているため、いずれにせよ嗅覚の特異性は頭ひとつ抜けます)

正直、音楽を真正面から聴くことのコストは―特に一般ユーザーにとって、たとえばTwitterに張り付いてイラストが流れてくるのをぼんやり眺めることに比べると―相対的にかなり大きいものにあたると思います。
大雑把に「見る」だけなら一瞬で済みますが、全体を「聞く/聴く」となれば大雑把であっても30秒なら30秒。5分なら5分。確実に時間を拘束されてしまうのです。
音楽の消費のされ方が年々粗末になっているといわれ、コンテンツ開発における予算や作業の中で後回しにされやすいのも、全部サウンドを真面目に扱う代償の大きさによるものだと私は理解しています。
時間はかかるわ、スピーカーを使うなら2つ必要で場所も取るわ、作業用BGMは流せないわ…わがフィールドながら、なかなかにうんざりします。(こうした事情から他業種の方々を少し妬むことも、ほんの少しだけ、あります)

ただし、熱心にプレイしたゲームや一番印象的なデート、行きつけのラーメン屋さんで流れていて、意識せずに聞いていたサウンドは別です。
これらは音のアート全般が抱える煩雑さのほとんどを吹き飛ばし、当時の情動とともにパッケージされ、脳に焼き付けられるのです。
なぜなら、目的の「ついで」に知らないうちに聞かされて染み付いてしまっただけなのですから。
真面目に聴こうとしていたわけではないが故に記憶に残りやすいとは、なかなか皮肉なものです。

私が楽曲だけでなく効果音やサラウンド音響の制作にも注目しているのは、まさにこの音のプルースト効果をより立体的にするためなのです。
楽曲が料理の匂いなら、効果音は台所の裏側から漂うLPガスの臭いですし、音響全体へのアプローチはその匂いを確実に捉えられるように気流を整えるようなものです。(排ガス→雑音の発生源を除ける、向きを工夫する、など)
これらを丁寧に重ね合わせることがコンテンツをよりイマーシブにし、サウンド体験、ひいてはユーザーの感動体験を濃くするのですね。
ですから私は、私自身のことを一種のUXデザイナーないし「サウンド体験(sound experience)デザイナー」のように思っていますし、SXデザインの優れたゲームが世に広まってほしいと願っています。

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【音リテラシー】「良いサウンド体験」ってなぁに?

落語でいうマクラ

僕は飲食店でのアルバイトの経験がありまして、まあわかってくれる方も多いと思うんですが、普段からお客さんに「ありがとうございました〜」とか言っていると、自分がお客さんの立場で外食しているときでもスタッフさんが「ありがとうございました〜」と言っているのにつられて「ありがとうございました〜」って言ってしまいそうになったり、ひどいときはバイト中お客さんの帰る後ろ姿に向かって「ごちそうさまでした〜」なんて言いかけてしまったり、するわけですね。よほどの美人が通ったのでしょうか。

「ありがとうございました〜」ひとつをとっても

店員さんが忙しいときなどは、「ごちそうさまでした〜」と会釈して店を出ようにも「ありがとうございました〜」と返してもらえず、なんとなく間が悪い感じになってしまうこともありましょう。くらびすたは小心者ですからこういうときは、態度が悪いだの何だのと思うことはおろか、「僕が帰ったことがわからないと、後でテーブル拭くのに支障が出ないかな」などと考えてしまう始末です。

「ありがとうございました〜」という挨拶がもらえたのはいいけど、実は一旦トイレに立っただけで、本当は戻ってきた後にお茶のおかわりでも飲むつもりだった…ということもよくあることかと思います。遅いのはもちろん、挨拶は早すぎてもエレガントでないのです。

○亀製麺やラーメン○郎での退店時の流れを順番に並べるとこうなるでしょう:

(1) 席を立つ
(2) 出口に向かう
(3) 戸を開ける
(4) 外へ出る
(5) 振り向く
(6) 戸を閉める

これらのタイミングについて「ありがとうございました〜」を言ってもらい「ごちそうさまでした」と返すことを想定してみます。人によって感覚は違いましょうが、とりあえずくらびすたの場合は…

(1) ちょっと早すぎない?
(2) トイレ行くだけの人に声かけたら気まずくなりそう
(3) 店員さんに対して真後ろを向くように戸が付いている場合、「ごちそうさまでした」のため振り向く必要がある / 真横に戸が付いている場合はそのまま真横を向いて「ごちそうさまでした」を言えばいいのでスムーズ
(4) 足を止めるなり向き直るなりする必要があるので若干ぎこちない
(5) !!!このタイミングが一番いい!!!だいたいこのタイミングでこちらを向いてもらえると目が合うので嬉しい
(6) 遅いわw

という所感に至ります。

こういった印象はセリフの長さでも前後します。丁寧な言い回し「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」は(5)のタイミングだと下手すれば聞き終わるまでに戸を閉めてしまいそうですが、(3)のタイミングだとセリフの終わり際に合わせて「ごちそうさまでした」を言うことができれば収まりがいいですね。

まあお客さんの身分でこれを強いるわけにはいきませんが、自分がこれを提供する側に回るとなれば、つまりそれはより清々しい気持ちでお客さんに帰ってもらうための「セリフの長さとタイミングの調整」、まさにサウンドデザインなのです。

これはダイマなのですが、ラーメン荘「歴史を刻め」六甲道店のトニさんはほぼ毎回(5)のタイミングで「おおきに!ありがとうございます〜!」と声をかけてくれるので大好きです。

これが店の外観です。ちょうど(5)のタイミング、戸を閉めようと振り向くタイミングで店主さん(真ん中の帽子をかぶっている人)と目が合うんです。サクッとテンポの良い挨拶と相まって、とても具合がいいんですね。これなどまさにUI/UX面とのシナジーといえましょう。

まとめ

この記事では飲食店での挨拶を例にとって、どういった音をどういったタイミングで鳴らすべきかを検討する流れについて説明しました。そして、(偶然であれ意識的であれ)ユーザーの動線と声の出し方の兼ね合いによって優れた効果を発揮している実例を紹介しました。

人間気に入らないものには敏感でも、心地いいものとその理由についてはなかなか気付きません。サウンド周りなど目には見えないものですからなおのことです。それでも折に触れて、そのスムーズな流れ、「『何事もなかった』という体験」について科学することができれば、サウンドも含めた様々なもののデザインについてより一層深いものを味わい、生み出せるようになれると思います。

この記事がその一助になれば幸いです。

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「音リテラシー」ってなんぞや

うちのOrderページでも発注のヒントとしてお勧めしているのがゲームオーディオ開発などを担う会社「CRIミドルウェア」の川口さんによるコラムです。

この方が旗揚げしたDiscordサーバー「ゲームサウンド制作よろずチャット」に自分も初日から参加しておりまして、楽曲制作/音響効果/発注管理などゲームの音作りのことを勉強させていただいている次第です。

そんな折、川口さんとこんな話に。


川口さん「サウンド系に関してセオリーはあれど正解は無いと思っているので、各自の判断規準を身につけていくための手助けがしたいです。どんな職種の人でも、ユーザーでも。」

川口さん「先生と生徒、みたいな感じになってしまうと正解(答え)を求めてしまう人が多いんじゃないかなーと思っていて、音楽ってそんな事ないじゃないですか。」

くらびすた「これホント大事ですよね。『音リテラシー』がないと、(ユーザーさん)どんなふうに味わえばいいのか、(開発チーム)どんなふうに音屋さんを頼ればいいのかがわからない」

くらびすた「好きな小説を見つけようとなれば普段使いに加えて「もう一声」のボキャブラリーと漢字能力が必要になりますけど、それと似たようなことが音にもいえますね」

川口さん「音リテラシー、わかりやすくて良いですね。キーワードっぽい。


そもそも「リテラシー」(literacy)ってなんだっけといいますと、これは単独で「言葉の読み書き能力」を指します。これに音が付くわけですから、音リテラシーは「音の読み書き能力」のことを指します。とはいえ(念押ししておりますが)これは作曲スキルを意味するわけではなく、「ある音(音演出)がどういう意味を持っているかを読み解くことができ、どういう配置(発注)をすれば意図していることが伝えられるかを考える」チカラのことなのです。

※大前提として音楽用語や楽器名、各種コンピューター用語への理解も必要です。

これは川口さんの受け売りなのですが、「イケていない音はセオリーから外れているものだから、セオリーを学べば回避できるイイ音は業界人、先輩、詳しい人、いい作品と接する中で自分の『好き』を分析していけば作り出せる。こうしているうちに各自の判断規準ができてくる」はずです。

これからしばらくのうちのCi-en記事が、同人/インディーゲーム界隈の音リテラシーの向上の役に立てば幸いです。もっともっと濃い議論の様を覗いてみたい方は冒頭のリンクからサーバーに参加してください。ROM専の方も多いですから、お気軽に。

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