役演亭 Sep/11/2024 16:23

R-18 ダークファンタジーRPG「陥落要塞」レビュー

プレイ時間が少々かかるゲームだったため、少しだけ間が空きましたが、「R-18」の「同人」ゲーム作品レビュー、5作品目です。

今回レビューするのは、私も色々とお世話になっている R-18 大御所サークル「ふらいんぐパンジャンドラム」さんにて、ほぼ専属のイラストレーターとして活躍されている天音蓮人さんが、単独活動時代に制作されたダークファンタジーRPG「陥落要塞」です。

(まえがき) 本作を取り上げることにした背景について

端的に言うと、天音蓮人さんの単独作品である「陥落要塞」は、現「ふらいんぐパンジャンドラム」名義の、多くの人が認めるであろう超名作 R-18 ゲーム作品群と比較する意味でも、非常に重要な歴史的作品の 1 つです。

天音蓮人さんの、ふらいんぐパンジャンドラム加入時の経緯

天音蓮人さんは、ソシャゲ界隈で、商業案件……つまり「プロ」のイラストレーターとして活躍した経験もあるほどの実力者です。

そんな天音さんが、どのような経緯でふらいんぐパンジャンドラムさんに正式に加入したのか…という点も、「陥落要塞」を語るうえで重要です。

一連の出来事は、ふらいんぐパンジャンドラムさんの 5 年前の記事

公式に説明されているのですが、天音蓮人さんは、正式加入の前後の時期に、かなり波乱万丈な状況を経験されています。

(ここが非常に重要なところなのですが、だいぶ生々しい出来事なので、上記の記事からの引用は避けます……)

つまり、「陥落要塞」は、正式加入前の大変厳しいと思われる時期 (※上記の記事からお察し下さい…) に天音さんが単独で制作・発表された作品であるため、制作の過程で複雑な事情があったことが想像に難くない、ターニングポイントにもなった重要な作品の1つなのです。

苦難の末、ついに「サクセスストーリー」に…!!

ゲーム作りを得意とする武藤FPさん (=ふらいんぐパンジャンドラムの代表) と、絵やシナリオなどを得意とする天音蓮人さんの強力なタッグによって大幅な売上増をもたらしたことは、DLsite のストアページ上に表示されている売上本数を見ても明らかなとおりです。

特に、深淵の探索者の大ヒットは、天音さんの状況を一気に好転させたことも、先述のふらいんぐパンジャンドラムさんの記事で「公に」されています。

  • なお、当然のことながら、武藤FPさん単独時代 (=絵を外注されていた時期) と比較しても、売上本数が大幅に増えていますが、これ以上は冗長になるので割愛いたします。

タッグ「前」とタッグ「後」の違いを「分析」したい!!

私「鈴木YE」は、フリゲ作者だった20年くらい前 (※旧「J.S.BUFFER」名義) から、ふらいんぐパンジャンドラム (※旧「謎の研究所ふらいんぐぱんけーき」名義) さんのテストプレイにも度々参加しているので、武藤FPさんの単独作品や、天音さんとのタッグ「後」の作品群のことはよく知っています。

しかし、実は、タッグ前の天音さん単独作品はプレイしたことが無いため、今回の記事では、このサクセスストーリーの背後にある「変化」を分析・研究するためにも「陥落要塞」をプレイすることにしました。

  • 要するに、これから R-18 のゲーム制作に挑戦しようとしている私「鈴木YE」にとって、「成功前」と「成功後」の事例を比較しておくことも重要だと考えているのです。
    • もちろん、今回レビューする天音さん単独作品も、DLsite のランキングに掲載されるほどの好成績を叩き出しているので、十分「すごい」と言える作品であることには間違いありませんが。

したがって、本記事には、R-18 ゲームを制作している「ゲーム作者」の方にも有益な情報が含まれていると思いますので、是非、この重要な背景も念頭に読んでいただければ…と考えております。

「陥落要塞」ってどんなゲーム?

  • だいぶ前置きが長くなりました (※重要な前置きだったので書かない訳にはいきませんでした) が、ゲームの内容に移っていきたいと思います。

女魔王「アルシェル」(※下記画像左の立ち絵) に魔力を奪われ、弱みを握られた半人半魔の男主人公「ルーレイン」(※立ち絵無し、下記画像中央のドット絵) が、不本意ながらも「配下」として働き、略奪行為を繰り返していく…というダークファンタジーもののRPGです。

チュートリアルも兼ねた最初のアルシェルからの指示は、街のギルド長である女戦士「クロエ」(※下記画像左の立ち絵、実際にはモザイク無しですので安心して下さい) を攫ってこい…と命令されます。

無事、クロエを捕らえることに成功したルーレインは、その身柄をアルシェルに引き渡し、スライムなどの配下のモンスター達に「犯させる」(※もちろん R-18 的な意味で!!) ことでアルシェル自身の「魔力」に変換し、女魔王としての力を増大させていく……という鬼畜モノです。

主人公であるルーレインは、アルシェルに奪われた魔力を返してもらうため、不本意ながらもアルシェルが指定した人物を攫いに行かざるを得ないという立場ですが…

本来のルーレインは、心優しき半人半魔の男性であり、自身と同じく「人間からの迫害」の対象となっている存在 (※なぜかモン娘が多いのは R-18 のお約束!!) を屋敷に匿い、養ってあげようとする好青年です。

換言すると、R-18 的な視点では、主にサブイベント (女魔王から指図されない方) では「あまあま」な展開のHシーンが繰り広げられ、メインイベントでは「鬼畜系の凌○モノ」な展開のHシーンが見られる……というタイプの「一度で二度おいしい」作品です。

  • メイン (鬼畜系)、サブ (あまあま系) ともに、それぞれ 4 人ずつ、合計 8 人のヒロインのシナリオと、それに付随する H シーンが用意されています。
  • 加えて、女魔王アルシェルの H シーンに関しては……おっと、これ以上は「ネタバレ」になりますので、詳細は伏せさせていただきます。

ゲームシステム的には……

サブタイトルから想像がつくかもしれませんが、男主人公のルーレインは召喚士です。それを表現するためか、かなりの力技…もとい「逆転の発想」で「召喚」の表現が行われています。

前提知識が何もない人がこの画面を見たら、大抵の人は「やられイベント」だと勘違いするでしょう。

実は、左側 (本来なら「敵側」) に出現しているモンスター達こそが、主人公のルーレインが召喚した配下の味方モンスター達なのです!!

なので、ストアページにも書かれているように、このゲームは、基本は「オートバトル」で戦闘が進行します。

  • プレイヤーの仕事は、敵の編成を踏まえて、適切な召喚獣の組み合わせを考えてあげることになります。

ただし、「例外」もあり、前述のメイン (鬼畜系) ルートでは、攫ってきたヒロインを闇落ちさせるために「精神世界」に入り込み、精神内部の抵抗意識的な存在 (=モンスター) 達に直接「白兵戦」(マニュアルバトル) を挑まなければなりません。

この点では、白兵戦以外にも「ロボット戦」が存在するゼノギアスシリーズや、白兵戦以外にも「戦車戦」が存在するメタルマックスシリーズと似ていると言えるでしょう。

つまり「召喚戦」に備えて手持ちの召喚獣を強化するだけでなく、白兵戦でもまともに戦えるように、主人公であるルーレイン「自身」の戦闘力も強化しなければなりません。

これを行うためにも、魔力の源である「マナ」が必要になります。
(※一般的なRPGにあるような「経験値」での成長要素は「無し」です。)

マナの入手は、敵を倒したときや、街を探索したときに手に入る「略奪品」と呼ばれるアイテム (いわゆる「金策アイテム」) を「売る」ことで行います。

  • 上記画面の「マナへの変換」が、一般的なRPGの「売る」に相当します。

つまり、このゲームにおけるマナ (魔力) は、「通貨」であるのと同時に、キャラクターの「経験値」も兼ねた重要なパラメーターです。

良かった点

さすが、ソシャゲ界隈で「プロ」のイラストレーターとしてお仕事されたこともある天音蓮人さんが作っているだけあって、「女の子のイラスト」や「シナリオ」、「Hシーン」、「マップのデザイン」などのセンス面は一級品です!

ダークな鬼畜系凌○イベントの方もしっかりと作り込まれています。
(※実際にはモザイクはありませんので安心して下さい。)

後作のふらいんぐパンジャンドラム名義の「深淵の探索者」や「カルティベーター」と同様、それぞれのキャラクターが満遍なく深く掘り込まれている点も素晴らしいの一言です。

  • 特にキャラクターやシナリオの描き込まれ方に関しては、現在も開発が進められており、体験版のみ遊ぶことができる「カルティベーター」に近い印象を受けました。
  • ヒロインのセリフ回しや、主人公 (男) との関係の持ち方に「天音節」が強く表れていると感じます。(ぶっちゃけ、Hなことに対して「奥手」気味なところなど、男主人公の性格描写がかなりアルロ君に近いので、カルティベーターのプロトタイプ版をプレイしているかのような感覚を覚えました…)

中編程度の長さの作品の割にはHシーンのあるヒロインが多い (=9人) ので、ゲームのプレイ時間に対して「女の子のボリューム」の割合が大きく、「R-18 作品としての実用性」を重視する方には特に刺さる作品だと思います。

気になった点

これは、むしろ個人的には「うれしい」問題点 (いわゆる「悪用可能な裏技」の類) だったので、「存分に楽しめた」類のものになります。

「まえがき」で触れた複雑な事情が影響しているため、回避できなかった可能性が高いと予想しているのですが、ゲームバランスやパラメーター調整上の「考え漏れ」が多い印象を受けました。

つまり、ちょっと「特殊なプレイング」をすれば容易にゲームバランスが崩壊しかねない「穴」が随所に見受けられるのです。

露骨にゲームバランスが崩壊 (チート化) するプレイング事例

例えば、「深淵の探索者」にも登場するカジノ (スロットマシン) では…

獲得できるコイン枚数の期待値が「1」を超えている (つまり連打コントローラー等で放置すれば無限に稼ぎ続けられる) 点では、「深淵の探索者」と同様で、これ自体は (他のカジノが出てくるゲームでも有りうる調整なので) 問題は無いのですが…

なんとこのコイン、1 枚 = 300 マナという破格のレートで換金 (換マナ) できてしまうのです!

どのくらい破格なのかというと…

  • 「オート連打」で 1 時間放置するだけで、1879 枚前後のコインが得られる。(※一晩放置した実測値をもとに平均値を算出)
  • マナに換算すると、1時間あたり1879×300で、時給 563700 マナが得られる。

レベルアップアイテム (魔術師の魂の小片) が 1 個あたり 20000 マナなので、1時間「無人」で放置するだけで、主人公のレベルが「28」も上げられるという、実にチート級の「超」高効率を叩き出せるのです!

主人公の初期レベルは事実上 10 (※最初のチュートリアル終了時点) であるため、実に3~4時間で主人公のレベルがカンスト (=99) できてしまうのです!

市販の大型タイトルのゲームでも「放置稼ぎ」ができるものは多いですが、さすがにここまで効率が出るレベルのものだと、アップデートによりすぐに塞がれてしまうことが多いと思います。(例えばコーエーの無双系や、バンナムのアクション系のゲームでよくあった事例だと思います)

他にも…

さすがに上記の「放置カジノ」ほどではないのですが、他にも各アイテムの値段設定や、各スキルの消費MP設定など、全体的に「数値」周りの検討・調整が甘めで、容易に悪用……つまり「チート」できてしまいそうなものが散見されました。

ただ、重ねてになりますが、「まえがき」で触れた「複雑な事情」が影響しているため、バランス調整に割ける時間があまり取れなかったのではないか、と推測しています。

「悪用」しなければゲームバランスは良好です

幸い、悪用した場合のみゲームバランスをチートレベルに破壊してしまうような、「プレイヤー有利」に働く類の「良性」な問題点が中心なので、ゲーム全体として見た場合はあまり破綻していないと思います。

むしろ、「悪いこと」を考えずに普通にプレイする分には、十分問題なくゲームを楽しめますので、(私のように「プレイヤー有利に働く裏技」を積極的に悪用することでアドレナリンがドバドバ出てくるタイプの人間じゃなければ) 良心的なプレイスタイルを試みるようにしましょう!!

  • そもそも私「鈴木YE」自身も、プレイヤーが悪用すればバランスが壊れることは承知のうえで、あえて「露骨な裏道」を残すようにゲームを作ったりもしますし……

「ふらいんぐパンジャンドラム」名義の作品との比較

「深淵の探索者」や、現在は体験版のみが公開されている「カルティベーター」などと比較すると、やはり最も大きな違いは「ゲームとしての完成度」だと思います。

上記で述べた「ゲームバランスの調整の甘さ」が、ふらいんぐパンジャンドラム名義の作品ではほぼ見られない (※このあたりの調整は、武藤FPさんは非常にうまいです) ことももちろんなのですが…

武藤FPさんの「強み」

以下のような「無理矢理モンスター召喚を実現する」手法も、武藤FPさんなら然るべきプラグインを複数導入し、プラグイン素材同士の「競合」も調査・解決しつつ、ときには JavaScript 部分にも手を入れて改造・修正し、ゲームとして自然な形に見えるように「解決」に導きます。

  • 言い換えると、天音さん単独活動時代の「陥落要塞」では、ツクールMVの「バニラ」に近いシステムのまま無理矢理やっている印象を受けます。(絵描きさんのツクラーの方に多い、ほぼイベント命令だけで特別な処理を行うタイプの作りです)

天音蓮人さんの「強み」

逆を言うと、さすが天音蓮人さん「本人」が作っているだけあって、女の子のイラストの完成度や、Hシーンの作り込み、会話など、「R-18作品として最も重要な部分」だけに限定すれば、昨今の「ふらいんぐパンジャンドラム」名義のゲームと比較しても遜色が無いと言えます。

そんな「2人」がタッグを組むことで…

例えば、タッグ結成後の「深淵の探索者」と比べてみても売上本数に歴然とした差があることからも分かるように、イラストやシナリオだけでなく、ゲーム部分もしっかりと作り込まれていることが重要なのだと思います。

このことからも、イラストやシナリオを得意とする天音蓮人さんと、ゲーム部分を得意とする武藤FPさんがタッグになった現「ふらいんぐパンジャンドラム」は、まさに無敵の組み合わせと言える証でしょう。

今後、R-18 のゲーム制作に挑戦しようとしている私「鈴木YE」も、イラスト面は最大の苦手分野としているため、ますますイラストが得意な方に依頼 (外注など) した方が良いと感じた一方で、ゲーム部分「も」しっかりと作り込む必要があると改めて感じました。

  • もちろん、天音蓮人さんクラスの「逸材」(=商業案件での実績もあるクラス) の方は、なかなか見つかるレベルではありませんし、居たとしてもお仕事を受け付けていること自体も少ないと思われるので、依頼先を探すこと自体も大変だと考えております。

「陥落要塞」のストアページ

本レビューをお読みになった方で、本作が気になったという方は、こちらから是非!

特に「R-18ゲーム作者」の方で、ふらいんぐパンジャンドラム作品のプレイ経験がある方は、今後の「知見」にするという意味でも触れておくべき作品だと思います!

今後も、サークル「ふらいんぐパンジャンドラム」における「武藤FPさん」と「天音蓮人さん」の強力タッグの活躍を、ますますと祈っております!!

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