むに工房 2020/06/26 21:49

制作状況とファン小説のご紹介

むに工房の井上620です。
いつもご支援、メッセージ、いいね等ありがとうございます。

※なかなかお返事が出来ておらず申し訳ございません。
 しっかり全て読ませて頂いております、本当に嬉しいです。
※過去作の改善(mac版の解凍に関する記述)につきましては
 申請作業等と同時に修正・追記させて頂きます。
 メールでのご連絡、ありがとうございます。大変助かります。

不思議の国のサキュバス作業状況

Ver2の大きな作業もなんとか無事完了し、
制作・入力作業の98%程度まで到達できましたので
今日明日で全て終わらせてテストプレイやバランス調整、細部の修正に移行してまいります。
前回お知らせしました通り、当初の予定より少しだけ遅くなってしまいますが、
(7月の頭には申請できるかと思われます。)
もうしばらくだけお待ち頂きますと幸いです。

・Ver2でのシーン追加は20程度ございますが、
 一部シーンを好感度発生イベントに割いておりますので
 追加ストーリー部分は探索範囲としましてはかなり短いかと思われます。
 予めご理解頂きますようお願い致します。

・追加エンディングや最終マップへの到達には
 ゲームに同梱されているとあるテキストファイルから鍵を見つけ、
 ゲーム内の特定の4か所で入力する必要がございます。
 Ver1で4か所全て入力している場合、Ver2ではマップを進めるだけで到達可能です。

・前回の記事で公開しました追加シーンの『超乳サキュバス』につきまして、
 一部記載が間違っておりました。
 『好感度をあげると…』と記載しましたが、正しくは好感度イベントではなく、
 『Ver2マップの特定の場所で発生』となります。申し訳ございません。
 
・追加ラストボスはかなり強くなる見通しです。
 今後こまかなバランス調整等も行う可能性がございますので何卒ご理解下さい。

短編ファン小説を頂きました。

アミノン様より不思議の国のサキュバスを題材にした短編小説をご提供頂きました。
自分の作品を文章化して頂けることはとても光栄で嬉しいです。ありがとうございます。

アミノン様に掲載許可を頂きましたので描きおろし挿絵と共に
当記事、下記にて皆様にご紹介いたします。
※Ver1クリア段階までのネタバレが含まれますので
 未クリアの方におかれましてはご注意下さい。

※一部行間を♦マークへ置き換えております。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

大好きな姉さん。
ご提供:アミノン様
描きおろし挿絵:和砂糖様

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

私とレートさんと姉さんの三人で、お母様…ママにかけられていた呪いを無事に解くことが出来た。
レートさんは元の世界へ帰り、ママと姉さんの三人で、昔のようにまたハートの日に願いを込めた赤い風船も飛ばすことが出来た。
平和を取り戻し、大好きなママも元通りになり、まさにハッピーエンドを迎えたのだ。

でも、私の心には、しこりが残っていた…。



「人間ひとり満足にさせてあげられないなんて…淫魔失格ですよ。そんなの」



レートさんを連れていた姉さんと敵対していた際、私の口から投げかけてしまった姉さんへの侮辱。
あの時の姉さんの表情は、本当に、心の底から涙を流しかねないほど悲しい表情をしていたのを覚えている。

私はまだ、姉さんに謝罪が出来ていない…。

いくら当時は敵対してたとはいえ、ママを元通りにしようとたった一人で城を飛び出し
家出王女という汚名を着せられようとも奮闘した、今回一番の功労者でもあるのだ。

確かに私は普段から姉さんへ憎まれ口を叩くことが多い。
淫魔としての力やテクニックは私の方が上だと、何度見下すように言ったかも分からない。
実際、淫魔としての格は私の方が上なので姉さんもそれを自覚しているからか、あまり反論もしてこない。

でも、今回の侮辱は違う。

ママを元に戻す事から逃げ、仮にも姉の、家族の命を奪おうとまでしての侮辱なのだ。
普通に考えれば、到底許される事とは思えない。
だけど、素直になれない自分が、いつも憎まれ口をたたいて姉さんをからかう自分が、謝罪の意志の邪魔をする。

もしかしたら姉さんは、内心私の事を軽蔑してるかもしれないのに…。
今夜、ちゃんと姉さんに謝罪をしよう。もう姉さんと敵対してただただ侮辱していた時の私ではないのだから。





「はい、キャロル、ホットミルクどうぞ」
「ありがとうございます、姉さん」

ここは城の中の資料室。
過去の文献や歴史を調べていた私に、姉さんが休憩にと気を利かせてホットミルクを持ってきてくれた。

この部屋には私と姉さんしかいない。
今なら…伝えられるかも。

ホットミルクを一口流し込んだあと、机の隅にコップを置き、姉さんと向かい合う。

「私、姉さんに言いたい事があるんです」
「…どうしたの?改まっちゃって」

姉さんは目を丸くしてキョトン、とした表情を見せる。
何とも情けなさが滲み出た表情で姉さんにお似合い、と思ったが今は憎まれ口を叩きたい自分をグッと抑える。

「私、何度も姉さんの事を馬鹿にして」
「そんなのいつものことでしょう?」
「…姉さんの大事な物を、何度も奪った事もあって」
「奪う代わりに、あなたはそれを大事にしてくれてたじゃない」

自分の思いを、申し訳ないという気持ちを一生懸命伝えようとしてるのに
まるで牽制するかのように、姉さんは笑って許してくる。

…気に入らない…。

「……姉さんを、その…」
「ん?」

あの時の、侮辱した瞬間の泣きそうになって青ざめた姉さんが脳裏に浮かぶ…。
自分の心が申し訳なさで締め付けられるようだ。
言え、言うんだ。ちゃんと、心の底から謝るんだ!

「い…淫魔失格だと、侮辱して……その…」

最後まで声が出ない。
謝罪とはこんなに難しいものだったかと内心驚いてしまう程だ。
声に、言葉にして伝えようとすると申し訳ないという気持ちが加速度的に膨れ上がっていく…。
涙も溢れてきそうだ。

「やだ、そんなこと気にしてたの?」

……そんなこと?

「もう…お母様も元に戻って全部終わったし気にしてないわよそんなの」

溢れ出そうだった涙もどこへやら、今は怒りが溢れ出そうだった。
……どうして…

「でも、謝ってくれたことは嬉しいわよ、キャロル」

……どうして!

「どうしてですかっ!!!!」
「うぇ!?な、何が!?」

私は耐え切れずに机をバンッ!と強く叩き怒鳴り上げ、姉さんは素っ頓狂なリアクションを返した。
姉さんからしたら、うつむいて謝罪を述べていた相手が突然激怒して怒鳴りだしたのだ。姉さんの反応は最もだ。
でも、どうして…。

「何で怒らないんですか!!」
「へ?何でって」
「私は姉さんに何度も酷い事を言って、酷い目に会わせて、侮辱して、見下して!!」
「おお、落ち着いて?ね?」

完全にブレーキが壊れ、思うままに怒鳴る私を姉さんは慌てながらも宥めようとする。
私が冷静さを失って姉さんが冷静に私を宥めるなんて、これじゃいつもと立場が全く逆ではないか。屈辱だ。
気に入らない…気に入らないっ!!

「姉さんは!!!」
「は、はい!?」



「………どうして、そんなに優しくなれるんですか……」



ひとしきり怒鳴り散らした私が、強引に一呼吸置いて落ち着きを取り戻し、放り出した最後の言葉。
今の私の心情を姉さんに伝える精一杯の言葉だった。

「…」

姉さんは何も言わず、怒りでも笑みでもない、無の表情で私を見つめてくる。
そんな姉さんの顔を見ることが出来ず、私は目を背けてしまう。

静寂。

それに包まれた空間を破ったのは、姉さんだった。


「あなたが優しい子だからって、分かってるからよ」


姉さんは、私の頭に優しく手を置いて、笑顔でそっと近付いた。
優しく私の頭を撫でる。まるでママに撫でられているかのようだった。

「私は、優しくなんか…」
「確かに私だって傷付く時は傷付くわよ。淫魔としての能力も、テクニックも、王女としての威厳も、悔しいけど胸も、キャロルの方が上だし」
「それは…」
「そして、そんな自分の立場が許せないと思ったことも、淫魔としても王女としてもキャロルに劣っている事を悔しく思ったり、妬ましく思ったり、恨んだ事もあった」
「…」
「淫魔失格って言われた時は、そんな自分の現実をつきつけられた気がして、でも自覚もしていた面もあったから、あの時は本当に悲しかった」
「っ!」

悲しかった、と口にした時の姉さんの顔が、とても強い悲哀の影を落としていた。
私のしでかした事がどれだけとんでもないことなのか、思い知らされるかのようだった。

「…でもね」

姉さんはゆっくりと、優しく、私を包み込むように頭を撫で続ける。

「最終的には私の説得にも応じてくれて、一緒にお母様を元に戻そうって力を合わせて
 敵対していた私たちが姉妹に戻ることができた。それだけで私はすごい嬉しかったのよ」
「…ですけど…」

まだ、足りない。
私の謝罪したい気持ちが、申し訳ないという気持ちが、まだまだ伝えきれてない。

「それにね…」
「!?」

ふと、姉さんが私の頭から手を離したかと思うと、私の頭を胸に抱きしめた。
ふわっと、優しく、包み込み、あやすように。

「家出王女って呼ばれて孤独の身になった時は、本当に寂しかった。お母様を元に戻すためとはいえ途方もない状況だった。
 運良くレートに出会えたといっても、もしお母様が変貌してしまった原因が呪いだと気づかなかったら?
 下手したら、お母様やキャロルの命を奪うような選択も覚悟しなきゃいけない事態になるかもしれない。そんな事をずっと考えてた」
「…」

そうだ。
自分は呪いがかかっていた時のママの側についていたから、あの時は姉さんをただ逃げた臆病者のようにしか思っていなかった。
いつものママを取り戻す為に、ママや私の傍から離れ、敵対し、独りになることを選ぶ。
これがどれだけの覚悟が必要なことなのかまで、考えが及ばなかった。

もし、私が姉さんの立場であったなら…姉さんと同じように…。
いや、姉さんのようにはなれない。なれなかったからこそ、国中を恐怖で包んだママの行ないに見て見ぬふりをしたのだ。
これは、覆りようのない私の【弱さ】だ。

「…レートのおかげで、キャロルとも仲直り出来て、お母様も取り戻す事が出来た。こんなに嬉しい事ないじゃない。
 こんな最高のハッピーエンドを迎えられたのよ?今更淫魔失格なんて言われた事なんて、全然平気よ」

姉さんの胸に顔を埋めているから、今の姉さんの表情は見えない。
でも、優しく抱きしめる腕が、ゆっくりと頭を撫でる手が、声色が、満面の笑みだと容易に想像させてくれる。

「それでも…ごめんなさい」
「うん…ありがとう、キャロル」

姉さんは、ゆっくりと噛みしめるように返事をくれた。
ほぼ無意識とも思えるくらいに自然と、自分の口から出たごめんなさいの言葉。
そして姉さんのありがとうの言葉。
やっと自分の伝えたい気持ちが、本当に欲しかった思いが、自分の心を満たしてくれた。

照れくさかったけど、最後には姉さんと満面の笑顔を交わすことが出来た。



私は、淫魔としての力やテクニックは姉さんより上。
でも、淫魔としての優しさや包容力、そして心の強さは私より姉さんがずっと上。

淫魔失格なんて言って、ごめんなさい。

ありがとう。




大切で、私の大好きな姉さん。

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今後のお話(数行程度)

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