ooo Dec/31/2024 19:19

涼宮ハルヒの蹂躙 ~怪獣ハルゴンによる臭い責め、踏みつぶし、丸呑み地獄~

pixivのキャプションにあらすじがあります

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23715733




◇◆◇◆ 1 ◇◆◇◆




「あーー面白かった! やっぱり公開初日に行って良かったわねっ! キョン!」
「あぁ、怪獣映画なんて子供の頃以来だったけど、普通に見応えがあって面白かったな」
「でしょっ! 特に凄かったのは怪獣が走るシーンよねっ! あの大きな足が凄いスピードで──ビルが倒れて──ブレス攻撃が────」
「ああ、うん、それな……お、おぉ……」


 寒さの増してきた夕暮れ。
 映画館から出て来た二人の高校生男女が楽し気に語らっている。
 特に女子の方──”涼宮ハルヒ”は、未だに興奮冷めやらぬようで、鼻息荒く、怪獣映画の感想をまくしたてている。

 そのあまりの興奮ぶりに、彼女から"キョン”と呼ばれた男子高校生も、相槌を打ちながら少し気圧されているようだ。


「──とかも凄かったわよねっ! 後は……ってキョンっ! 聞いてるの!?」
「お、おう……いや、まさかそこまでハルヒが怪獣映画好きだったとは思わなかったよ」
「え? ふふんっ♪ だってスカッとするじゃない! 大きな体で思いっきり動いて、壊して……ねぇキョン、あんたも一度くらいは怪獣になってみたいと思うでしょ?」
「え……?」


 先ほどまで幼い子供のようにキラキラと輝いていたハルヒの瞳が、不意に妖しい雰囲気を帯びたように思えて、キョンは少し戸惑った。
 しかし、瞬きをするうちにその違和感はすぐに消え、気づけば目の前の少女が急かすように、怒ったような顔を間近まで近づけている。


「──ねぇ、ねぇってばっ! どうなのよっ!」
「……あ、悪い。 いや、俺はさすがに、人間のままでいいかな。 もし怪獣になっても、人でも踏んだらと思うと怖くて動けなくなりそうだ」
「えーっ! 何よそれっ! つまんないーっ!!」
「いやそんな事言われてもな……おっ、着いたか。 じゃ、また明日な、ハルヒ」
「~~~~~ッ!! もういいわよッ! キョンのバカ!!」
「えぇ……おい、ハルヒ!……はぁ」


  やれやれ、と頭を掻くキョンを尻目に、鼻息を荒げた様子のハルヒがずんずんと大股で歩き去っていく。 
 キョンからの同意は得られなかったが、ハルヒの心の中に生まれた興奮はその程度では消えなかった。



「……バカ! キョンのバカバカバカ!! もうっ! いいわよ、それなら私一人で思いっきり楽しんでやるんだからっ!!」


 家に帰るなり、着替えもせずにカバンだけを降ろしたハルヒは、なぜかすごい勢いで部屋の中を片付け始めた。
 邪魔なものをベッドや机の上に移動させ、掃除というよりは、床面積をなるべく広くするための行動のようだ。

 ひとしきり部屋を片付けると、ハルヒは目を閉じて意識を集中させた。
 ハルヒの頭の中の妄想がどんどん濃くなり、輪郭を得て、形作られていく。

 やがて彼女が目を開けた時には……部屋の中の様子は一変していた。


「ん……? んぇ……?」
「えっ? あれ、俺……なんで……」
「ここ、どこだ……?」
「は? えっ……?」


 さっきまでハルヒ一人しか居なかったはずの部屋の中に、いくつもの困惑の声がこだまする。


「んふふ……んふふふふ……♪」

「……うぉッ!? うぁああああッ!!」
「な、なんだ……何だよあれぇえええッ!!?」
「お、女の……きょ、巨人!? どうなってんだ!!」
「知るかよ……くそッ!!」


 先ほどまでよりも明らかに広くなった部屋の中で、腰に手を当てたハルヒが床を見下ろしている。
 部屋の中心には数十名の────指一本ほどの大きさしかない、男子高校生達が、恐怖と驚愕の表情でハルヒの事を見上げていたのだった。




◇◆◇◆ 2 ◇◆◇◆




 どこかへ向かう途中だった者、家でくつろいでいた者、複数で語らっていた者達。
 その日常が写真のように突然切り取られ、次の瞬間には見ず知らずの女子高生の部屋に閉じ込められていた男子達は、極めて激しく困惑していた。
 しかも、少女もその部屋も、自分達と比べてあり得ない程の巨大さである。

 ずうん、ずずうん、と地面を揺らしながら、興奮を隠しきれない様子のハルヒが男子高生達に歩み寄る。


『んふふふ……私はハルヒ……じゃなくて、怪獣ハルゴンよっ! 食ーべーちゃーうぞーー!! がおーーーっ!!』

「…………ッ!?」
「え、えっ、マジで、マジで何なんだよこれぇ……」
「夢、だよな……?」
「うお、すっげ揺れる……やべっ」
「おーいっ! 君は、えっと、一体何者なんだ!」
「お、おいやめとけって……」

『がおーーーー……ぉぉぉ~~…………あれ……?』


 男子高生達に続いて、今度は大きな口を開けながら両手を広げてしゃがみこんだハルヒが、困惑の表情を作る事になった。
 ハルヒとしては男子高生達が蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う事を期待していたのだが……アニメやゲームを通して非日常の光景に慣れ、そこに同調圧力も加わったせいか、男子高生達は大いに困惑しながらも集団を維持していた。
 口々に助けを求めたり、ハルヒと友好的なコミュニケーションを取ろうとしているようだ。

 しかし、そんなものはもちろん、ハルヒの望むものではない。


「ん~……うんっ! ふふ~ん……♪」

「おっ、何だ……?」
「た、助けてくれるんだ! やったぞ!」
「すみません、とりあえずベッドとかの上に乗せてもらっていいでしょうか?」
「は? そんなん落ちたらどうすんだよっ!」
「いや、このままじゃ踏まれるかもしれないだろ!」

「んふふ~~……♪」


 何かを思いついた様子の笑顔のハルヒがゆっくりと腰を下ろし、顔を近づけると、その動作に友好的な意思を感じ取ったのか、男子高生達も無警戒に近寄ってきた。

 ニマニマと笑みを浮かべているハルヒの頬が徐々に大きく膨らんでいく。


「……?」
「な、何ですかその顔?」
「もしかして怒っ──」

『んぷっ…………ぶっはぁあああああ~~~~~っっ♪♪』


「うわぁッ!?」
「ん……? むぐぅうッ!!?」


 笑顔のまま頬を膨らませていたハルヒは、突然口を大きく開け、大量の吐息を勢い良く吐き出した。
 最前列に居た男子生徒達は風圧で倒れ込み、その後ろに生徒達も全身にハルヒの吐息を浴びる事になった。

 そして、腹の底から噴き上がり、口内で圧縮されて熱を帯びた空気は……男子高生達が想像もしない程の、とんでもない臭気を含んでいた。

「ぐッ、ぐぇッ、げほごほッ!!?」
「く、クセッ!? くっせぇえええッ!!?」
「うげぇッ!! うぇえええええッッ!!!」

『あははははっ!! どう? これが怪獣ハルゴンのブレス攻撃よっ!』


 湿っぽくて、粘っこくて、胃の中の腐敗臭に口内の独特の酸臭が混ざったような強烈な臭気。
 そんな"ブレス攻撃”を正面から浴びた男子たちは皆バタバタと倒れたり、膝を突いたりして、激しく咳き込みながら苦しんでいた。

 その様子に得意げな笑みを浮かべたハルヒが、一人の男子高生を掴み上げる。


『んふふふ……♪』

「げほッ、ごっほッ……あッ!? な、何すんだ──」

『ぷはぁあああああっ♪ はぁあああああああああああああっ♪♪』

「んぐぅうううーーー!!!? がはッ!! げほげほげほッ、お゛ぼッ、ぇ゛ええええッッ!!!」

『……ぷっ、あっははははははっ!! くさいでちゅね~♥ 小人ちゃんにはちょっと刺激が強すぎたかしら~?』


 右手に掴んだ男子生徒に向かい、ハルヒが至近距離から激臭の"ブレス攻撃”を何度も浴びせかける。
 両腕ごとしっかりとハルヒの手に握り込まれている男子高生は顔を覆う事も背ける事もできずに咳き込み続け、ついには吐き気を催してえずき始めてしまった。

 自身の口を「臭い」と言われて傷つかない女子などいないはずだが、苦しむ男子を眺めながらハルヒは心底おかしそうに笑っていた。


『怪獣ハルゴンの攻撃はまだ続くわよ~、ん~~~れろれろれろれろぉ♪』

「むぶぐッ!!? ぶふッ!! やッ、やめべッ!! ぶじゅッ、ごぼぼぼッ!!」


 いたずら気な笑みを浮かべたハルヒが舌を伸ばし、手に持った男子高生の顔面を舐め回す。
 わざと唾液を多めに分泌しているのか、わずか十数秒ほどで、男子高生の顔は白く泡立った唾まみれになってしまった。
 
 ネバついた大量の唾液が頭部からハルヒの指を伝って、床に滴る。
 男子高生が息をしようとするたび、口や鼻の穴に張られた唾液の膜がブクブクと泡立った。


「ぶふぅうッ!! ぶぇえッ!! げぼッ!! お゛ぉぇええええッ!! もッ、も゛うやべッ、やべでぐれえええッ!!」

『あははははっ! 怪獣ハルゴンのベロベロ攻撃っ! これをやられた小人ちゃんは動けなくなっちゃうのよ~♪』

「な、なんだ…何してんだあの子……!?」
「お、おいっ、いたずらはそのへんにしといてやってくれ!!」
「そうです! 彼はすごく苦しんで──」

『そして最後は……ん、ぁあ~~~~~~~~~………♪』

「げぼごぼッ! ぶぇあ…………ひッ!!?」



 小人たちの声を聞き流しながら、ハルヒが手の中の男子高生に向けて大きく口を開く。
 また舐められるのか、臭い息を嗅がされるのか。

 そう思っていた男子高生の視界は、次の瞬間には暗闇に包まれた。


『~~~~~~~~~~ぁむっ♪』
「ッ!!!??」
『んぐ、んぐ……んっ…………ごっ、くんっ♪♪』

「はっ? えっ……?」
「えっ、えっ!? ちょっ! おいっ!!」  
「く、く、食った…………!?」


 手に持っていた男子高生を無造作に口に入れ、そのまま丸呑みにしたハルヒを見て、他の男子高生達が戦慄する。
 冗談にしても、明らかにやりすぎである。
 
 そして、心地良さそうに喉と腹を撫でているハルヒは、一向に男子高生を吐き出す気配が無い。

『んっ……ふぅぅぅ……♥♥ この、小人が喉をズリズリッて落ちていく感じが……あっ、胃に入ったみたいね……んふふ、あたしの、じゃなくて怪獣ハルゴンの胃液はすごいから、すぐに溶けちゃうわよ♪』

「えっ、はっ……?」
「の、飲んだフリ……だよな?」
「いや、マジで飲んでたぞ……で、でもすぐ、吐き出す、はず……」
「お、おいおいおい長くないか!? 大丈夫なのかよッ!?」

『んふふ~~…………んっ? あ、終わったみたいね……んぐっ、げぇええふうううううっっ♥♥♥』

「ひッ!? ぐぁあああああッ!??」
「ぎゃああああああッ!! ぐ、ぐぜッ! ぐぜぇえええッ!!」
「め、目がぁッ!!! い゛ぃいででででぇッッ!!!」


 再び身を屈め、男子高生達に顔を近づけたハルヒが大きな口を開け、巨大なゲップを放つ。
 胃の底からせり上がってきた腐敗ガスの激臭は先ほどの口臭の比ではなく、気化した胃液の成分も僅かに含まれているのか、間近で浴びた男子達は鼻だけでなく目までを押さえて激しく苦しんでいた。

 その様子を眺めて更に笑みを深めたハルヒが、もごもごと口を動かし、何かを吐き出した。


『くちゅ…………ぺッ!!』

「うわぶッ!? おぇッ! 汚ぇッ!!」
「くっせぇ……こ、これ……!?」
「うぁ、あ……うぁあああああああああッ!!??」

『んふふふ……ごちそーさま♪』


 ハルヒが喉の奥から吐き出した物はネバついた唾と唾液にまみれ、あちこち穴が空いてボロボロになった服だった。
 明らかに、ハルヒに飲み込まれた男子高生が身に着けていた物だ。

 そして、その上着には、痰のように濃い唾にまみれた──たくさんの毛髪が張り付いていたのだった。
 まるで、その他の部分は溶かされてしまったかのように。


「ひッ!? ひぃいいいいあああああああッ!!!?」
「いやだッ!! いやだぁああああああッ!!!」
「やばいやばいやばいやばいってぇええええッ!!!」
「クソッ!! どけぇええッ!! 早く行けよぉおおおッ!!!」


『うんうん、怪獣ハルゴンの恐ろしさがようやく分かったみたいねっ! せいぜい必死に逃げなさいっ!』


 パニックになり、押し合い圧し合いながら逃げ出し始めた男子高生達を見て、ハルヒが大きく頷き、満足げな笑みを浮かべる。
 ようやく、ハルヒ自身が思い描いた怪獣映画に近い状態になってきたようだ。

 気を取り直したハルヒは、再び"怪獣としての”一歩を踏み出した。


『いっくわよーーっ!! がぁおおおおおおおーーーっ!!』

 ズドドドドドッ!! ズドドドドドドドォオオンッ!!!

「ひぃいいいいいッ!? き、き、来たぁああああ!!!」
「あぎゃッッ!!!??」
「ぶびッ!!??」
「うぎゃあああああああああああッ!!?」

『…………あれ、速すぎちゃった? あははっ! なかなか難しいわねっ!』


 昂る気持ちのままに勢い良く駆けだしたハルヒは、逃げていた男子高生の一団に一瞬で追いつき、そのまますぐに追い越してしまう。
 振り返ったハルヒの目に映ったのは、踏みつぶされ、赤い染みと化した者、そして蹴散らされ、全身を骨折してビクビクと小さく痙攣している者。
 まさに文字通りの死屍累々といった、地獄のような有様だ。

 大衆向けの怪獣映画では当たり前のように省かれている、極めて悲惨な現実が、そこにはあった。


『そういえば映画の怪獣も、もう少しゆっくり走ってたわね……こんな感じかしら? がぉおおおおお~~~!! た~~べちゃうわよ~~~~!!』

 ズドォオオオオンッ!! ズドォオオオオオンッ!!!
 ズドォオオオオオオオオオンッッ!!!!

「ひっ、ひっ、ひぃいいい……!!」
「あ゛っ、あじ、足、折れ……だず……たずげ…………」
「がはッ、あ…………あぶゃッ!?」
「ぶぎゃべッ!!」
「あっ、あ゛ぁああああああッ!!? 離せぇえッ!! はなッ──」

『あ~~んむっ! ごっくん♪』


 先ほどとは打って変わって、ゆったりと大げさに床を踏みしめるように走ったハルヒが、骨折して動けない男子達を次々に踏みつぶしていった。
 そしてハルヒは揺れで上手く立てないでいた五体が無事な男子を捕まえると、またもその巨大な口で丸呑みにしてしまった。

 目で見て分かる程の"膨らみ”がハルヒの喉を下っていき、そのまま腹の中へと消えていく。
 しかし、もはやそのような光景をじっくり眺めて悲鳴を上げる者はいない。
 残った男子生徒達は四方八方へ必死に走り続けていた。

 そして、気まぐれに標的を定めたハルヒが、またもわざとらしく大きく足音を立てながら男子生徒達を追いかける。


『がぁおおおお~~~~!! ほらほら~、捕まえちゃうわよ~♪ 大怪獣ハルゴンに捕まったらヒドい事になっちゃうわよ~♪』

「はッ、はッ、ふッ、はぁあッ!? 速ぁッ!? ひぃいいいいいッ!!?」

『ほぉ~ら捕まえちゃった~♪ んっ、れぇ~~るれるれるれろ♪』

「えぶぶぶぶべべべべッ!!??」


 掴み上げた男子生徒を、ハルヒがべろべろと動物のように舐め回す。
 あっという間に体中を唾液まみれにされてしまった男子生徒は息ができない程の唾液臭に苦しみながら必死にもがき続ける。

『んふふ……あ~でも、あんまり一人に構ってると他の小人が逃げちゃうわね……とりあえずあんたはソコに入ってなさいっ!』

「ぶふッ! げほげほッ! はぁ……? あッ!? うぁあああああああッ!!!」

 自身を掴んだままの巨大な手が絶叫マシーンどころではない速度で動き、男子生徒は恐怖の悲鳴を上げる。
 やがて手の平が開かれると、男子生徒は白い布地に向かって落とされた。


「な、なんッ……むぐごッ!!? ごッ!! ん゛ぅううううううッッ!!!」

『んっ♥♥ ふふっ……さーて次、次っと』


 ハルヒがもう片方の手で掴んでいたショーツのゴムを離すと、パチンという音と共に男子生徒の視界が暗闇に閉ざされた。
 直後に襲い来る圧迫感と熱気、湿気、そして凄まじい悪臭。

 ハルヒの巨大な股間部に挟み込まれてしまった男子生徒は身動きすら取れず、
このまま地獄のような苦しみを味わい続けるのだ。


『ん~~っと! よいしょっ! つっかまえた~♪ あんたはそうね……ココに挟んであげるっ!』

「ひッ!? や、やめッ────ぎゃああああああッッ!!!」


 次に捕まえられた男子生徒は、ハルヒが捲り上げた袖の奥に入れられ、巨大な腋に全身を挟みつけられてしまった。
 興奮して気分を高ぶらせ、温かい室内で激しい運動をしているハルヒの脇の下は火傷しそうなくらいに火照っており、大量の汗が分泌されていた。


『怪獣ハルゴンの~、えーっと、ワキバサミ攻撃~♪』

「うぎッ!!!? ぐッ……げッ……!!?」


 ハルヒが広げていた腋を閉じれば、男子生徒の全身が汗まみれの腋に完全に埋め込まれ、呼吸をする度に痛みを感じる程の凄まじい酸臭が彼を襲う。
 ハルヒが腕を動かした時の摩擦や圧迫で死ぬか、それとも酸欠や熱中症で死ぬか、いずれにせよ、彼の最期は少女の腋の下で屈辱的に、苦しみぬいて死ぬということが確定してしまったのだ。


『はいっ、また捕まえたっ! 次はどうしようかしらね~……あ痛ッ!?』

「うぉおおおおおおッ!!! 離せこの野郎ぉおおおおおッッ!!!!」

『はぁぁ? "市民”の分際で、"怪獣”のあたしに逆らってんじゃないわよッ! 生意気なヤツ! あんたはもう要らないわッ!』


 中には勇敢にも、自身を捕らえたハルヒの指先に噛み付いたり、ベルトを振り回して反撃する者も居た。
 しかし、この場における絶対強者であるハルヒの怒りを買って、彼らが無事に済むはずがない。


「クソがぁあ!! 許さねえぞ──あぎッ!?」

『ふんっ!』

「ぎゃぶぐぃいいいッッ!!!??」


 バキバキ、ボキボキと小気味よい音を立てながら、ハルヒの手の中で男子生徒の体が握りつぶされていく。
 全身の骨を折り、無理やり"丸められた”男子生徒の体を握ったまま、ハルヒが大きく腕を振りかぶる。


『う~ん…………えいっ、と!』

「────ぎゃぶッ」

『あっははははは! ナイスシュート♪』


 ハルヒが投げた男子生徒ボールは、弧を描いて壁に激突し、そのまま下にあるゴミ箱の中へと消えていった。
 成績優秀なだけでなく、運動神経も抜群であるハルヒは、その後も何人かの男子生徒を見事にゴミ箱の中に葬って見せた。

 やがて、パンパンと手を払ったハルヒが一息ついた様子で伸びをし、辺りを見回す。
 部屋の床や壁にはいくつもの赤い染みが出来ており、既に動く者の姿は皆無になっていた。


『ふぅ……こんなもんかしらね……ん? あ、そういえば腋に……うわっ……』


 腋に違和感を感じたハルヒが袖の隙間から手を入れると、中からはずっと腋に挟みつけられていた男子高生の体が取り出された。
 真っ赤に火照った彼の体はピクリとも動かず、大量の汗にまみれた状態で極めて強い酸臭を放っていた。

 彼の死因は圧迫か、酸欠か、熱気か、臭気か。
 いずれにせよ、最期の瞬間まで地獄のような苦しみを味わった上で事切れたのであろう。
 汗まみれで悪臭を放つ男子高生の体を指の先で摘まみ上げるようにして持ったハルヒは、顔を顰めながらそれをゴミ箱に放り捨てた。


『……さて、これでもう他は居ないわね。 あとは……』


 しばらく息を整えたハルヒが、部屋の一角に目を向ける。
 そこには読まなくなった雑誌が雑然と積まれていた。
 そして、折り重なった本同士が、”偶然にも”小さな隙間を作っている。
 それは怪獣災害から逃れようとする市民達にとって、それはまるで逃げ込むべき安全なシェルターのように思えただろう。

 しかし、彼らが考慮すべきだったのは、ここがハルヒの自室で、部屋を片付けたのがハルヒ自身だったという事だ。


『ふふっ、残りはあの中ね……♥』


 部屋の中で"唯一”の、小人たちが逃げ込める隙間を見つめて、ハルヒは再び昂り始めた熱を誤魔化すように、ぺろりと唇を舐めたのであった。





◇◆◇◆ 3 ◇◆◇◆




「はぁ、はぁ、はぁ……」
「うぐぅぅ……クソッ、俺らが何したってんだよ!」
「シッ! 声出すなって……見つかったらどうすんだよ……!」
「だけどいつまでもここに隠れてるわけにも……わっ!?」
「静かにっ……! 奴が近くに居る……音を立てるなよ……!」


 残った男子生徒達が隠れていた雑誌の山の、隙間から入り込んでいた光が不意に遮られた。
 それはつまり、雑誌の山よりも大きな"何か”──間違いなく、あの巨大な少女の体が隙間を塞いでいる事を意味する。
 彼女の立ち位置から彼らは見えないが、雑誌の山を持ち上げられたらそれだけで見つかってしまう。

 男子生徒達は天に祈りながら息を潜めていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ふぅぅ、ふぅぅ……!」
「お願い、します……神様…………!」

 ブォオオオオオオオオオオッ!!!!

「いッ!?」
「うぉっ!?」
「なんっ────」

 ブスッ、ブッスゥウオオオオオオオオ…………

「……ん゛ぐッ!!!??」
「ぐぉえッ!!?? がはぁあッッ!!!??」
「ぐざッ!? ぐッ、臭ぇえええええッ!!!??」


 闇に包まれた雑誌の隙間に、まるで巨大なタイヤから空気が漏れるような音が響き渡る。
 そして、その音と共に内部に入り込んだ大量の熱いガスが、凄まじい悪臭となって男子高生達の鼻腔に襲い掛かった。

『ほらほら~、怪獣ハルヒちゃんの毒ガス攻撃よ~♪ 早く出ないと死んじゃうわよ~♪』

 ブッシュウウウウウウウウウウウウ…………

「ぐぎゃッ!! ぐえぇええええッ!! 臭い臭い臭いぃいいいッッ!!!」
「げぼッ、オ゛ッ!!? オ゛ェ゛エエエエエッッ!!!」
「は、鼻……い゛ッ!? ゲボォオッ!! ガッ、はぁぁぁ……!!」

『あっはははははは!!』

 ニオイの質から考えると、これは恐らくあのハルヒの屁なのだろう。
 しかし、それはとても少女の尻から出たとは思えない程に凄まじい悪臭である。
 積み上がった雑誌と壁によってほとんど密閉されていた空間に溜まっていた僅かな空気を大量のガスが追い出し、隙間の内部は一瞬にして超高濃度の腸内ガスで満たされてしまった。

 通常サイズであれば手を振るだけで散らせる程のガスでも、彼ら小人にとっては全員の肺の中を完全に満たしても及ばない程に大量である。
 明らかに人体にとって危険な量の腐敗ガスを検知した彼らの体が激しくアラートを慣らす。

 男子高生達は全身を覆う不快感にもがき苦しみながら、激しい咳と嘔吐を繰り返してのたうち回った。


「がほッ、ぐガッ……ゲボロロロッ!!! じ、じぬぅッ……!!」
「出な、ぎゃ……ぞ、外ぉ……!!」
「おげぇッ! ゲェエエッ!! ご、ごっぢ、だ……」


 熱で死ぬと分かっていても、自ら電灯に飛び込んでいく羽虫のように。
 男子高生達は汚染されていない空気を求めて、ハルヒが待ち構えているであろう、雑誌の隙間の入口へと這って行った。


『くふふっ……♪』

 ズドォオオオオオオオオオオンッ!!!

「ぐッ……あぁッ!?」
「なん、だ……げほごほッ、ご、ごれぇ……!?」
「ふ、塞がれ……げぼぇええッ!! で、出れな……お゛ッ、お゛ぅうえええ……!!」
「ふざ、け……げほげほごほッ!! げうぅうああッ!!!」


 だが、不意に轟音が鳴り響き、男子高生達が目指していた入口は別の雑誌によって塞がれてしまった。


『もうちょっと出るかな……んっ!』

 ブスッ、ブッ、ブビビィ…………

「ぐぎゃああッ!!?」
「がはッ!! げっほごほッ!!」
「お゛ぇええッ!! げッ……げほぉ……あが、が…………」
「だず、げ……ぇぇ…………ぁ…………」


 どうやらハルヒは、この密閉空間の中で男子高生達をオナラで蒸し上げるつもりのようだ。
 彼らはまるで"ガス室”に閉じ込められた死刑囚のように、空気を求めて雑誌の壁をめちゃくちゃに叩き、喉元を掻きむしる。
 やがて地面に倒れ伏した彼らの胃が空っぽになり、ビクビクと痙攣するだけの状態になってようやく、彼らの居る空間に光が差した。


『さーて、どうなったかな……って、うわっ!? げほげほっ!? くっさぁい!?』


「あ゛っ……あぁぁ……」
「ぞ、ど……で、出られる、ぞ……」
「おぇぇ……ぐぇえぇ……」
「はひ、ひぃぃ…………」


 塞いでいた雑誌を開けて中を確認したハルヒが、立ち上った凄まじい悪臭に思わず身を仰け反らせ、慌てて距離を取った。
 その隙に、男子高生達は芋虫のように這いつくばりながら、何とか地獄のガス室から脱出を果たしたのであった。


「ぜぇ、はぁ、うぇ、おぇえぇ……」
「だ、助かっだ……出られ────あがッ!?」
「ひッ!? うぎゃあああああッ!!!」

『はい残念~♪ つっかまえた~♪』


 しかし、大量にガスを吸い込んだダメージにって歩くこともままならなかった男子高生達は、すぐに捕らえられてしまった。
 そして彼らを捕らえたのは、ハルヒの手ではなく──座り込んでいるハルヒが伸ばした足の指であった。

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