244 Jul/05/2025 13:24

~ザ・ファブル~「……さと……う……くん……?」 清水ミサキ 完

『ザ・ファブル』

同人作品です。

忠実な再現はしてませんが、ネタバレが苦手な方は避けてください。



前作
~ザ・ファブル~「小島の狙いは清水ミサキ」
~ザ・ファブル~「清水ミサキの契約書」
~ザ・ファブル~「清水ミサキが欲しい似顔絵…」
~ザ・ファブル~「擦り減っていく心…清水ミサキ」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23422904



上記も併せてお読みください。














~本編~




……場所は変わって、一階の仄暗い工場事務所。


ガラス窓には埃がこびりつき、蛍光灯の明かりもどこか黄ばんで見えた。

その中央、金属脚のテーブルを挟んで、小島と砂川が向かい合っていた。


小島は椅子にもたれながら、煙草を口にくわえたまま。

指先で灰皿の縁をコツコツと弾き、どこか余裕のある表情を浮かべている。


一方の砂川は、組の幹部としての貫禄を漂わせつつも、視線の奥には探るような光を宿していた。

長年、表も裏も見てきた男特有の勘が、微かに警鐘を鳴らしているようだった。


「――で?」


砂川が、静かに問いを切り出す。


「もし、あの女が使いもんにならんかったら……どうするつもりや?

 どう見ても、あの子……自分の意思で来たとは思えへんぞ?」


語調は柔らかい。だが、言葉の裏には確かな圧があった。


小島は一瞬だけ眉を動かしたが、すぐに口角を上げて笑い返す。


「……さすがですわ、砂川さん。そういうとこ、よう見とる」


煙を吐き出しながら、肩をすくめて続けた。


「せやけど……“使えるかどうか”ってのは、本人の意思や覚悟で決まるモンちゃいます。

 この世界でモノになるかどうかは、“結果”だけで測るもんやと俺は思てますけどなぁ」


砂川は黙って聞いていたが、その眼差しは鋭さを増していた。


「つまり、最初から無理やり引っ張ってきたと。──違うか?」


小島は笑いを消さずに、静かに煙草を灰皿へ押しつける。


「俺のやり方がどうであれ、組としては――結果さえ良ければ、納得でしょう?

 女が不本意かどうかなんて、俺らが気にする義理あります?」


そして、少しだけ身を乗り出すと、低い声で囁いた。


「ヤクザが“道理”を気にして商売できるような世の中なら、とうの昔に堅気になっとりますわ」


砂川の口元がわずかに歪む。

それが皮肉か、納得か、あるいは見過ごすという合図なのか――判然としなかった。


「なるほどな。そっちタイプの考えなワケか……」


その瞬間だった。


静かな空気を破るように――


上の階から、女の声が響いた。


「……っあ……ん、んっ……くぅ……っ……!」


断続的な喘ぎ声。

それは、抑えていたものが堰を切ったように、時折壁を越えて一階まで届いてくる。


一拍置いて、小島が笑った。

ニヤリと、口の端を持ち上げて。


「……まぁ、結果が物語ってますやん。

 “気持ちええ”かどうかなんて、本人の口が証明してくれとる」


砂川は視線をわずかに上に向けたまま、表情を崩さずに煙草をくゆらせていた。


「不本意でも……気持ちよぉなっとるなら、ええってか」


小島は肩をすくめる。


「結果オーライっちゅうやつですわ、砂川さん」


コンクリートの天井越しに響く声。

そして、それを下で聞きながら交わされる、無感情な会話。


それは、彼らが生きる世界の“冷たさ”そのものだった。





・・・・・・・・・・。


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