じろうぽんぽん 2019/08/26 16:21

ガマグチさんの本当にあった怖い話

夏の怪談ケロっ!

最近の夜は涼しくなって過ごしやすくなったケロね~!
あれだけたくさん鳴いていたミンミンゼミくんたちの声も少しずつヒグラシくんたちの声の方が多く聞こえてくるようになってきてて、夕方になるとスズムシくんたちもリンリンと鳴き始めてきたあたり…秋の訪れを感じるケロね~。


でも…そんなボクたちが暮らす日常には恐怖が潜んでいるのかもしれないケロよ~…今ボクが思い出しても結構ゾっとする話だから怖いのが苦手な人は注意ケロよ!




――――あれは柿の実る、秋の出来事。
当時、僕は色々な仕事をしていたのだけども、その仕事のひとつに山から人里に下りてくる野生動物たちを山に返す仕事をしていたんだ。といっても、おなかを空かせた熊や猿が民家や畑を荒らしたりしないように、ある時は大きい音のする花火を鳴らしたり、またある時は山の奥で大きな檻を仕掛けたりとか…そんな仕事だった。

町に住んでるといっても僕たちが住んでいる場所といえば…ちょっと行けばすぐ近くにいくつも山があるようなところだったから。むしろ野生動物なんてたくさんいるんだから、動物に人間が勝手に決めた線引きを守らせるなんて無理な話ではあるんだけど…とにかく穏便に穏便に動物と人間が共存していこうっていう事で、動物が現れれば出動して山へ追い返すっていう事を繰り返していた。

ある日、職場へ一本の電話が入った。それは「町の中で柿の木を物色している猿がいるからどうにかしてくれ」といった内容の連絡だった。その地域は桜の木がとっても綺麗に咲いている河川があって。春になるとたくさんの人が集まって写真を撮っていたりするのだけれど…季節は10月も半ばに差し掛かった秋だったから観光客も少なくて閑散としていたのをよく覚えている。

車で10分もかからない距離を走行して、麻酔銃を携えた猟師の方々と共に現地に駆け付けると、既に連絡をしてくれてた方も到着していたので詳しく話を聞くことにした。話によると、この付近の集落は密集してはいるけれど、もう使われなくなった民家が立ち並んでいたりしているらしく。空き家になった場所に猿が入り込んでいるらしいとのことだった。

……なるほど。どうやらもういくつかの民家にいるだろうという目星はついているらしい。目途をつけた廃屋の周辺には大きな柿の木があり、かじって捨てられた柿の実があたりにちらほらと落ちている。まだ道や家の外に猿がいれば追いかけて山に戻ってもらいやすいのだけれども…そう簡単な話ではない。気は進まないが僕たちは廃屋に足を踏み入れることとなった。

その日、僕が担当した古ぼけた日本家屋の廃屋はとても小さな作りをした一軒家で、周りを2mほどの石の塀で囲われており、中を伺い知る事はかなわず。入口は獣道のように雑草が生い茂り、一目見て人が生活していないことだけはわかった。

「区長さんからの許可は出てますけど…本当に入っても良いんですかね…」
「入らにゃ仕事になんねえべや」
こういうときの猟師さんは肝が据わっている。そう言いながら彼は、年代を感じさせる玩具のようなドアノブを粗雑にガチャガチャと回すが扉は開かなかった。

「カギが閉まってるなら動物だって入れないんじゃ…?」
「動物がわざわざ玄関から入ってくるわけねーべ」
…ご尤もだ。玄関のカギは閉まっていることを確認した猟師さんは踵を返して庭に向かった。小さな庭は石壁に囲まれているせいか酷く窮屈な作りになっており、生い茂る雑草がどんよりとした息苦しさを感じさせる。僕がじめじめとした庭の雰囲気に呆気に取られている間に、猟師さんは磨りガラスの軒先をガラリガラリと開けはじめると…どうやらこちらにはカギがかかっていなかったらしく、年代を感じさせる窓は上下にガタガタと音を立てながらゆっくりと吸い寄せるようにその口を大きく開けはじめた。全く頼もしいことだ。

ズカズカと猟師さんはその口の中に入っていくので、ぼんやり外で待っているわけにもいかない。恐る恐る僕も後を追って廃屋に足を踏み入れ…そこで息をのんだ。午後の太陽を浴びて、久しぶりの人間の来訪に喜んでいるかのようにキラキラと舞い踊る埃を眺めるとため息が漏れそうになる。…六畳間そのものが埃の毛布をうっすらとかけて永遠に眠っていたかのような場所だったのだ。

正面に目をやれば、ゆっくりと風化した時間に重厚な趣きすら感じる掘り炬燵と布団。リモコンなんてものが存在しなかった時代のブラウン管テレビ。端に目をやれば放置された仏壇。見ず知らずの遺影。軋む床を通り抜けた台所にはいくつもの茶碗と箸がそのままに…まるで昭和の生活をある日突然そのまま置き去りにしたような不思議な場所。

思考が止まりそうだった。嗅いだことのない懐かしい家の香りも、朽ちた木の香りも、まるで人がそこで寝ていてもおかしくない光景なのに。それなのに生活感だけがずっぽり抜け落ちているような。古い写真の中に飛び込んだような異様な光景だった。

麻酔銃を持った猟師さんはこういった場所への耐性があるのだろうか、それとも虚勢を張ってか「死体がないか一応見てくる」などと全く笑えない冗談を交えながら、土足で階段を昇っていく。古民家にありがちな木で作られた急こう配の階段を昇ると、すぐ目の前の畳の上には恐らくもう誰も着ることがないであろう放置されたままの洗濯ものが綺麗に畳まれたままで置いてあった。

僕たちだけの足音しか聞こえない畳を踏みしめると次第に呼吸すら苦しく感じられた。11月にも近づくというのに、2階は何故か蒸し暑い。畳と埃の香りもより一層強く感じられた。おずおずと、しかし今すぐにでも窓を開けて換気をしたくなる気持ちを抑えながら…床に散乱するネズミの死骸や古ぼけた新聞紙、片方だけの靴、小さな桐ダンス、その全てが目まぐるしく視界に飛び込んでは熱をおび、ただただ音だけが静まりかえっていく。

…なんとか思考を整理して本来の目的を思い出す。僕はここに野生動物を探しに来ているのだ。そう、仕事をしているのだから…もし、もうここに被害がないのであればすぐにでも立ち去るべきなのだ。そんな事を考えながら先に進んだ猟師さんがいる方へ目線を向けると、あれだけ軽口を叩いていた猟師さんは奥の部屋の扉の前で立ちすくんでいた。

「なんだぁこれ…」
そう言って扉を開けたままで奥の部屋を眺めている。蝶番がギギギと音を立てながら障子で作られたような1cmほどの厚さの扉の奥を見つめている。
「…どうしたんですか……」
「いやぁ…見ねぇほうがいいかもしれんぞ…」
「そんな言い方は気になるじゃないですか……」
「だってよぉ……」
そういった彼の傍に立って僕はそれを仰ぎ見ることになりました。

そこには今までの和風の部屋だった建築からは程遠い空間がありました。半畳ほどのスペースに2mほどの高さがあり、窓はなく。何かの収納スペースにしてはあまりにも小さな空間にコンクリートのようなものが天井から床まで塗り固められており、もし人が入るならば立っているのがやっとなくらいの狭い空間……そこに天井に頭を起点とした床まで脚のある長い長い女性の絵が4人、壁に向かい合うようにして描かれていました。

女性の絵は全てキャラクターで、例えるならタッチの南ちゃんのような絵が4体。しかしどれも異常なほどに身長が高く、8頭身か9頭身はある絵なのです。彼女たちの表情は怒りとも、呪いともつかない表情で…笑顔でもなく……こちらをただただ眺めているようでした。

混乱しました。どうしてこんな狭い場所にこんな大きな絵が描かれているのか、しばらく何も言葉が出ないまま秒数にすればほんの何秒にも満たない時間だったと思いますが…まるで何時間にも感じられるくらい絵を見続けていた記憶があります。そして、その絵の頭の隣にひとつずつ名前のような漢字が書かれているのを見たときに言い知れぬ恐怖が身体を駆け抜けたのを今でも覚えています。

ゆっくりと、ただできるだけもうあの絵を見ないように、そして何よりも考えないようにしながら、血の騒ぎだす音を頭の中で聞きながら…それだけを頼りに一歩ずつ廃屋を後にしました。

時の止まった六畳間を足早に抜けて。日常に戻るように太陽を浴びて。深呼吸をして見慣れた街並みに戻ったときに、僕は日常がほんのちょっとズレてしまった場所にこそ内包された恐怖があることを知ってしまったのです。まるで隠されたように描かれた絵も、誰に知られるわけでもなくその場所にあり続けるあの家も…日常という装いのカモフラージュが全てを覆い隠していたことを知ってしまったのです。そしてそれは、きっとどこにでも存在していて。僕はただそれを知らなかっただけ。

桜の花が咲くと、折に触れて思い出します。
満開の桜を綺麗だと撮影するたくさんの人たち。そのすぐ近くに今もまだ誰に知られるわけでもない、誰が何のためにどうしてそこに描いたのかわからない、まるで座敷牢のような場所に描かれた…悪意なんてこれっぽっちも持ち合わせていない無邪気な絵と、置き去りにされた記憶の名残を。






…いかがでしたか?(ブログにありがちなやつ)




さて、怖いといえば……(雑な導入)

夏の怪談やりたい放題!じろうぽんぽんの最新作…
「心霊的っ!ダウナー後輩の除霊手コキ」がDLsite様で販売開始となりましたケロん!

SAN値がガリガリ削れるような実体験をしているガマグチさんにフィクションを書かせたらリアリティなんてワクワクもんケロ~~!やっぱ結局怖いのって人だよ!人!

今作品はヒロインが内包する「他人への憧れ」を具現化した作品になっているから、バッキバキにバッドエンドだケロも、自分がずっと作りたかったと思っていた作品だったから…絵師さんも声優さんも最高の形で作品の制作する事ができた意欲作だケロ~~!


でぃーえるさいとのりんくココだケロ!


ところでガマグチさん。寝取り寝取られが好きな性癖があるような気がするケロも、やっぱり結局全てに通じるのは本質的な人間の感情に尽きると思うケロん。与えられた境遇を謳歌するもよし、反発して抵抗するもよし、今作品も見方を変えれば愛しい愛しい純愛ラブストーリーだケロ!

友人各位に「お前は性癖が歪んでる」ってよく言われるケロも…納得いかないガマグチさんでした!ばいばい!

【 カエルさん 】プラン以上限定 支援額:200円

最新作の台本を公開中だケロ~!

このバックナンバーを購入すると、このプランの2019/08に投稿された限定特典を閲覧できます。 バックナンバーとは?

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

月別アーカイブ

記事を検索