つぶあんドーナッツ Sep/03/2024 17:41

店じまい

  この前、行きつけのBARで飲んでいた時、

座っていたカウンター席から三席ほど離れた客が深くため息をついた。

「もうさ、さっぱりだから今年は。お盆過ぎたらさっさと店じまいだよ」

「えーなんで?まだもうひと稼ぎできるじゃん」

黒光りするほど日焼けしたそのおっさんは、ここから車で2時間ほどの

港町で漁師をしている。月に二、三度、車でここへ飲みに来る常連だ。

夏場は海の家もやっているという話は以前、聞いていた。

「ダーメダメ、もうぜんぜん客が来ねえんだもの。店開けてたら、

バイトの子たちにもギャラ払わなきゃなんねえし、下手すりゃ赤字

だもの」

バーテン相手に冴えない顔で愚痴るおっさんの話を聞きながら、

(そういえば、今年は海に行って無いな)

と思い当たった。泳ぎには三度ほど行ったが、全部近場のいわゆる

ジャンボプールにしか行っていなかった。

「あーあ、海の家なんて、今年でもうやめちまおうかな」

おっさんのため息は、長く深かった。

無理もない、と思った。

行き帰りの渋滞を考えると、わざわざ海まで行かなくても、

近くのプールへ行った方がはるかに楽だ。貝殻やガラスの瓶のかけらで

怪我することも無いし、高い金払って、しょっぱいだけのラーメンや

シャビシャビのカレーを食べるより、小洒落たメニューのあるジャンボプール

の方がはるかに良い。流れるプールだってあるし、ウオータスライダーだって

あるし、アトラクションが色々ある。無いのは砂浜ぐらいだ。

おそらくこれから海水浴場はどんどん無くなっていくのだろう。バブルの頃、

みんなギラギラと肌をテカらせて、夏の浜辺は、サンオイルの独特の甘い香りが

充満していたもんだが、、、、、、。

おそらく、海辺で海の家を営んでいる人たちは、あの頃の賑わいをもう一度、と

思っているんだろうが、もう時代は変わってしまっているのだ。第一、今の子たちは

日焼けしたがらないんだから。そうやって昔ながらの商売を続けている人たちは、

ジャンボプールみたいな都会の大きな施設にお客を取られ続けて、負け続け、

寂れていくのだろう。

そうならないためには、どこかに総合プロデュースを任せて、町全体をトータルに

生まれ変わらせる、なんてすれば良いんだろうけれど、おそらく浜辺の既得権益を手放さ

ないやつが、あちこちから出てきて失敗しちゃうんだろうなあ。そうなるのが目に見える

よなあ。

 黄色にオレンジの資生堂のサンオイルが懐かしい。民宿の裏庭で降りそそぐ蝉の

声を聴きながらボクの背中にオイルを塗ってくれた彼女の丸っこい柔らかな

手のひらの感触を思い出す。その後、ボクが彼女の背中に塗ってあげて、、、、。

ビキニのブラを外した胸は、とても白くて、でも先っちょの薄いあずき色の乳首は

オイルにまみれて光っていたっけ。

その時のサンオイルの味は?

ああ、もう思い出せない、、、、、、。

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