風の終着点

「うっ、ぐっ……！」
「ようやくお目覚めか？へっ、あんたのせいでモンドでの活動が上手くいかなくてなぁ。ったく、モンドは弱小国だって言われてるってのに、とんだ厄介者がいたもんだぜ」
「仲間もずいぶんとやられたんだ。そのお礼は、団長サマにするのが筋ってもんだよなぁ？」
　どこかにある宝盗団のアジト。
　ジンは天井から伸びる鎖で両手首を拘束され、男たちに取り囲まれていた。
　衣服などは奪われていないが、既に武器も神の目もなく、単純な力では男たちに対抗できない。
「その通りだな。上に立つ者として、覚悟はしている」
　しかし、そんな圧倒的な窮地でも、ジンは毅然としていた。
「はっ、まだ余裕があるってか？騎士団の仲間が助けてくれるとでも思ってるんだろうが、ここは絶対に見つかりっこねぇよ。たとえ見つかるにしても、てめぇは縊り殺されてるって訳だ」
「なるほど。試してみるか？」
「こいつ……！いいだろう、こっちも楽に死なせちゃ面白くねぇ。思いっきり楽しませてもらうぜっ！」
「うっ、ぐぅうっ……！」
　男の一人が拳を固め、思い切りジンの腹を殴りつける。
　強い痛みと、後から全身に響くような鈍い痛みが彼女を襲ったが、ジンは涙も見せず、口から何か吐き出すことさえしない。
「ちっ、さっさと泣き叫んでりゃ可愛げもあるってのに、つまらねぇ女だ。オラァ！」
「ぐぅっ……！」
　更に頬を思い切り殴られ、口の中が切れて口の端から血が垂れる。
　それでも、ジンは決して泣き叫んだりはしない。
　それがまた、男たちの怒りと、同時に嗜虐心を煽った。
「オラッ！オラッ！この、このっ！」
「ひっ、ぐっ、づうううっ……！！」
　男たちはジンが手出しできないのをいいことに、生意気な女の顔を、腹を。好きなように殴り始める。
「へへへっ、とことんやっちまおうぜ。もう二度と生意気な顔も、口を利くのもできないようにな！」
「うぐぁっ……！あっ、ぎっ、づぅうううっ！！」
　そうして、男たちは上機嫌でジンを殴り続けた。
　あえて道具などは使わず、拳で殴りつけ、自分の手で鍛えられ、引き締まった腹を殴り、美しく整った顔を殴って、その美貌をも凌○していく。
　うっぷんを晴らすため、鎖で縛られた彼女を引き寄せ、顔を蹴り上げて、鎖を伸ばし、顔を踏みつけもした。
　そうして、美しかったジンの容貌は、まともな感性であれば見るも無惨、見るに堪えない。そんな感想を抱くほど、損なわれていく。
　ジンは必死に声を抑え、男たちを楽しませまいとしていたが、あらかじめしていた覚悟をも上回る痛みに、自然と目からは涙が溢れてきて、どんどん頭はうなだれ、苦しそうなうめき声を漏らすだけになっていった。
「はっ……はぁ、はぁっ、ぜぇっ、うっ、ぐううっ…………」
　暴力を受ける中で、自然と髪はほどけて、うなだれた顔にかかるその姿は完全な“敗者”の様相を呈していた。