いちご大福の甘い誘惑
苺の香る朝
白木の格子戸から射し込む朝の陽射しが、苺香の頬をやわらかく照らす。ふわりとした甘い香りが店内に漂い、炊きたての餡の湯気がゆらゆらと立ち昇る。今日が、彼女にとって特別な一日だ。
創業百年を超える老舗和菓子屋「福寿堂」。これまで職人である祖父や父の背を見て育ち、手伝いはしてきたものの、店頭に立つのは今日が初めてだった。幼い頃から慣れ親しんだ大福の生地を掌でこねるたびに、心の奥がくすぐられるような感覚になる。
開店と同時に、馴染みの客が次々と暖簾をくぐる。「苺大福、五つください」「今日も美味しそうだねぇ」。苺香は緊張しながらも、一つ一つ丁寧に包み、お客様へと手渡していく。すると、昼時の忙しい時間帯に、見覚えのある背の高い男性が店先に立った。
「やっぱり、お前だったんだな」
聞き慣れた声に振り向くと、そこに立っていたのは幼馴染の大輝だった。幼い頃からずっと一緒だった彼は、学生時代にスポーツに打ち込み、逞しく成長していた。今ではすっかり精悍な顔つきをしている。
「大輝……久しぶり」
「今日が初めての店番って聞いたから、様子を見に来たんだ」
照れくさそうに笑う大輝に、苺香は頬を染める。ふと見ると、彼の視線はいちご大福の並ぶガラスケースを眺めていた。
「ひとつ、もらおうかな」
「うん、すぐ包むね」
苺香は白木の箱に大福を丁寧に詰め、手渡した。大輝は受け取ると、一口で大福の柔らかな皮を歯で割る。
「……うまい」
ぽつりと漏れたその言葉に、苺香の胸が小さく震えた。幼い頃からずっと一緒だった彼が、彼女の作った大福を食べてくれている。その光景が、言葉にできないほど嬉しく感じた。
「夕方、また来てもいいか?」
「え?」
「もう一度、お前のいちご大福を食べたくなった」
その言葉に、苺香は何も言えず、ただ小さく頷いた。
夕暮れ時、再び彼が店を訪れることを想像しながら、苺香の心はそわそわと落ち着かないまま、時間は過ぎていった。
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