kazmaro Jul/20/2025 22:06

玉突き更生指導

球に託した約束

春の陽気が残る午後、美波は職員室の一角で、生徒指導担当の教師から深いため息混じりの報告を受けていた。

「美波先生……また剛志くんたち、来ていないんですよ。出席日数、このままだと本当にマズいです」

剛志、涼介、隼人——3人は揃って登校拒否を続けており、その日数はすでに留年の一歩手前だった。

担任として責任を痛感する美波は、放課後すぐに生徒たちの足取りを追い、街中で彼らの姿を見かけたという証言をもとに調査を始めた。目撃場所は、街の外れにある古びたゲームセンター。その裏手に回ると、無機質なアパートと並んで、ひときわ大きな邸宅が佇んでいた。

まさかと思いながらも呼び鈴を押すと、数秒ののちにドアが開いた。姿を現したのは、長身で鋭い目つきの剛志だった。

「……美波!?」

その声に呼ばれるように、奥のリビングから現れたのは、無表情ながらも視線に鋭さを宿した涼介と、やや気だるげな雰囲気の隼人。

「話があるの。3人とも、ちゃんと聞いて」

美波は、教師として、そして大人としての覚悟をもって彼らに向き合った。

登校を促す美波に対して、3人は薄く笑い合いながら、剛志のリビングへと誘導する。そこには、広い床面の中央に、プロ仕様のビリヤード台が鎮座していた。

「ここで勝負しようか、先生」

低く落ち着いた声で、剛志が言った。

「俺たちに勝てたら、明日から学校に行ってやる。……でも、負けたらどうする?」

涼介が腕を組んで美波に目を向ける。

「その場で、全部脱いでもらうってのはどう? 先生」

隼人がにやりと笑いながら囁いた。

その言葉に驚きと羞恥を覚えながらも、美波は逃げなかった。大学時代に彼氏とビリヤードを楽しんだ経験があった美波は、その台を見つめながら、かすかな自信と決意を胸に、その条件を飲んだのだ。

静寂の中、緑のラシャが光を吸い込み、ビリヤード台に向かって、教師と生徒の異様な勝負が幕を開けようとしていた。

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