玉突き更生指導
球に託した約束
春の陽気が残る午後、美波は職員室の一角で、生徒指導担当の教師から深いため息混じりの報告を受けていた。
「美波先生……また剛志くんたち、来ていないんですよ。出席日数、このままだと本当にマズいです」
剛志、涼介、隼人——3人は揃って登校拒否を続けており、その日数はすでに留年の一歩手前だった。
担任として責任を痛感する美波は、放課後すぐに生徒たちの足取りを追い、街中で彼らの姿を見かけたという証言をもとに調査を始めた。目撃場所は、街の外れにある古びたゲームセンター。その裏手に回ると、無機質なアパートと並んで、ひときわ大きな邸宅が佇んでいた。
まさかと思いながらも呼び鈴を押すと、数秒ののちにドアが開いた。姿を現したのは、長身で鋭い目つきの剛志だった。
「……美波!?」
その声に呼ばれるように、奥のリビングから現れたのは、無表情ながらも視線に鋭さを宿した涼介と、やや気だるげな雰囲気の隼人。
「話があるの。3人とも、ちゃんと聞いて」
美波は、教師として、そして大人としての覚悟をもって彼らに向き合った。
登校を促す美波に対して、3人は薄く笑い合いながら、剛志のリビングへと誘導する。そこには、広い床面の中央に、プロ仕様のビリヤード台が鎮座していた。
「ここで勝負しようか、先生」
低く落ち着いた声で、剛志が言った。
「俺たちに勝てたら、明日から学校に行ってやる。……でも、負けたらどうする?」
涼介が腕を組んで美波に目を向ける。
「その場で、全部脱いでもらうってのはどう? 先生」
隼人がにやりと笑いながら囁いた。
その言葉に驚きと羞恥を覚えながらも、美波は逃げなかった。大学時代に彼氏とビリヤードを楽しんだ経験があった美波は、その台を見つめながら、かすかな自信と決意を胸に、その条件を飲んだのだ。
静寂の中、緑のラシャが光を吸い込み、ビリヤード台に向かって、教師と生徒の異様な勝負が幕を開けようとしていた。
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