ago May/11/2025 17:55

05:早朝の駐車場 03

 窓の向こうで旅客機の轟音が遠く唸るたびに、恭平とななみは現実を思い出しそうになったが――そのたび、唇を重ねることで、それを拒絶した。

「恭平さん……っ、こんな……近すぎて……」
 ななみは彼の膝の上、震える吐息をこぼしながら身を寄せた。
 胸元は乱れ、恭平の胸板に触れるたび、肌がぴたりと張り付く。

「恥ずかしい……」と呟きながら、ななみは恭平から目を逸らせなかった。
 その視線の奥には、羞恥よりも――渇きの色が濃かった。

「その顔、反則だよ……」
 恭平の声は掠れ、低く、喉の奥で熱を抱えていた。
 彼の手が彼女の腰を支え、そのまま自分の芯へと導いていく。
 それに応じるように、ななみの腰がわずかに沈む。

 触れた。
 熱が、わたしの奥に触れた。

「ん……っ、熱い……♡」
 ななみの声はかすれ、身体が小さく跳ねる。

 恭平は一切目を逸らさず、ななみの全てを見つめていた。
 彼女の瞳、唇、首筋、揺れる胸、そして……躊躇いながらも、自分を受け入れようとする腰の動き。

「ゆっくりでいいからね……」

 その囁きに応え、ななみは震える指先で彼の肩を掴み、ひと息に腰を下ろす。
 身体が、開かれる。
 熱が、じわりと内側に広がっていく。
 言葉よりも、うめき声が先に零れた。

「あ……ぁ……っ、入って……きてる……♡」

 恭平の熱が、深く、ゆっくりと押し広げていく。
 ななみの内側はそれを拒むどころか、貪るように絡みつく。
 自分でも恐ろしくなるほど、彼を欲している。

「……ダメ、こんな……全部、入っちゃ……っ♡」

 肩に食い込む爪が、彼女の理性の名残だった。
 腰が、ゆっくりと上下するたびに、ななみの身体は熱を増していった。
 恭平の芯が、すでに自分の奥の奥にあるのに――まだ、足りない。もっと欲しい、と身体の奥が勝手に震える。

 わたし、どうして……。
 こんな場所で。こんな姿で。
 なのに――どうして、こんなにも、気持ちいいの……。

「……っ、ん……あぁ……」

 動きが自然と速くなっていく。腰の動きが、恭平のリズムにぴたりと合わさっていくのがわかる。
 自分でも気づかないうちに、ななみの身体が“覚えて”しまっていた。彼の形、彼の熱、彼の奥の届き方を。

「……上手くなってるいよ、ななみ」

 恭平の囁きは甘く、熱を孕んでいるのに優しい。

「……俺の動き、身体が覚えてきた?」

 ななみの頬が羞恥に熱を持ち、視線が泳ぐ。

「……ちがっ……あっ……んっ、やだ……そんなこと……」

 でも、それは嘘だった。
 彼の指が腰に添えられた瞬間、無意識に腰が跳ね上がる。
 自分の中のどこを押されると、どう感じるか――すでに、恭平の指先のほうがよく知っている。

(……ダメなのに♡ こんなの、知られちゃいけないのに……っ♡)

 熱が深く押し寄せるたびに、ななみの中の何かが崩れていった。
 恭平の芯が、彼女の内奥にじわじわと満ちていくたびに、理性が剥がれていく。

「ん……っ、ああ……やだ、こんな……」

 涙に似た潤みが、ななみの瞳に浮かぶ。
 それは快楽か、羞恥か、あるいはその両方だった。
 恭平はその涙を指で拭った。だが、口元には笑みを浮かべたまま――。

「もしさ」

 彼の声が、不意に落ち着いた低さを帯びる。

「今日、旦那さんが……帰ってきてたら、どうする?」

 ななみの背筋がぞくりと強張った。

「え……?」

 恭平は笑わない。目を細めて、じっとななみを見ている。

「たとえば、同じ空港にいたとしたら。駐車場で、近くにいたとしたら」

 ななみの表情がみるみる青ざめる。

「……そんな、やだ……そんなこと言わないでください……」

 声は震え、否定しながらも、彼女の腰はまだ恭平の上にあり、その腕は恭平の身体を抱きしめてしまっている。

「……わたし、隆を……愛してる」

 絞り出すように言葉を吐く。

「誰よりも、ずっと。……それだけは、ほんとだから……っ」

 恭平はその言葉を静かに聞いた。だが、次の瞬間、鋭く――断ち切るように言い放つ。

「でも、身体は俺を欲しがってるよね?」
「あぁっ♡」

 ななみの口が、何かを返そうとして開いた。
 けれど、言葉にならない。
 腰が動いていた。否応なく、熱を求めて、また沈んでいた。

「――あっ、あ……やだ……やだ……♡」

 恭平の瞳は冷静なまま、ななみの動きを見つめていた。

「俺の角度、奥、形、動き。……全てを覚えていてくれているよね?」

 ななみの手が彼の肩に縋りつく。
 快感と罪悪感がせめぎ合い、視界が涙に滲む。

「ちが……ちがうの、でも……っ♡」
「違わないよ」
「ふあぁぁぁ……っ♡」

 恭平が腰を引き寄せ、さらに奥へと迎え入れる。
 快感が電流のように走り、ななみの脚が震えた。

「ななみが愛してるのは隆君――それはまごうことなき事実だ。でも」
「ななみがイってる時、頭の中にいるのは……誰だろうね?」

「や……ぁ……っ♡」

身体は、嘘をつけない。
心は誰かを守ろうとしても、肉は正直すぎた。
理性の抗議は、快楽の波に呑まれて、無力に消えていく。

曇った車窓の外には、現実がある。
だがこの密室の中では――
彼女はすでに、自分の意志で“裏切り”を選び取っていた。

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