ago Jun/10/2025 17:55

11:罪の先04

「どうなさいました? そんなに苦しそうでは、私が心配になってしまいます」
 ななみはそう囁きながら、恭平の顔を両手で包み込むように持ち上げた。細い指先が顎のラインを辿り、首筋へと滑り落ちる。清潔な白手袋越しに伝わる彼女の体温が、恭平の肌にじわりと浸透していく。
 彼の瞳には、もはや制御不能な炎が宿っていた。理性という名の堤防が、一つ、また一つと決壊していく。
「ななみ……」
 恭平の喉から絞り出された声は、もはや人間のものとは思えないほど獣めいていた。次の瞬間、彼の腕が稲妻のように伸び、ななみの細い腰を力強く引き寄せる。
「あっ……患者さん、それは治療の範囲を超えています!」
 予想外の力にバランスを崩したななみの身体が、恭平の胸の上に崩れ落ちる。純白のナース服が美しく乱れ、隠されていた白いレースが一瞬だけ恭平の視界を掠めた。
 ななみの表情に戸惑いが走るが、すぐに医療従事者としての威厳を取り戻そうとする。
「患者さん……これは医療倫理に反する行為です。すぐにお離しください」
 しかし、その声には先ほどまでの余裕が失われていた。恭平の顔が彼女の首筋に埋められ、熱い吐息が白い肌を焦がしていく。
「……もう限界だ。これ以上焦らすなら」
 低く響く声は、まるで地の底から響いてくるようだった。恭平の逞しい手が、乱れたナース服の隙間から滑り込み、白いストッキングの上からななみの太腿を捉える。
「やめてください……院長に報告いたします……!」
 ななみは必死に抵抗を示すが、その声には微かな震えが混じっていた。恭平を拒絶する言葉とは裏腹に、彼女の身体は別の反応を示し始めている。
 激しい攻防の中で、二人の間には言葉にされない暗黙の理解が流れていた。これは支配と服従の物語ではない——互いを求め合う魂の、最も危険で美しい踊りなのだ。

 恭平はななみをより深くベッドへと導き、柔らかなシーツの上に二人の重なり合った影が落ちる。純白のナース服が、まるで散りゆく花弁のように美しく乱れていく。
 静寂の中に響くのは、二つの鼓動が重なり合う音。それはまるで古い教会の鐘楼で響く、神聖で背徳的な調べのようだった。ベッドが奏でる微かな軋みが、その旋律に加わる。
「……お願いです、患者さん……これは治療の一線を越えています……」
 ななみの声が震えている。しかしその言葉は、もはや真の拒絶ではなく、自らの内に芽生えた禁断の感情への戸惑いを表していた。
 恭平からの言葉はない。ただ彼の息遣いが深く、原始的なものへと変化していくのが、空気の振動で伝わってくる。
 視界の端で、純白のナース服の裾が波のように揺れる。シーツが奏でる摩擦音は、まるで秘密の儀式を告げる太鼓のリズムのようだった。その布の動きは、見えない情熱の嵐を雄弁に物語っている。
「あ……んっ……そんな……診察では、そこは……」
 ななみの声が感情の激流に飲み込まれ、途切れがちになる。それは理性の言葉ではなく、魂の奥底から湧き上がる本能の歌だった。
 部屋に満ちるのは、二人の体温が混じり合った甘い香り。それは嗅覚を通して、この密室で繰り広げられる秘密の物語を告げていた。
 白いストッキングに包まれたななみの足先が、ベッドの縁からわずかに覗く。その足は、まるで夢の中を漂うように、力なく宙に舞っている。繊細なレースが照明を受けて、幻想的に煌めいた。
「……もう……看護師には治せない症状ですね……」
 ななみの言葉は、降伏とも、新たな始まりとも取れる響きを帯びていた。その声の震えが、恭平の内なる野生をさらに覚醒させる。
 恭平の低い唸りとななみの息遣いが、もはや一つの旋律となって部屋に響く。時間は歪み、現実と夢の境界が曖昧になっていく。
 そして室内には、二人だけが知る禁断の秘密が、静かに、しかし確実に育まれていった……

 シャツのボタンが外れる、小さな金属音。
「患者さん……これは本当に必要な治療なのでしょうか……?」
 ななみの声は震えていたが、その手は恭平のシャツを静かに肩から滑り落とそうとしていた。
「君が始めた診察だろう……最後まで責任を取ってくれ」
 恭平の声は低く、熱を帯びている。彼の手が、ななみのナース服の白いボタンに触れた。
「あ……でも、これは医療行為の範囲を……」
 ブロード生地が衣擦れを立てる音。純白のナース服が、ゆっくりと彼女の肩から滑り落ちていく気配。
「看護師さん……君の方こそ、随分と熱くなってきているじゃないか」
 恭平の指先が、ななみの首筋を撫でる。彼女の吐息が、かすかに乱れ始めた。
「そ、そんなことは……んっ……」
 白いストッキングが床に落ちる、かすかな音。続いて、繊細なレースの下着が音もなく脱がされていく気配。
「患者さん……私、こんなこと……看護師として……」
「今の君は、看護師じゃない。一人の女性だ」
 恭平の言葉に、ななみの息遣いがさらに荒くなる。シーツが軋む音が、次第に規則的なリズムを刻み始めた。
「あ……んん……そんなところを触られたら……私……」
「どうなる?」
「わからなく……なって……しまいます……」
 ななみの声は、もはや囁きに近い。彼女の理性が、快感という名の波に呑まれていく。
 ベッドが奏でる軋みが、次第に激しくなっていく。二人の体温が上がり、室内の空気が湿気を帯び始めた。
「ななみ……」
「はい……患者さん……」
「もう患者なんて呼ぶな……」
「でも……んあっ……私、看護師ですから……」
 彼女の声に混じる、抑えきれない吐息。白い肌が汗ばんでいく気配が、空気の湿度の変化で感じられた。
「君は今、何も着ていない……」
「は、恥ずかしい……でも……あああっ♡」
 シーツが波打つ音。二人の身体が重なり合い、離れ、また重なる。その度に、ななみの声が高くなっていく。
「あ……あああ……そこは……だめ……♡」
「ダメではないよね?」
「……はい……あっ……♡」
 ななみの正直な告白に、恭平の息遣いも荒くなる。
「もっと……もっと奥まで……♡」
「ななみ……!」
「お願いします……もう我慢できません……」
 ベッドの軋みが最高潮に達し、ななみの声も限界を超えた高さに。
「あああああ……っ! 患者さん……っ!」
 そして、突然の静寂。
 荒い息遣いだけが、部屋に響いている。
「……ななみ」
「はい……」
「ありがとう」
「私こそ……こんな看護師で……すみません……」
 二人の笑い声が、静かに響いた。

 やがて、情熱の嵐が過ぎ去った後、部屋には深い充足感に満ちた静寂が戻る。
 床に散らばった白いナース服、もつれたシーツ、そして空気中に漂う二人の体温の余韻——それらすべてが、今しがた繰り広げられた秘密の治療を静かに証言していた。

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