はる Jun/20/2025 20:50

紗耶の初めて 第24話

第24話 獣

それはもう、理性の延長ではなかった。
紗耶の動きには、目的も、ゴールもなかった。
ただ──「亮が中にいる」という事実だけで、彼女の身体は勝手に動き続けた。
微かな音。
「……ずぷ……っ、ぷちゅ……、ずぅ……んっ……」
膣が、内側から亮のものを舐めるように締め付けるたび、水音が密着の奥から溢れた。
膣内の襞が、吸い付き、絡まり、離れる。
それが繰り返されるごとに、紗耶の腰の動きはさらに乱れた。
「……はっ……はっ、……ふっ、ぁ……ふぁあっ……」
呼吸が、喉ではなく、肺の奥から絞り出される。
背中が反り、肩甲骨が浮き、二の腕が震える。
動いているのは腰だけのはずなのに、全身が一斉に命令を失い、ただ“快楽を受ける器官”として解放されていた。
「ぉおっ……、っぉ……あっ……あがっ、………、がっ、……ぎぃ……っ、ぉおぉ……っ」
呻きが言葉を忘れ、獣の声帯を得る。
舌が口腔内で暴れ、唾液があふれ、頬をつたって顎に落ちる。
目の焦点は定まらず、頬は真っ赤に染まりきっていた。
亮の胸に両手を置いたまま、肩を大きく上下させる紗耶。
だが、動きにはまったくリズムがなかった。
パンッ、パンッ──と規則的に鳴っていた打音は、
いつしかぐちゃ、ずちゅっ、ぐちゅっ……という、湿った音に変わっていた。
動きの意味はすでに失われていた。
彼女は、“ただ気持ちいいから動いてしまう”──それだけ。
「……ぁ、あ……ぁ……ん、  ん……っ……!」
膣が、快感の波に同期するように、亮のペニスを締め上げていた。
そして、感覚はさらに拡張していった。
もはや、ペニスそのものに限らない。
亮の体温、皮膚の匂い、声の響き、指の位置、筋肉の張り、骨格の形状。
そのすべてが、性感帯として紗耶の神経に突き刺さってくる。
「……んぁ……っ、くぅ……っ、んっんぅ……っ」
吐息が詰まり、痙攣が増す。
膣の奥が、まるで子宮ごと口を開けて快感を喰らっているようだった。
「先輩……っ、すご……っ、締まり……」
亮の声が震える。
それでも紗耶は耳に届いているのかどうか、わからない。
彼の言葉に頷くでもなく、反応するでもなく、ただ自分の快楽だけを信じて揺れていた。
指先は硬直し、爪が亮の胸板に喰い込み、皮膚がわずかに赤くなる。
頸筋が張り、顎が開いたまま戻らない。
「……ぁっ……っ、ぅう……っ、う、…ぅぅぉぉぉお……っ……」
涙もよだれも、すべての液体が頬と顎に絡まり、髪に吸われる。
それでも、紗耶の腰は止まらない。
もはや、快感というより“生存”だった。
この感覚がなければ死ぬ。
この熱がなければ消える。
亮がいる場所だけが、今の紗耶の命だった。
「……すごい……先輩、ほんとに……すごい……っ」
亮がそう呟いた時、紗耶の身体が再び大きく跳ねた。
「ひゃっ、……くぅ……んっ……んあっ……!」
痙攣。
それは制御の末期だった。
神経は断続的なスパークを起こし、膣がまた、締まり上げる。
そして──
「……ぷっ……、ぷしゅる……、ぷしゅぅ……っ」
静かな、でも力強い、潮の噴出。
粘度のある愛液が、膣奥から、亮の根元へと絡まり落ちていく。
紗耶の顔は、目が虚ろに開いたまま、頬を紅潮させ、口元は幸福に崩れていた。
「りょ……く……っ……、……す………………き……」
最後に、どこかへ届くことのない微かな声が、喉から漏れた。
人ではない何かになった紗耶は、快楽という名の生命維持装置に、すべてを預けていた。

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