永遠#1

僕は14歳のクリスマスに母と妹を亡くした。それだけの事は世界にとって大した事ではなく学校や父の仕事など何事も無かったかのような日常がただそこに残されていた。喪に服することを躊躇って僕はひたすら取り繕って笑った。冬休みだということもあり友人達とボウリングにも出掛けた。何事も無かったように振る舞う、そうでないとやりきれなかった。ただ、町中の人達が集まってくれた葬式の途中で僕はえぐえぐ泣いた。みんな哀れむような目で見ていた気がする。心に穴が空いたような、脳に空洞が生まれたような喪失感。それから僕は失くしたそれを埋めるために更に多くを失くすことになった。それでも足掻きもがいた。気付けば僕は完璧なもの、その輝きが永遠に近いものを酷く渇望していた。いつか必ず迎える終わりの事ばかり考えて幸せを遠ざけていた。その旅はひたすらに孤独だった。理解してくれる人なんて欲しいとも思わなかった。ただ天才と呼ばれる人になりたくてひたすら行動した。天才になって名作を作りそれが100年先にも残ればいい、それで全部チャラだ。そんな風に考えて17歳の時、高校を辞めた。そして、ギターとノートパソコンを持って原付の免許も持っていなかった僕は自転車で東京を目指した。#1 (続く)

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