Watercolor

数年前の夏休み、僕は美術予備校の夏季講習に参加していた。デッサンもままならなかった僕はまず丸を描くことからやらされたのだが最初の一週間のうちからやらかしてしまった。徹夜で"水彩の惑星"という小説を書いていたため、退屈な静物画デッサンの途中で居眠りしてしまったのだ。すぐさま塾長に個室に呼び出されて説教されるかと思いきやそんな事はなくやんわりと「君はどんな人なの?」ということを聞かれた。塾長はなんでも受験戦争時代の真っ只中で多摩美に入った人間でありペインターとして何年も作品を作り続けたが才能は実らず後進の育成に励むことにしたのだとか。僕はその質問に答えられなかった。僕の当時やっていたことと言えば大きめのスケッチブックにキャラクターの設定や立ち絵を描いて妄想に耽っていただけだった。それを塾長に見せると「漫画を描いてみたら?」と言われた。それから僕は一夏掛けて元々描いていた小説を漫画にする作業を始めた。それはとても稚拙で下らなく取るに足らない駄作だったのだが、それを持って上京し僕は東京の専門学校の入学資格を得ることが出来た。何がやりたいのか?それらまだ分からない。だから唯々出来ることをやっている。とりあえず文章を書く事はできる。それだけだ。 BGM 視界良好 - スカート

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