●いろかにほへと6●

絶頂したばかりでぼんやりした鬼灯の視界に、白澤の至って真面目な顔があり、彼が自分の足の膝頭に手を当ててゆっくりと左右に開き始める。



「あっ・・・見るなっ・・・」



太腿の奥を覗かれているのだと理解すると、鬼灯はたるんだ声で抗議したが、脚には閉じる力すら加わっていない。
簡単に両足は開脚され、つけている下着が証明の下で露わにされてしまう。



男の身体でも、下着姿を見られることは恥ずかしさを伴う。今は女の身体をしていて、さらに絶頂したばかりだ。恐らく、そこは鬼灯の予想通りになってしまっているだろう。



「うわ・・・すごい濡れてるよ、お前・・・」



女になった自分の身体は、普通の女性に比べてひどく濡れやすいと、鬼灯は自分でもわかっていた。いつもなら、そんな羞恥の源泉を覗かれれば膝蹴りの一つでも見舞ってやるところだが、今はそこまで反抗的な気分も、力もわいてこない。
ただ、羞恥心とトクトクと高鳴る胸の感覚があるだけだ。



「やっぱり、フンドシしてる・・・女の子になったら、ちゃんとした下着つけないとね。でも、その前に・・・」



白澤は鬼灯の白い足のひざ裏に手をかけ、そのまま強引に左右へ開いた。



「うあっ!な、何っ・・・」



鬼灯の心臓が切なく跳ね上がり、身体がこの先の展開を渇望する。
白澤がズボンをくつろげる様を見て、このまま抱かれるのだ、とぼんやりと思った直後、思い出した。



「だっ!だめです!」



鬼灯は両足を瞬時に閉じ、白澤をその美脚で突き飛ばした。



「あがっ!」



吹っ飛んだ白澤はしばらく空中を飛行した。地面についても、五回転ほど後転を繰り返し、煙と共にうつ伏せに撃沈した。



「はぁ・・・危なかった・・・」



両足を再び黒い着物の奥へ隠しながら、体勢を立て直して椅子に座りなおす。
鬼灯がこの女の身体の間は、一人の人物の精しか受けられないのだ。



「うっ・・・」



両足の間に生ぬるい淫液が伝い、もう少しでさらに得られたであろう快感を逃したことを、まるで身体が抗議しているかのようだ。



(しっかりしないと・・・この身体、快楽に弱すぎです・・・)



慌てて懐紙で蜜液を拭きとり、鬼灯はまた心を硬くする。
肌蹴っぱなしだった胸元の襟も正し、ふう、と大きくため息をつく。



「何すんだよ・・・いきなり・・・・・」



額を摩擦熱で真っ赤にした白澤が、恨めしそうな顔でいきなり鬼灯の横に出る。



「・・・ビックリするじゃないですか。まともな顔で出てきてください」



「誰のせいでこうなったんだよ!」



そう言うと白澤は再び鬼灯の上にのしかかり、正したばかりの襟元を掴んで美乳を零れさせた。



「や、やめなさい!貴方とはできないんです!うっ!んんんっ!」



つつましやかな胸の桜色を指でつままれ、快感の痺れが背中を走り、先ほどの決意も簡単に揺れてしまう。



「なんでできないんだよ!理由を言え!理由を!」



「うっ・・・あぁぁっ!言う、言いますから、その指を、離しなさいっ!んうぅっ!」



そのまま指で柔らかくこね回されて、連続して甘やかな電流が身体中を走る。このまま続けられれば抱かれる身体になってしまう、と危惧し、今度は蹴り上げようとしたところで白澤はようやく悪戯を止めた。



「はぁ、はぁ、さ、触るな、バカっ・・・」



「バカってなんだよ。離してやったんだから、理由を言えよっ」



白澤に迫られ、鬼灯は再びため息を吐き、フイと正面の白澤から視線をそらせて言い始めた。



「最近・・・いろんな者たちに身体に干渉されて、気の巡りがおかしくなっているんです・・・。それで、毘那夜迦王が、神気を総入れ替えすると言い出して、私をより精を受け入れやすい身体に・・・」



王の名前を言われ、白澤は思い出していた。
鬼灯が鬼神になったのは、数々の神と交わり、仕上げに毘那夜迦王、別名大聖歓喜天から神気を受けるたからだ。
その王は、顔は鬼灯とそっくりだが、目鼻のパーツが大きく、身体も鬼灯より一回りぐらい大きくて筋肉質なので、白澤は密かに
「ムキムキ鬼灯」と呼んでいた。



「なので、王以外の精を受けてしまうと、身体のバランスが乱れてしまうんです。そうなると、気の流れがますます不安定になって、体調の悪化につながる。それに・・・」



そこまで言って、鬼灯はこれまでになく脱力したため息を吐いた。



「王以外の精を受けると、妊娠する可能性があるらしくて・・・」



それを聞き、白澤が驚きの表情を見せた。


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