Chaos Gate 2019/08/13 22:15

コラム:敗北Hはゲームをつまらなくするか?


イラスト:佐野俊英が、あなたの専用原画マンになります(GJ0243576)

◆ 注意書き

本文章は著者の経験を元に、個人的な考えを綴ったものです。
公の調査やデータに基づいていませんので、鵜呑みにしないようご注意ください。

◆ もくじ

1. 敗北Hはゲームをつまらなくするか?
2.「敗北Hは面倒なだけでつまらない」のか?
3.「敗北Hはゲームとしておかしい」のか?
4. まとめ

1.敗北Hはゲームをつまらなくするか?

女性キャラを主人公とした成人向けロールプレイングゲームは、今やアダルト同人ゲームでのスタンダードとなった。そんな「女主人公モノ」のHシーンの定番の一つに「敗北H」がある。

「敗北H」とは、戦いに負けたヒロインが、敵に弄ばれ、穢されるHシチュエーションだ。一般ゲームでは描かれない「敗北のそのあと」には、背徳的な魅力があり、人気も根強い。

しかし、そんな敗北Hにも否定的な意見はある。

「敗北Hは面倒なだけでつまらない」
「敗北Hはゲームとしておかしい」

つまりは「敗北Hはゲームをつまらなくしている」とする主張だ。
エロRPGを多く遊んできた人なら、同意する人も多いのではないだろうか。
私もこの意見が「間違い」とは思わない。しかし、「その通りだ」とも感じない。

本当に「敗北Hはゲームをつまらなくしている」のだろうか?
この疑問に答えを出すため、まずはその主張をひも解いてみよう。

2.「敗北Hは面倒なだけでつまらない」のか?

まずは「敗北Hは面倒なだけでつまらない」という意見から見てみよう。

「敗北Hは面倒」とは「敗北Hシーンの回収が面倒」という意味だ。
アダルトゲームにおいてHシーンの回収は、ゲームを攻略するのと同義。
回想シーンを埋めずして、ゲームを完全攻略したとは言えない。

「ゲームにあえて負ける」のは簡単だが、作業的で退屈だ。
敗北Hが多数ある作品なら、その作業を何度も繰り返すハメになる。
「面倒」と言われるのも仕方がない。


しかし、クリエイターも馬鹿ではない。
この「Hシーン回収が面倒くさい」問題には、様々な対策が講じられてきた。
いくつか例を挙げてみよう。


敗北Hが見やすいように「自爆アイテム」を実装

任意のタイミングで敗北するための「自爆アイテム」を実装。
「負けるための作業」をプレイヤーにさせないようにした。

「敗北Hのある敵・イベント」を明示

「敗北Hのある敵・イベント」をプレイヤーに明示。
「取り逃し」や「敗北イベント探し」を防ぐ配慮がされた。

「敗北Hのある敵・イベント」に勝利しても回想登録

「敗北Hのある敵・イベント」勝利時、「負けた場合」の回想を登録。
Hシーン回収のために、わざと負け直す作業をなくした。

ゲームクリア時に任意で「回想の全開放」

ゲームクリア時に「回想の全開放」を任意に選択可能とした。
※ 任意でない場合もあったが「遊び直したいプレイヤー」には不評だった。


やや場当たり的な対応策にも思えるが、
これらの対策で、プレイヤーは「面倒な作業」を強いられなくなった。
「敗北Hは面倒」を否定するには十分だろう。

「敗北Hは面倒なだけでつまらない」のか?
  → 適切な対策を講じれば「敗北Hは面倒ではない」

3.「敗北Hはゲームとしておかしい」のか?

次に「敗北Hはゲームとしておかしい」に目を向けよう。「ゲームとしておかしい」はゲーム性の是非を問うものだ。
私はこれを「ゲームサイクルの違和感」と捉えている。
つまり「ゲームサイクルにおいて、敗北Hに違和感がある」とする意見だ。

「障害と報酬のゲームサイクル」

ゲームサイクルとは遊びの根幹。ゲームの流れと言っても良い。
一般的なゲームサイクルは「障害と報酬」の繰り返しが主体だ。

障害 → 報酬
 ↑     ↓
報酬 ← 障害

※「報酬」は「次の障害を乗り越える助け」となる
※ 一般的には「成長」も含めたサイクルとされる

プレイヤーは「障害」を乗り越えて「報酬」を獲得。「より大きな障害」に挑む。
そして「より大きい報酬」を獲得して、さらに大きな障害に挑んでいく。
このサイクルが、プレイヤーにゲームを遊ばせ続ける。

では、ゲームサイクルにとって「敗北H」とはなんだろう?
「報酬」だろうか? それとも「障害」だろうか?

実はどちらでもない。
敗北Hは「演出」であって、ゲームサイクルに関与しない。
だから、本来 「敗北Hに違和感などない」 はずなのだ。

「敗北して強くなる」ゲームデザイン

しかし、いくつかの作品では、敗北Hは「報酬」として機能している。
その最たる例が「敗北して強くなる」というゲームデザインだ。

主人公はなんらかの事情で、性行為などから力を得られる。
そのため、敵に負けて手酷く犯されても、その分パワーアップする。

この仕組みは、ゲーム性を重視しないアダルトゲームでは受け入れやすかった。
ゲームが不得手な人には救済措置。真面目にプレイする余地もある。
「難しくて最後まで遊べない」より「簡単でも、最後まで遊べる」方が良い。

しかし「障害と報酬のゲームサイクル」において、この仕組みはおかしい。
「障害」に躓いたのに「報酬」を得る。これでは「障害」を乗り越えるモチベーションが沸かない。

歪なサイクルはゲーム全体を作業的にする。
そうしたゲームを指して「敗北Hはゲームとしておかしい」という言葉が出た。
だから、この指摘は「敗北H全般」を指した言葉ではない。


「敗北Hはゲームとしておかしい」という意見は「敗北Hが報酬」として機能しているゲームへの言及だった。ならば、答えはもう出ている。

「敗北Hはゲームとしておかしい」のか?
  → 敗北Hが報酬でない限り「敗北Hはゲームとしておかしくない」

4.まとめ

「敗北Hは面倒なだけでつまらない」
  → 「敗北Hの明示」や「勝利時も回想登録」など
    適切な対策を講じれば「敗北Hは面倒ではない」

「敗北Hはゲームとしておかしい」
  → 「敗北H」が「報酬」にならない限り、この主張は当てはまらない。
    「敗北Hはゲームとしておかしくない」

敗北Hはゲームをつまらなくするか?

結論を言おう。

「敗北Hが報酬」であれば、それはゲームをつまらなくする

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