チェーンライド 2018/05/12 10:00

姫騎士隊長洗脳改造 第二章

第二章 蝕む媚薬

 ハンドラ大陸の南西に位置するフェジタリア連合王国。建国二百五十年を越える歴史を持ち、ハンドラ三大国のひとつと称されるほど、大きな領土を抱えている。
 そのフェジタリアには、王都フェリナスルに隣接する巨大な繁華街、ラビオスがあった。様々なマーケットが集まり、国内外から多くの人々が買い物に訪れる活気のある街だ。
 しかし、夜になるとラビオスはその貌を一変させる。大陸随一と言われる色街になるのだ。多くの娼館が店を構え、男たちに一夜限りの快楽を提供している。
 その稼ぎは莫大で、国の税収の二割はこの街が生み出していると言われている。フェジタリアにとって、ラビオスはなくてはならない存在だった。
 それゆえに国からは破格の扱いを受けていた。ラビオスは、独立国家に近いレベルの、強大な自治権を持っているのだ。
 ラビオスは、その自治権を盾にして、国の方針に逆らうことがある。半世紀ほど前に、国際的な流れに沿ってフェジタリアが批准した奴○禁止条約を無視したのが、その最たる例だ。
 ラビオスの中では、娼婦となる奴○少女の取引が、公然と行われた。国も、税収が減るのを恐れて事実上黙認するしかなかった。
 しかし、いまの国王、アロザール・エルバレッタ・イニシアが即位して状況が一変する。国際的に非難されていたラビオスの奴○取引を、完全禁止としたのだ。
 ラビオスの自治評議会は激しく反発したが、本気になった国にはかなわない。奴○ブローカーは追放され、不本意に娼館で働かされていた奴○少女は解放された。
 だが、これでめでたしめでたしとはならない。娼館の衰退により、ラビオスからの税収が激減したフェジタリアは、大不況に突入したのだ。特に地方の不景気は深刻で、娘を売って食いつなぐ家が増えた。
 結局、奴○売買は地下にもぐっただけで、なくなることはなかった。
 ただ、売られてきた少女を買っても、当局に訴え出られるとおしまいだ。そこで娼館は、女の肉体にいやらしい改造を加える、改造屋と呼ばれる魔導士に、精神の改造も依頼するようになった。
 精神を書き換えられて、偽の名前と記憶を与えられた娼婦は決して裏切らない。当局の捜査に対しても、自分の意志で娼婦になったと証言してくれる。娼館にとっては、完璧な存在だった。
 やがて、彼女たちは裏社会で一般的な存在になり、ドールと呼ばれるようになった。
 こうして、ドールという使い勝手のいい商品を手に入れた娼館は、当局に取り締まられることもなく、業績を回復させていった。国の税収も、全盛期の八割までは回復した。
 だが、その頃からドールの廃人化という現象が起きはじめた。多くの改造屋が、きちんとした精神改造の技術を持っていなかったせいだ。
 やがて問題が表面化し、国としても放っておけなくなったが、その対応はかなり消極的だった。奴○禁止を厳格化して税収を減らした苦い経験が、彼らの手足を縛りつけた。国王も、即位したばかりの頃と違って、理想だけでは国が回らないことを理解していた。
 場当たり的な対応しかしない国に対して、しびれを切らす者がいた。
 王位継承権の第一位にいる、国王のひとり娘、シエスタ・ベルダード・イニシア姫だった。
 彼女は、ドールを生み出す改造屋と、地下にもぐった奴○ブローカーを取り締まる組織、イノセンシアを立ちあげた。
 ただ、強い自治権を持つラビオスには、自警団という独自の警察機構がある。あらたに、国から警察組織的なものを受け入れたくないので、評議会は激しく抵抗した。
 アロザールが即位した頃なら、それでも強引にねじ込んだだろうが、いまはそうではない。多くの税をもたらしてくれるラビオスの要請を無視するわけにはいかなかった。
 結局、イノセンシアには多くの制限がつけられた。中でも、一番大きなものは、夜間の活動自粛だ。開放的な夜の色街に、取り締まりをする人間がうろつくのは困るという理由からだった。
 シエスタは反発したが、それを飲まないと組織の立ちあげは白紙になると言われて、最終的に受け入れた。どれだけ制限されたとしても、ないよりはマシだと思ったからだ。
 こうして、独立女子騎士団、イノセンシアが発足した。今から一年前のことだった。

 コンコンコン……
 背筋を正し、カレンは『団長室』と書かれている扉をノックした。
「失礼します……」
 数拍おいてから、扉を開けて入室する。
「あら、カレン、いらっしゃい」
 部屋中央のデスクに鎮座している、カレンよりも若く見える女性が、にこやかに対応した。
 彼女は、イノセンシア初代団長、アルティエ・フィアレス。
 国王アロザールの大きな後ろ盾となった忠臣フィアレス侯爵の孫娘。そして、彼女を団長に任命した幼なじみ、シエスタ姫もその隣にいた。
「あ、姫様……」
「昨日ぶりね、カレン」
「連日こちらにいらっしゃるとは……なにか、大きな案件が……?」
「ううん、そうじゃないの。二日続けてアルに用事があっただけ」
 団長デスクに座る同い年の幼なじみを愛称で呼び、くすっと微笑んだシエスタ。くったくのない笑顔は、年相応のかわいらしい少女そのもので、とても一国の将来を担う運命を背負っているようには見えない。
 そして、シエスタに拝み倒される形で、ここの団長に就いたのがアルティエだ。
 そのアルティエが、カレンに訊ねる。
「それで、どうしたのかしら?」
「あ、はい。実は、検問の際に我が隊の隊員が、市民の所持品を破損してしまったのですが……」
「もしかして、イエマ?」
「はい……」
「あはは、あの子、そそっかしいもんね」
「…………」
 姫様に指摘され、さらにくすくすと笑われてしまい、カレンは恐縮してしまう。
「それで、その方には、きちんと謝罪されましたか?」
 笑うシエスタの横で、アルティエが再びカレンに訊ねた。
「はい、それはもちろん。ただ、その壊した所持品が毒性魔導薬でして……」
「えっ? イエマは大丈夫だったのですか?」
「大丈夫です。その方に中和薬を調合してもらい、事なきを得ました」
「そうですか、安心しました」
「それで、破損した薬液と解毒処置にかかった分を……っ!?」
 瞬間、カレンの身体の芯がズキンとうずいた。
(えっ? こ、これは、まさか……)
「……かかった分を、どうされたのですか?」
 カレンの変化に気づくこともなく、アルティエは途切れた言葉の続きを求めた。
「え、ええと、ですね……我々で、負担すると、先方に……」
「ああ、そういうことですか。それで、市民の方にはもうお支払いを?」
「い、いえ……明日、申請してもらうことに……」
「わかりました。そのことは、きちんと経理の方に話をとおしておきます」
「――っ!」
(あ、ああ……そんな……また、媚薬が……?)
 昼間に味わったあの淫らな感覚が、ゆっくりと、しかし確実に湧きあがってきている。
「……どうしたの? カレン?」
 これまで、ふたりの会話を黙って聞いていたシエスタが、カレンの様子にきづいて訊ねた。
「な、なんでもありません……大丈夫です……」
「そうかなぁ……なんか、顔、赤くない? アルもそう思うでしょ?」
「そうね……たしかに……」
「っ……」
 ふたりにじっと覗きこまれて、カレンは思わず顔を逸らした。
(ふ、ふたりに気づかれるわけには……)
 気を強く持って耐えようとするカレンだが、美肉は熱を孕み、じゅくじゅくと粘っこい樹液を分泌しはじめる。
「やっぱり、少し普通ではないようですね」
「アルがそう言うんなら間違いないわ。ゆっくり休んだら?」
「い、いえ、しかし……」
「いいですよ、今日の任務時間はもうすぐ終わりますし……なにより、カレンは全然休んでませんから」
「――っ!」
 アルティエに反論しようと瞬間、さらに強烈なうずきが秘部を襲った。我慢しきれずに、カレンはすりすりと股をこすり合わせてしまう。
「だ、大丈夫? ホントに休んだ方がいいわ」
 シエスタもカレンの異変を直接感じ取り、諭しはじめた。
 そして、トドメと言わんばかりに――
「これは団長としての命令です、今日はもう休みなさい」
 アルティエはぴしゃりと命令した。
「わ、わかりました……」
 ツートップにそうまで言われて、返せる言葉はなかった。カレンは深々とお辞儀して、一歩さがる。
「そ、それでは、お言葉に甘えて、休ませて頂きます……」
「ご苦労様っ!」
「ご苦労様でした。しっかり、休んでくださいね」
 ふたりにねぎらいの言葉をもらったカレンは、もう一度深々と礼をして、部屋から出ていった。
「……彼女、がんばりすぎじゃない?」
 ふたりきりになると、シエスタは姫ではなくひとりの少女の顔に戻り、アルティエに話しかけた。
「そうなのよね……まあ、いろいろ責任を感じてるのでしょうけど……」
「責任って……あれのこと?」
「ええ……」
「突撃隊長として、十分役割を果たしたと思うんだけどなぁ……」
「私もそう思うのだけれど、やはり、自分のせいで相手を取り逃したという思いが強いみたいで……」
「うーん、カレンを責任から解放してあげるためには、あの男を捕まえるしかないということか……」
「ただ、捕まえようにもどこに潜伏してるのか、全然わからないまま半年が過ぎてしまったわ」
「というわけで、わたしたちは今できることをやるしかないのよ」
「……そうね」
 シエスタの言葉に、アルティエは静かに頷いた。

 ガチャっ、バタンっ!
 乱暴にドアを開閉したあと、自室に入ったカレンはすばやくイノセンシアの特殊装備をはずし、ベッドに身体を投げ出した。
「っ……くぅ……」
 ためらうことなく股間に手を這わせ、キンキンに膨らんだ肉芽をコリコリと刺激しはじめる。
「んんんっ、あっ、はぁっ……あっ、あんっ、ああっ、んあんっ!」
 ビクビクっと肩を震わせて、あられもない声をあげるカレン。昼間の時と違って、誰かの視線を気にする必要はない。
「あっ、あああっ、んっ、あはんっ……んっ、あうっ……あっ、ああんっ、んんっ……」
 大胆な指遣いでクリトリスをこすり、腰もくいくいといやらしく上下させる。カレンがこれほど淫らなオナニーに興じるのは、生まれてはじめてのことだ。
「あふっ、んむっ……んああああっ、いいっ……ああんっ、いいいっ……」
 自慰に耽っていると、昼間のイエマの姿が脳裏に浮かんだ。自然と同じポーズを取るように、足を大きく開いていく。
「ああっ、こんなっ……んっ、あんっ、恥ずかしいっ……でもっ、あっ、はぁっ……んんんっ、気持ちいいっ!」
 淫らなポーズを取ることで、より性感が昂ぶるのか、カレンのあえぎ声はさらに大きくなった。指の動きもどんどん激しくなり、とうとう熱くぬかるんだ粘膜へ中指を差し入れる。
「ひううううっ!」
 自分の指を熱くうずいた美肉で咥えこむと、カレンはビクビクと激しく全身を痙攣させた。そして、最初の強い刺激に慣れると、指をずぽずぽと出し入れしはじめる。
「んっ、ふっ……んあっ……ひんっ……あっ、あっ、あんっ、あはんっ!」
 指のピストンに合わせて、小刻みにあえぎ声を漏らすカレン。鍛えられた太腿も、ピクピクと淫らに痙攣している。
「ああっ、いいっ、んっ、いいっ……ああんっ、気持ちいいっ、気持ちいいっ、気持ちいいいいっ!」
 あふれる快楽をそのままあえぎに乗せて表現する。普段は凜としているその顔も、今はとろけて朱に染まっている。もう、限界が近そうな雰囲気だ。
「あっ、はあああっ……んふんっ、もうすぐっ……んああんっ、もうくるっ……ああっ、もうきちゃうっ!」
 きゅーんと背筋を突っ張らせ、カレンは間もなくアクメに達することをひとり告げる。
 そして――
「んあああああっ、もうイクっ、イクっ……ああああああああっ、イクうううぅっ!!」
 こらえることもなく、たまった欲望を解放するように、カレンは絶頂に達した。
「んんんっ……はっ……ぅ……っ……」
 時折ぴくっと身体を痙攣させながら、激烈な絶頂感を味わう。これほど深いエクスタシーを味わうのも生まれてはじめてのことだった。
「っ……んん……ふぁ……」
 頭の中は真っ白で、ふわふわと宙に浮いている感じ……
 気持ちよくて、ずっとこのままでいたいと願ってしまうが、それは叶わない。アクメによって呼吸がままならず、酸素が足りなくなってきた。
「んはっ……んんっ……ふあっ……はぁ……」
 口をぱくぱくとさせて、ぎこちない呼吸をはじめるカレン。次第に苦しさは和らぎ、絶頂感も薄らいでいく。
 普通なら、このまま落ち着きを取り戻すのだが――
「――っ!」
 ズキンと秘奥が再びうずきはじめた。
(ど、どうして……っ?)
 心の中で問いかけたが、その答えもカレンは知っている。
 そう、媚薬のせいだ。
 ティーノからもらった薬では中和しきれず、再び中枢神経を狂わせはじめたのだ。
「ああああぁ……」
 ティーノに自身の状況を正確に伝えなかったことが悔やまれる。だが、いくら悔やんでももう遅い。自分のせいで、解毒しきれなかったのだ。
「ああっ……中毒に、なるなんて……いや……あっ、んああんっ!」
 媚薬中毒者になってしまうという恐怖に震えながらも、湧きあがる淫欲には逆らえず、カレンは再びオナニーをはじめるのだった。

(しまった……)
 後悔したときにはもう遅かった。ティーノの喉元には、鋭い剣先が突きつけられていた。
「おとなしくしろっ! もう逃げられないぞっ!」
 ティーノに剣先をかざしたカレンが、強い語気でそう言い放った。
 たしかに、状況はそのとおりで、ティーノは完全に詰んでいた。
(くそ、せめて一瞬でも気を逸らせれば……)
 しかし、ヘタに動けば相手は躊躇なく、自分の喉を貫くに違いない。
 文字通り、万事休すだったが――
「ご主人様ぁっ! 逃げてくださいいいいいっ!!」
 イノセンシアの団員に保護されようとしていた、ティーノが最も寵愛していたドールが突然走り出し、ふたりの間に入ろうとする。
「――っ!?」
 とっさに、そちらへ視線を向けたカレン。その隙をティーノは見逃さない。
「っ!」
 かちっとスイッチを押した瞬間、ティーノの周りにボンと煙が発生する。
「えっ?」
 慌てて視線を戻したカレンだが、もう遅い。あっという間に煙が室内に充満し、ティーノの姿は見えなくなってしまった。
「逃がすなあっ! 絶対に確保するんだあああああぁっ!」
 カレンの絶叫が室内に響いて――
「……っ!」
 ティーノの視界は、真っ白な煙から、無骨な天井へと変わった。
「…………」
 今のが夢だとわかり、安堵するティーノ。しかし、すぐさま腹立たしくなる。
「ちっ……」
 今見た夢は半年前にティーノが体験した、現実の出来事なのだ。
 用心深く、摘発に対しては再三の注意を払っていたティーノが、そんな憂き目にあったのは、師匠の代から長年の顧客であった大臣が裏切ったからだ。
 その大臣は、不正蓄財が明るみに出て、更迭どころか投獄されかねない状況にあった。そこで、シエスタに司法取引を持ちかけたのだ。改造屋の情報を提供する代わりに、執行猶予をつけてもらえないかと。
 シエスタは大臣との取引に応じ、ティーノのアジトへ踏み込むことに成功した。だが、その後の展開は、さっきの夢のとおり、ギリギリのところで取り逃している。
 ティーノは、急襲された応接用のサブアジトを捨て、誰にも存在を明かしていないメインのアジトにこもった。当然、そこは大臣も知らない場所なので、イノセンシアも追い切れない。
 こうして、メインアジトに潜伏しながら、ティーノは復讐の計画を練った。
 そして半年経った今、ついに反撃ののろしをあげたのだ。
「ふぅ……」
 完全に目が覚めて、ティーノはひと息ついた。
 時計を見ると、ちょうど日付が変わる頃だ。
(……カレンのやつ、今頃寝られなくて困ってるだろうな)
 宿敵の惨状を思い、にやりと笑う。きっと、カレンは中毒患者のようにオナニーを続けているに違いない。
 実は、カレンに飲ませた中和薬は二層構造になっていて、中心部のカプセルに、強烈な媚薬がしこまれていたのだ。
 カプセルが胃液に溶かされ、媚薬の効き目が現れるのは夕方過ぎ。きっとそれからは、何度オナニーしても満たされないまま、カレンはもんもんとした時間を過ごしているだろう。
 たぶん、今日は一睡もできずにオナニーし続けるだろうとティーノは確信している。
(明日会いに行ったら、きっと目の下が真っ黒だぜ)
 オナニー疲れで憔悴しきったカレンの姿を想像すると、にやにや笑いがとまらなくなる。だが、そこからが勝負なのはティーノもわかっている。
(大丈夫、俺は完璧だ。明日はすべてうまくいく……)
 ベッドの上でひとり頷き、ティーノは明日の成功を確信した。

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