「本番なし」の分類に関する一考察
お疲れさまです\(^o^)/
今回の記事では、『「本番なし」の分類に関する一考察』と題しまして、ジャンルとしての「本番なし」をちょっとだけ深堀りし、個人的な考えをまとめてみようと思います。
私は以前の記事やX(Twitter)への投稿などで、ジャンルとしての「本番なし」について度々言及してきました。
冒頭では、その文脈で「本番なし」の現状について述べています。興味の無い方、時間の無い方は、目次から本題の『「本番なし」の分類図』までスキップしてください。
「本番なし」の現状と一般的な理解度
現時点の同人界隈において、「本番なし」は比較的マイナーなジャンルです。
一般には「成人向け=本番あり」という観念すらあるように感じられ、「本番はない」という情報がそれ自体を好む人向けではなく、本番描写を当たり前に求める人への注意喚起として明示されているようなケースも見られます。
そして、先日DLsiteで行われた公式ジャンルリクエストキャンペーンでは、様々な要素から「本番なし」が有力候補とされながら、「メ○ガキ」や「乳首責め」などに抑えられて落選の憂き目に遭ってしまいました。
「本番なし」作品への需要が一定数ある一方で、どこかジャンルとして確立する決め手に欠け、一般的な存在には成り切れていない……というのが、率直な現状なのではないでしょうか。
この「決め手に欠ける」という部分。私は、Xを見ているとたまに見掛ける、以下のような意見にもよく表れているのではないかと思っています。
「どこからどこまでが本番なしなの?」
「定義がよく分からない。」
……「本番なし」好きの皆さまなら、一度は目にしたことのあるのではないでしょうか。
いずれにしろ、一般的にはこのように、『「本番なし」って何なの?』と、そこから疑問符を持たれてしまっている。即ち、「本番なし」という字面を読んだ人の解釈が一意に定まっていない。ここに大きな問題点があるのではないかと考える訳です。
「本番なし」を広めるために
それならば、作り手側で「本番なし」とは何ぞやというのを押し出し、一般的な理解度の向上を図ろう!
……とはいかないのが、この問題の難しいところ。
こちらは、昨日投稿された他サークルさんのポストなのですが……
https://twitter.com/kuyan_yanahashi/status/1710186287205073262?t=2lYKMkhoKV0tVsCOMXuWjg&s=19
https://twitter.com/kushi_mote/status/1710223028444098878?t=GUphKH8s1JgcrD-8GgsjOw&s=19
このように、作り手側としても解釈やスタンスは十人十色なのです。
しかし、これは「本番なし」というワードが具体性を持たない概念的なものである以上、どうしようもありません。
「本番なし」とはこういうことだ!
と、誰にも言い切ることが出来ない。
個人的には、これが先述の公式ジャンル化企画で「本番なし」が落選した一因なのではないかとも思っています。
そこで私は考えました。
まずは作り手である我々が、「本番なし」にはどういう描写・表現が内包されるのか、「本番なし」とはどういうのものなのか、その整理をするべきなのではないだろうか。
もちろん、『これは「本番なし」、あれは「本番なし」ではない』……というように、特定の描写・表現・作品にラベルを付けていくというような主旨ではありません。
あくまで傾向として、「本番なし」というジャンルはどのように分けられるのかを私個人の主観で分類し、皆さまにお示ししてみようと思います。
「本番なし」の分類図
さて、ここからが本題です。
繰り返しますが、これは私個人の主観による分類。これを見て、皆さまの「本番なし」観はどれに近いか、あるいはそもそも図とは違う分類が出来るのではないか……等々について、考える材料としていただければ幸いです。
それではどうぞ。
さて、いかがでしょうか?
この図は昨晩3時間ほどを掛けて作成したものになっています。一体、こんな夜中に独りで何をやっているんだろうか……と自問自答しながら眠い目を擦りつつ作ったので、まずは褒めてください()
……冗談はさておき、分類の詳細についてご説明いたしましょう。
前提として、今回の分類は成人男性向けの同人作品、女性が主体の表現についてのものであることをご了承ください。
「本番」は「性行為」か「挿入行為」か
まず、「本番なし」を「性行為なし」と「挿入行為なし」に大別しています。
先述の『「本番なし」とは何なのか』という問いに答える上で、まず明確にしておきたいのが「本番」の定義です。この部分から、恐らく様々な意見があることでしょう。
ある人は、いざ合体しようというまさにその瞬間を「本番」と言うかもしれません。しかし別のある人にとっては、服を脱いで肌を重ねあった瞬間が「本番」の始まりともなり得るでしょう。
こういったことは人それぞれの価値観や感覚によって定義が異なるでしょうから、辞書を引いたり多数決をとったりしても意味はありません。
ともかく、ここで「本番=性行為」と捉えるか、「本番=挿入行為」と捉えるかという2通りの考え方が生まれます。今回は、それぞれを以下のように考えてみました。
性行為
:男女の営みとしての性行為、フェラや愛撫などを含む性的な行為全般
挿入行為
:男性器を膣に挿入する行為
どうでしょうか。今回の分類では、「挿入行為」のみが無い「挿入行為なし」と、男女間の性的な行為全般が無い「性行為なし」に分けている訳です。
やはりこの時点で、「本番なし」好きの方の間でも、どちらを好むかという傾向が分かれたのではないでしょうか。例えば、前戯は好きだけど挿入描写はなくていい……という方は「挿入行為なし」、ペッティングの描写も要らない……という方は「性行為なし」の方に進んでいただければよいということになります。
ここからは、図の左上から順に分類のご説明を進めていきます。自分の好みの部分だけ見たい、という方は適宜スキップしてくださいね。
百合はどうなんだ百合は
さて、先程は性行為を「男女の営み」として定義した訳ですが、ここで一つの疑問が浮かびます。
女の子同士はどうなんだ
と。
昨今のジェンダーが云々という動きとは関係なく、我が国には男同士、女同士の性愛や性行為を許容する、挙句の果てには外から愛でるような文化がある訳です。これは同人界隈においても変わらない……というか、そういうのが集まるのが同人界隈ということになっています。
ということで……
「性行為なし」を、「百合の性行為あり」と「あらゆる性行為なし」の2つに分けています。
男女の裸の交わりは挿入がなくてもあんま好きじゃないけど、百合百合してるのは大好きだぜ!!!!という方は前者、女の子同士でもちょっと違うよなぁ……という方は後者にお進みください。
また、後者の「あらゆる性行為なし」に分類される作品については、そのままあらゆる挿入行為・ペッティングがない訳ですから、自ずと羞恥系・露出系の描写が増えるものと思われます。
当サークルの作品を例に出すと、第3作の『ハプニングは突然にっ!』がこれに当たる、ということになるでしょう。主人公のユウカは、思わぬハプニングによってほぼ全裸で夜の住宅街を歩き回ることになるのですが、男女共に誰かと肌を重ねるようなシーンはありません。
女の子にちん〇んが無いと思うなよ
お次は上記の「百合の性行為あり」について。女の子同士の性行為、と言っても色々な描写があります。
そして、女の子にはちん〇んがない……とも限らないのです。
図では「ぺ二バン等の挿入あり」としていますが、もちろんそれに限りません。ふたなりなら生のモノが生えている訳ですし、解釈によっては男の娘もこの分類に含めることが出来るかもしれません。生物学的にオスかメスか、なんて関係ねぇのがこの界隈です。
「挿入なし」については読んで字の如く。女の子同士でも挿入はなしだよ、という純潔主義を貫きたい方向けの分類となります。
えっちは一人でも出来る
左側の枝分かれはここでおしまい。
しかし、分類上もう一つ、これの有無で作品の性質が変わるのではないかと思われる要素があります。
そう、一人だって性行為は出来るではないか。
これを独立させたのは、上で枝分かれさせた分類それぞれからオナニーの有無を分岐させると、単純に見た目が汚くなるからです。また、ディルドを用いるような挿入を伴うオナニーについては、後述のカテゴリーに含まれますのでここでは除外。
しかし、やはりオナニーがあるかないかでは、特に露出系作品の性質が大きく変わってきます。
例えば当サークルの第2作『はじめてのすっぽんぽんビーチ!!』は、日本人留学生の女の子がヌーディストビーチという異文化を文字通り全身で、肌で感じてエンジョイする!というコンセプトの作品。
本編ではもちろん挿入描写も性的行為もなく、ただただ主人公のモモカとホストシスターのアリスがすっぽんぽんでビーチを歩き回る、という内容なのですが……。
例えばモモカが、生まれて初めて公の場で、男性の前で裸体を晒すことに興奮してしまって理性を失い、その場で人目も憚らずオナニーを始めてしまったら……どうでしょうか?
いや、それもそれでアリなのは確かなんですけど、前述のコンセプトとはまるで違うテイストの作品になりますよね。
ということで、やはりこのオナニーの有無は分類上必要だと考える、という訳でした。
女の子には挿入できる穴が2つある
では、図の右側に行きましょう。
……まぁ、小見出しの通りですね。2つ穴があるじゃねぇかと。
(アナルは形容詞なので「アヌス」とするのが正確なのですが、ここでは「アナル」を名詞的に使っています。ツッコミ禁止です。)
一般的にはそうじゃないんですけど、この界隈では後ろの穴も「挿れる穴」と認識されてしまうバグが、通常と比較して多く発生してしまうようです。この分類は、それに対応するものとなります。
……と、おちゃらけたことを言ってみたのですが、実はこの部分にはジャンルとしての「本番なし」とその分類それぞれに通底する、ある要素を見出すことが出来ると思うのです。
処女性とその解釈について(余談)
それが、処女性。
何を気持ちの悪いことを、と思われる向きもあるでしょうが、極めて真面目なお話をします。
処女とは何か、と聞かれたとき、皆さんはどのように答えるでしょうか。……はい、気持ち悪いでしょうが、ちょっとだけ付き合ってください。処女とは何ですか?
……当たり前ですが、一般的に「処女」とは性交渉の経験が無い女性のことを指して用いられる言葉です。
維新以降の我が国における処女性について振り返ってみると、身分制度の解体・再編やキリスト教的価値観の流入によって、明治中期頃には貞操観念の高まりや婚前交渉への風当たりが強くなるような風潮が見られたようです。
実際、手元にある明治後期の医学書(ゲーム制作の資料として買った)には「女は結婚初夜まで操を守るべきであり、恋愛はほどほどにするように」という旨が書いてありますし、明治から昭和初期頃の文学作品には、結婚と処女喪失を一体のものとする描写が多く見られます。
現代に至ってはそういった価値観はすっかり薄れている訳ですが、どこか処女性に神秘的なものを見出す、感じるという感覚をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。NTR作品が馬鹿みたいに売れてる訳ですから、全くの的外れということもないでしょう。
では、そんな身近(?)な「処女性」について、皆さんは明確に言語化、線引きをすることが出来るでしょうか?
……例えば、膣への挿入行為を経験したことは無いものの、アナルセックスは何回も経験あり、という女性に対して、あなたは「処女性」を感じるでしょうか。
どちらの経験もないものの、特定の男性との間に日常的にペッティングをする関係がある女性に対しては?女性同士の性行為によって破瓜に至ったが、それ以外の性行為はもちろん男性に肌を晒したこともない女性に対しては?
……はて、この「処女性」の線引き、「本番なし」を分類する作業に似ていないでしょうか?
即ち私は一つの仮説として、「本番なし」の描写を好む人、その趣向は各々の中にある「処女性」の解釈、その線引きによって類別出来る。そして、それは「本番なし」の分類を行う上でも極めて重要なファクターになると考える訳です。
……と、しょーもないことを回りくどく、小難しく書いてしまったのですが、要するにこの分類では「処女性」という概念を念頭に置いていますよ、ということが伝わればOKです。
挿入する物によって感じ方が変わる不思議
っつーことで、話を戻して図の右下に行きましょう。
「処女性」について考えるのであれば、ちん〇ん以外なら挿入してもいいのか?ということについて考えない訳にはいきません。
生物のオスとしてならば、交配相手のメスが性器に何を突っ込んでいようとも、それが子孫を残す競争相手である別のオスのモノでなければ何でも構わないはずです。
しかし人間、そうではないという意見を持つ個体もいます。破瓜という結果がある以上、男性器以外によって貫かれる描写も避けたい……という方もおられるはず。そんなあなたには、こちらの分類が役に立つはずです。
……あと、触手に犯される描写だったり、未経験なのにぶっといディルドを突っ込んじゃったりする描写もカバー出来ますね。はい。
被虐性の程度によって全然変わるよね
そして、最後にこちら。
分類図の中に組み込むのはちょっと難しいけれど、好みを大きく左右する要素として「被虐性」という概念を提示してみたいと思います。
例えば、分類上同じ「性行為なし>あらゆる性行為なし」の露出描写でも、一人でこっそり露出するのと、望まず大勢の男の前で裸になるのとでは、心理的負荷や悲壮感が全く異なりますよね。その度合いによって好む好まないも変わってくるはずなので、欄外に表記させていただきました。
「処女性」の解釈による線引きと、各々が好む「被虐性」の程度。この組み合わせによって、「本番なし」の分類図は完成となる訳です。
あなたはどれが好き?
これで、分類のご説明は終了となります。あなたの「本番なし」観に合致する分類はありましたでしょうか?
私のものとは異なる視点、分け方もあると思いますので、「こうじゃない?」というご意見があれば是非コメントください。分類図を辿って「自分はこれが好き」というのも大歓迎です。
ちなみに私は……
ペッティングはなし、もちろん挿入もなし、百合描写は場合によるかな。オナニーの有無はどっちでもいい。被虐性は低めが好きです。
おしまい
本日はここまで。
今回は基礎研究的な感覚半分、遊び感覚半分で分類をしてみた訳なのですが、いずれは「本番なし」に対する解像度が上がって、作り手が自信を持って「本番なし」の作品を出し、買い手側ももっと明確にニーズを打ち出せるようになって、「本番なし」ジャンルがどんどん盛り上がっていけばいいなぁ、と思っています。
あと公式ジャンル化も今度こそ実現させたいよね。
私も、作品の完成と頒布で貢献出来るように頑張ります。
次回は『箱庭からミライへ』の進捗報告!それでは失礼します( `ー´)ノ