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2022年 09月の記事 (68)

遠蛮亭 2022/09/13 06:39

22-09-13.瑞穂さん立ち絵案②+嵯峨野愛実さんイベ絵①

おはようございます!

今日は買い物に行くのでくろてん推敲してる余裕なし……と、思っていたら広輪さまから瑞穂さんの立ち絵案が届きましたのでこれを。

①番がこれまでのもの、②番が新規になります。たぶん広輪さまとしてはおっぱい大きくしすぎてタレ乳になってるのがゲーム的な見栄えとしてどうか、と危惧してくださったのだと思います。そこで②のサイズになりました。下乳がへそを隠すところまで行ってたのを、腰が隠れないところまで戻しているわけですが……これだとやはり、インパクトが足りない。これだとエーリカの胸とそこまで大差ない感じになりますからね。なのであと一回りかぐらい、「へそは隠れないけれどその上あたりまで下乳がとどくくらいのサイズ」でお願いしておきました。なかなか、イベントCGまでお話が進みませんが、広輪さまの作業少しずつ進んではいます。

でもっておまけ。むらいつに使う遠蛮のイベント絵。嵯峨野愛実さん。

まず1つ目。敗北して犯されかけて卑屈な顔になってるところ。

許してもらえないとなって絶望。

挿入と絶叫。

射精。

事後放心。

さらにもう一回挿入。

二度目の射精。以下ループ。

こんな感じです。背景は市販のものと合成させる予定。背景描く技量も時間もないからですね。で、嵯峨野、杠葉の二人に加えて那琴、寧々さん、蒼依も3枚ずつくらい描く予定です。みのりんと晦日さんが3枚ずつなのでそれにあわせる形で。ほかに広輪さまに提出する「こんな絵を描いてください」の絵も描く必要ありです。SLGプラグイン用サンプルプロジェクトも作る必要あるんですが、こっちも結構やること多い。

それでは、以上でした!

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遠蛮亭 2022/09/12 12:13

22-09-12.くろてん2幕2章6話.少年専横

こんにちはです!

今日はずっと第4幕最終話を書いていたので、お絵描きがないのですが。とりあえず第4幕「大陸唱覇篇」完結しました! よろしければ1幕から4幕とお読みいただければと思います。確かカクヨムさんの遠蛮のページにリンク張ってあるのでそこから。

さておきましてこっちは第2幕。

……………
黒き翼の大天使.2幕2章6話.少年専横

新学期開始。

 とりあえず、なにごともなく大過なく。そりゃ、いつもいつもなにかあってたまるかというのが辰馬の言い分であり、たまにはゆったり読書の時間でも取れないとやっていられない。

 まあ変わったことと言えば神楽坂瑞穗が同級生になったことで、以前なら年上の中で萎縮してしまいそうなものだった瑞穗はこれがまた堂々と3年A組になじんでいるから大したもの。まあ、3-Aには学園随一、どころか国家にもまれな天才少女が味方として存在しているわけで、心配はまず要らない。問題はその二人が揃ってひどい運痴であるという事実だが、たぶん大丈夫。

 そして新学期早々に普通授業である。

 3限、哲学の授業。はっきり言って退屈……を通り越して眠い。「正義とはなにか」についての検証、「正義と不正義のどちらが正しいか」「正義とは為政者の武器であるか、民衆を護る盾であるか」などという哲学論に対する辰馬の答えは「どーでもいいわそんなもん」でしかない。不正を働く馬鹿がいたらしばきゃいーだけだろうが、と思うわけだが、哲学の授業に「とりあえずしばく」という行動の選択肢はない。あくまで理論展開によって相手を凹ませてやらねばならないわけで、この手のディベートが辰馬は死ぬほど苦手だった。

 そして疲労困憊して迎えた4限、実習。久しぶりに登場する筋肉馬鹿の非常勤講師、明染焔。だが、その視線が妙に挙動不審に泳ぐ。

「どしたー? ほむやん」
「いや、ぁ? あのガキなんや?」

 焔は剣呑そのものの声でそう口にした。言う、というより唸るというに近い。その視線の先では三大公家筆頭、覇城家当主の覇城瀬名が、いかにも甘え上手の風を発揮して雫にしがみついていた。腰のあたりにしがみつくように見せて、上手い具合おしりをなで回しているのがまあ、焔もだが辰馬も煮えくりかえるほどに腹の立つこと。

 しかし、辰馬としては瀬名のこの態度を容認せねばならない理由があった。前回のテレビ放送、あのあと学院長に呼びつけられた辰馬と雫は、いちおうは許します、と言われて胸をなで下ろしたものの、それに続けて大公・覇城瀬名の身柄に関する十全な保全、を条件として突きつけられたからである。とりあえず瀬名がなんらかの理由で小さなけが一つでも負ったら責任問題になるので、瀬名の、頭が上がらない相手である辰馬と雫でどうにかしろ、とそういうこと。

 だから辰馬としてはうっかり瀬名を殴るわけに行かなくなっている。一度ボッコボコにして完勝したのはいいとして、そのことでなにか因縁をつけられると非常に困る。雫もそういうわけだから、瀬名の露骨な態度にあまり強く抵抗できない。本当に、金持ちと権力者はタチが悪い。

しかし焔にそんなことは関係がなかった。あこがれの牢城さんにベタベタしやがるクソガキ、もうそれだけで殺戮決定といってよい。そもそもがあきらかに雫の顔が困惑しているというか迷惑しているのに、辰馬はなんであのガキを殴らないのかが、事情を知らない焔にとっては大いなる謎だった。

 ズカズカと、靴音を派手に響かせて焔。

 瀬名の方もそれに気づく。気づきながら、見せつけるように雫の腰をなで回す。子供の甘えと言うにはあまりにも露骨でいやらしいその態度に、焔は瞬時にブチ切れた。

「クソガキ、叩っ殺したろか!」

 言いつつ、すでに叩き殺さんばかりの轟拳を唸らせる。足首から膝、腰と回して背中、肩、肘に手首としっかり回転させての一撃。体格差もあり、威力だけなら新羅辰馬のそれに数倍する。

 しかし速力で辰馬ほどでなく、纏糸勁はばっちりだとしても粘勁によるポジショニングやら、相手の動きを封殺した上で打ち込む化勁(フェイント)がない。よって簡単に瀬名に腕をとられ、瞬時に肘をやられる。筋を引きちぎられずに済んだのはとにかく、やたらと鍛え上げられた鋼の肉体、それのみに寄る。

「くあぁ……!」
「つまらん真似をしてくれないでくださいよ、チンピラ。確か……狼紋出身の明染焔、でしたか……あなたの家も人生も、ボクがその気なら簡単につぶせるんですが?」
「……あぁ! 舐めたことゆーてんと違うぞ、ガキぃ!」

 ぐぐ、と。なんとまあ信じがたいことに。完全に極められた状態から、明染焔は覇城瀬名の身体を膂力だけで持ち上げる。いくら瀬名が小柄とは言え、完全に腕関節を制圧された状態なのだ、およそ常人の力でも技でもなかった。

 そのまま立ち上がった焔は、「うらぁ!」と腕をなぎ払う。完璧に肘を極めていたはずの瀬名はゴムまりのように吹っ飛ばされ、体育館の壁にしたたか、背中から叩きつけられた。

「お前が何処の誰でどんだけえらいか知らんけどな。ひとつゆーとくぞ。牢城さんにいらん手ぇ出すなら、俺が殺す!」

 瀬名を相手にすると男らしさを刺激されるのか、辰馬に続いて焔も、ふだんとはまるで違う男ぶりで「雫に手を出すな!」と警告する。そしてハッとして雫を振り向き、途端にしどろもどろになって「いや、今のは……」ともごもご言うのはいつも通りだが。

「く……へぇ。ボクにこんな、たてつく馬鹿が他にもいたんだ……これはもう、人生破綻させてあげないと……」
「瀬名くん、そーいうの駄目だからね」
「……い、いくら雫さんの言葉でも、彼はボクに恥辱を与えたんですよ?」
「もともと、ほむやんはあたしを助けようとしてくれたんでしょ? 瀬名くんがやったらえろいから。それを棚上げするのはどーかなぁー?」
「く……」
「まーえーやん。俺もそない簡単に勘弁したるつもりないわ」
「ちょっと、ほむやん! ひとが穏便に済ませよーってときに、混ぜっ返さない!」
「ぁう……」

 瀬名も焔も、雫に一喝されるとどうしようもなく弱い。それはもちろん、瀬名と焔の一戦をぼーっとしつつしっかりと確認しながら見ていた辰馬も同様で、おねえちゃんに頭が上がらないのは変わらない。

……
………
…………

「つーか、なんでお前3年に入ってくるんだよ」

 授業終了後、雫から用具整理を仰せつかった新羅辰馬、覇城瀬名、明染焔。辰馬はとりあえずそれを聞いた。覇城家の英才教育があるとはいえ、いきなり幼年学生が高等学校の3年というのは無理だろう。

「金を積みました。あと、邪魔な清廉派の理事も、本当に邪魔なので失脚させましたが、なにか?」

 あっさり言う瀬名。本当に、雫のそばにいるために財力と権力を使うことをまったく躊躇う気がないらしい。恐ろしいほどいやなガキだった。

「そーゆーのやめとけ。しず姉はそーいうの嫌いだし」
「バレなければどうとでも……」
「バレるだろ、あのひと鋭いから」
「……雫さんのことをわかった風な……」
「つまんねーことで嫉妬すんな。とにかく作業すんぞ。ほむやんも、そこで拗ねんな」
「拗ねちゃおらんが。にしても覇城の、ねぇ……特権階級貴族やかなんか知らんが、あかましイキがっとるんと違うぞ!?」
「脅すな」
「そんな脅しでボクがどうこうなるわけでも、ないですが」
「……だから、挑発もすんな」
「「常識人ぶって指図しないでくださいよ(指図すんなや)!」」
「そーいうときだけハモんな! 働けばかたれ!」

 軍隊指揮官としてヒノミヤ事変を駆け抜けた際に判明したことだが、辰馬はひとに指示を出すと言うことが格別に上手い。これはおそらく天性のもので、辰馬に指図された相手はなんとなくあらがいがたいものを感じて、そのまま屈服する。

 明染焔はそうなのだが、覇城瀬名という少年は三大公家筆頭のプライドとか、新羅辰馬への対抗心とかがすこぶるに強く、辰馬の声に含まれる魔力に敢然と刃向かう。大した意思力ではあるが、この際その精神力は抑えて仕事をしてほしいものである。

「そもそもなぜあなたが指図を出すのですか?」
「あ?」
「指示はボクが出します、あなた方は額に汗して働きなさい」

 いやもー、ホントいちいち頭にくるガキではある。これが雫の前ではおとなしく猫被っているのがまた腹立たしい。

「辰馬ァ……こんガキ、しばいてええかな?」
「よくない」
「そーかー……」
「瀬名、お前も。しっかり働いたらあとでしず姉に褒めてもらえるぞ?」
「……ふむ、しようがないですね」

 存外単純で助かりはするが、いろいろ憎たらしいのはどうしようもない。誰より辰馬自身がこいつを殴りたくて仕方ないのだからもう、やめろとか我慢しろとか言う言葉が空々しい。

 まあそれでも。辰馬たち3人はなんとか力を結集して片付けを終わらせた。

「さて。メシ食ったら午後はクエストかー……」
「ボクも同道しますので、よろしく」
「は?」
「ギルド緋想院蓮華洞学園で一番優秀かつ安全なパーティを組んでいるのはあなただ、と聞きましたので。ボクに傷ひとつつけないよう、お願いしますよ?」
「えぇー……」

 ものすごく鬱陶しい、と言わんばかりに、辰馬は呻く。こいつが同道すると説明して、みんなが納得するかどうか、早くも心配になった。それでも学院長との約束を盾にとられると、このガキを満足させてさし上げるのは必要事項だ。雫を差し出す以外の望みは、全部叶えてやらねばならない。

「まあ、しゃーねぇか……いうこと聞けよ?」
「あなたの指示がきちんと理にかなうものなら、ね」

 ほんっと、かわいくねーガキ……。

 辰馬は自分の握力で指がきしむほどに、強く拳を握りしめた。

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/09/12 07:04

22-09-12.くろてん2幕2章5話.お嫁さん願望+お絵描き1枚

おはようございます!

昨日はあれこれやったんですが何をやったかというとあまり明確に出てこない感じです。いちおう「むらいつ」用の仮組み絵を一枚描きまして、これですが。

チチモミのやつですね。揉まれて変形してるおっぱいを描きたかったんですがなんだか変な具合になりました。まあこういうの初挑戦なのでやむなし。裸差分も描いたのですけども今回とりあえずこれ一枚で。

で、今日はなにするかというとまずくろてん4幕最終話を書かないといけません。前話から1週間経ってますからこれは至急。昼過ぎまでになんとかあがるかなーというところなんですが、そのあとはslgプラグイン用の追加キャラを描くかむらいつの仮組み絵を描くかします。いつものことながら時間が足りないですね。創作やってると仕方ないんことではありますが。

では、今日もくろてん2幕です。

………………
黒き翼の大天使.2幕2章5話.お嫁さん願望

「瀬名くんも残念だったねー。まあ、うちのたぁくんに喧嘩売っちゃあいけないわ、うん」

 やたら「たぁくん」という言葉を誇らしげに言ってのける雫に、瀬名はタックル。もちろんテイクダウンを狙うわけではなく、腰に抱きつき胸に頭をすりつける。ボロ負けした以上恥も外聞もない、この情けない姿をむしろ存分に利して、雫の気を引く作戦であった。

「こらこらー、そーいうのはちょっと、おねーちゃん困るな~」

 雫は軽くいなして身をもぎ離そうとするも、瀬名は掴み技を得手とするだけに握力に関しては凄まじいものがあった。剣聖・牢城雫といえども、一度捕まると簡単には逃れられない。

「雫さん……新羅はひどいんですよ。ボクのような子供を相手に、容赦なく殴打して……あんなにしなくてもいいじゃないですか!」
「んー、でも瀬名くんもたぁくんの腕、折る気満々だったし?」

 雫の目はごまかせない。瀬名が隙あらば辰馬の腕だろうが脚だろうが、捻り伸ばして破砕するつもりだったことは完全に見抜かれている。瀬名は「ち……」と内心、舌打ちしつつ、しかし雫相手である。猫を被ってどうにか甘えようと画策した。

「たぁくんの前で他の子と抱き合ってるとあの子、けっこー嫉妬はげしーからねー。瀬名くん、ちょっと離れてね♪」

 脚を軸に、腰を軽く回転。その体裁きだけで、がっちりしがみついていた瀬名が吹き飛ばされる。身体運用の初歩だけでこれだけのことをやるのだから、瀬名や、そして辰馬でさえも雫には到底及ばない。

「さて。これで誤解……つーか誤解でもなかったわけだが……は解けたとして。おれ、帰っていーんかな?」
「いいに決まってるよー。そもそも風紀の専権が酷かっただけで、たぁくんホントなら悪くないし」
「いや、悪いだろ……まああれだな、しばらく病院に見舞いに行くか……」
「そんな必要ないと思うけどなー。あの子たち絶対、反省してないよ?」
「それでもだ」

 決然とそう言う辰馬の赤目には確然たる意思の光がある。これは梃子でも動かない。

「んじゃ、あたしもついて行くわ。まあ一応、護衛として?」
「いらんと思うが……まぁ、頼む」

……
………
…………

 そして、それから約1週間、辰馬は連日、病院の学友たちを訪ねた。大概の相手は恐怖に怯えて卑屈に詫びの言葉を入れるのだが、困るのは家族が同道している場合だ。父兄のかたがたにとって辰馬は可愛い家族の未来を無残に刈り取ったそれこそ悪魔であり、憎悪と嫌悪の対象。どれだけ酷い言葉を浴びせられたかについては、思い出したくもない。混ざり物とか、所詮悪魔の血とか、新羅の先祖、伽耶家は家は確か裏切り者・凌河帝《りょうがてい》の臣下でしたっけね、とかとにかく酷いことをいわれたが、思い出したくない。さすがに泣きたくなったが、隣に雫がいるので虚勢を張って元気ぶる。そんな辰馬を、雫は「よーしよし?」と撫でた。

「なんだよ鬱陶しい。やめろや」
「んー。ごめんねー。でも、よしよし?」
「ぁう……だから、子供扱いすんなって……」
「うんうん。たぁくんは子供じゃないよね~。そりゃもういつもベッドで泣かされてるあたしはよくわかってるけど」
「そーゆうことを道ばたで言うな! あと無理矢理乗っかってくるのいつもそっちだからな!」
「ん~、そだっけ?」
「そだっけ、じゃねーわ。なんでおれが鬼畜のベッドやくざみたいな扱いなんだよ」
「まぁ、ノってくるとたぁくん、こっちが許してっていってもやめないし」
「あー! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁー! うるせー! 聞こえねえ!」
「うんうん。元気になった?」
「……ん、まあ……あんがとさん」

 やりようはともかく、慰めてくれた姉に辰馬はしおらしく感謝の言葉を述べる。雫はそのまま辰馬の頭を抱え込み、平気な顔で太宰の町並みを練り歩いた。恥ずかしいのは辰馬の方だが、雫がまったく恥ずかしがらないというより姉弟仲良しを人に見せたくて仕方ないタイプなので、姉に頭の上がらない弟としてはどうしようもない。

「よし。今日はおねーちゃんが食事作ろう!」
「やめとけ。刀と包丁の区別もつかんよーなしず姉が料理とか、恐ろしすぎる」
「なにいってんの。あたしだってね、こっそり修行してんだよ?」

 のちに牢城雫は料理に関して天才的な才能を発揮することになるのだが、この時点では辰馬の言う通り。まあ実のところ、新羅邸には万能メイド(メイドと呼ぶと本人怒り、あくまで侍従長と呼ぶ必要ありだが)の晦日美咲がおり、これまで「家事って必要?」レベルだった雫とか、どんくさくて家事とか危険すぎる瑞穗とか、「家事もなにも、わたしお姫様なんだけど」というエーリカとかが最近、こぞって彼女に料理を学んでいる。そのことを辰馬は知らないが、まあたぶん、晦日に聞いてんだろーなー、程度には察する。

「そんじゃ一応、お願いするか……あんまり無理してヘンなモン作るなよ?」
「あのねぇ、あたしをなんだと思ってんの? 料理なんてコツを掴めば楽勝だよ!」
「そーかなー……」

 焼くだけのバーベキューとは訳が違うのだが、そのへん、わかっているのやら。とはいえそこらの店に突っ込んで食材を買い込んでいく手際に関しては、確かに熟練していた。

「なに作んの?」
「肉じゃがと、あと何品がかな。たぁくん肉じゃが好きだもんね?」
「まあ、好きだな」
「…………ふへぇ~?」
「あ?」
「も~一回。も~いっかい『好きだな』って!」
「言うかよばかたれ。あと、好きなのは肉じゃがでしず姉じゃねーから。勘違いしないでくれますか?」
「またまたぁ~」
「またまたー、じゃねーわ。なんでそんな嬉しそうなのアンタ」
「いやー、こーやって二人でお買い物って、新婚さんみたいだなって」
「……アホらし」

 と、小さく呟く辰馬の白面が、やたらと紅いのは夕日の照り返しとは間違いなく違う。

 ……いらんこと想像しちまった、いかんな。

 頭を振って、妄想を振り払う。とりあえず最近読んだ歴史書……「東西戦争顛末史記」の記述を思い出して邪念を払うが、そーいえばご先祖さま(伽耶聖《かや・ひじり》)って敗北して囚われたあと、凌河帝《りょうがてい》を人質にひどい凌○をうけたとか……という件を思い出して全然冷静になれない。ついでに肉親のことで興奮してしまった自分に自己嫌悪。

「お、雫ちゃんとたっちゃん、いよいよ結婚かい!?」

 ずっと昔からなじみの、肉屋の親父がそう冷やかす。

「えへへー、そうなんですよぉ」
「違うわばかたれぇ! おやっさんも、わけわかんねーこと言ってんな!」
「ははは、お似合いじゃないか。式には呼んでくれよー?」
「呼ぶかボケ! 式なんかしねぇ!」
「いや……結婚式とか指輪とか、大事だぜぇ、たっちゃん?」
「だから! なんでおれがしず姉と結婚する前提なんだよ!?」
「そらもう、似合うから」
「く……」

 そう言われるとそれ以上の反論が出ない。どれだけセッ○ス(一応の伏せ字)を繰り返してもどこまでもウブな辰馬は、結婚がどーこーとか言われると思わずひたすらに狼狽え、周章狼狽。頭の中は千々に乱れ、四分五裂というか爆裂四散である。

「いかん。知り合いの多い場所は冷やかされていかん。一等市街区に行こう」
「んー、いいけど」

 というわけで普段の2等市街区から、豪壮華麗なる1等市街区へ。普段辰馬たちが足を踏み入れる機会などない上流階級の居住区。道ばたでは冗談抜きで「ごきげんよう」とか「ごめんあそばせ」とかの言葉が飛び交い、口の悪さに定評の辰馬はここに足を踏み入れた瞬間に頭痛を感じた。

「あら、素敵な奥様と綺麗な旦那様。本日はなにをお求めですか?」
「うあああああああああああああああああっ!」

 こちらに来てもやはりというか当然というか、ナチュラルにそう言われて、辰馬は頭の皮と頭蓋をひっぺがして脳を掻きむしりたいほどの居心地の悪さに見舞われる。対するに雫はもうホント、ニコニコだが。

「へへー、やっぱり夫婦に見えちゃいます~? まいったなぁー、やはは」
「まいってんなしず姉。さっさと済ませてさっさと帰るぞ。こんなとこ長居してたらおれのアイデンティティにかかわる……」

……
………
…………

 そして買い物も無事、済ませて新羅邸。三大公家の一、小日向ゆか様の居住地として、学生寮隣にむやみやたらに大きく造営された大屋敷に、辰馬たちは帰宅する。

「よっし。それじゃ早速、お料理と行きますか!」
「ホント大丈夫か? 肉じゃがくらいならおれが手伝うけど……」
「お黙りなさい!」
「ぉう?」
「台所は女の戦場! 男が土足で入ることまかり成らん!」
「ぅ、うん、そーか……んじゃ、ゆかと遊んでるわ」
「うん。出来たらすぐに呼ぶからねー?」

 そしてだいたい1時間と少し。
 雫が振る舞った料理は素晴らしい味だったのだが、惜しむらくは素晴らしすぎて雫の手でないことが簡単にばれた。

「あのさ……しず姉? 怒らないから正直に言えな? これ、晦日にやってもらってるよな?」
「……う、一人で完璧に作れる筈だったんだよ? 途中までは大丈夫だったし……」
「あー、調子に乗ってやらかしたパターンか……まあ、別に責めるつもりないし。うん、嘘ついたのはよくないけど、まあいいんじゃねーかな」
「うええ~ん、たぁくんごめんなさいぃっ! こんなんじゃお嫁さんになれないぃ~っ!」

「お嫁さん」の一言にズギャン、と反応する新羅邸女性陣。それはもう、全員がそのポジションを狙っているといって過言でなく、瑞穗もエーリカもサティアも文も穣も、夕食の味なと忘れて目を見開いた。

 ちなみに美咲とゆかは何処吹く風で主従仲良く、平然と食事を続けるが。

 その晩、辰馬は雫と瑞穗とエーリカの強襲をうけ、いつもの倍以上の激しい逆レに疲労困憊させられることなった。ちなみにサティアと文、穣は部屋の入り口まで来て鉢合わせし、何食わぬ顔で戻っていったが、鉢合わせしなかったら辰馬はさらなる苦難を味わうことなったかも知れない。

「あー、今日も朝日が黄色い……」

 翌朝、朝の運動で表に出た辰馬は、思わずそんなことを口走るのだった。

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/09/11 18:34

22-09-11.凌○ゲー「むらいつ」復活

おつかれさまです!

まずこちら。

瑞穂さんの妊娠立ち絵ですが、この眼のハイライト消えてる瑞穂さんがあるということはまあ、アレです。凌○ゲーの「紫薫の時の齋姫」=むらいつが企画復活です。

もともとむらいつは広輪さまに70枚一気に描いていただくというのが難しく、20枚前後で今年中か来年頭にリリースするのを狙う、という趣旨だったわけです。あとやっぱり、広輪さまの本領は可愛い絵柄にもかかわらずの自重しない激しいエロだというのもあり、それなら。ということでした。ただこれの企画はくろてんに全力を傾注する、という理由で一度没にしたのですが。やはり先行凌○版を出したほうがよかろうか、ということで今回の復活になりました。シナリオは一度完成させているのであとはそこに当てはめていくだけ。多少変えることになるところもありますがそこまでの労力は使わないはずです。なのでイベントCGさえ揃えばこれは出せる、といって問題ないでしょう。まあ優先順位からいうとSlgプラグインが1番、むらいつは2番で、再来年以降になるくろてんは最後、ということになりますが。

ひとまず、イベントCGの内訳。26枚という枚数は確定ですが、内容はちょろっと変更されるかもしれません。
1.タイトル
2.チチモミ
3.ボコボコ殴打
4.土下座
5.フェラ
6.パイズリ
7.正常位
8.輪○騎乗位
9.組み伏せバック
10.羽交い絞め立ちバック
11.対面座位
12.竜姦
13.牛頭(ミノタウロス)
14.大淫蠅
15.触手
16.触手2
17.触手3
18.出産汎用
19.売春汎用
20.バッドエンド凌○地獄
21.穣-五十六と
22.穣-瑞穂とシックスナイン
23.穣-瑞穂と一緒に五十六のペット
24.美咲-獄吏
25.山賊に瑞穂とWフェラ
26.バッドエンド娼館堕ち
これ以上枚数増やすと広輪さまが数か月で描ける範囲を超えてしまうので枚数は降らせませんが、触手は2種でいいかもしれないですね。触手凌○と自ら産んだ触手に犯されセックスの二つで。触手出産は出産汎用の差分でなんとかなりそうですし、そうすると1枚空きができる。異種姦1種増やしてもいいかもしれないです。スライム系の、体内に取り込んで○すやつとか。あとバッドエンド凌○地獄っていうのはなんだかわかんないかと思いますが、1枚絵の中に5枚バンバンバンっ、と凌○シーンを盛り込んでいただくやつですね。裸踊りとか脱糞とか足舐めとかパイズリフェラとかを四隅に配して、中央に犯されてぐったりしてる瑞穂さん。この案を快く受け入れてくださった広輪さまには感謝です。実質5枚ぶん。ただしこの絵には差分はつかないんですが。

以上でした! そろそろ正式な立ち絵も完成することになって企画の提出し直しもできなくなる時期なので、今後むらいつが企画から外れることはないと思います。これが売れれば我が家は自殺も免れるし、後発のくろてんに予算をかけられるのです。そう考えるとまだ絶望する段階ではないですね。それでは!

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遠蛮亭 2022/09/11 16:06

22-09-11.くろてん2幕2章4話.古流と江南流+お絵描き3枚

お疲れ様です! いまからそろそろ夕食なので、パパっと。

まず今日のお絵描きおっさん2つ。こっちはラース・イラ宰相ハジル。若き日の永安帝40万を騎兵5000で撃破してトラウマを植え付けた用兵の天才、ですが永安帝登極後、報復の師に国を滅ぼされラース・イラに亡命したもと草原民族の王子。用兵の達人でもありますが本当に優れた分野は政略で、南東のアカツキ、東の桃華帝国を相手に状況をリードしています。

そしてアカツキの宰相本田馨綋。ハジルが1816年当時50才くらいで、同じ頃70過ぎ。密偵を多用した情報戦略を得意とし、その配下の密偵の一人に晦日美咲さんがいます。表向きは晦日さんを利用しているふうに見せて、実際のところは晦日さん大好きお爺ちゃんなんですが。たぶん才能の点ではハジルに劣りますが、経験のぶん僅差で本田宰相が勝つはず。ちなみにアカツキ大元帥も本田姓ですが、血筋は別です。本多正信のところと本多忠勝のところみたいな違い。

そして3枚目、久しぶりに立ち絵じゃない絵を描きましたということで、瑞穂さんのスカートひらひら。無邪気な雰囲気ですが胸が無邪気でないという。でも最近麻痺してきたのかこのサイズが実際巨乳になってるのかまだ小さいのかわかりません。へそが隠れるレベルの大きさなので小さくはないはずですが、なーんか物足りない気も。

そしてくろてん2つめ。

………………
黒き翼の大天使.2幕2章4話.古流と江南流


「だから、たぁく……新羅くんが凶行に及んだ理由は神楽坂さんを暴行しようとした生徒たちへの怒りによるもので、むしろ彼の好意は善行ととるべきで……!」
「牢城さん?」

 学院長室。やせこけた老年女性の学院長は執務机に両手を立ててその上にあごを置き。静かに雫の言葉を聞いていたが、やがて穏やかながら有無を言わせない言葉で、雫を遮った。

「どんな理由があれど、罪は罪、よね?」
「いえ、だけど……」
「雫ちゃん」

 あえて学生時代の呼び方で、学院長は雫を窘める。雫が学生時代、この老教諭は雫の担任であり、恩師と言っていい相手であった。だから雫としては強く出ることが出来ない。

「あなたと辰馬くんの関係は承知しているし、すばらしいことだとも思うけれどね。でもやっぱり、どうしても彼の血は……」
「血なんか関係ないでしょう!?」

 恩師を相手に雫は吼える。自分だって普通の人間ではない、半分は妖精(アールヴ)だ。幼少期のいろいろで悪くすればデックアールヴ(悪妖精。ダークエルフ)に堕ちたかも知れない雫の心の支えになったのは最初は初恋の新羅狼牙であり、そして狼牙が連れ帰った辰馬である。それを否定されることは雫自身を否定されるに等しい。

 雫は学院長を強い目で見据える。学院長のほうも、静かな目でそれを受け止めて逸らさない。

「ずいぶんと、強い目をするようになったこと……」
「そりゃあ、愛しい人のためですから!」

 恥ずかしげも臆面もなく、当然とばかり昂然と胸を張る雫。学院長は深く深く、あきらめに似たため息をついた。

「なら、好きになさい。ただし、全校生徒をしっかり納得させること。出来るわね?」
「とーぜんです!」

……
………
…………

 辰馬が大輔に肩を貸されて戻ると、瑞穗とエーリカが色めき立った。なにせ辰馬の顔が明らかに殴られて青痣を作っていたので、瑞穗とエーリカは驚くより先に怒り狂った。

「辰馬さまにそんなことをするなんて、許せません! わたしがトキジクを使ってでも……」
「やめれ」
「風紀の教師ってクヌギよね。あのサディスト、泣いて謝るまで盾で殴ってやろうかしら」
「だからやめれって。これはまあ、あれだ。授業料みたいなもんだから……」
「「でも……」」

 青紫121と金髪97の二大美少女が、もう顔がくっつくばかりの距離で心配を表明する。辰馬はまだいろいろとつらいところはあるものの、元気なところを見せないと瑞穗たちが暴徒になってしまう。なので空元気を振り絞って見せた。

「で、しず姉は?」

 シスコン、辰馬が真っ先に聞くのは結局、そのこと。ほんの一瞬、瑞穗とエーリカは眉根を曇らせたものの、すぐに返事を返す。

「学院長室です。辰馬さまの無実を証明する、って……」
「あー……まあ、無実でもないわけだが……」

 実際やってしまったことがかなり重いために、辰馬も胸を張っておれは悪くない、とは言えない。確かにあのとき、辰馬は人間というものの悪意に絶望して破壊衝動に身を明け渡したのだ。魔王の継嗣《けいし》としてならともかく、人間・新羅辰馬としては絶対にやってはならないこと。

 まーそれでも、ある程度図々しく「無実です」って言わねーと。

 そうでないと今頑張っている雫を裏切ることになる。

「んじゃ、学長室に……」

 そう言って一歩踏み出した瞬間、ドバァン、と不意打ちでドアが開き、辰馬の横っ面を殴打。

「ぶぁ!?」

 辰馬に気配を悟られないという時点で、相手は一人しかいない。

 はずだった、が。

「ちょ、しず姉……って……へ?」

 雫がいない。

 144㎝、視線を20㎝下げても、そこにピンク髪のポニーテールもとがったエルフ耳もない。

 かわりにさらに視線を降ろすと、雫に似たピンク・ブロンドのさらさらの髪がそこにあった。

「相変わらず間抜けですね。この程度も避けられないとは、新羅江南流もお里が知れます」

 皮肉たっぷりにそういうのは、正月のリゾートホテルでいろいろと迷惑を掛けてくれたクソガキ、三大公家筆頭・覇城の当主、覇城瀬名《はじょう・せな》11才。

「っあ……なにしにきた、クソガキ? 学校見学には早いだろ?」
「ボクも今春からこの学園の学生ですので」
「は……はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
「そしてまあ、あなたに力を貸すのは本当に、死ぬほど不本意なのですが、雫さんの為です、あなたが今抱えている問題、ボクが解決してあげますよ」

 ものすごく上からのいいざまだが、辰馬の力では手詰まりだったのも事実。覇城の名前と権力でどうにかしてくれるというのなら、それに越したことはない。

「……んじゃ、頼む」
「ええ。かわりに、今週末雫さんとデートさせていただく、ということで」

 その言葉に、辰馬の柳眉がピクリと上がる。しかし「どーせこのガキ、しず姉の前でたいしたことできねーし」と思い直した。

「オッケー、わかった」
「素直でいいことです。それでは……早速やりましょうか」

 瀬名は慣れた手際で軽く指を鳴らす。すると出るわ出るわ、何処に隠れていたのかというぐらいのスタッフが、ぞろぞろぞろりと登場する。

「今から学園各所にテレビを設置します」
「テレビ?」
「まあ、あなたにもわかるように簡単に説明すると、リアルタイムでの動く写真です。ヴェスローディアでつい先日、実用化されたものを輸入させていただきました……そのあたり、エーリカ姫、よい買い物を有り難うございます」
「あ? え? えーと……それはどうも?」

 政争を逃れて国から出奔したきりのエーリカにはテレビなどと言う新技術はわからない。というかあの兄と伯父の抗争の合間にそんな技術を作るとか、我が国の技術者たちはずいぶんと逞しかったんだなぁとか思うが。

「……えー、つまり、それを通してみんなにおれの話を聞いて貰うわけか」
「はっ」
 鼻で笑われた。

「あ゛ぁ!?」
「そんなことで万民の賛同など得られませんよ。クズノハ」
「はーい♪ 久しぶりね、辰馬?」
「うげえぇ……!」
「なによ、その態度。愛しいおねーちゃんとの再開でしょーが!」
「しず姉みたいなことゆーな! つまりアレか、姉貴の『蠱惑』で全校生徒に洗脳を……」
「そーいうこと♪」
「ばかたれぇ! そんなの認められるわけがねーだろーが、しばくぞ!」
「でもまあ、そんくらいしないとあなた、ここにいられないわよ?」
「ぁう……」
「過剰防衛ここに極まれり、ですからね。そもそもあなた、独占欲が強すぎるんじゃないですか?」
「このガキ、どの口で言ってんだお前? しず姉に粘着してる大公家の当主サマは、ど・こ・の・ど・ち・ら・サマでしたっけ?」
「く……痛いな! つむじをグリグリするな! この際ボクのことは関係ないだろうが、混ぜっ返すな、下民!」

 関係なくねーと思うけどなぁ……とは思うが、まあこの際手がない。確かに辰馬やら雫が自己弁護のスピーチをしたところで、学園の半数の賛同が得られるか怪しい。魔王……正確には魔王見習い? であるクズノハに力を借りるのは不本意だが、彼女の『蠱惑』は海魔たちの支配権をユエガから完全に奪ってのけたほどに完璧だ、頼りになるかならないかで言えば、文句なく頼りになる。

「じゃ、頼むわ……うん、まあ、納得できんが、納得する」
「態度の悪い客ですね、一度上下関係をはっきりさせておくべきですか……」
「あ゛ぁー? おいクソガキ、おまえ、一度油断してたおれを投げたくらいでいい気になってんなよ?」

 それに瀬名はフッと笑い。

「打撃技など華拳繍腿《かけんしゅうたい》、王者の技とは組み技・関節ですよ。その程度もわからないから、打撃屋は馬鹿だというのです」
「へぇ……ま、ガキが華拳繍腿なんて言葉を知ってるのは褒めてやるとして。本当に強いやつがなんで組技を使わねーか、わかってねぇよなぁ~」
「新羅辰馬の無実表明放送はそれとして。その前にエキシビジョンといきましょうか? ボクとあなた、アカツキ古流集成と新羅江南流、どちらがより優れた技か」
「オッケー、やっちゃる。殴られても泣くなよ?」
「そちらこそ。関節外されて泣いても、戻してあげませんよ」

……
‥‥…
…………

 ということで。

 急遽新羅辰馬対覇城瀬名の試合が組まれることになった。その様子は学園各所に接地された最新鋭機器、テレビによって全校生徒の衆目に晒される。はっきり言って、負けたら恥なんてものではない。

「ま、おれが勝つし」

 と。辰馬は意気軒昂。瀬名とクズノハの登場によって、落ち込みがちだった気分もようやく上り調子だ。

 いっぽうでクズノハをセコンドにした瀬名も。

「ここであの生意気な銀髪を徹底的に叩いて恥をかかせれば……フフ」

 こちらもすでに勝利を確信して皮算用に酔っていた。

 そして、両者花道を通って特設リングへ。こんなもんを即時作ってのけるあたりが覇城の財力権力。そしてこの舞台装置に、観客の生徒たちがノリに乗って歓声を上げる。

「きゃーっ、新羅くぅ~ん?」
「あっちのピンクのちっこい子も素敵よ♪」
「新羅負けろ新羅負けろ新羅負けろ……」
「ピンクの子もいーけど、あと5年かなー?」

 などという外野の声は、すでに辰馬にも瀬名の耳にも入っていない。両者ともに達人、明鏡止水の境地。ゆえに雑音など聞こえず、目の前の敵をどう躱し、いなし、さばいて間合いに入り、罠に掛けて必殺の術策にはめるか、それだけしか見えていない。

 ゴングが鳴った。

「さ。この大観衆の前で、大恥かかせてあげま……ぶぁ!?」

 余裕ぶっこいてニヤリと言いかけた瀬名の顔面が、殴られてくしゃりと歪む。油断したわけではなかったし、打撃対策は常に万全にしている。

 しかし。

 新羅辰馬の打撃というものは、とにかく尋常の速度ではない!

「前はホント、油断したからなー。今日は初手から本気だ。本当の強者が関節使わない理由な、あれは、極限まで研ぎ澄ませた打撃に組み付くなんて不可能だからだよ!」

 ぱぱん、ぱんぱんっ!

 まるで爆竹のように、辰馬の拳が、肘が、膝が、蹴りが、瀬名の前身を打ち据える。瀬名はどうにか辰馬の手足が伸びきったところをつかみにかかろうとするが、前述通りに速度があまりにばかげているために触れることも許されない。一流でしかない瀬名と、超々一流の辰馬、勝負は一方的なものになった。

 気がつけば瀬名は天井を見上げていた。自分がダウンさせられたことすら認識出来なかった。ふがいない、2歳の時からやってきたアカツキ古流集成、その技の一端も発揮できずに負けるのか。

 断じて否である。もし万が一、負けるとして、それなら自分に納得の出来る負け方がしたい。

 やおら立ち上がる。黄色い歓声が上がった。どうもやり過ぎの辰馬に対し、苦戦しながら立ち上がる瀬名の株が上がったらしい。そんな声が耳に入るのが、集中の途絶えている証拠。瀬名は一瞬、瞑目し、そして余計な雑音と雑念を払う。

 普通の戦い方では、あの神速に追いつけない。

 それはもういやというほど理解した。ならば腕一本囮にして、肉を切らせて骨を断つ!

 ……ふむ。

 左半身を前につきだし、あからさまにそこを打ってこいと誘う瀬名に、辰馬は一瞬、考える。

 まあ、何処を打たれるかわかってればおれの拳速が早くても対応できるだろーからな。これを無視して他を打ってもいいが、やっぱ年下がここまでなりふりかまわずやってんのに、それを避けるのも情けない……勝負、してやっか。

 辰馬が踏み込む。ズン、と震脚。普通の相手ならバランスを崩すところだが、さすがに瀬名は崩れない。あくまで本命、辰馬の一撃を待つ。

「っ!!」

 まず幻惑の右フックで目くらまし、そして同じく右のローキック。鉈の威力で脚を刈られても、瀬名は耐え抜く。

 そんじゃ、ごほーびだ!

 瀬名が待って待って渇望したもの。左のフック。あまりの速度に取りそこねかけるが、そこを根性で掴む。掴んだ瞬間に手首と肘と肩を同時に極める。いちどつかみさえすれば瞬時の関節破壊、これこそアカツキ古流の恐ろしさ!

 が。

 辰馬はひょい、と高く跳躍、とんぼ返り。それだけで完全に極めたはずの腕関節が抜ける。そして上空から、瀬名の後頭部に強烈な膝。それはもう鈍器の一撃といってよく、ここまでよく耐えた覇城瀬名だったが、完全に意識を刈られて失神した。

「まあ、そこそこいー線行ってたけどな」

 珍しく、本来の圧倒的強さを見せつけた新羅辰馬は、そう言ってリングをおりる。雫と瑞穗とエーリカが、一斉に抱きついて祝福した。

「おめでとー! やっぱりあたしのたぁくんは強い!」
「少しだけ、覇城さんが可哀想な、気もしますが……」
「だいじょーぶよ、あの子どーせまた雫センセのおしりを追っかけ回すんでしょ?」

「姉貴ー、本来の仕事、忘れてないよな?」
「ええ、問題ないわよー。じゃ、始めましょうか」

 クズノハが金銀の瞳を妖しく光らせる。と、それまでリングを映していた画面に記録映像的なものが映写された。それは辰馬が学生たちを血祭る寸前の記録であり、学生のひとりが瑞穗に対して不遜で無礼で穢らわしい、男性恐怖症の瑞穗がまた過去のことを思い出すに十分な言葉を吐いた事実が克明に記述されていた。さらに丁寧なことに、瑞穗の男性恐怖症に関してその原因はぼかしつつも懇切丁寧な説明と、それゆえに瑞穗を護りたい想いが過剰な辰馬の理由が語られる。おまけとして人間のエゴイズムがあまりにひどいと辰馬は本当に魔王になるかも知れない、という警告映像までが流され、時間にして10分そこそこの映像が流されたあと、それまでのように辰馬をあしざまに言うものはいなくなっていた。

 結局、クズノハは『蠱惑』を使わなかった。情報を都合のよいように編集はしたが、人間の心を操作することはやめる。当然それは『蠱惑』を使わなくても十分な説得力を得られるという見切りでのことではあり、辰馬に借りを作らせるため『蠱惑』を使ってはいないという宣言もしないが、ともかく実際に洗脳的な能力をクズノハが使うことはなかった。

「ふふん、どーよ?」
「いや……ありがとさん。退学にならずに済んだ」
「そーでしょお~? やっぱりおねーちゃんは頼りになるわよね?」
「うっさい! 寄るな、抱きつくな!」
「まったく、破廉恥さんだねー、困ったもんだ」

 そう言いつつしどけなく首にしがみついてくる雫を、「あんたもな」と言いながら辰馬は嘆息しつつ引きはがすのだった。

………………
以上でした、それでは!

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