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2023年 04月の記事 (53)

遠蛮亭 2023/04/28 06:35

23-04-28.「くろてん」小説再掲+「日輪宮」の書き忘れ攻略記事

おはようございます!

昨日の体験版ですこし書き忘れの要素。戦術スキルに関してですが、瑞穂さんの「真竜・裂光流星乱舞」は敵全体に大ダメージ(……とはいえスキル構成によっては大したダメージにならず、こちらはこのスキルの本命ではないです)を与え、同時に味方全体を全回復させます。晦日さんの「女神の加護」は味方全体の攻撃力を3倍、防御力と智謀値を2倍。戦術スキルは戦術スキルポイントを消費して使うことになります。こちらがガンガン攻撃していると戦術スキルポイントは上がりますが、敵の攻撃を喰らうたびに下がるので使えるときはすぐ使ってしまうのが推奨です。

他に、瑞穂さんが持ってる4つの武器はそれぞれパッシブスキルを持っています。「甕割」はカブト割75を持っているので、瑞穂さんがもともと持っている低値のカブト割と合わせれば80カンスト、ダメージは5倍になります。まあ、瑞穂さんは後方で置物運用が基本になるかと思いますのでなかなか傑出した打撃力を発揮する余地がないのですが……。

概ね以上で、本日も「くろてん」小説再掲です。集団戦も一段落してここから個人戦に戻っていく感じ。

黒き翼の大天使.1幕3章13話. 艶転なる蛾眉、面は芙蓉のごとし

 会戦直前。

 ヒノミヤの陣から、単騎馬を駆って馳せてくる騎影あり。

「あぁ、雫ちゃん先生っスよ、辰馬サン!!」

 その視力と観察眼から物見台に登っていたシンタが、声高に叫ぶ。

「しず姉……!? しず姉っ!!」

 ぶわ、と涙がにじむ。矢も楯もたまらず、辰馬は駆け出した。鞍を載せるのも面倒と裸馬に飛び乗り、卓越した馬術で御して雫のもとへと一直線。

 そして再会した雫は。

「ぶわはははははははーっ!! たぁくんなにそのカッコ! やーはは、すごい、すごい可愛い! お人形さんだぁ♡」
「う、うるせー! このカッコにはいろいろ事情があんだよ! つーかいつまでも帰ってこねーで、ヒノミヤの子になったんかと思ったぞ?」
「まあまあ。あたしもいろいろあったのだよ」
「うん……まぁ。その……非道いことは、されてない、よな?」

 意を決して聞くと、雫はニヤァ~、と、嬉しそうかついやらしく口角を上げる。

「えー? それ聞く? 聞いちゃうかー。さぁー、どーだろなぁ~♪ やっぱそーいうのって恥ずかしーしぃ? でもたぁくんがどーしても、どーしてもおねーちゃんのこと知りたいってゆーなら仕方ないから答えるけど?」
「いや……いーや。そのぶんなら無事だわ。なんか、心配して損した……」
「えー? もーちょっと粘ろうよ?」
「いーから、戻るぞ……まったく、おれがどんだけ心配したと……いやまあ、ホント、よかったよ」

 辰馬の呟きは本当にごくごく小さいものだったが、雫の妖精特有の聴覚は一言一句間違いなく、その言葉を彼女に届けた。嬉しげににこにこ笑ってついてくる。

「へぇ~、たぁくん将軍さまになったんだ」
「将軍、つーか。下士官連中のまとめ役っつーか、雑用だけどな」

 軽く追っ手を引き離して陣舎に戻ると、雫は感心したようにほへー、と陣内を見渡す。

「お帰りなさいです、牢城先生」
「おかえりー。まあ、センセのことだから無事だって信じてたけど」
「まあ、牢城先生をどうこうできる人間なんてそういないからな」
「雫ちゃん先生、お帰りなさいっス!」
「会戦前に、これで一同勢揃いでゴザルな、めでたい!」
「やはー、なんかみんな一回り立派になって。おねーちゃんは教師として教え子たちの成長に感動しているよ……」

 冗談めかして言う雫だが、しかし実際、いったん離脱してからの辰馬たちの成長ぶりは一目でわかるほどに著しい。驚きもし、それ以上に嬉しい限りだった。

「うし。そんじゃ、作戦会議。まず現状の兵力、約1万対1万で拮抗。武装と兵の練度はまず向こう。士気は向こうだったけど、……まあ……なんと言いますか……今はウチがやたら威勢良くなってます……」
「そら、辰馬サンのそのカッコ見ればねぇ。オレだって惚れ直す♪」
「うるせーよしばくぞお前。つーかこんな服どこで手に入れた?」
「いや、なんかデブでドレッドのえらい厳(いか)ついおっさんが、これ買わんかーって」
「は? お前勝手に商売とか……」
「いえ、従軍商人の申請は受けて、俺が通しました。兵站とか融通きかせるのに必要だったんで……名前は梁田篤(やなだ・あつし)。商業街区のけっこうな大店の次男坊だそうです。商人としての修行がてら、ってとこでしょう」
「あー……なら、いいか……」
「辰馬サン? なんでオレには厳しくて筋肉ダルマが言うと納得するんスかね?」
「日頃の行い……しず姉は敵中突破して戻ってきたわけだけど、向こうの弱点とか、わかんねーか……」
「うーん、一対一の勝負とはわけがちがうからねー……でもまぁ、どんな布陣でどこにひとが集中してたかはわかるよ? ちょっと紙とペン貸してくれるかな?」

 そうして雫がサラサラッと書き上げたのは、驚くほど正確無比の陣見取り図。辰馬も瑞穂も、長船でさえも息を呑む。雫は「?」という顔できょとんとしているが、これがあるとないとで作戦の成否には天地の開きがでるといっていい。

「これなら本陣を衝ける……! ほむやん! 本隊の指揮、任せた! 兵の士気を保つために仕方ねぇ、さっきの『謎の少女』がお酌なりなんなりしてやっから、死ぬ気で戦えって言っとけ! そして俺たちは少数精鋭、いつもの7人で敵本陣に奇襲をかける! 山南交喙(やまなみ・いすか)をどーにかして、あとは神月五十六(こうずづき・いそろく)さえおさえれば、この戦いシャー・ルフ(王手)だ!」
「やっと個人戦ですね。慣れない将校仕事とか、はっきり言って疲れた……」
「オレもー。やっぱオレは人の上に立つ人間じゃねーわ」
「まったくでゴザルなぁ。というかそろそろ締め切りでゴザル。さっさと終わらせねば。ねぇ、シエルたん?」
「そーだよ。原稿、一度落とすと取り返しがつかないんだから!」

 というわけで。

 作戦、決行。


……
………

 山南交喙は焦慮していた。

 とにかく兵が思うように動かない。女神の令名ひとつで人は簡単に意のままになると思い込んでいた交喙にとって、これは非常に意外なことだった。兵士たちはそれぞれ功名心から先駆け、臆病から進まず、交喙への疑いで動かず、なかなかに交喙の期待に反する。

 このままでは、神月さまに見限られる……。

 本来、女神ホノアカの化身、齋姫として大神官の忠誠と崇拝を受けるのは交喙の側であるはずだが、実際には交喙が五十六に忠誠を捧げている。

 山南交喙はアカツキ京師太宰の、職人街区の染め物屋の娘。

 家庭環境は中流よりはやや上といったところで、あまり娘に関心を払わない両親に育てられた結果あまり人に関心を持たない少女に育つ。学問・運動はとりあえずそこそこ、神術士としての潜力は高いものの、信心深さも慈悲心もおよそ持ち合わせておらず、まさか自分が女神の器に選ばれるなどとは思っていなかった。唯一の趣味は読書で、ある同人小説家がイベントデビューした当初からの熱烈なファンであるのだが、それはまあどうでもいい。

 6月20日頃、とつぜん神月五十六が交喙の前に現れて、お前に生きる意味と意義を与えよう、かわりに一生をかけて儂に尽くせ、と放言した。最初、この爺はなにをほざいているのかと思うものの、宗教特区ヒノミヤの人心掌握術かそれとも五十六のカリスマゆえか、何度か顔を合わせるうちに五十六に心を絡め取られる。出会って一週間ほどで交喙は完全に五十六の虜となっており、この老人に処女すら捧げ、完全な忠誠を誓った。そしてホノアカの「力」を身に受けて齋姫となり、半神半人、現人神となったのだが。

 あまりに強大すぎる力を訓練・修練なしに手にしたために、その心は傲慢を絵に描いたようなものとなった。もともと他人への関心が薄いために人間心理に疎く人心をおもんぱかれない交喙が人心収攬など出来ようはずもなく、五十六以外の一切を見下す彼女に最初こそ女神の現し身として交喙を崇拝した人々もその倨傲に気づいてすぐ、離れていく。離反した人々への怒りから残った人々にまた癇癪を発し、さらなる離反を招くという悪循環。これに関して軍師参謀、磐座穣(いわくら・みのり)からぼろを出さぬようあまり自分というものを主張しないよう警告は受けたものの、そもそも自分が倨傲であるという大前提に気づいていない交喙が気をつけようもなかった。

 そもそも同じく神月五十六の寵愛を受ける者としてライバル関係にある穣の言うことを、交喙が素直に聞くはずもない。交喙も穣も「五十六の愛妾」という立場は同一だが、穣が五十六ひいてはヒノミヤを世界の最終的覇者となすべく動いているのに対して交喙にはそんな視野がない。ただ、五十六が世界を獲ったならそのとき皇后として冊立されるのは自分だという強い野心だけはあり、穣相手にとてつもなく強烈な敵意を、交喙は持っている。それは五十六の寵愛の度が明らかに自分より穣に傾いているという嫉妬からの憎悪なのだが、交喙はそこに目を向けることのできる器量を持たない。

 これもすべて無能どもが悪い……! 神の意志に沿えぬクズども、いっそ敵も味方も、神焔で浄化してやろうか……!?

 片倉長親・鷺宮蒼依をはじめとした離反の将、意のままに動かない兵、そして磐座穣への嫉妬心と、敗北して五十六に捨てられるのではないかという恐怖。それらが渾然となった苛立ちに、交喙はツメを噛む。新羅辰馬ならこの状況、まず自分が起って陣頭指揮を執り士気を発揚するところだが、交喙にその概念は根本的にない。総大将が本陣を動くなどばかげたこと、交喙の理性と知性はそう確信している。それはある意味で正しいのだが、臨機応変の用兵、という意味で考えるなら今は後方に構えるより、すくなくとも前線に女神の姿を見せて錦の御旗を掲げるべきであった。

 それにしても敵勢が強い。兵力は五分にされたとはいえ、武装と練度では圧倒的にこちらが上。正攻法の真っ向勝負で苦戦するほどのアドバンテージがあるとすれば……。

 さっきの、あの女か……!

 銀髪に白ローブの、あの少女。確かに天女というべき美貌ではあった。ヒノミヤが女神のために奮闘するのであれば、アカツキはあの少女を対抗手段として祭り上げたのだろうが……。

 力もない、顔だけの小娘になにができる!

 対抗意識、本能的な敗北感からの嫉妬、そういうもので、交喙は内心激昂した。指示を仰ぐ士官たちへの目も、険しいものになる。

「お前たち、全力で敵を押し返せ! ここは女神の膝元、その威信にかけて、敗北も後退も許されぬ! 進め、喜んで死ね! 死ねば神の庭に迎えるぞ!」


……
………

 そう交喙が咆哮した頃。

 意気軒昂な兵士たちを率いて、明染焔(みょうぜん・ほむら)は水際だった指揮を見せる。

 焔が戦前にたてた陣法はそれまでの中央…左右両翼の3陣を前後6陣に分けるという戦い方。まず前陣が衝撃力を与えた後、後詰めの陣は自在に素早く敵の弱点を衝け、またこちらが圧されているときの対応も迅速になる。これは騎馬遊牧民族、ことに中世における草原の覇者ティメルランの戦い方に似ているが、軍人でもない明染焔がどこでこんな用兵を身につけたかと言えば天性というほかはなく、彼もまたまぎれもない天才であった。参謀兼監察官としてつけられた長船が、やることがない。事ここに至って奇策を弄する必要はないし、必要があるとしたらそれは敗勢であって真っ向勝負ができている現状は正しいのだが。

「うらあぁぁぁぁぁぁぁぁーっ! いけいけ、崩したれ! 気張ったら謎の美少女Tちゃんが、後でえっちなご奉仕してくれるでぁ! 崩せ、進め、潰せぇ!」

 辰馬が聞いたら卒倒しそうなことを吼えて、焔は陣頭の最も苛烈な中央先陣で獲物を振り回す。一太刀で5人の首が飛び、2太刀で10人。無類の用兵巧者は、恐るべき鮮血の修羅でもあった。

 右翼先陣には厷武人(かいな・たけひと)。ガラハドに片腕を切り落とされながら、この少年の剣技はなお衰えることを知らない。焔の技が炎の苛烈なら、厷のそれは水の流麗。優美な弧を描く剣閃の領域に入った不幸な敵は、容赦なく両断される。

 左翼は新規参入の鷺宮蒼依(さぎみや・あおい)。彼女本来の獲物は左右の双刀だが、馬上で振るうには短すぎるゆえに長矛を執っての勇戦。もともとヒノミヤの姫巫女となる前は流れの武芸者の娘であった蒼依の武技も、相当なレベルである。疾風のごとくに舞い、切り崩す。

 中央および左右の翼がそれぞれに傑出した指揮官を得て敵を突き摧し、そこに後詰めの後陣が追突の衝撃力でとどめを刺す。兵力は互角、武装はヒノミヤ。しかし指揮官の能力と兵の運用が、雲泥でアカツキ。最初の激突の時点で、アカツキ12師新羅隊はヒノミヤ勢を圧倒し、ほぼ勝利を決定づけた。


……
………

「もう我慢ならん! 敵も味方も、わが神焔で焼き尽くす!」

 床几を蹴って立ち上がる交喙。そこに。

「ぅだしゃあぁっ!」

 と、あまり上品ではないかけ声とともに幕舎へと飛び込んでくる一団。青ベースの軍服は見間違えようもない、憎きアカツキ正規軍のもので、それが6人。そしてあと1人、白き衣をまとった銀髪の美少女は……。

「お前は……さっきの天女!」

 紛れもない。宛転(えんてん)なる蛾眉(がび)、面は芙蓉のごとく、玲瓏無比たる美貌は濃艶(えんぜん)として露に濡れる牡丹の如し。まさに閉月羞花(へいげつしゅうか)というべし。この女を八つ裂きにしても飽き足らないくらい憎悪していた交喙をして、なおうっとりしてしまう美貌。緩くウェーブして光をはじく銀髪に、大きくきらきらと輝くルビーの緋眼。処女雪よりなお白い肌、細くたおやかな手足を包む、ゆるゆるとした純白の法衣(ローブ)とベール。

 天女、と呼ばれて、少女は非常に不愉快、というか不本意、というかひどく苦い薬を飲んだような、複雑な顔をした。そして清冽可憐な美貌からはまったく想像もつかない粗野な動きでベールをひっつかむと、ベシ! 地面に叩きつけて声高に吼える。

「だから着替えてからにしよーって言ったんだよ! ここにこのカッコでくる意味あったか!?」
「いや、面白そーだったし……」
「お前ホントにあとでしばくからな、シンタ。くそ、とにかく! おれはアカツキ12師偏将、新羅辰馬! 齋姫にして女神ホノアカの器、山南交喙、お前をここでぶっ倒して、この戦い、終わりにさせてもらう!」

 びし、と指を突きつける美少女……新羅辰馬に驚きやや鼻白んだものの。

 なんだ。敵の首魁が向こうから殺されにきたじゃないか……なら、望み通り終わりにしてやろう! この首を献じて五十六さまに褒めていただく!

 すぐに自若を取り戻し、交喙は鼻で笑う。

「不遜きわまりなし。わたしを神と知って、その大言を吐くか、人間!?」
「努力も研鑽もなしに、たまたま神の器に選ばれただけのチンピラがえらそーにほざいてんじゃねぇよ、ばかたれ。しばくぞ」

 不遜の暴言に、交喙の神力が一極で爆発、まとう神炎、その色は赤でなく、蒼ですらなく、陽炎揺らめく白。神威かつてなく高まり、殺意もまた。

「塵と消えよ!」

 袖を翻し、交喙は腕を振る。忽ち、螺旋を描く白焔の大槍が辰馬たちをめがけて飛んだ。その数7条。一条で一人を殺す構えだ。ひと一人ずつにこれほどの大火力を用意するのはオーバーキルもいいところだが、それだけの威力を前に辰馬の心は、寸毫のさざめきもない。腕に巻いた呪い石を外す。

「我が名はノイシュ・ウシュナハ! 勇ましくも誇り高き、いと高き血統、銀の魔王の継嗣なり!」

 放り捨てて、呪訣の宣言。次の瞬間、辰馬の中でひとつ、殻が割れて落ちる。

 女神の神焔、それは忽ちにかき消された。消されたと言うよりむしろ、最初から「なかったことにされた」ように。

 世界が、歪む。あまりに大きすぎる力に許容量を一瞬で突き破られて、一度世界は死に絶え、そして須臾の間も置かず再生して、もとに戻る。破壊と再生は世界の誰一人にも気づかれずに行われ、結果としてなにかがあった、という“歪み”の認識のみが残った。

 世界はかのものの力に耐えうるものとして再構築されたものの、なお荒れ狂う奔流は暴河の奔騰。煉獄(ゲヘナ)の灼熱にして絶対地獄(コキュートス)の氷獄、相反する極大、無限の混沌を内包し、威力三界の端々に響き世界を震撼させる。世界が震撼し、天が歌った。天とは神でなく魔でもなく、天地にあまねく世界意思。宇宙の万象を構成する根本原質(プラ・クリティ)は歓喜に震え、16年の空位を経て玉座にのぼった新王の登位を高らかに祝福する。

 新羅辰馬は、軽く腕を振って舞い上がった煙を払う。その背に広がるは12枚の黒翼。熾える焔のように、脈打ち明滅する光の羽、その一枚一枚が世界を支えるに足る無比の力の結晶。先ほどまでの純白修道衣は盈力で構成された漆黒の神衣(かんみそ)に変換されており、指先の一本一本、赤い瞳の奥、総身に黒い稲妻を思わせる盈力がバチバチと走り、火花を散らす。それ即ち、魔王再臨。

 山南交喙……というより、その身に宿す女神ホノアカが、戦慄して総毛立った。目の前に立つ相手の、あまりに隔絶した力、そのすさまじさに本能が震え上がる。女神としてこの世に創造されて以来、これほどの力を目にするのは母なる創神、グロリア・ファル・イーリスをおいて他にない。無意識に、一歩下がる。

「さて。人間ごときじゃ話にならんって言いたそーなんで。次代の魔王としてお相手しようか、女神さま?」

 爛々(らんらん)と、炯々(けいけい)と。緋い瞳を輝かせ、魔王、新羅辰馬はそう言うとうすく笑った。辰馬らしくなく、酷薄に。

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2023/04/27 17:10

23-04-27.「日輪宮の齋姫」体験版ver1.1!

こんにちわです!

先日宣言しました通り、「日輪宮の齋姫」体験版ver1.1を公開できる目処が立ちましたのでこちらに。

日輪宮の齋姫/体験版23-04-27.zip (1.69GB)

ダウンロード

3章牛頭天王篇までプレイ可です。全5章で5章は戦闘なしの瑞穂さん、辰馬くんラブラブおねショタシーンなので実質は4章完結、なので公開範囲としてはここまで。あとは細かい修正を重ねていくことになります。今回テストプレイを十分に行っていないので不具合あるかもしれませんが、ともかくプレイしてみてくださいませ!

ver1との変更点としては
・タクティカルコンバット準備中の「情報」コマンドから各キャラのプロフィールが閲覧可能。
・味方各キャラに策略スキル搭載
・瑞穂さん、晦日さんに戦術スキル搭載(「軍師」に選択したキャラのみ)
・敵キャラのHPを上方修正
・敵ユニットに対術結界、砲撃結界もちを増量
……こんなところでしょうか。

 ゲームの流れとしてはAVGパート→戦闘準備→戦闘開始→所定の敵を所定の数倒してから、報告→次のAVGパートに進む、という感じになります。前回これを明記していなかったのでゲームの進め方がわかりづらかったかもしれず、申し訳ありません。

タクティカルコンバットでは2章で騎兵を3体倒した後も「報告」を選ばず「秘薬」をいっぱい稼ぐのが攻略法になるかと思います。ほかにスキル構成(メニュー画面の「TPパッシブ設定」から設定。戦闘一回ごとに変更可能)はカブト割、次元斬撃推奨ですが次元斬撃を持たせるとイベイドもちに攻撃が当たらなくなったり、巨人狩りや心格穿ちがないと体躯持ちの敵に攻撃が通らなかったりします。そのあたり敵のスキルを打ち消すのが愚者の嘘ですが、このスキル挙動が怪しく……敵のすべてのユニットのスキルを上からこちらのスキル数打ち消す、はずなのですが効いているのかどうかよくわからないところがあります。明確に必要なのは対術結界と砲撃結界。部隊に一人はこれを持たせないと一撃死になる可能性大です。ほかに統率・活性の類も重要。

こんなところでしょうか、それではよろしくお願いいたします!

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遠蛮亭 2023/04/27 07:34

23-04-27.「くろてん」小説再掲+ゲームくろてんイベント組み換え+イラストリハビリ

おはようございます!

昨日は何か月かぶりに徹夜して「ドーナドーナ」やってました。面白い! もうなんか自分の作ってるもんが矮小すぎて敗北感というより自分いらないなぁと思ってしまうところですが、そこはまあ自分の作るものにも多少の意味はあるはず、と信じて頑張ります。「日輪宮」はこけてもいい……勿論成功したいですが……から「くろてん」は売れるといいなーと思いつつ、昨日イベント表を見てたらどうも、日常一般イベントを増やしたくなりました。

なので、辰馬くんと3人娘の関りはエロ最小限にイベント4つに抑え、日常イベ枠を各人6つに。寝取られ凌○系は変わらず6枠ということに少し変化させました。純愛イベが好きな人はエロよりキャラの掛け合いとかそっちを重んじる……と、思う……ので純愛エロは減らしてもいいかなと。そのぶん通常イベでの会話を頑張ります。純愛ルートはエロゲというよりエロありのギャルゲっぽくなる感じで。あとアーシェおかーさんやフィーリアママのイベントも純愛一辺倒ではなく鬼畜ルートありにしたりとか多少調整。

試しに瑞穂さんのイベントがどうなったか書き出すと……

日常1-病院のベッドの上
日常2-街角デート
日常3-初夏の氷雪、着ぶくれ瑞穂さん
日常4-図書館デート
日常5-サティアの結界を破壊
日常6-義父の墓前でキスシーン

純愛エロ1-誘惑パイズリフェラ
純愛エロ2-搾精騎乗位
純愛エロ3-図書館の書架の物陰で……
純愛エロ4-辰馬、瑞穂、雫、エーリカ4P

NTR凌○1-大輔を人質に瑞穂に執着する神官(腐竜人)
NTR凌○2-娼館に呼ばれエロ爺たちに輪○
NTR凌○3-膨乳搾乳フライングファック
NTR凌○4-サティアの力を借りて瑞穂を下し、モノにする神官
NTR凌○5-神官に完堕ちの瑞穂さん
NTR凌○6-竜の仔出産

こんな具合です。これだと「出産プラグイン」も「娼館プラグイン」も必要なさげなのがもったいないですが、通常のイベントで賄えるならそれはそれでよし。タクティカルコンバットは使いますしね、SLGシステムは……使うかどうかまだ迷い中ですが。

で、昨日やったお絵描き。

この2枚は「日輪宮」の娼館SM系イベント絵ですが、なんかやっぱり最近絵がよろしくない。なのでちょっと人の絵をお手本にしてリハビリ一枚描いてみようと思い描いてみたのが、こちら。

広輪さまにイラスト描いていただく予定で作っていた「日輪宮の齋王」の瑞穂さんパイズリイベントを参考に描いたものですが、まだ塗ってないけどやっぱりお手本があれば多少はうまく描けるなぁと確認。もとになった絵をお見せできればいいのですが、あれはゲームの形になる前にお蔵入りしたものなのでアップするのも少々、憚られます。すみません。

それでは、今日も「くろてん」小説再掲。1幕につき1回は差し込まれる、新羅辰馬女装伝説の1回目です。

黒き翼の大天使.1幕3章12話.天女下梵

 ガラハド・ガラドリエル・ガラティーン、30才。

 ラース・イラ王都タリエシンに生まれる。

 両親はともに魔力すぐれる名門貴族の子弟であったが、にもかかわらずガラハドには魔力の流れがない魔力欠損症であることが、生後すぐに判明。

 魔力を持たないことが罪悪ではないはずだが、両親はなまじ自分たちが魔法世界のエリートであるためにそうは考えなかった。彼らは息子の欠損した資質は将来自分達の禍になると考え、あるもぐりだが優秀有能な呪術師に相談をもちかける。

 その結果として、ガラハドは全身に呪印というまじないの刻印を刻まれることとなった。この幼子は全身を彫り刻まれながら口をきっと閉じていっさいの悲鳴を上げることがなかったという。ともかくにもこの呪印により、ガラハドはひとつの力を手に入れる。すなわち一度身に受けた力をそのままにコピーして放つという力であり、これゆえにガラハドは「魔力による攻撃を無効化する体質」と「敵が強大な魔力を使えば使うほど、その力を逆用する」という二本の柱をその強さの背景に持つ。

 長じて、彼が15、6才の頃。

 世界は「魔神戦役」のまっただなかであり、暗黒大陸アムドゥシアスの魔族はアルティミシアに上陸、跳梁した。この当時にガラハドは魔族がもちこんだ流行病で両親を失い、孤児となる。

 1799年の秋。孤児院の仲間たちのため教会にパンを取りに行ったガラハドは神父とシスターが魔族に食い殺されているのを見て逆上、祭壇の儀礼用メイスを取ってこの敵に殴りかかる。

 当時まだガラハドは今のような天才ではなく、ただ魔力を通さない体質をもつだけでそこまでの鍛錬を積んでいたわけではない。根性や怒りの力、そんなもので勝てるはずもなく、当然のように返り討ちに遭った。

 しかしガラハド少年は立ち上がる。血まみれになりながら何度も何度も立ち上がる子供に、その魔族は気圧された。本来なら何度死んでいてもおかしくないはずの魔力をたたきつけられて、ダメージを受けていないというところも魔族を不気味がらせた。恐怖で動きがわずかに鈍った、そこをガラハドの天性は見逃さなかった。メイスを全力で突き出す。本来なら魔力の障壁が魔族の身体を防護するはずが、ガラハドの力で障壁は霧散、メイスは魔族の心臓をえぐり、絶命させる。

 あらためて実戦の恐怖と失血で倒れたガラハドは、「騎士団」のセタンタ・フィアンと名乗る青年により助けられる。

「お前、騎士になれ」
「?」
「お前はセンスも才能もないが、根性がある。最後に勝つのはそういう奴だ」

 数ヶ月間ガラハドを養育したセタンタはそう言ってガラハドの背中を押す。魔術の名門に生まれながら魔法は使えず、それまでろくに喧嘩を為たこともなかった少年ガラハド、それがのちに世界最強の騎士といわれるにいたる、ここがはじまりになった。

 以来ガラハドはセタンタの元で厳しい修行に明け暮れる。セタンタのしごきは凄絶を極めた。一日あたり100万回単位の筋トレを課し、甲冑を着けての走り込み100キロメートル、毎日それをこなしたうえで、実戦さながらの打ち合い稽古。セタンタという男は相手が15の少年だろうが容赦なく、ほとんど殺す気で打ち掛けた。試合用に穂先を潰した刀槍とはいえ青痣の耐えることがなかったし、とくに突きを得意とするセタンタの猛撃によりガラハドは何度も喉を潰された。現在も彼の声がややハスキーにかすれ気味なのは、このせいによる。

 修練の効果は3ヶ月目くらいから如実にあらわれ始めた。セタンタの槍が見えるようになり、ガラハドの剣がセタンタに中るようになってきたのである。セタンタは一本取られると悔しがりながら、しかしそれ以上に弟子の成長を喜んで豪放に笑った。

 ガラハドが自分の身に宿る呪印の力を意識したのはこの頃。騎士団所属の魔道部隊は魔術が使えないくせに魔術のきかない体質のガラハドを苦々しく思ってしばしば嫌がらせを仕掛け、ガラハドはおとなしくそれに耐えたものだが、あるとき気を抜いているところに攻撃魔法をぶつけられると自動で呪印の自衛能力が作動、全力で術をはじき返し、大けがを負わせてしまう。ガラハドはこの魔術師に跪いて詫び、彼が快癒するまで騎士としての修行と平行で彼の身の回りの世話をし、やがて回復したこの魔術師エーンガス・ボァンから魔力制御のすべを学ぶ。

 かくして、15才から16才の間に十分な力をつけたガラハドはその後1800年~1804年ごろまで、騎士団の一員として大陸中を駆け回り魔族や眷属を討って回る。一般に魔神戦役は魔王オディナ・ウシュナハが討たれた1800年をもって終結したとされるが、実のところそう簡単ではない。魔王がいなくなっても魔族がすぐにアルティミシアから引き上げるわけではなかったし、厳格な魔王の統制から解き放たれた魔族たちは以前にも増して凶暴にもなった。人間の苦難と試練はむしろここからだったといってよく、魔王退治の新羅狼牙が凱旋して栄誉を受けたその裏で、ガラハドは多くの魔族を狩った。その中には魔王オディナ同等と互角といわれる、「魔王格」の存在すらいたとされ、彼が一部の識者から「世界最強」を謳われるのはそれゆえだ。

 やがてガラハドが20才を越えると、セタンタは「騎士団団長」の地位を退きガラハドを新団長に推挙、ほぼ満場一致でガラハドは団長に就任し、隠居を考える師匠セタンタを副団長として慰留する。こうして現在のラース・イラ騎士団は形成された。

 その後もガラハドは研鑽を続け、一騎士としてではなく将帥として各地の戦争にも介入した。魔王という共通の敵がいなくなった瞬間から人間は互いの国でそれまで停止していた戦争を再開させたから、ガラハドは「ラース・イラの正義と国益のため」にこれら紛争を潰していき、「平和の作り手」と称されるまでになった。先代女王が亡くなってエレアノールが即位すると「女王の騎士」に叙任され、エレアノールの手の甲にくちづける栄誉に浴す。

 その、無双のガラハドが。

 今、圧倒されていた。

「やぁっ!」

 伸びてくる鋭利な切っ先をすんでで躱すが、すかさず次、次、さらにその次が襲う。その連撃があまりに流れるようにつながり、隙がなく、ガラハドともあろう者が反撃に転じることができない。20合、30合と、圧倒されっぱなしのガラハドはひたすら受けに徹する。

 まさか、この10日でここまで腕を上げるとは……!

 驚嘆に舌を巻く。10日前はこれほどの威力も、技巧も、速力もなかった相手だ。それが今や……。

「やっ、てぇいっ! やははーっ、どーしたぁ、ガラハドさんっ!?」

 手にするは銘刀「白露」。牢城雫はピンクのポニーテールを揺らし、元気いっぱいでそう言った。

 言うなり床を蹴る。

 ちっ、ちちち、キン、キィン……ッ!!

 再び、支えきれないほどの猛攻。10数合目、受けようとしたガラハドの剣が、深く沈んだ雫が跳ね上げた一刀で宙を舞う。

「……く!」

 すぐさま組み討ちに意識をシフト。格闘技術といえば東方だが、ラース・イラにもパンクラチオンをルーツに持つ甲冑組み討ち格闘術は存在する。迎え撃つ。

 しかし、雫の方が圧倒的に疾い!

 ひぅ! 風切り音が空を裂き、きん、と耳鳴りが劈く。次の瞬間、ガラハドは大きく背後に吹っ飛ばされていた。ダメージを感じる暇もなく、痛みを認識したのは壁に激突して一瞬、とんだ意識がもとに戻った後。ラース・イラ騎士団の胸甲が、ほとんど両断されているのだからすさまじい。

「ふっふー。あたしの勝ちだね、ガラハドさん」
 豊かな胸を昂然と反らし、牢城雫は鼻高々で威張る。それはもう、世界最強の騎士をあそこまで一方的に凌駕したのだから、このくらい威張ってもいい。

「参った。完全に追い抜かれてしまったな……今のが、新羅江南流“天壌無窮”の境地か」「まぁねー。まだまだ師匠みたいな魔法っぽいことはできないし、集中力も10分もたないくらいだけど。その10分間、『剣技を理想型に最適化』するくらいはなんとかマスターできたかな-」

 剣技を理想型に最適化。それが雫のつかんだ天壌無窮。転変して極まりなき無限の剣技の中から、常に最高速で最善手を選び、実行する力。過去に存在したありとあらゆる剣豪、剣聖の技術の集積に、雫のオリジナルを載せた究極剣技。もはや剣聖を超越して「剣神」の域だ。それは私もかなうはずがない、とガラハドは苦笑した。

「さて、そんじゃ約束どーり勝ったし。帰ってもいーよね、ガラハドさん」
「それは構わんが、今ここを出るのは危険ではないかな。外は戦場だぞ?」
「んー、なんとかなるでしょ」


……
………

 新羅辰馬にとって事態は快方に向かっていた。

 まず、瑞穂たちの合流。兵力的な安心感もあるが、やはり瑞穂がそばにいるといないとで心理的平穏の度が全然ちがう。山道を登って瑞穂たちが上がってきたときはもう、とびついて抱きつこうかと思ったほどだ。さすがに自分の立場だとかキャラクターだとか世間体を考えて自重したが、辰馬の中で神楽坂瑞穂の存在はことほどかように大きい。長船には瑞穂だけが特別な訳ではないと言ったが、実のところやはり雫やエーリカを相手にしても瑞穂の重みは突出している。

 ついで片倉長親、鷺宮蒼依の参入。ヒノミヤの戦術を知り尽くした老将と、ヒノミヤの象徴である姫巫女の一人がこちらに降ったという事実もまた大きく、そして三つ目、片倉たちの投降が呼び水となって、長船が撒いた調略が花を咲かせた。ヒノミヤの将数人がこちらに寝返り、辰馬はこの戦はじまって初めて、戦力的優位に立つ。

「うし。やっと遠慮なく戦える土俵に立てたな」

 幕舎で兵たちの様子を見て、辰馬は満足げにうなずいた。ここまで常に寡兵での勝負を強いられていたため、この戦況の好転は感慨深い。

「ここでひとつ、決戦前に士気を上げたいところだが……なんか、スピーチでもすっか……」
「そんな辰馬サンにこれ! これこれ、これ見て、これ!」

 駆け寄ってきたのはシンタ。なにやら大きめの箱を抱えている。

「うっさい騒ぐなばかたれ。……で? なんだよ?」
「だからこれこれ! 開けて開けて!」
「ん?」

 開けた。

「なんだこれ? 布……服か」
「イェス! 着替えて着替えて! さぁ脱ーげ、脱ーげ!」
「おまえ……、男同士でもセクハラで訴えるぞ……? ってなんかこれ……女ものじゃねーか? スカートだし」
「いーから! 着替えて!」
「ぉ……おう……」

 着替えた。

「うはあぁ~! かーわーいーいー! 辰馬サン、結婚して!」

 目をハートにしてシンタが叫ぶ。それも無理はないくらい、辰馬は本当に可愛く化けた。

 明眸皓歯。きらめくほどに美しい顔立ちに、まとう衣は神国ウェルスの聖女の法衣。白と青基調の修道衣に、薄くピンク味のかかった白のローブ。藍色のスカートの下でおちつかなげに白い足をもじもじさせているのが、妙になまめかしい。頭にはローブと同生地同色のベール。いつもは呪(まじな)いの封石で束ねて留めている長髪はほどいてゆったり膝下まで垂らしてあり、ふんわり少しだけウェーブのかかった銀髪は幻想的優美。透けるような肌が羞恥と怒りで紅潮しているのがまた、たまらなくかわいらしい。ちなみに外した封石はひもに連ねて腕に巻いてある。

「しばくぞばかたれ! なんなんだよこれぁよ!?」

激昂。シンタに詰め寄るが、それより周囲が辰馬を発見するほうが早い。天女かなにかとしか思えない美少女の出現に、あたりは騒然となった。

「ぇ? ぁ? うあぁぁ!? なんなんだよお前ら、おれおれ、おれだって! 勘違いすんなばかたれ! うあああああっ、今触った奴誰だこらぁ!?」
「いやー、可愛い。眼福」

 シンタにカメラを向けられ、辰馬は牙を剥く。

「てめぇ殺すぞシンタぁ!! これはどーいうことだお前、説明しろや!」
「いやいや、士気高揚っしょ? ならこれっスよ! 『聖女系美少女アイドル司令官の訓示』!」
「は? ……この格好で訓示とか……正気か!?」
「だいじょーぶ、問題ないっス。絶対ウケるから!」


……
………

 片倉長親、鷺宮蒼依の離反、それに続く将校たちの寝返りに、山南交喙はいらいらと歯噛みする。兵力の優位はもはや敵方にあり、交喙は窮地に立たされていた。

「全軍、聞け! 叛徒がいくら敵に回ろうと、恐れることはない! わがホノアカの神名にかけて、敗北は決して……なんだ?」

 兵員たちに檄を飛ばそうとする交喙の言葉は、天をどよもす大歓声にかき消される。望遠鏡を掴み、敵陣に目をやると、法衣にベールをかぶった銀髪の少女が、なにやら妙にもじもじとしゃべっている。

 その一言一句、一挙一足に、兵士たちが熱狂しているのがここからでもわかる。アカツキ、新羅隊の兵士の多くは長船言継が齎した8000騎によって成り、その多くは女性兵だが、銀髪美少女の魅力は性別の壁をあっけなくうち砕いていた。少女の、頬を赤らめた些細なしぐさひとつひとつで、一瞬一秒ごとに彼ら彼女らが魅了され恐れを打ち消されていくのがわかる。それこそ、神に弓引くことをも畏れぬほどに。

「く……負けるかあぁ! 近衛、儀礼服をもってこい! 一番ヒラヒラでフリフリのやつだ! 一発、女神の舞を見せてやる!」


……
………

 対抗意識を燃やした山南交喙が間違った方向にはっちゃけた頃。

 羞恥に耐えてかろうじて訓示を読み上げた辰馬は、人生最高のダメージを負って膝から崩れ落ちた。

「うぅっ……いっそもう殺せよ……」
「いやいやいや、最高っしたよ辰馬サン! これはウちの隊の定例行事にせにゃぁ」
「新羅さんがあそこまで化けるとは……いや、もともと可愛いのは知ってたが……」
「シエルたんには申し訳ないでゴザルが……正直……勃ったでゴザル……」
「あの、ご主人さま……かわいかった、ですよ?」
「あはははーっ、かわいーかわいー! あー、笑ったぁ!」

 3馬鹿と瑞穂とエーリカの反応はかくのごときだったが、ともかくとして。

 兵たちの士気はかくして大いに上がった。

「くそ……もうさっさと着替え……」
「だあぁーああぁぁっ! 辰馬サンそれ脱いじゃダメ! そのカッコのまま指揮しないと!」
「は……はあぁぁ!?」

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2023/04/26 22:03

23-04-26.ラケシス・フィーネ・ロザリンド立ち絵!

こんばんわです!

現在「日輪宮」の体験版第2弾、3章まで進められるものを画策しております。今日イベント絵を描いたことでゲーム本体はほぼ完成、あと足りないのは娼館イベントのテキストですがこれは体験版には入れないとして、他に必要なのはゴキ姦シーンの瑞穂さん表情と背景の差し替えぐらい。あとは出来ているデータから体験版に使わない分を削るのみなのであと1週間以内には発表できるかと思います。

ともあれそれは当面どうでもいいとして、こちらを。

蒼月館学生会副会長にして薄幸の聖女見習い、ウェルスからの留学生ラケシス・フィーネ・ロザリンド立ち絵! 自分で描いたラケシスはもっと元気のいいイメージでしたが、広輪さまイメージになることで薄幸のおしとやかさが押し出される形になりました! ラケシスのイベントは本来2章竜の魔女篇における男子の暴動に巻き込まれて凌○ですが、今回は悪い男に騙されて……みたいなやつを4枚。凌○回避はナシですが最終的な不幸を回避する余地はありです。

それでは、今日はこれにて!

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遠蛮亭 2023/04/26 06:31

23-04-26.「くろてん」小説再掲1幕3章11話

おはようございます!

昨日は市役所行きであんまり作業できなかったんですが、一応1枚お絵描きしたのでこちら。

瑞穂さん娼館SMルート(ルートと言ってもランダムで表示されるだけですが……)の1枚目です。あと2枚描いたらとりあえず、「日輪宮」のイベント絵は完了。今回瞳に気合を入れていろいろやってみたんですが、空回りして普段よりダメになった気もします。

さておいて、今日も「くろてん」小説再掲、今回もよろしくお願いいたします!

黒き翼の大天使.1幕3章11話.肆略は火のごとし

「崖に落としましょう。なに、俺の幻を使えば余裕で殺(や)れます」

 こともなげに言う長船に、やはり辰馬は難色を示す。ヒノミヤ内宮を要するこの山は標高1300メートル超、下界とのつながりという関係もあってかそこまで高いわけではないとはいえ、この高さから落ちればまず生きてはいられない。風嘯平で、可能なだけ殺戮を抑制しての勝利でも嘔吐した辰馬が、今度「積極的に」敵を鏖殺する策を使えば、その精神、神経にどれだけの負荷をかけるかわかったものではない。

「正攻法でなんとかなんねーかなぁ。出来るだけ殺さんやり方で……」
「ないですな。そろそろ覚悟を決めなせぇよ、あんたも。食うために殺す、生きるために殺す。そんなこたぁ普段からいくらでもやってることでしょーが……つか、敵を人間と思ってるから駄目なんですよ。駆除すべき害虫と思いなせぇ。あいつらを活かしておいたら世の中が無駄に乱れることになる、よってこれを狩って始末することは人として当然の責務、ってね」
「そんなふーに思えるか、ばかたれ。おれはそこらへん、神経細いんだよ」

 すでに新羅辰馬という少年の精神は臨界に近いところまで来てしまっている。普段なら癒やしとなってくれる瑞穂や雫、エーリカらがそばになく、ばかげた言動と行動で脱力させてくれるはずの大輔たちも今は将校として奔走中。孤立した辰馬のそばでやけにやる気に満ちている長船は新羅辰馬の中に未来の帝王たる相をはっきりと見いだしたおそらく最初の人間ではあるが、しかしもっとも信任厚い人間というわけではなく、辰馬にとっては鬱陶しく気重になる相手でしかなかった。

 こいつを帝王にして、おれはその師父になる。そのためにゃあこんなつまんねぇ戦で折れちまうようなもろい神経してもらっちゃ困るんだがな……。

 すでに辰馬を世界の覇者たらんとさせる意思満々の長船はそう思うものの、新羅辰馬の才能はともかく、精神性がそれに向いていないことは明白だった。今のまま戦わせてもじき、厭戦気分が彼を支配して戦場から身を引くことになるだろう。

「新羅さん、投降者です……っておっさん、なに新羅さんイジめてくれてんだァ?」

 幕舎に駆け込んだ大輔が、椅子に腰掛けて沈む辰馬とそれを見下ろす長船の構図に長文に詰め寄る。普段辰馬のことをアホとかぼんくらとかぼんやりさんとか馬鹿にする大輔たち舎弟らだが、その本質は新羅辰馬の忠実な「番犬」にして「猛犬」。主人に危害を加える相手を、一切許すつもりはない。

「離せよ、小僧。大人相手の態度ってもんがなってねぇーな」
「うるせーよ、おっさん。年食ってるだけで偉そうにすんなって」
「………………」

 両者動く。
 まず仕掛けたのは長船。大輔の手首を取り、下に引いて崩しをかける。力が流れたところに、今度は左右の揺さぶり。存分に崩しとフェイントをかけたところで、入り身になって背負い投げ! 投げてたたきつけると同時、遠慮なく生意気なクソガキの腕を折る……はずの長船の脇腹に、重くじんわり染みる衝撃と、鈍痛。

 体格と筋肉の付き方から、ベースが柔術なのはわかるんだよ。そして、どんな技使ってくるかわかってんなら、負ける道理もねぇ!

 投げられたのはわざと。自ら力に逆らわず投げられることで有利なポジションで長船の下に入り、極められたはずの腕関節も保全。仰臥の体勢では十分な打撃力は出せない? そんなもん、俺の全力の3割が通れば十分!

 どうっ!

 ほぼ密着の状態から、鈍く重い打撃音。マウントを取って完全に勝者の余裕だった長船の身体が、下から上に5、60センチほども浮き、ごろりと転がる。

「がは、げふっ、ごあぁ……!? て、てめ……この、ガキ……ッ!」

 転がり、膝から立ち上がった長船だが、その自分の足が笑ってしまっていることに愕然とする。ダメージもそうだが、朝比奈大輔という少年に関しての情報と実態が、どうにも違いすぎた。学生会騒乱/竜の魔女の一件で見せた超高威力の衝撃波「虎食み」、あれは驚異だが、にしても大きく振りかぶり、打ち放つモーションを必要としたはず。それが今のは。間違いなく超接近戦、いわゆる粘勁に属する短距離打法。寸打、それもほとんど「無寸」に近い。ただの筋トレマニアでは及びもつかない格闘センスを要するはずだ。

「新羅公といいお前といい、どういう成長速度だよ……くそが……」
「三日会わざれば、って言うだろーがよ。で、どーするよ? もう一発受けてみるか?」
「あー、お前らそれまで。大輔、喧嘩しにきた訳じゃねーだろ。用件は?」

 にらみ合う二人に、辰馬が手を叩いて場を鎮める。というか大輔、おれがこんなおっさんにイジめられるわけねーだろーが、と辰馬は少し仏頂面。

「あぁ、はい。なんか投降者です。えー、と、名前は……鷺宮蒼依と片倉長親。服装からして結構偉い立場じゃないかと思うんですが」
「けふっ……と。あぁ、鷺宮は巫女の5位だ。片倉のじーさんはまあ、ヒノミヤで俺と渡り合える軍略家って言ったら五十六じーさんと磐座妹、それとこのじーさんだけでしょーよ。あのじじいにも裏切られるたぁ、いよいよヒノミヤも終わりだな」

 メモ帳をめくって名前を読み上げる大輔にかぶせて、長船が注釈を加える。どうやら二人ともヒノミヤの重要人物であるらしい。それにしても、これによって第3位、磐座穣以外すべての姫巫女がアカツキ側の手に落ちたことになる。あとはこの戦場の敵将、山南交喙(やまなみ・いすか)だが、これは神楽坂瑞穂をなお正統とする辰馬やアカツキ側の立場からは正統な齋姫とは認めていないので、除外。

「人格的に信用できそうか? 大輔?」
「おそらくは。つーか嘘とか腹芸のできるタイプに見えないです、あの二人」
「ん。じゃ、通して」


……
………

「名公(との)におかれましては私ども寄る辺なき敗将をお引き受けくださり、この片倉、まことに幸甚にございます」

 上杉慎太郎、出水秀規にいちおうの警戒をされつつ幕舎に通された老将、片倉長親と姫巫女、鷺宮蒼依は、捕虜の正式な作法に則り辰馬に平伏した。

「あぁ、そーいうのいらん。やめれ。ていうかあんた年上だし。どっちかっつーとおれが頭下げるとこだし」
「いや、しかし……」
「だからなぁ……うん。これ命令ってことで」

 鷹揚に、というよりかぎりなく適当な態度で、手をひらひらさせて相手に顔を上げさせる辰馬。ひれ伏すのは大嫌いだが、ひれ伏されるのも気分がよくない。

 では、と立ち上がり背筋を伸ばした片倉は、シンタと変わらない程度の長身に老いたりといえど逞しい体つき、顔立ちは四角く顎が張っており、無骨で下駄を深く彫ったような顔つきながら重厚で暖かみのある姿貌。頭髪、髭はともに白く、褐色の肌とコントラストをなす。右手の人差し指と中指がなく、そのためもともと右利きであったものを訓練して左利きに代えたのだといい、霊的鉱脈の寡さゆえにヒノミヤの震央にかかわることはなかったが武人としてその人生70年近くをかけてヒノミヤ独立をまもりつづけてきた男は、今、ヒノミヤを裏切った自分に意気阻喪して実際より小さく見えた。

「とりあえず、あんたらは賓客として扱う。ヒノミヤとは戦いたくないだろーから、戦線には投入しない」

 そう沙汰を伝えると、もう一人の投降者、姫巫女、鷺宮蒼依が手をあげた。

「あたしはむしろ前線で使って欲しいですけど」
「んぁ?」
「新しい斎姫……山南交喙が気にくわないので。この剣で一太刀、脅かしてやりたいんですよ。……はっきりいってしまうとそのためにヒノミヤを離れたようなもので、山南と戦えないのなら意味がないんです」
「んー……でもなぁ、配下の連中はまだヒノミヤに心があるわけだろ?」
「では部隊は解体してあたしを一兵卒に。それでかまいません」
「………………」
「いいでしょーよ、新羅公。鷺宮、そんじゃ、新羅公の軍師として任務を与える。お前の願いが叶うかどうかはまずこの作戦の成否如何だ」


……
………

 というわけで。
 鷺宮蒼依は陽動部隊の指揮官を拝命。長船としてはいざとなったら敵といっしょに崖から落としてかまわない囮が出来たとほくそ笑むところ。

 そして。

 片倉の裏切りに激昂したヒノミヤの兵士たちは、辰馬の陽動や長船の誘引なしでも簡単に引っかかる。片倉を誑かし裏切りに踏み切らせた姦婦(ということにされている)、蒼依たちは微動だにせず備えを守るかに見えたが、実はこの陣事自体、長船の幻術により偽装されている。ここに見える部隊も地面も、そのほとんどは幻であり。蒼依隊に気を取られて注意を逸らされていた隙に辰馬立ちに後背をとられていた敵先鋒隊は背後からの一斉掃射に追い立てられる。どうにか目の前の蒼依隊を壊滅させ、敵中突破での撤退を画策するも、突っ込んだ先に地面はなし。大慌てで制動をかけるも急に止まれるものでなく、さらには後ろからの砲火にさらされて次々と断崖に落ちていく。辰馬は気が狂いそうになるほどの煩悶を抱えながらも、これも責任。落ちていく敵兵の姿を目をそらすことなく見据え続けた。

 まず辰馬が長船の策と幻術で敵先鋒隊6000の残り5000を壊滅させ、残敵数14000。


……
………

 いっぽう、明染焔と磐座遷(いわくら・うつる)の対峙する山岳戦。

 実際のところ、アカツキ側の作戦立案から実戦指揮まで、ほぼすべて神楽坂瑞穂の手になるが。

 こちらは膠着しつつあった。

 何度か荷車要塞(ワゴンブルク)を突破しようと突撃した遷は再三にわたり退けられ、自分の手段の拙さを痛感、すぐさま手段を切り替え、騎兵隊を下げて鉄砲隊を前面に出すと、上から滝のような銃火を浴びせる。

 実際瑞穂が一番恐れたのは敵が防備を固めてこの戦法に出ることであり、荷車要塞は対騎兵、とくにプライドが高く引っ込みのつきにくい貴族や上流階級者の騎兵に対する、なりふり構わぬ平民歩兵による切り札とはなりうるが、あくまでもこの戦法は野戦築城の延長線上。兵の訓練がしっかりしていれば荷車を戦車代わりに攻勢手段として使う運用法もありだが、今のアカツキ偏将新羅辰馬隊における兵員にその練度はなく、攻めの決め手には欠ける。

 この半日のうちに何度か動揺を誘う密書や擾乱部隊を送り切り崩しをはかったものの、これらは尽く看破され、危うく密偵が捕捉されかかる。もし彼らが捕まって見せしめに処刑でもされれば、こちらの士気低下は免れないところだった。磐座遷という男は先手衆(さきてしゅう)の筆頭を任されるだけあり、華はないものの堅実な用兵で、「隙を見せないことに徹する」ことにかけて練達であった。

 しかし天は瑞穂にほほえむ。

 折しも7月末。空は晴天にして乾天。風は北西で、そして瑞穂たちに追い風。

 火攻に格好の状況が整い、あとはどう炎を制御するかだが、ここに炎を操る技に関してならプロ中のプロという男の存在を忘れてはならない。

 大将、明染焔。人理魔術使いとしてはほぼ限界レベル、4000度に達する炎を自在に操る男。これまで種々の状況的制約で火炎使いとしての本領を発揮できなかった焔だが、ここで存分、遺憾なく能力のほどを発揮することとなる。

「目覚めたる人間の守護者、マナス(意)勝れたる火天の王よ、天を摩するはいと高き焔、明らけく光輝われらを照らせ! 聖浄なる炎、三界を掃け! 沖天烽火(ちゅうてんほうか)ァ!」

 神讃とともに、腕を振って空を薙ぐ焔。

 放たれるは神焔。古神の一柱たる火神アグニからの借力は、現存の主神ホノアカの炎にも引けを取るものではない。炎は乾燥した山を一気に飲み込み、中腹一帯は紅蓮に包まれた。

「好機逸すべからす! 全軍突撃です!」

 周章狼狽する敵を前に、瑞穂の号令。猛火の中を、アカツキの兵は山上目がけて突進する。真っ向勝負であればともかく、この状況において堅守の名人、磐座遷も守り抜くことは不可能。再起不能に摧された陣を惜しむまもなく追っ手に囲まれ、磐座遷は逃亡を強いられた。先手衆としての遷の個人戦闘力を恐れた瑞穂はこの場で遷を抹殺すべく刺客の勢200を送り込んだが、驚異的なことに遷はこのすべてを退け、傷を負いはするもののヒノミヤ内宮への帰陣を果たす。

 戦闘が終結すると焔は、あれだけ猛威を振るった炎を一瞬で鎮火させた。火計が有効な状況で、これほど優位に立てる能力もまずない。

「強行軍! ご主人さまたちに合流します!」

 山上の要塞を確保した瑞穂は、すぐさまの進軍を言い渡した。これにより、山上平地における新羅辰馬の勢は辰馬約1800+焔・瑞穂勢約6000、それに老将片倉と姫巫女、蒼依の約600を加えておよそ8400。山南交喙10000に、数の上ではほぼ拮抗する数字で相対することとなる。

………………

以上でした、それでは!

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