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ゲーム発売の記事 (18)

遠蛮亭 2023/06/05 09:53

23-06-05.くろてん再掲2幕1章4話

おはようございます!

黒き翼の大天使~日輪宮の齋姫 DLsite直リンク

まずは「日輪宮」の直リンク、現状まったく売れてなくて遠蛮の精神が不安定になってしまってるので、よろしければ購入お願いします!

昨日今日とまた体調が悪く、どうしたもんかなと思うとやっぱり「日輪宮」の売れ行きが身体化障害に引っ掛かっているようです。昨日は7時ごろに寝ちゃいましたし今日は9時になるまで寝てました。一応昨日のうちに「聖鍵を求めて」のシナリオと瑞穂さん、アーシェおかーさん、ラケシスの固有武器5段階ずつとか設定してちょこちょこ進めはしましたが、「日輪宮」がこの状態だと「聖鍵」もこけそうで既にやる気がないのでした。しばらく置いてもモチベーションが恢復しなかったら「聖鍵」は凍結するかもしれません。とはいってもイベントCG発注している以上、途中で取り下げることもできないのですが……。

ともかくもくろてん再掲、今日もよろしくお願いします!

………………
黒き翼の大天使.2幕1章4話.魔徒

 覇城のプライベートビーチから徒歩20分。土産物屋のたちならぶ小さな町で、辰馬たちは聞き込みを開始した。リゾート地だというのに、彼らの顔色は一様に暗い。

 曰く

・新しい覇城の当主が、黒髪美女を連れてきた。
・それと時を同じくして、タコ人間のような異形の魔族が近隣に出没するようになり
・魔族たちは若い娘を攫っていき
・それに呼応するように、外洋でなにやら巨大な質量の脈動が観測される。

 途中シンタが女の子をナンパしたり、辰馬がチャラ男からナンパされたり、瑞穗が色男に口説かれたりするのを全部無視して結論を言うと、だいたいこういうことだった。

「ふむ……外洋、ってことは船が要るな」
「梁田のオッサンに頼めばいーんじゃないスか?」
「まあ、そーなんだが。……とりあえず戻るか」
「辰馬さま、ちゃあんと雫先生に謝るんですよ?」
「ばかたれ。なんでおれが謝らにゃあ……あー、うん、わかった、謝る」

 瑞穗の言葉に反駁した辰馬だが、瑞穗が悲しげな顔になるのを見てすぐに態度を変える。どうにも瑞穗に泣かれると弱い。

 ちょろいなー、この人。まあ、そーいうトコがあるから、オレなんかはついて行く気になんだけど。

 シンタはにやにやと含みのある笑顔で、辰馬と瑞穗のほほえましいやりとりを見つめた。辰馬から「あ゛?」と睨まれるとおどけたように首をすくめ、へらりと笑って鋭鋒を躱す。

「そんじゃまぁ、あのクソガキに言ってやるか。おれのしず姉に手ぇ出すな、ってな」
「はい♪ それがいいです?」

 瑞穗は我がことのように嬉しげに笑った。

 不思議なことに、辰馬の周囲の女性というのは辰馬が自分以外の女性に好意を寄せることを気に掛けない。彼女らの包容力と理解が以上に度外れているのか辰馬の甲斐性が馬鹿でかいのか、とにかく辰馬が誰かを抱いたとして、怒るベクトルが「じゃあ不公平なく、わたしも抱いてくださいね」という態度にしかならないという関係性ができあがっている。まあ、まだ素直になれず臥所《ふしど》をともにしたことのない文や穣、そもそもゆかの傅役《もりやく》であって辰馬に特別な情愛を抱いているわけではない美咲などが今後どういう態度をとるかはわからないが、瑞穗と雫、エーリカと、そしてサティアの4人に関しては女性間における嫉妬というものがほぼ存在せず、ありえないほど仲がいい。……ただし、歴史的なことを言うとこれからのち20数年後、エーリカは瑞穗を嫉妬したあげく、殺害するに至るわけだが、それはこの場ではまだ芽も出ていない話である。


・・
・・・

「みさきー、雫おねーちゃんはー?」

 リゾート地に来ても皇国……というか直属の上司本田馨紘《ほんだ・きよつな》への報告書をまとめている晦日美咲《つごもり・みさき》に、公主(こうしゅ。皇籍の姫)であり個人的な主君もある小日向ゆかが問いかけた。主君に暇を感じさせてしまった自分をおおいに羞じながら、美咲はそういえば、と訝《いぶか》る。覇城瀬名に手(実際的には腰を抱かれだったが)を引かれて連れて行かれたのは確認したが、ちょっとお話、というには長すぎる。というかあのブラコンお姉ちゃんが辰馬から離れて他の男と長時間二人きり、というのが、考えるだに妙であった。

「探してきます」

覇城の新当主、その放蕩の噂を思い返し、最悪の事態が頭をよぎる。雫という武技の天才がまさか後れをとることもあるまいが、万一のこともある。迅速に事を進める必要があった。

「磐座《いわくら》さん、あなたの『見る目聞く耳』で状況を調べることは……」
「はぁ……結局あの蛮族《しらぎ》のために力を使うことになるんですね……まあ、牢城さんのことは嫌いでないですし、彼女のためならやぶさかでないですけど」

 穣は軽く手印を切り、口訣を唱える。

「天の御中《あめのみなか》に居まします、知恵の大神、八意思兼神《やごころおもいかねのかみ》さまに誓願《せいがん》奉ります、我が耳目《じもく》を啓かせ、知恵の鏡を輝かせ給わんことを」

 以前ならこんな長い祭文を上奏する必要もなかったのだが、聖域・ヒノミヤから下俗してしばらく経つと以前通り神讃なしで術を行使することは出来なくなっている。おそらくおなじ理由で、瑞穗も瞬時に三柱の女神の力を使うことはできないはずだ。

 ともかく。

 穣は現状を見て聞いて、軽くため息。

「714号室です。危機的状況。急いだ方がいいかと」
「感謝します。ゆかさま、美咲はしばらく空けますが……」
「いーよー。エーリカとサティアと遊んでるから」
「あ、ゆかちゃんごめん、わたしもちょっと行くわ。晦日さんに任せとけば大丈夫かもだけど、わたしの盾が必要かも」
「えー……サティアは?」
「私はゆかのお相手してますよ。今の私には神としての力もほとんどないですし、戦闘では足手まといですから」
「では、行って参ります、ゆかさま」
「うん、いってらっしゃーい」

あっさり行ってらっしゃいと言われるのも忠信としてはつらいというか悔しいところだが、まずは雫だ。雫になにかあったら辰馬に申し開きが……と、そこまで考えて美咲は自分が辰馬のためにと物を考えていることに気づく。もともと新羅辰馬に接近したのは密偵として本田の指図でしかなく、本田に従う理由もゆかの身柄を保全するためだけのこと。今、ゆかの身の安全は確保されていて、いずれゆかと寵を争うであろう雫が脱落すれば美咲にとってむしろ喜ばしいことのはずだが、彼女の思考ベクトルはまったくそちらに傾《かし》がない。雫が穢されて辰馬が悲しんだらと思うと、身も灼ける思いだった。恋情に疎い美咲はまだ、自分のこの感情がなんなのかわかっていないが。


・・
・・・

 牢城雫《ろうじょう・しずく》は絶体絶命のピンチに立たされていた。

 全裸であり、身体はほとんど動かせず、そしてのしかかってくるのは悪魔的微笑を讃えた遠縁の親戚。健康的にしなやかに鍛えられた脚を割り、覇城瀬名《はじょう・せな》は見せつけるようにズボンのジッパーを下ろし、そのいきりたつ物をさらけ出……されたものは、しなしなと力なくしおれたままだった。

「? なぜだ? 頭は沸騰しそうなほどだというのに、腰に血流が……?」
「あー、たぁくんにさっき、点穴されたでしょ。だからだよー。とゆーわけで、諦めよう?」
「……あの一瞬でこの事態を見越して? そんな……そんな千里眼あるはずが……」
「たぁくんは自在通……だっけ。究極的には世界の全てを見通せるように鍛えてるから。まだまだっていっても、多少の未来予測くらいは出来るんだよ。てゆーか、この薬どーにかなんないかなぁ? 動かしたいのに動かないって、もどかしくてしよーがないんだけど?」
「ふ……ふん、まあ確かに、今ボクのモノが役に立たないのは事実として。だからといって雫さん、安心するのは早いのではないですか?」
「ほへ?」
「別に、女性を虜にする手管は挿入だけではないということです。指で舌で、これまで数百の女を落としてきたボクの技で、新羅辰馬を忘れさせてあげますよ!」
「子供のくせにかーいげがないなぁ、瀬名くんは。たぁくんなんかえっちしてーてこっちから求めてもすぐ真っ赤になるくらいかーいぃのに」
「新羅新羅と……そういう減らず口を、利けなくしてさしあげますよ!」

 そこに。

 ぴし、きしきし、びしっ……ごぅん……!

石がきしむ音。

 ロイヤルスイートの分厚い壁に、巨大なひびが入る。それを外からなにか硬いものが殴打する轟音。ひびにそって壁に大穴があき、指先に鋼糸をまとわせた美咲と聖盾アンドヴァラナートを構えたエーリカが、ものものしく入ってくる。

「そこまでです、覇城大公閣下」
「子供のくせにやることえげつないんじゃないの、大公様? 悪い子にはしつけが必要ね!」

「……」
「「?」」

「邪魔だよ、キミたち……鬱陶しいなあぁ!!」

 激情を爆発させる瀬名。黒い颶風が吹き荒れて、エーリカと雫を吹き飛ばす。

「キミたちみたいなブスの出る幕じゃないんだよ、消えろ、消えろ、消えろよおぉ!!」

 黒風は止まらない。風の一陣が、肉ごと魂まで焼くような威力。エーリカはなんとか線上に美咲をかばい、聖盾で防御するが、盾を支える腕が一瞬で震えてずたずたになる威力に愕然とする。これほどの威力を相手にしたことは過去に2度。竜の魔女ニヌルタと、星神・荒神ミカボシを降ろした神月五十六。覇城瀬名という少年の魔力……明らかに霊力ではなく、神力でもなく、魔力……は彼らに伯仲していた。神讃……魔族との契約によるものだから魔契《まけい》というべきか、それなしでの力の行使からして、上位の魔族、あるいは魔神とつながっているか、あるいは魔人化しているか。

「その力、誰からの借り物です?」

 美咲が問う。シニヨンにまとめていた髪が最初に吹っ飛ばされた勢いでほどけて、赤毛がふわ、と広がる。水着姿でありながらやはりどうしようもなく平坦な板張り胸ながら、その美貌は傾城傾国。凛とした目に宿る意思力は、力を誇る瀬名をもたじろがせた。

「知ったことじゃないだろう。どうせキミらは、ここで死ぬんだよ!」

 煩わしげに、瀬名は腕をかざす。その腕がごとりと落ちた。

「!?」
「大公覇城瀬名、魔族との紐帯《ちゅうたい》確定により、ここに誅伐します」
「……あんたばっかりかっこつけないでよ……アタシが盾で守ってあげてたからでしょ」「それは感謝しますが」

 美咲が立ち上がって、ほとんど不可視の鋼糸を構える。
 その美咲を庇って、エーリカも立つ。

 決死の面持ちの二人に瀬名は一瞬、惚けた貌になり。
 しかしすぐ面白いというように笑い出した。

「誅伐、ねぇ。小日向の侍従、宰相の犬。キミは宰相の腹の下で喘いでいるのがお似合いだと思うけれど?」

 弄うように言い、切り落とされた左腕に右手を添える。
 ぞぶ!
 勢いよく、元通りの腕が生えた。
 二、三、ぐっぱと掌を握り、感触を確かめるとまた、腕を閃かせた。

「何度も同じ技がっ!」

 エーリカが射線上に入り、聖盾をつきだし、そして、弾き飛ばされる。

「同じ技でも威力は違うからね。さっきのは激情で本来の威力が出せなかった……これが、本物だよ!」

 世界が黒一色に満たされたような、黒い風の暴嵐。
 エーリカも美咲も、さすがに敗北を確信し。

 そこに忽然、飛び込む金銀黒白の光。

「借りモンの力で粋がってんなよ、覇城。つーか、しず姉だけじゃなくてエーリカに晦日までいじめてくれちゃって……さすがのおれもちょっと怒るわ、これは」

駆けつけた新羅辰馬は、そう言って瀬名を睨む。

 瀬名もまた、忌々しげに辰馬を睨んだ。

 そして雫が歓喜の嬌声を上げた。
「たぁくーんっ! まってた待ってた待ってたよぉーっ? やっぱりおねーちゃんのピンチにはたぁくんが来てくれるよねっ?」
「はいはい。緊迫感なくなるからしず姉はちっと黙って……で、後ろ盾の魔族がいるだろ? 呼べよ。お前じゃどーせ、おれの相手にならんし」
「馬鹿にしてくれる……ボクにみっともなく投げ飛ばされたくせに……」
「じゃ、満足いくまでボコってやるか。えらーい貴族様が、ヒーヒー言って魔族に泣きつくまでしばいてやるよ」

 互いに凄絶な笑みを浮かべ。

 そして、アカツキ累代の大貴族の裔と、アカツキの歴史から排斥された名将の裔が、対峙する。

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2023/06/03 07:06

23-06-03.「聖鍵を求めて」宣伝イラスト(R18版)

おつかれさまです!

またまたになりますが、「日輪宮」リンク。

黒き翼の大天使~日輪宮の齋姫 DLsite直リンク

それでは先ほどに続いてもうひとつ。黒き翼の大天使~聖鍵を求めての宣伝用イラスト、今度はR18版になります。

ボロ便器にされてしまった瑞穂さんたち。4人そろってガニ股エロ蹲踞で最低の安娼婦よりさらに下、便器どころかちり紙以下のゴミクズに堕とされたイメージ。こうなってはもう偉そうなご高説も垂れられません、というところです。表情からしてどうしようもなくメス堕ち済み。

ゲーム内にこんなシーンがあるかというと……「ウェルス大聖堂備え付けの公衆便器になる3人(瑞穂・アーシェ・ラケシス)」というイベントがあります。サティアは活動の場所がウェルスでなくアカツキなので別。一切の凌○イベントを全部回避してゲームクリアすることも可能の予定(それは「日輪宮」から変わらずです)ですが、たぶん求められるのは凌○イベントだと思われるのでやっぱりそちらに気合を入れるべきでしょうね。

それでは、以上でした!

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遠蛮亭 2023/06/03 06:43

23-06-03.くろてん2幕1章2話+「聖鍵を求めて」宣伝絵ラフ(健全版)

おはようございます!

まず最初に「日輪宮」のリンク。

黒き翼の大天使~日輪宮の齋姫 DLsite直リンク

そしてこちら。

「聖鍵を求めて」宣伝用画像、まずは健全版ラフ。広輪さまが気合入れてくださって健全版と18禁版を描いてくださいました! で、健全版(健全版といいつつ超質量のおちち群はもうそれだけでエロいですが)は上のズームアウトverと下のズームインverとあるのですが、今回はズームアウトverでお願いしています。今回メインになるキャラ数を絞ったことが奏効して、画面内にちょうどよく入ってると思うのでした。

それでは、今日もくろてん再掲、よろしくお願いいたします!

………………
黒き翼の大天使.2幕1章2話.覇城の主

 ヒノミヤ関係者として先に行くという瑞穗《みずほ》、穣《みのり》といったん分かれ、新羅辰馬と牢城雫、女神サティア、そして正妻・小日向《こひなた》ゆかとその保護者・晦日美咲《つごもり・みさき》はゆっくりヒノミヤの石段を登っていた。ちなみにエーリカは正月だろうとグラビアの仕事で忙しく、北嶺院文《ほくれいいん・あや》は受験前の追い込みでこれまた多忙。

 とりあえず、あとでお守りと、なんか小腹にきくモン買っていくか……。

 などと思いつつ、ぼやーんとヒノミヤの全景を見渡す。戦火から数ヶ月。ヒノミヤはすでに往事の賑わいを取り戻していた。以前より拓けた雰囲気で、大道芸人や出店の数、それらと人の声の賑わいを活気というなら以前以上の活気。早くも吟遊詩人の歌が、弾唱詩人の曲が、ヒノミヤ事変をモチーフに為た歌を奏でる。

「たいしたもんだ……」

 人間のしぶとさ、したたかさを思い知って、辰馬は思わずとごちる。そして自分がこの一帯を半壊させた事実に思い至り、少しやるせない気分にもなった。

 辰馬とつながる神霊はハリ・ハラ。すなわち破壊神にして創造神であるが、魔王という本人の気質ゆえか破壊の力、大元帥法ばかりを駆使しまくって創造の力を使うことが少ない。「はあぁ~~~…」と大きくため息をついた。

「なんだよー、そのため息。せっかく隣に気合い入れたおねーちゃんがいてあげてるんだぞ?」

 そう言う雫も見事な晴れ着姿である。瑞穗や穣のような、ヒノミヤの大権力者がまとうような豪奢すぎるしろものではないが、色違いの単《ひとえ》を何枚も重ねた着物は華美であり、彼女の華やかな容姿に負けていない。

「知るかよ……今しず姉におべっか使ってる余裕は……ぁ」
「ふふーん♪ どーしたどーしたぁ? 萌えちゃったか、たぁくん?」
「……萌えるかばかたれ。だいたいだな、23にもなって年甲斐もなく……」
「……おねーちゃんに年のこと言っちゃうか~……ていっ!」
「うぎゃあっ!?」

素速く肉薄、腕関節をとる、と見せかけ、辰馬が肘を強ばらせるや素速く標的を切り替え。右手小指と薬指の関節を、思い切り極める。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッ!!」
「『おねーちゃんごめんなさい、ボクが悪かったです。ボクは本当は雫おねーちゃんのことが大好きなんですぅ~?』って言いなさい、たぁくん? それとも……伸ばす?」
「やめればかたれ! いきなりなにしてくれてんだお前、しず姉!」

「まーた今年も仲いいっスねぇ~、辰馬サンと雫ちゃん先生」
「ざけんな馬鹿。ニタニタしてねーで止めろや、シンタ!」
「んー、美少女同士の尊い絡みを引きはがすとか、オレの信条に……」
「……この前の、おれの女装写真。従軍記者が秘蔵してるんだと」
「ッ!! 雫ちゃん先生、まあここはひとつ、離れてあげましょ!? どーせまた辰馬サンが馬鹿言ったんでしょーけども、ここは大人ってところを見せて、ね?」
「むー、仕方ないか……」

 大輔、出水と一緒にやってきたシンタに宥《なだ》め賺《すか》されて、渋々と雫は極めをほどく。なにやら変な咆哮にねじまがった小指をグシッ、と力一杯ひねって元に戻し、はぁ、とため息一つ。

「しず姉、すぐ暴力に訴えるクセ、やめよーや。おれじゃなかったらあんた、今頃殺人犯で獄中だぞ?」
「まーたまた。あんなのぼーりょくって言うよーなもんじゃないでしょ? スキンシップじゃん」
「いやな、そーいうのをなんたらハラスメントって言うんだって」
「そんなもん知るかァ!」
「うあぁ!?」

 耳を劈《つんざ》くような、雫の咆哮《ほうこう》。作務衣の胸ぐらを掴んでガンガン揺すってくる。

「おねーちゃんが弟をかわいがっていけないはずがねーでしょーがっ!」
「ぁ……うん……あぁ……いーから離せっての」

「大輔さん……あのかたって、宮代《みやしろ》でわたしと戦り合った……?」
「あぁ……恥ずかしながらウチの教師……」
「教師……あんな、子供なのに……」
 大輔になかば抱きすくめられた状態の少女……長尾早雪《ながお・さゆき》……は、ほへー、という顔でかつて自分をたたき伏せたハーフ・アールヴの少女を凝視する。この少女と大輔の関係は実に順調のようで、仲むつまじい。

「主様《ヌシさま》、いつまでも遊んでないでいくでゴザルよー」
「遊んでねーんだが……」

「おにーちゃーん、あれ、あれ買ってー」

 すっかり妹ポジションに落ち着いているゆかが、辰馬の袖を引く。ゆかは締め付けのきつい玄装(和装)でななく、洋服姿。いざというときすぐ逃げられるようにと言う美咲の配慮だ。そしてゆかを護衛すべき立場にある晦日美咲《つごもり・みさき》も、やはり身動きしやすい薄手の平服にスパッツという、晴れの日には相応しくない姿。とはいえ美咲は生来辰馬にも匹敵しうる美貌ゆえに服装を選ばないが。

「ゆかさまが失礼します、新羅《しらぎ》さん」

 美咲《みさき》はそう言って頭を下げるが、ゆかはあくまで「辰馬《たつま》に買って欲しい」と主張しているので、差し置いて美咲《みさき》が金を出すこと言うことはしない。いーから出せよとも思うが、どうしようもない。東西戦争の英雄・伽耶聖《かや・ひじり》のお面と、たこ焼き、リンゴ飴などなど買わされた。ゆかからたこ焼きをひとつ、恵まれる。

「もったいないわね……、いまここに集まっている人間の信仰をすべて集めれば、私の失われた力も一気に回復するのに」
 青髪を結わえて宝髻《ほうけい》でまとめ、いつもの破廉恥装束とは違ってしっかりした7重の単《ひとえ》に領巾をかぶったサティアが物騒なことを呟くが、さすがにもう人間に敵対しようという気分はないようでそこは一安心。

「さて、お詣りして、瑞穗たちに会って帰るか……」
「おにーちゃん、おんぶー」
「あー、はいはい……」

 参詣路に並ぶ辰馬たち。

 5分後。

「うあぁ~……酔う。まだか~……」
「辰馬サン、ほんと人混み駄目っスよね~」
「よく将軍稼業こなせたもんだよなぁ、この人」
「あのときはな……極限状態だったし……もう二度とやらんし……」

 長船や梁田は是が非にも辰馬を軍人にしたいようだが、辰馬にそのつもりは全くない。歴史好きであり、ここ最近は瑞穗から兵学の講義など聴かされてもいるが、軍人とかもっとも忌むべき職業だと思っている。望む道とすれば祖先である伽耶聖とその時代について研究し、歴史家になりたいというのが望みではあるが、歴史の当事者になるつもりはない。


・・
・・・

「辰馬さま、新生ヒノミヤへようこそ!」
「フン……お詣りが終わったら早くお帰りください」
「そんなこと言って。穣ってさっきまでずっと新羅公のことばっかりはなしてたんですけどねー、ね、瑞穗?」
「ちょ! 蒼依!?」
「はいはい、ツンデレツンデレ。あんまり最近、ツンデレはモテないらしーよ?」
「つまらないことを言わないでください! わたしが新羅《この男》のことを好きみたいな……」

 拝殿から本殿に上げられた辰馬たちを、教主・鷺宮蒼依《さぎみや・あおい》と神威那琴《かむたけ・なこと》、沼島寧々《めしま・ねね》、そして今となってはヒノミヤを離れた瑞穗と穣が出迎えた。美々しい晴れ着姿の美女たちのかしましさと、女性がまとうなにやら甘ったるい空気に辰馬は圧倒される。

「……んじゃ、帰るか」
「あ、わたしも帰りますー!」
「……わたしも。ではね、新教主さま」


・・
・・・

 それから半日。

 新羅辰馬たち一行は、船上にあった。

 付き従うは神楽坂瑞穗《かぐらざか・みずほ》、牢城雫《ろうじょう・しずく》、エーリカ・リスティ・ヴェスローディア、そして女神サティア、晦日美咲《つごもり・みさき》、北嶺院文《ほくれいいん・あや》と、新羅家正妻にして被保護者の小日向ゆか。プラスいつもの三バカ大将と、この大船のオーナーとして梁田篤、およびサバイバルインストラクターとしての傭兵隊長、ジョン・鷹森。

 まず4日掛けてアカツキ最東南端の岬に向かい、そこから航路。航海初日は極寒であったが、2日目、3日目となっていくうち、太陽の熱と海流の暖気、穏やかな風によって気温が如実《にょじつ》に変わる。

 アカツキ一の大貴族・覇城家の擁するリゾートビーチ、鶯谷《うぐいすだに》。

 ヒャハァー、と艦橋から飛び降りようとするシンタや大輔をジョンが殴り、艀《はしけ》をかける。

「そんじゃ、行きますか……しず姉?」

 いつもなら大はしゃぎのはずの雫が、やけにおとなしい。いぶかり、辰馬がその顔をのぞき込もうとすると、雫はばっと頭を上げて普段通り、元気のいい表情でにぱーと笑った。

「っし、行こ-、たぁくん!」
「……んー、まあ、いいか」

そして。

 リゾートホテルの前に待ち構える、一対の男女。
 一人は、10才前後。ピンク・ブロンドの、柔らかげで慇懃《いんぎん》だが傲慢《ごうまん》な雰囲気をたたえた美少年。明らかに雫と似た風貌の持ち主であり、血筋のつながりは疑いようもない。覇城家当主・覇城瀬名《はじょう・せな》。

 その覇城の華奢で小柄な身体に、絡みつくようにしなだれかかるのは白い肌に黒髪、目尻にほくろの艶然たる美女。辰馬は一切まったく全然どうとも思わなかったのだが、辰馬以外の面々はこの女を見て、辰馬を見て、そしてまた女に視線をやった。とにかく信じられないくらいに、辰馬と顔立ちが酷似している。

「ようこそ、牢城雫さん……と、有象無象《うぞうむぞう》の小者たち。実のところ、雫さん以外はどうでもいいんだけれど、せっかく来たのだから楽しんでいくがいいと思うよ。」

少年、覇城瀬名はそう言って歩み寄ると、雫のヨットパーカー越しの細い腰に腕を回した。

「……っ!」
「おいこら、ガキ」

 わずかに身をこわばらすも、抵抗しない雫。そこに割って入った辰馬の声は、自分でも驚くほどすごみを帯びたものとなった。

「なんです? 新羅辰馬」
「なんです、じゃねーわ。しばくぞおまえ、ばかたれが!」

 なんだかよくわからない焦慮《しょうりょ》とモヤモヤに突き動かされ、辰馬は瀬名に拳を突き出す。

 あくまで牽制。子供相手の侮りがあった。

 しかし瀬名は怯えてすくむことなく、雫の身体から身を離すと入り身で辰馬の腕を取る。

「ッ!?」

 直感的にこれは拙い、と腕を退こうとするが、間に合わない。次の瞬間、辰馬の身体は背中から砂浜に叩きつけられる。

「くぁ!?」
「たぁくん!? ちょ、瀬名君、なにを!?」
「雑魚《ザコ》が見苦しく嫉妬して……みっともないですね……ここが砂浜でなく舗装された路上であれば、あなたは死んでますよ? ……力の差、理解できましたか? 理解できなくても構いませんが、ボクと雫さんの邪魔はしないでいただきたいものです」
「……この、ふざけんなよ、てめ……」

 硬い砂地に叩きつけられ、背中から全身へとジンジンひびく痺れに苦悶する辰馬を虫けらでも見る目つきで睥睨し、牢城瀬名は言い捨てるとまた雫の腰に腕を回し、リゾートホテルの中へと去って行った。

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2023/06/02 19:24

23-06-02.販促瑞穂さん③

こんばんわです!

販促瑞穂さん③、お気に入りの側位絵。過去この体勢を描くこと6枚、今回が一番うまく描けた気がします! まだまだレベルは低いですがそれは伸びしろがある、ということなのでそっちは気にしない方向で。そういえばさっき液タブに黒いタールみたいなのが付着しまして、なんかなーと思ったらペン先が溶けてました。もはや夏ですね。

それでは今回もリンクを張って、

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遠蛮亭 2023/06/02 14:12

23-06-02.販促瑞穂さん②

おつかれさまです!

こちら。

販促瑞穂さん②。背中開けてみました。塗りに乗算とかスクリーンとか小技をいろいろ使ってみましたが、なかなかうまくはいきません。まあ、慣れていくにしたがって良くなるんではないかなと思います。塗り以外だともうちょっと表情上手く描けたらよかったんですが、それはいつものこと。

それでは今度もリンク張りまして、

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以上でした!

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