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日輪宮の齋王の記事 (21)

遠蛮亭 2022/12/09 09:21

22-12-09.くろてん4幕1章2話.英雄

おはようございます!

今朝は修正されたSLGプラグインの挙動確認で手間取りました。今回このシステムは使わない、と決めたのですがバグやエラーは速やかに見つけて報告しないとあとあと、困ったことになりますし…それに、やっぱりSLGシステムを使えるとなるとこれがいいわけです。いろいろと改善されたので次回の修正でほぼ完成となりそうなのですよね。だからまたSLGに戻すか…と少し揺れています。システム的・データ的にはSLGに戻してそれほど手間はないのですが、シナリオをまた変更になるかなぁという点が少し手間。でも始点と終着点は頭の中にあるわけで、真面目に1月もあればシナリオはできそうです。都市を落としてキャラを捕まえて、ターン〇〇でイベント発生、あるいは条件分岐「アクター〇〇がメンバーにいる」でイベントを起こすという順序であればむしろ簡単……問題は「〇〇がゲーム上から退場している」という条件分岐ができないことですが、これさえクリアできれば。

ということで本日もくろてんです。4幕2話。

……………………
黒き翼の大天使.4幕1章2話.英雄


「ご主人さま、お話が……」
 京師へ帰還の準備を進める辰馬に、神楽坂瑞穗が進言した。かつてあどけない童顔だった瑞穂は8年の時を経て、嫣然たる臈長けた美女、というにふさわしい艶を帯びるに至っている。清冽さと色気を見事に両立させた彼女は新羅連隊の戦女神として、隊員たちのあこがれの的である。ちなみにもう一人の軍師にして戦女神、磐座穣は現在ヒノミヤの政務中でここには随行していない。

「このまま、北上を続けてはいかがでしょう?」
「あー……」
 今回、敵手である桃華帝国、呂燦将軍が仕掛けてきたのは「魏を囲んで趙を救う」の策。こちらとしては目の前の敵を放って京師を救いに帰るが至当ではあるが、この際京師には独力で耐えてもらって、その間に一挙桃華帝国帝都・汴黎(べんれい)を陥落させるという手も確かにある。現在桃華帝国は北狄・ヘスティアの鉄騎に蹂躙され、天子蒙塵。このまま北上すれば地上から桃華帝国という国を滅ぼし、ヘスティアと桃華帝国領を南北に分かって支配することも可能であった。

 辰馬もそれに気づかなかったわけではない。むしろ真っ先にそれを考えた。なにしろ敵主力がアカツキ京師に注力している現在、辰馬を遮るものはまずないのだから、大将・北嶺院文に諮ったとしてもやはりそうすべきというだろう。だが、新羅辰馬のモラルはそれを許さない。

「まあ、今回のところは見逃そーや。別に滅ぼしたくて戦ってるわけでもねーしな、この戦い」
 結局はそう言ってしまう。そうすることで最終的な被害が増えることはわかっていても、新羅辰馬は苛烈に敵を殲滅するという手段をとることが出来ない。

「……わかりました。僭言でした、お許しを」
「別にいーけどな。ともかくさっさと戻ろーぜ」
 瑞穂が踵を返して幕舎から立ち去っていくと、辰馬はぐらりと痩身を傾がせる。胸と頭の痛みが耐えがたいほど。神魔の力、そのほとんどがアルティミシアから失われて以来、辰馬の身体は変調を来すようになった。もともと盈力とは絶大な神力と魔力をもって成立する力であり、辰馬くらいばかげた威力になると力を維持するために擁する力もまた大きい。これまでの殺戒破りにおける心因症もかなり酷かったが、今の辰馬はさらに心臓と脳に疾患を抱えることになっていた。

「……、現状でこれだからな……キツいが……まだ死ねんし……」
 誰も聞いていないことを確認して、呟く。死ねないとは言いつつ、辰馬は自分に残された時間が残り少ないことを実感していた。おそらくはあと10年、生きられるか否か。世界から神力魔力がどんどん減っていけば、辰馬にとって世界はどんどんと生きづらくなっていく。それは最初から覚悟のうえでの事だったが、やはり多少の泣き言は言いたくもなる。

………………
 ところ変わって、アカツキ京師太宰。

「はいはーい、みんな落ち着いて非難してくださいねーぇ♪ 慌てないあわてなーい」
 牢城雫は避難誘導に奔走していた。34才になる現在の彼女は教職に戻り、幼年学校教師。30をすぎてまったく容色衰えないどころか、ますますかわいらしく咲き誇る彼女は、幼い生徒たちの憧憬と保護者の劣情の的である。本人もそれに気づかないほど鈍感ではないのだが、服装は相変わらずレオタードに見せブラ、ショートパンツという姿。この格好で普通に出歩くのだから、新羅辰馬がハラハラするのも無理からぬ事ではあった。
「牢城先生、避難の進み具合は?」
 そう聞くのは磐座穣で、穣の身体を横から支えるのは晦日美咲。8年前、初子の此葉を産んで以来、穣はやや体調を悪くした。穣におくれること2年で辰馬との娘を産んだ美咲だがこちらは健常そのもので、持ち前の奉仕精神から美咲の世話に日々奔走している。ときどき癇の強いところのある穣も美咲の前では存外におとなしかった。

「まだ半分くらい、かなぁ? そもそもこの太宰が囲まれるなんてこと自体、なかったからねー……」
「ヒノミヤで収容できる人数は、あと5万人というところですが……」
「京城のほうも10万が限度です……」
「足りないよねぇ……。太宰の人口800万人越えてるわけだし」
「安全な防壁がある場所、というと絶対的に不足ですね……。サティア様の「空間」を操る力が健在ならいくらでもなんとかなったのですが……」
 穣がため息。女神サティアは8年前の時点で神力を返納して、ほぼ完全に神から人間になっている。今なお並みの人間よりははるかに強力な力を誇るとは言え、かつてのように無尽蔵な権能は望むべくもない。それが現在におけるアカツキの主神であった。それでもすでに神なき他国に比べれば、恵まれているというものだが。

「中軍の元帥……本田姫沙良さんだっけ? あのひとでだいじょーぶなのかなぁ?」
「難しいでしょうね。呂鎮南は千軍万馬。本田元帥はしょせん、親の七光りですから」
 雫の言葉に応えたのは美咲。本田姫沙良の過去の態度や人品、そうしたものから鑑みて、桃華帝国の名将・呂燦に勝てる要素はなにひとつない。人品が悪くても将として有能、という人材も世の中にいないことはないが、姫沙良の場合そういうタイプでもなかった。

「まあ、いざってなったらみのりんが……」
「それが出来ればいいのですけど。まず後方勤務の少佐に指揮権を委譲はして貰えないでしょう。彼らにもメンツというものがあります」
「むー……みのりん天才なんだから、あたしに従えーって言えばいいのに」

………………
「師父、包囲完了です」
 桃華帝国の若き偏将・戚凌雲は京師太宰から10㎞の小高い丘に陣を敷き、敬愛する将軍に双眼鏡を渡す。鎮南将軍・呂燦はここのところ具合の悪い足を庇いながら進み出ると、太宰の町を俯瞰した。

「10日あれば陥とせる……が、10日の猶予はあるまいな」
 要害や地形を見渡し、そう言う呂燦。戚凌雲はいぶかしげな顔をした。

「新羅辰馬、ですか?」
「うむ。お前もかつて敗北を味わった相手だ」
「あれは……模擬戦です。実戦ならば……!」
「変わるまいよ。あれは紛れもない天才、赤き竜よ」
 呂燦は辰馬を高く買っていた。この8年間をアカツキ優位に進めたのはほぼ辰馬の手腕ひとつといっていい。ただ戦闘に強いだけでなく、捕虜を扱うに丁重であり、占拠した町で略奪や暴行を行わず、軍を治めること厳正。そして自分の軍でけが人が出れば自らその傷口を吸って膿を出してやるという。辰馬はすべての将士を子のごとく慈しみ、将士みな彼を父のごとく慕う。軍指揮官として理想的と言って良かった。

なので半分くらいは、辰馬に負けてやってもいい。無辜を苦しめるくらいであれば、呂燦は国を売る。

が、のこり半分は目の前に立つ青年将校、戚凌雲。こちらもまた天才と言って良い人材であり、呂燦としては彼をして辰馬に勝たせてやりたいという気持ちも多分にある。

だから。

この一挙でそれを見極めるつもりであった。

………………
「一瀉千里!」
 新羅辰馬は猛然と駆ける。背にはやたらと柔らかいもの、神楽坂瑞穗の身体がある。8年前なら胸の感触にドギマギした辰馬だが、今はさすがに慣れた。この程度では狼狽えない。

 結局、転身したのは辰馬たち新羅連隊8000だけだった。大将・北嶺院文は辰馬の突然の離脱に不可解な顔をしたし、京師が囲まれていることにまだ気づいていないらしい。国は辰馬だけを頼った、というよりむしろ大貴族・三大公家の北嶺院家の娘にこれ以上、名をなさしめたくないというところだろう。

「んなことゆーてる場合かー? おれと連隊8000で、桃華帝国40000相手……。今回もまたきっついよなぁ……」
「ご主人さまはいつもそれで勝ってしまわれますから……」
「そら、負けたくはねーからな。だからって不利な戦いがしたい訳じゃねーんだが」

「敵影見えてきましたっスよー! 数は42000!」
「予想より2000多いか。ま、なんとかなるし、なんとかするが……全軍、魚鱗で突撃! 目指すは敵本陣、ほかは目もくれるな!」

………………
 攻囲から3日、新羅連隊転身。

 この報せは京師を沸かせた。新羅辰馬という青年の知名度は決して高くない。ヒノミヤ事変を解決したことも魔皇女クズノハ、女神混元聖母を打破して世界から神魔の干渉を払ったことも、公にはされていないのだから当然である。だが気鋭の青年将校(それも超美形)が国難に際して寡兵、王都にはせ参じたというこのシチュエーション、これに民衆は歓喜し酩酊する。

 まず市壁防衛の義勇兵が新羅連隊の勇戦に勇気づけられ、彼らからの伝聞で都内人民が奮い立つ。市壁には甥も若きもが瓦やレンガなど、適当に投げつけられるものを持って集まり桃華帝国攻囲軍に投擲、呂燦は衝車に傘をつけて攻撃を続けさせたが押し切れず退く。そこに新羅連隊が猛然と殺到した!

「これは……勝てぬな」
 最初の数合で、戦機に聡い呂燦はそう見て取る。ここで新羅連隊を叩きつぶすことは不可能ではないが、それに時間を割かれれば事態に気づいた北嶺院文が反転してきたところに都市防衛軍と挟撃され、卵が岩に砕かれるように粉砕されるのは明らか。ここは撤退するほかない。

「まだです! まだ終わりでは……!」
 若い戚凌雲はなお諦められない。しかしこのときになってようやく、彼らは天子・趙瑛が蒙塵した報せに接する。これは新羅連隊……神楽坂瑞穗が彼らに撤退を促すため流した情報工作だったわけだが、事実である以上国家の忠臣たる呂燦とその高弟が天子のもとに馳せないわけにいかなかった。

………………
「敵撤退……、追撃は、いらねーっスね?」
「あー、いらん。うっかり追撃なんかすると大けがするからな」
「では、京師に凱旋といきましょうか、新羅さん」
「ようやく……ようやく主様が、天下万民に認められる日が来でゴザルぅっ!」
「んな、大げさな……べつになんもかわらねーよ」
「いえ、ご主人さま。変わりますよ、今日からは」
 騒々しい三バカをたしなめる辰馬に、瑞穂が静かに、だが決然と言う。それは軍師としての怜悧な判断による言葉でもあり、同時に神託をつげる巫女の言葉でもあった。

………………
「伽耶朝臣(かやのあそん)新羅辰馬を、正3位侍従、征虜鎮北大将軍に任命する」
朝っぱらから永安帝じきじきの呼び出し、ということで登城させられ、なんやあのジジイ鬱陶しい……と思いつつ殿中に上げられるといきなりそう告げられた。

「は?」
 思わずアホみたいな声が出る。しかし数瞬、時間をおくと。

 正3位、征虜鎮北大将軍ということは。

「いや、嘘やん。無位無冠の若造がいきなり正3位とか……」
「いや、嘘ではないぞ」
 またまたー、と辰馬が言うのを、永安帝は先んじて止める。

「さきの国難に当たって汝が見せた功労、まさに英雄の業。ゆえに国家の爪牙として北辺の守りを命ず。股肱・謀臣を養い、よくよく励むよう」
 詔を読み上げる永安帝は自分に酔っているようにも見える。そういえばこのジジイ、人気取り政策が得意なんだっけ……と辰馬は思い至った。たとえ辰馬のことを内心嫌っているとはいえ、民が英雄と認めた人材を粗略には扱えない、そういうことだ。

 いままでに行ってきた難行に比べればはるかに簡単な一挙。しかしそれが多くの国民の目に触れ、わかりやすい勲功として発揮されたことで、辰馬は一躍、歴史の表舞台に躍り出ることとなる。

 これから始まるのは大陸唱覇戦争といわれる、大いなる動乱。神も魔もない世界で行われる人類の覇権戦争であり、そして、新羅辰馬という青年が「完全無欠の赤帝」として帝位に就くまでの物語。

………………
以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/12/08 19:05

22-12-08.悲報

こんばんわです!

朝の段階で「日輪宮からは広輪さま離脱かも……」と言いましたが、悲報です。実際広輪さまが外れ、後発の「くろてん」一極集中ということになりました。現在私用で大変とのことで、やむない仕儀です。ただし遠蛮の描いたイラストの彩色監修は「やりたいです」と仰ってくださいましたので、完全に離脱というわけではないですが。ともかくもほぼ独力で「日輪宮」を売らねばなりませんが、広輪さまの庇護なしでは遠蛮の存在価値ってカスなのですよね。なんとか売れればいいのですが。

まあ、カスはカスなりに頑張るということで、広輪さまが外れたことによるメリットはCG枚数を自分の裁量で決めることができること。というわけで各章ごとのイラストを増やします。以下1章で使用するイラストの草案。まだ下書き段階で色も塗ってない絵ばかりですが。

まず冒頭、歌恋さん開脚。この子は1枚の予定でしたが、この際サブキャラ人の枚数も増やします。3月までに数十枚仕上げるのは地獄な気もしますが、それはやってから決めましょう。

歌恋さん2、対面に男の身体があるイメージです。今回男はほぼ描きません。邪魔なのと時短のために。

歌恋さん3、事後の捨てられ状態。

瑞穂さん1、冒頭が終わってヒノミヤ内宮府のオープニングも終わって、瑞穂さん奥津城に戻るとエロガキに脅され…の1回目。

瑞穂さん2、脅されてフェラ。枚数増やせるということでシナリオも少し変更。

名雪さん1、そのころ、奥津城手前の「春宮」が主人公・長船により陥落、守将・三刀屋名雪を首絞め吊るし失禁強○。

瑞穂さん3、名雪さんがボコられてる間に瑞穂さん、エロガキに処女喪失。

名雪さん2、首絞めから解放された名雪さんの口にぶち込み。

瑞穂さん4、エロガキに隷属を誓わされて脱糞ショー。

名雪さん3、そのころ名雪さんも男たちに敗北宣言、泣き笑いでピースサイン。

瑞穂さん5、奥津城戦に敗北した瑞穂さん。健闘むなしく押さえつけられます。

瑞穂さん6、ボコボコ。やっぱり瑞穂さん凌○はこれがないと。

瑞穂さん7、這い蹲って逃げようとする瑞穂さん。

瑞穂さん8、とどめの足抱え背立位。

瑞穂さん9、土下座して主人公の足を舐める瑞穂さん。

……順序としてはこんなふうになります。あとから追加もありかもしれませんが、確定なのはこれだけ。今日はひたすら下書きを描いたので明日の午後は塗りとか古い絵の修正をやるとします! 昼の間は1階でゲーム本編のほう。

というわけで、広輪さまの離脱は痛いですが「くろてん」のほうでははきっちりスケジュールを守っていただくと約束したことですし、くろてんが充実すると考えればまあよし。それではです!

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遠蛮亭 2022/12/08 07:27

22-12-08.ゲーム制作環境を整えました!

おはようございます!

昨日はゲーム制作を軽めに切り上げて、制作環境を整えました! まあそんなたいそうな話でもなく、2階で作業してたのを1階に降りてきただけなんですがそのために必要な資料(歴史と神話と魔術と格闘技の書籍)2000冊も2階から下に下ろしたのでほとんど1日がかりの作業になりました。もともと1階のサブノートだと「日輪宮」を十分動かせるスペックにすこし足らず、wi-fiの電波の具合も2階のルータ直結でないとすぐに切断してしまうのですが、2階にいると「つらいと思ったときにすぐ寝てしまう」というのがありまして。1階にいれば多少は我慢が利くのではないかなということです。あとおかんの監視を受けるので怠けられないというのもあり。3月までに完成させて発売のために自分を追い込むための構えです。それで前述したとおりスペックが足りなかったりするんですが、2年前のミドルスペックゲーミングノートでは「日輪宮」に足りないのですよね。ツクールそれ自体のシステムがかなりメモリとGPUを食う上に、追加のシステムがまた重いので…。これ皆様はどのくらいのマシンを使われてるのか教えていただきたいところです。発売した後で「動かねーぞ!」ってことになると困るので。

で、昨日は1日かけて階下に引っ越ししたわけですが、夜中も眠らずに済んだので作業ができました。「神威那琴」さんの立ち絵からなんから全部気に入らないというか、気に入らないわけではないんですが……、なんというかこの子のエロを描くにあたって自分の股間がまったく疼かないなぁと。

この子ですが。釣り目で勝気そう、女らしさより男っぽさが前に立つ、そしてなによりおっぱいが小さい。ということでこれじゃあどうしてもノリが悪くなる、ということで全面的に書き直したのがこちら。

というわけでまったくの別キャラになりました。モデルとして2章鷺宮蒼依さんの配下である望月緋名子さんというキャラの、服装だけこっちにスライド。望月さんは赤毛ですし髪型も違うし、共通点はもろ肌脱ぎという点のみですが。

こちら表情差分。

そしてこれは昨日9時ごろ、液タブではなく1階のペンタブで描いた辰馬くん。やっぱりペンタブだと腕前が落ちます。


そして今から急ぎでゲーム制作を加速させるつもりではいるのですが、ここにきてイベントCGが遅れてしまっているのですよね。このままでいくと3月に間に合わない気がしてきたので、もうやっぱり「日輪宮」はすべて遠蛮が自前の絵を使って、広輪さまには「くろてん」に全力を注いでもらった方がいいかもしれません。ただ……システムさえしっかりしていればゲームは絵が下手でも売れる、とは言うものの、やはり人間は視覚情報で9割を決めてしまう生き物ですからね…。ネームバリューもゼロだし、どうすりゃいいのか。方途としては500円ワンコイン販売とかでしょうかね、100円販売はさすがに厳しいので500が最低ライン。まあ、その前に完成させるのが先決ですが。

それでは、以上でした! それでは!

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遠蛮亭 2022/12/07 06:54

22-12-07-くろてん3幕5章12話.人の世界の始まり

おはようございます!

昨日はエネミーとかスキルの設定、あとテイムレート(捕獲率)の設定など。まだまだ全データを完成させるには程遠いですが。そしてシナリオも2つ進めました。1章日奈沢・奥津城篇の日奈沢部分、三刀屋名雪さんと沼島寧々さんの凌○シーンです。名雪さんはお当番シーンこの1階なのでラクなのですが、寧々さん以下姫巫女6人はこの先出産やら娼館やらのシーンが待ってるのでそっちのシナリオ作りが大変。まあ、以前も言いましたが娼館や出産イベントにおける文章は短く手早く済ませる予定ではあります。

寧々さんの絵は昨日あげましたので、今日は名雪さん。

まずは敗北して「ウラァ!」と玄斗のち●ぽをねじ込まれる名雪さん。

こっちはたっぷりぶっかけられ嚥下させられ、もう媚びた笑みを浮かべるしかない名雪さんです。この子はビジュアル的に結構お気に入りなのでエロシーンこのフェラだけで終わらせるのも勿体ないかなーと思うんですが、それ以上に姫巫女衆のエロ絵が優先なのでまずはそちら。

では、以下くろてんです! 本日で第3幕完結! といっても明日からすぐ第4幕をアップしますけども。

………………
黒き翼の大天使.3幕5章12話.人の世界の始まり

「オラァ!」
 開幕、ローゲの火弾。一撃一撃が要塞を破壊する砲弾の威力だが、しかしここまできた辰馬たちにとって脅威ではない。雫の太刀・白露が薙ぎ払い、エーリカの聖盾アンドヴァラナウトがはじき、瑞穂は火弾の時間を加速させて消滅させ、辰馬はとくになにもしない。ただ立っているだけで火弾の方が辰馬を避ける。

「王の位、ってやつか。火弾は止めれても炎熱はどーだぁ!?」
 さらに続く、ローゲのターン。炎の魔神は灼熱を起こして辰馬たちを参らせようとするが、やはり辰馬が腕を一振りすると焦熱場がかき消される。

「シッ!」
 そこに割り込むオリエの魔弓。サルンガという、クズノハから特に授けられた、ピナーカと対をなす破壊神の弓。繰り出されるは「三界を征服する矢」。当たりさえすれば人も魔も神もお構いなしで原子レベルに分解して消滅させる一撃だが、次元を越えて直接、辰馬の背後を狙った魔矢は目線一つ動かさない辰馬に後ろ手で掴み止められ、矢の方が消滅した。

 ここで雫の出番。オリエの前に踏み込み、一撃。かつてこのデックアールヴの少女に圧倒された雫だが、あの時からレベルは相当に上がっている、今度は逆に雫が圧倒した。

 二の太刀、三の太刀。演舞のように踊り、回るたび加速する太刀。やがてオリエは対応しきれなくなり、上段、カブト割の一撃を腕を上げて手甲でガード……しようとしたところで白露の刀身が消える。気づいたときには脇腹に衝車の突撃を受けたようなダメージを喰らい、オリエは吹っ飛ばされた。

追撃の雫。そこに割り込むローブの人影。腰から抜くのはクリス・ナイフ。見覚えのある剣光に、雫が瞠目し一瞬、動きを止める。そこに一撃……振り下ろされた先にあるのは聖盾。エーリカがすんでで間に入り、止めた。

カウンターでエーリカの膝。これは片手で止められるが、身体がかしいで人影のローブがはがれる。ローブに隠されていたのは無窮の術士・水天カルナ・イーシャナ。

「あなた……魔族嫌いだったんじゃ!?」
「おれは……生まれ、変わったのだ……クズノハ様と……、魔の、摂理……こそが、絶対……」
 雫の言葉に、感情の乗らない声を返すカルナ。雫が腕を上げたといえど、カルナの技量はなおすさまじい。しかも魂に刻んだ禁金呪法はなお健在、白露の峰打ちは当たりはするが、ダメージを与えられない。

 そんなら……!

 雫は納刀。新羅江南流はもとより拳の技。

 カルナがクリスを突き出す。雫、ヘッドスリップ、紙一重でかわしつつ、前へ。

 踏み込み、掌打を顔面に。今度はカルナがヘッドスリップして前へ。

 超近接戦、キスできてしまうほどの距離。カルナが雫の頭を首相撲に極め、下腹に膝蹴り。それを掌で柔らかく受け止め、雫はさらに前進、組まれたままに相手を崩し、首相撲をふりほどいて「ふっ!!」肘打ち、裡門頂肘からの体当たり、鉄山靠、さらに一歩大きく踏み込み、崩拳に似た掌打の一撃、猛虎硬爬山!

「ぐぅ……?」
 さしものカルナが膝をつく。とどめの外回し蹴りで、カルナの意識を刈り飛ばす。

 同じ頃エーリカはオリエを相手に。

 射撃、射撃。前後左右上下360度の包囲から撃ち放たれる自在の矢。それをエーリカはすべてはじいてのける。

 必殺対絶対防御、サルンガの威力とアンドヴァラナウトの守護力は拮抗していた。無限の矢を持ち連射可能なオリエが優位に見えるが、弓を射るという動作にはそれなりの疲労を要する。一矢二矢なら疲労が目立つこともない、だが数十数百を連射すれば、確実に消耗は蓄積する。エーリカは相手の消耗を待ち、徐々にすり足で近づいていった。

 そして矢の軌道が目に見えて鈍ったところで、一気に間を詰め盾を振りかぶる。盾姫鈍撃、聖盾に埋め込まれた宝石に横っ面を一撃され、カルナに続いてオリエも沈んだ。

 ローゲは辰馬に肉薄し、炎の魔剣レーヴァティンの連撃。スィームルグとヴェズルフォルニルから力を借りた、と語ったとおりに今の彼は絶速であり、さらに「減衰」の力をも持つ。辰馬は速度で圧倒され、しかも力を大幅に削減されていたが、

「うっさい」
 パァン! 張り手が張り飛ばしたのはローゲの横っ面。もともと片足を怪我して脱解法(だっかいほう)という新たな身体運用に開眼した辰馬にとって、速さというのは絶対の指標ではなかった。上手くない動きには簡単に対応できる。

 そのうえで。

 どんっ!

 なんとか残したローゲの胸板に、盈力をのせての掌打一撃。ヴェズルフォルニルの「減衰」の力でかなり抑制されているが、それでも辰馬の力はすさまじい。力10の存在が力100の存在を相手にして、どうにかしてそれを50まで下げてもなお依然として相手のほうが5倍強い、だいたいそんなところである。

 が、ローゲは怯まない。彼とても見栄があった。もと恋人であるクズノハや、今の思い人であるエーリカにいいところを見せないでは終われない。魔皇女シンモラの術式を得られず完璧ではないレーヴァティンを放り捨て、接戦に持ち込んだ。

「うらぁぁ!」
 がむしゃらな乱打から、強引に間を詰め、襟首を掴んでの頭突き。辰馬も応じて頭突き返す。額と額が激突して、両者の目の奥で火花が散った。どうやら石頭勝負はローゲのほうに分があるらしく、炎の魔神は何度も頭突きを繰り出した。辰馬の額が切れる。

「っく……」
「らぁ! 死ね、死んじまえ、クソがあぁぁっ!」
 そのまま肘、膝、拳、蹴り。6将星の中でもっともチンピラ臭い男の、ストリートファイト臭い、洗練されていないが効果的な攻撃が辰馬を襲う。

「このまま、焼け死ねやァァ!!」
 再び襟首を掴んで、炎熱の気を流し込む。その、タコ殴りが途切れた一瞬で、辰馬は反撃の手を打つ。手首を逆に極めつつ、捕まれる力を逆用して投げ、地面に叩きつける際、相手の首の後ろに膝を落としてフィニッシュ。先日大輔が見せた大技「大虎落(おおもがり)」から着想した、辰馬なりの大虎落だ。

 かくて神楽坂瑞穗まで番手を回すことなく、ローゲ、オリエ、カルナの三人は撃破。あとは魔王クズノハただひとり。

「ここまではお見事。だけどわたしを殺さない以上、戦争は終わらないわよ?」
「殺すかばかたれ。あんたはこれまでさんざん世の中をかき乱してくれたからな、罰が必要だろ」
「罰? なにかしら?」
「魔界の門の門番として、永遠にふたつの世界を見守って貰う。……いくぞおめーら! とりあえずあの馬鹿姉、ブチしばく!」
「ほーい!」
「分かってるわよ、指図すんな!」
「ご主人さまの命令のままに!」

 ………
 ……………
…………………

そうして。
 長い長い、あるいはとても短い戦いの末。新羅辰馬と三人の少女は魔王に勝ち、この世界から魔界に退去することを承諾させる。辰馬が手加減しているようにクズノハもまた手加減していたようではあるが、彼女も弟との決戦のすえに憑き物を落とし、晴れやかな顔で「自分が死ぬか、世界を滅ぼすか」の二択しかない呪縛から解放された。

 こうして神族、魔族はそれぞれの世界へと帰ることとなる。すべての神魔がことごとく神界・魔界に回収されるにはやはり数年数十年を要するだろうが、ともかくもこの先、神魔の人間界への干渉は格段に減っていくことになる。今ある命に宿っている神力魔力もしだいに少しずつ減っていき、次の世代、そのまた次の世代になればおよそ世界に神力魔力持ちの子供が生まれることもなくなっていくはずであった。


 1819年春、ヴェスローディア王城ヴァペンハイム回復。新羅辰馬は女王エーリカ・リスティ・ヴェスローディア・ザントライユにより騎士に叙任され、正式の求婚を受けるがそれを拒否、いそいそと汽車に乗り、アカツキへと帰国。エーリカは軍師・磐座穣に対しても王国軍師・政治顧問としての着任を打診したが、これまた断られて女王としての自分のカリスマに疑念を感じる。

 帰国後、辰馬は晦日美咲とともに宰相本田馨綋邸に赴き、1年ぶりに正妻・小日向ゆかと再開。12才になったゆかは1年前に比べてだいぶ大人っぽくなってしまっていて、辰馬としては「妹みたいなもんなんだがなぁ……」と少し困る気分に。宰相がいらん智慧をつけたらしく、おにーちゃんと美咲が部屋で二人でしてたこと、に関しても理解を深めたようで非常に困る。もしこれでわたしもわたしもー、となってしまったらどげんするのかと、いよいよ困るのである。

 返す刀でヒノミヤに赴き、今度は磐座穣に。予定より1月ほど遅れての出産に辰馬は母親である穣より顔色を悪くして泣き顔で信じてもいない神に祈祷、ヒノミヤの春まだ寒い滝で水垢離し、案の定風邪を引き、巫女さんたちに囲まれて看病され、我が子の生まれる瞬間を見逃した上初子・此葉(このは)を抱きかかえた穣に巫女さんから言い寄られて困っているところを目撃され、冷たく白眼視されたあげくしばらく此葉を抱かせてもらえなかったという目に遭う。

 辰馬と穣の初子である此葉はまさに玉のようなかわいさであり、瑞穂、雫、美咲、文たち辰馬のほかの愛妾たちも大喜びで、つぎつぎに抱いてかかえてあやして話しかけて食事をさせておしめを替えた。しばらく辰馬はそれもさせてもらえず、人知れない場所で穣に土下座してようやく、愛娘に触れる権利を得たらしい。このあたりは正統の歴史書ではまったく書かれていない……というか、新羅辰馬の好色も「英雄、色を好む」で強引に少女たちを侍らせていたように書かれることが多い……が、実際はこんなものである。

 瑞穂と雫はヴェスローディアのエーリカに手紙を送り、新羅一家とその初子の写真を添えた。それを見たエーリカの喜びと落胆と言ったらなかったのだが、この場にいないものはどうしようもない。

 北嶺院文はまた桃華帝国国境の前線に出た。アカツキ・永安帝はひとたび神魔の脅威が去ったとなるや、功労者である辰馬に一弊の褒賞を寄越すこともなく、ふたたび領土的野心をむき出しにした。文は中将に昇進して狼紋の北、朔方鎮に鎮護することになり、鎮将としてつけられた長船言継のセクハラに手を焼いているらしい。

他国ではラース・イラのガラハドが失脚、一騎士に落とされた。宰相ハジルとしてはこの機にガラハドを殺してしまいたかったのだが、神魔戦線における副団長セタンタの勇戦、そして女王エレオノーラ自らの懇請があってはやむなかった。

北方ではヘスティア帝国皇帝オスマンがトルゴウシュテの小領主シュテファン・バートリに婚姻を申し入れ、容れられた。シュテファン公女としては憎い相手のはずだったが、実際神魔戦線で見せた統率力や人間的魅力、知見、そうしたものに触れて彼女の心は揺れた。弟ラドゥ殺害の真犯人はオスマンではなく先帝フョードルの意を受けた宰相の一人イスマイル・パシャであり、その証拠とともにイスマイルの身柄を突き出されては遺恨にとらわれている場合でもなかった。なにより、これから起こるであろう動乱に対して、トルゴウシュテ一国では対処できそうもない。

エッダは二つに割れることになった。オクセンシェルナの共和政府と、インガエウの正統政府である。野心家で自分以外を認めないインガエウは冒険者として頂点を極めることでその野心を鎮めるはずであったが、すでに時代は冒険者個々の力量で動く時期を過ぎている。取り巻き連およびエッダ北方エギル連合に推戴された彼は良い気分で王となることを受諾し、さっそく共和政府に牙をむく。

クーベルシュルト国王フィリップと王妃ジャンヌの間には初子が生まれた。名前はシャルル。フィリップが打倒して廃立した兄と同じ名であり、彼が兄に対して抱いていたのが憎悪ではなく敬愛であったことがこのことからも知れる。王妃ジャンヌは「手かざしの奇跡」によって臣民の敬愛を受け、ウェルス神教正統の聖女ではないが紛れもない「聖女」として名を知らしめている。宰相にして軍事顧問のヤン・トクロノフは王と王妃に目を細めつつも、やがて来る戦乱に身をこわばらせていた。

ウェルスの教皇にして聖女、ルクレツィアは法改正に忙しかった。なにしろこれまで人々のよすがだった神というものが、これから先は存在しない世界になるのである。聖典の解釈や教義について、改革しなくてはならないことはあまりにも多い。

 などなど、世界はめまぐるしく変わっていくが。

「まあとりあえず……、勝利、平和、万歳! ってことで」
 3月末。桜の舞う公園で。
 新羅辰馬、神楽坂瑞穗、牢城雫、磐座穣、晦日美咲、小日向ゆか、朝比奈大輔、上杉慎太郎、出水秀規、新羅狼牙、アーシェ・ユスティニア・新羅、ルーチェ・ユスティニア・十六夜、十六夜蓮見、明染焔は花見をしていた。

「「「勝利、平和、万歳!」」」
 辰馬の音頭に、一同が唱和する。これから先、神魔の横やりがなくなった以上は人間と人間による、醜い闘争の時代が訪れる。しかし今のところはみな幸せに。

 黒き翼の大天使/第3幕/第2次魔神戦役篇・了

………………

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遠蛮亭 2022/12/06 08:33

22-12-06-くろてん3幕5章10話.最終決戦

おはようございます! 調子が悪く出遅れました。

昨日はシナリオを少し進めて、システム関係もいくつか足して、必要になるイラストを描いて、ほかゲーム制作とは直接関係ないのですが久々に積んでた同人ゲームをちょろちょろとやりました。たまに他の方の創作に触れると刺激を貰えますが、あんまり素晴らしいものを前にすると自信喪失するところもあって難しいですね。まあ、遠蛮としては手持ちのシステムでできる限りを尽くすのみです。

で、昨日のお絵描き。

まず寧々さん殴打シーン。瑞穂さん殴打はなくしたわけですが、やっぱり先手衆は暴力集団なので多少乱暴にやるところを表現しないとウソだなぁというところ。このくらいの表現なら問題ないだろうと思うのですが、どうでしょう。

寧々さん殴打からの凌○シーン。以前上げたものがミニスカだったのを袴に代えてリボンとか髪飾りは外してと修正。

寧々さん出産イベント用に上の絵を加筆修正。寧々さんボテ腹イベントはこれで2種類ということになりました。調教深度で変化させるか、それともランダムでピクチャ切り替えすればいいかなと思います。

これはゲームとは関係ない瑞穂さん。エロ絵ばっかり描いてると飽きが来てしまうので、たまにこういう絵を描いてリフレッシュ。胸は相当デカく描いたつもりですが、服を描いて着色するとあんまり大きくない感じに。

では、本日もくろてんです! 3幕ラスト1つ前。タイトルは「最終決戦」ですが、まだまだ物語は4幕5幕続きます。

………………
黒き翼の大天使.3幕5章10話.最終決戦

 戦争の事後処理などを考慮して、クズノハたちとの決戦は1月後。12月24日に競技場で、ということになった。

「はぁ……」
 新羅辰馬はこのところ癖になってしまっているため息をついた。魔王殺し、姉殺しを大勢の観衆の前でやらねばならない、そう考えるだに気分は陰に籠もる。

 瑞穂や雫、エーリカが気を引いて元気を出させようとしても成功しない。いつもならなんのかんので瑞穂たちの誘惑に乗る辰馬も、今回ばかりはそんな気分にならなかった。

「どーすっかね……ホントに……」
ハウェルペン政庁の外、聳える雄大な古木に問いかける。木の名前や種類に堪能なわけではないが、軽く千年は生きていそうな木には精霊が宿っていておかしくない。そういう存在にでも話を聞いて欲しかったのだが、向こうの虫の居所か、辰馬の精神状態が沈んでいるためか波長が合わず、精霊が姿を見せることもなかった。

 かわりに来訪者はあったが。

「……久しぶり……」
「混元聖母……」
 神界に送還されたはずの混元聖母が現れたことに、辰馬は身を固くする。戦闘力的な問題ならすでに辰馬は魔王も聖母も圧倒するだけの領域に到達しているが、彼女らが辰馬ではなく辰馬の仲間を狙って力をばらまいた場合、それを完全に防げるという自信は無い。最善は戦わなくていいことだが、それは向こう次第。

「安心して……。わたしはもう挑む気は無い……、一度負けたのだし」
「そんならなにしに来た? なんか変な企みごととか……」
「蒼海を、見せて」
「蒼海?」
「あなたが……天楼と呼んでいる剣」
「あぁ……うん。これでいーか?」
懐から天楼を抜いて、混元聖母に渡す。聖母はそれを子細に眺め。

「やっぱり……あなたは蒼海……この子を十二分に使えてない」
「そーかな……? 十分使えてると思うが」
「蒼海と紅羿はふたつでひとつ。これが……紅羿」
 首をかしげる辰馬に、聖母はそう言って、天楼によく似た蛇腹の担当を差し出して見せた。

「え……くれんの?」
「あげる。もうわたしには必要ないから……」
 そう言い置くと、混元聖母はすたすたと去って行き、やがて姿を消した。辰馬も追わない。信頼していいだろうと思えた。

「天楼……蒼海と、紅羿ねぇ……。んー、あぁ。天楼は神力の伝導で、紅羿は魔力の伝導率が高いのか。なるほど盈力を使うならこれ両方あるのと天楼だけでかなり違うな」
 軽く触ってみて、ふたつの短刀その本質を言い当てる。なるほどこれ二つを使えば、輪転聖王のような超威力のコントロールも容易となるだろう。

「……こーいうアイテムはもっと早くに手に入るべきじゃねーかな? 今更終わりも近づいたところに持ってこられても困るっつーか……」
「おお、新羅どのではないですか!」
 ぶつぶつ言いながら歩いていると、スキピオに出会った。前ウェルス新聖騎士団長ホノリウス(ガラハド・ガラドリエル・ガラティーンによって壊滅させられ、失脚)は高慢で魔王の息子をとことんまで嫌い、アーシェ・ユスティニアを唆して辰馬を殺させようとした男だったが、後任のスキピオはまったくそういう高慢さや嫌味が無い。さわやかな印象……少々苦労しているようで40前にしてすでに白髪が多いが……の好青年である。聖騎士団長は鎧の重さを感じさせない足取りで辰馬の横に並ぶと、その周囲をぐるっと見渡した。辰馬がひとりでいることをいぶかしんだらしい。

「今日は麗しの乙女たちとご一緒ではないのですかな?」
「あー、今日はね……」
 さすがに、ベッドに引きずり込まれかねないから逃げてきた、とは言えない。適当に言葉を濁す。

「それにしても、世界から神魔を打ち払う、とは。人類有史以来の快挙ですな。この世界は人間の居場所、それが新羅どのの哲学というわけですか」
「哲学って程じゃねーけど。まあ神や魔が人間の命に干渉してくるのが許せないってのはあるな。とはいえ、実際すべての神族が神界の神の庭に引き籠もるまではあと何十年かかるだろーし、魔族をアムドゥシアスに封印するとしてそっちも、完全になるには何十年。……そもそも魔族のこの世界からの撤退は、まだ確定してないからな」
「わたしが見るに、あなたは勝てないことを憂いているのではなく勝ててしまうことを哀しんでいるように見えますが」
「……そーかもね」
「これから用事が無ければ、わが姫ルクレツィアと一緒に昼食でもいかがですかな? 先代聖女さまの話を聞きたいと仰せです」
「かーさんの話ねぇ……。あんまし詳しくねーんだわ。フィーのようがよく知ってんじゃねーかな」
「フィー?」
「ラケシス・フィーネ・ロザリンド。あんたの国の聖女候補だよ。正式の聖女はアトロファのほうなんだっけ? そんで教皇がルクレツィア……なーんか、ややっこしいなぁ……」
「はは。確かに、教皇も聖女候補たちも全員、便宜的に「聖女」ですしな。わたしも教皇になるまではルクレツィアとほかの聖女たちの区別がつきませんでした」
「そーいうもんだよなー……」
「しかし。ほかのすべての主神と属神が神の庭に帰ったとして。眠れる創世神イーリス様はどうされますか?」
 スキピオが、表情を引き締めて言う。創世の竜女神グロリア・ファル・イーリス、アルティミシアの地上に住まうすべてを造出した創世神はほかの女神たちに比べてもあまりに隔絶した存在だ。たたき起こして神界に引っ込めと言ってもまず聞かないだろう、というよりもむしろ不遜な人類に鉄槌を下すと言い出しかねない。

「……あ゛ー……いや、しばらくほっとこう。人類に直接干渉しないならいーわけだし」
「左様ですか、それは重畳。性急にイーリス様を伐つ、といわれてはさすがに、信徒たちの意思を統合するに時間が足りません」

 いつかはそれをやる必要も出てくるだろうが、とりあえずそれは今ではない。全部そうやって先延ばしに出来るならよかったのだが、今回姉クズノハにはそうもいかない。

「仲良くしようってわけには……いかんよなぁ。あいつらだって人間滅ぼそうとしたわけだし。魔の干渉を打ち払うって決めときながら、そのトップのクズノハだけ特別に助ける……つーわけにもいかん」
 スキピオと別れた辰馬はまたぶつぶつ言い出した。

「もともとあの馬鹿姉が死にたがってんのが問題でなぁ……、暗黒大陸の封印の向こうに引っ込んでくれるだけでいーのに、殺せ殺せゆーのが……うぇ、なんか吐き気……」
 考えをまとめようといろいろ口にしていくうち、考えたくないことも口に出してしまい嘔吐く辰馬。復興したてのレンガ道にゲロなんか吐いた日には怒られるので我慢するが、ともかくヘロヘロになってしまう。

 そのとき。
「おにーちゃーん、わたしのおもちゃ返してよぉ、おにーちゃーん!」
「あははははーっ、もんどーむよー!」

 少年と少女が走り抜けた。兄である少年が妹である少女の玩具を取り上げて走っていく。子供たちが普通に町を歩けるようになった時点でだいぶ復興も進んだなーと実感するが、それより。

「問答無用かぁ……。もう問答無用で向こうに封印するか。死にたがりを殺してやる義理なんかないし、知らん」

 そうして。

 名も知らぬ兄弟の喧嘩から辰馬は未来への展望を決めた。

 12月24日。

 当然のような極寒、当然の大雪の中で行われる人と魔の最終決戦。競技場には魔王殺しの達成を見ようと、数千数万の人だかりが押し寄せた。

「いや、殺さんけど」
 控え室の辰馬は、憑きものの落ちたまろやかな顔で呟く。これまで「殺してくれ」といわれて「殺してやらねばならない」という強迫観念に縛られていたが、そんなもん知るかである。

「ううううーっ、さむ、ざむいですぅっ! ご主人さま、暖めてくださいー!」
 寒がりの瑞穂が震えてすり寄ってくるのを「おう、よしよし」と抱き寄せる余裕すらあった。

「ずるいなーぁ、みずほちゃん! あたしもあたしもー!」
「たつま、あたしもなでなでしなさいよっ!」
「はいはい、OK。順番にな、順番」
 我も我もと抱きついてくる雫とエーリカも、鷹揚に撫で回す。ソレを見て虫の居所が非常に悪いのが、魔族陣営、ローゲ。

「あのガキ、今から殺し合うってのがわかってんのか? エーリカも蕩けた顔しやがって、ムカつく……」
 思えば当初、エーリカを捕らえても殺さず陵○もしなかったのはローゲの彼女に対する慕情ゆえだった。何度もモーションをかけて結局、靡かせることは出来なかったわけだが、その相手がいま他の男の膝の上でくてーとしているのを見るのは、嬉しいものではない。

「いいからお前は戦いに集中なさい。辰馬に力を練らせたら、一瞬で終わるわよ」
 隣でクズノハが言う。それに同意するようにローブの人影も頷いたが、ローゲはそれをせせら笑う。

「練らせませんよ。スィームルグとヴェズルフォルニルに力を借りて、今の俺は絶速の炎。あいつらになにひとつさせません」
「ならばいいけれど……、さて、そろそろかしら」

 教皇ルクレツィアが登壇し、この試合、人類側が勝てば魔族は暗黒大陸アムドゥシアスの魔界に引き下がって封印、対して魔族側が勝てば人類を隷属させる、というこの試合の要諦を告げる。正レフェリーとしてセタンタが、副レフェリーとしてスキピオが出る。

 こうして、コミッショナーを立てレフェリーを立てして、あくまで試合という体で行われるが、懸けられるものはこれまでのすべての戦闘にまさるほど大きい。人類応援団の声はいきおい大きくなり、「負けたら殺す」の声を帯びる。魔族側にも応援の観客は入っているが、こちらは魔王の絶対勝利を疑うことがないのか、存外静かなものだ。

「うーん……こういう雰囲気で戦うのって、慣れねーなぁ……」
「そお? あたしはへーきだけど」
「そら、しず姉は試合慣れしてるだろーけど、おれは経験少ないんだよ。まあ……ここまできて、負けるこたぁもうねーけど。んじゃ、往くか!」

………………

以上でした、それでは!

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