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日輪宮の齋王の記事 (21)

遠蛮亭 2022/11/24 07:12

22-11-24.くろてん3幕5章1話

おはようございます!

昨日はSLGシステムからノンマップダンジョンに遷移してモンスター捕獲用ダンジョンの制作でした。まあ、ダンジョンとはいってもノンマップなのでマップを作る必要はなし。背景画像を用意して、SLGシステム内の内政画面内から選択肢を表示、ノンマップダンジョン7種にそれぞれ触手・獣・機械・鬼・海棲・不死・竜の種族ごとのモンスターを配置する作業をやりました。まだモンスターのパラメータやスキルの設定は仮組段階なので卿今からまた続きをやります。

で、ノンマップダンジョンは各種族ごとに5階層、モンスターの出産2分岐6段階のうち5段階目までは確率で捕獲可能…4段階までのほうがいいかもしれませんが、ともかく最高レベルのモンスターは出産でしか手に入らない、としないと出産システムの旨味がなくなるのでそこは線決めしておかないといけません。

現状ダンジョンの体裁を整えて「SLGシステム→ノンマップダンジョン、ノンマップから帰還を選ぶとSLGに戻る」システムまで組み上げましたので、今日はモンスターのパラメータ設定やら種族スキルとかをやります。ほかには錬金システムと辞書プラグインも作りこまないとなので、先にそちらをやるかもしれませんが。SLGプラグインとタクティカルコンバットシステム、タクティカル戦で戦闘終了時エラーが出てゲームが止まる=都市占領イベントの確認が不可能な状態であることと、コンピュータのアルゴリズム表示はされるのですが実際にこれが動いていない(エネミー1はプレイヤーを攻撃した! と表示されても実際に戦闘が発生しない)気がする状態にあるのでこれもどうなるやらです。もしかするとコンピュータ側は能動的に動かない(プレイヤーからの侵攻に対して、防衛のみ)になる可能性もあり。自由になるお金がもう乏しいからですね、ギリギリまで身を削るつもりではありますが。

では、今日の進捗は以上でした。本日お絵描きなしでこのままくろてん行きます。あ、そう言えば昨日、10か月ぶりにくろてん外篇・紅蓮の女帝の最新話をカクヨムさんにアップしました。辰馬くんが死んで40年後の世界、息子の乕さんが青年というか壮年というかのお話なので、あのお話を書くと一抹の寂しさを感じるわけですが。

………………
黒き翼の大天使.3幕5章1話.ヴォイヴォーデの反発

 エッダ共和国にはヴォイヴォーデといわれる地方領主がいる。

 エッダ=フリスキャルヴ王室が打倒されて共和制となったあとも彼らは残った。というより、ヴォイヴォーデによる連合体といってよいエッダが彼らを完全に解体するのは不可能だったといえる。

 さておき。そうして共和制エッダの一員となったヴォイヴォーデではあるが、中には旧フリスキャルヴ王室への追慕の念強く、共和政府を憎む連中も少なからず、存在する。そして厄介なことに、その頑迷な連中こそが国の枢要に重要な役割を担う大物であったりもするのだった。

「そんで。そいつらがエーリカの総大将就任を認めない、と……」
 政務室、上がってきた報告に、辰馬はさすがに渋面を作る。ヴォイヴォーデの中でも東方、ヘスティアとの国境に存在するトルゴウシュテと、大陸北端に位置するエギル、この2都市が「フリスキャルヴの正統、インガエウ閣下をさておいて、ゴリアテさまの血統から言えば傍流であるエーリカ如きが総大将などと片腹痛い!」と言ってきたのである。現在人類が一丸となって神魔に対抗すべき時であるのに、なにを考えているのかばからしい、と一笑に付したくもなるのだが、笑って済ませられないのはこの2都市の影響力がエッダ国内外に大きく、各国の派兵に悪影響を及ぼしかねないということである。困る。

「ホントなに考えてんだろーなぁ、ばかたれが! 神魔どもに負けたら利権あさりも出来なくなるんだぞ?」
「人はそういうものです。ヒノミヤでも神月派に圧伏されて危険な状態にありながら、協調を取らずに自分たちの利権をむさぼり合う人たちがたくさんいました」
 瑞穂の言葉に、辰馬は実に嫌そうな顔になる。あんまり嫌な気分なので瑞穂をぐいと抱き寄せて、その豊臀を鷲づかみにした。

 ぐにぐに、ふにふに。
 4月の末にこちらに来てはや3ヶ月、さすがに8月近くになるとヴェスローディアも暖かく、瑞穂もごわごわしたセーターやはんてんという色気のない格好はしていない。有事に備えていつもの感味噌姿であり、その半ば露出した尻肉が手近にあれば触りたくもなる。とはいえ辰馬が自分から女体に触れたがるというのが、かなりストレスを感じている証拠ではあるが。

「あっ……ぁ、辰馬さま……く……ふぅっ……」
「なんかなー、やっぱ現地に行って説得せんと駄目か。そんな時間もねーのに」

 ぐにぐに、ぐにぐに。

「……くぅっ……ん……、ハ、ハゲネさんの所持する転移の絨毯、あれを使えばすぐにいけるのではないでしょうか? ハゲネさんは一応、国の重鎮であったわけですし、トルゴウシュテにもエギルにも行ったことはあるはずです」
「あぁ、そーなー……」
 ハゲネの転移の絨毯、あれはもともと魔軍が暗黒大陸アムドゥシアスから進行してくるために使っていた巨大な転移布の切れ端であるが、どこにでも転移できるわけではない。いや、出来るのだが、そのためにはまず、使用者の誰か一人でも転移先に行ったことがなければならず、そのためアカツキに来たことがなかったハゲネがアカツキまでエーリカの危急を告げに来るまで、汽車と徒歩とで10日以上かかった。

「そんじゃ、ハゲネに言うか……」
 左手で頬杖つきながら、
ぐにぐに、くにゅん、むにっ、むにゅ♡
瑞穂の巨尻を存分に揉み捏ねる辰馬。その指技の熟練ぶりに、いつもの事ながら瑞穂はなすすべなく翻弄され、興奮させられる。しかしながら辰馬は自分が瑞穂の尻を触っているという自覚がない。「うーん、むうぅ~」と唸りつつふにふに、くにくにと揉み続ける。瑞穂はたちまち青息吐息となり、辰馬にしなだれかかった。

「はああぁ……辰馬さま、ご主人さまぁ~♡」
「? なに発情してんのお前? 昼間だぞ、今」
 ぎょっとして目を見開く辰馬。抱きつき、拘束するようにしがみついて服を脱ぎに掛かる瑞穂。

「ちょ、待て待て待て! やめれ、やーめーれって!」
「やめません! ご主人さまが悪いんですからね!」
「なにが……んぶぅぅ~ッ!?」
 乱暴なくらい強引に唇を奪われた。瑞穂は強行に舌を差し入れ、半裸の爆乳をこすりつけてくる。辰馬の理性も粉砕されて自分から瑞穂の身体に手を伸ばそうとした瞬間、執務室のドアが開いて人が入ってきた。

「食料の買い入れなんだけどたつま、これ計算間違えてない? 兵員200万人に1日あたりジャガイモとトウモロコシ600グラムとして、なんでこんな値段に……って、アンタたち」
「あー……エーリカ。よお」
「よお、じゃね-でしょーが! ……ま、アタシは理解ある妻だから今更やめろとは言わないわ、アタシも混ぜなさい!」
「……あのさ、前から聞きたかったんだけど」
「ん? なに?」
「お前らってなんでそんなに積極的なの? 男好きなの? ドスケベなの? ビッチなの?」
「はっ倒すわよアンタ、一国の女王捕まえてビッチとか。そんなもん、理由はひとつしかないでしょーが」
「なんだよ?」
「アンタがかわいーからよ!(ご主人さまが可愛いからですよ!)」
「………………」
 理解できん、とかぶりをふった辰馬は瑞穂の拘束をふりほどいて自由になるとドアに走る。エーリカが追う、躱す、あと一歩でドア、逃げ切った! そう思った背中にどぅっ! と衝撃。瑞穂の放った光弾が、辰馬の背を強打。辰馬は開こうとしたドアにびたーんと叩きつけられ、ダウン。

「ぅぐ……」
「逃がしませんよ、ご主人さま♡ わたしを昂ぶらせた責任、取っていただきます♡」
「容赦ないわねー、みずほ。ところで『ご主人さま』に戻したの?」
「あ……そうですね、無意識で……」
「そんじゃ、牢城センセも呼ぶ? やっぱたつまをイジメるんなら、3人でやらないと」
「それは良い考えですね!」

 というわけで、新羅辰馬は女郎蜘蛛の様な少女たちにいたぶられ、絞られ尽くしてその日は終わる。

………………
「……ってわけで、おれがトルゴウシュテに向かう。エギルにはインガエウに行って貰いたい、つーか行け」
「指図をするな、ちび猿。たかが一回、まぐれで俺を落馬させたくらいで」
「なんならまぐれじゃないって理解するまで何度でもやってやるが?」
「ふん、東方人は野蛮で困る。そうやって蛮勇を誇るから、貴様らは猿だというのだ」
「よし。んじゃあ頭で勝負しちゃる。将棋……はここにはないから、チェスで勝負だ」
「いいだろう。……俺が勝ったらヴェスローディアの王位継承権を放棄しろ、ついでにミノリも渡して貰う」
「……そーいう条件つけられるとできなくなるだろーが。ヴェスローディアの継承権? そんなモンはもとよりいらんが、磐座は景品じゃねーよ」
「フン、腰抜けが。自信がないのか?」
「そりゃ、どんな勝負にも絶対はないからな。絶対に勝てるとかほざくのは世間知らずの子供か、頭の弱いバカのどっちかだろ」
「俺をバカだというのか?」
「さあ? 少なくとも、あんまし頭よさそーには見えんよなぁ」
「よかろう、指してやる」

………………
「シャー・ルフ(王手)!」
 40分後。辰馬のポーンがクイーンにチェックをかける。インガエウが弱かったわけではなく彼とても相当な巧者であったのだが、辰馬はその2、3枚上手を行っていた。

「馬鹿な……この、俺が?」
「その程度の腕でなんで『負けたことが信じられない』って顔なんだよ。負けるだろ、そりゃあ。瑞穂とか磐座はおれよか断然強いし、おれのいもーとのゆかなんかバケモンだぞ?」
「知るか! これは無効だ、俺は今までの人生でチェスに負けたことはない! それがこんな、東方のちび猿にまけるはずがないのだ!」
「………………あのさ、ひとつ、いいか?」
「なんだ!?」
「お前って一応、王族なわけだよな。で、チェスに負けたことないってそれ、たぶんみんなわざと負けてくれたんだと思うぞ? だってお前、一流だけど超一流ではなかったもんよ」
「……!? そ、そんな……はずは……」
 インガエウは否定してくれと言いたげに、三人の従者を見る。ホズ、シァルフィ、ホラガレスの三人はバツ悪げに目をそらし、それが如実に現実というものを証明した。

「さて、そんじゃメンバー分け……インガエウはいつもの3人と一緒でいいとして。おれも4人で行くか。エーリカは総大将で動かせないとして、磐座も大事とらんといかんし。サティアと出水はいざってときおれの代わりの火力になれるからここに残す。シンタの目と晦日の諜報力も哨戒役として重要だから残すだろ……、会長はもともとおれの部下でここに来てるわけじゃないし、アカツキ軍の指揮があるから当然、残す。となると連れて行くのは……大輔、瑞穂、しず姉だな」
「押忍(わかりました/りょーかーい)!」

………………
「たつま、早く帰ってきなさいよ。旅先でみずほとか牢城センセに種付けしたら殺すから」
 出立前、エーリカはなにやら病んだ言葉で辰馬を脅す。
「なんでだよ」
「とにかく! 初子は先越されたけど、つぎに赤ちゃん授かるのはアタシじゃないといけないの! わかった!?」
「……おまえ、そんなに子供好きじゃなかったよな?」
「自分の子なら話は別よ。そしておとーさんがたつまならね。はい、行ってらっしゃいのちゅー」
「あーもう……まあ、いいや。あいよ、ちゅー」
「あー、いいなぁ。たぁくんたぁくん、あたしにもちゅー!」
「やかましーわ。……そんじゃ、いくぞ!」
 ハゲネが絨毯を広げ、その上に4人が乗る。続けてハゲネが「力ある言葉」を呟くと、辰馬たちは真っ暗な森の前にいた。

「これが、トルゴウシュテの『黒森』。本当に真っ暗なんですね……お昼なのにほとんど先が見通せないです」
 瑞穂が驚嘆に目を丸くする。歴史と兵法を学ぶものとしてこの地を守った古代ダキアの歴史は当然、頭に入っている。1500年前、ウェルスの執政官にして名将、プブリウス・セントーニウス・スッラがこの地まで遠征したにもかかわらずここから先の進軍を……このトルゴウュシテを抜けるとその先にはいよいよヘスティア、桃華帝国という東方国家がある……諦めたのは森があまりに暗いためだったというが、現実にその場に立たないとわからないものだ。まさにこの暗さは冥府の獄を思わせる。

「まさしく、この森の暗さが東方を救った、ってわけだ。……そんじゃ、その救い主の末裔たるご領主様に挨拶に行くとしますかね」

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/11/23 07:00

22-11-23.くろてん3幕4章14話+お絵かき2枚+ゲーム制作進捗

おはようございます!

昨日はファイルを小分けフォルダから出したのですが、その後ファイル名が日本語だとエラーの温床になるということでまたリネーム、実際のシナリオやシステム以外のところで手間取りました。で、それを済ませてやったことはというと出産システムの整理でして、表を出しますとこんな具合。

最初モンスター10種全部縦に並べて順次出産していく形にしていましたが、触手系モンスターは2段階目「蠱雕」から魔術タイプとパワータイプに分岐、保有タクティカルパッシブの傾向を変えていきます。魔術タイプは遠隔射撃型+敵のパッシブを登録スキル順に打消していくスキル「愚者の嘘」もち。パワータイプは攻撃力偏重というより防御型にする予定です。ダメージをスキル値%カットする「堅守体躯」あるいはその上位版「神魔体躯」もち。最高でも99レベルに届かない設定ですが99に達するのは悪魔系と竜系のみの予定。99カンストしなくても愚者の嘘5とか持てる「疫神」は超強力ユニットになるはずです。疫神のTPポイントは480で愚者嘘5の必要ポイントは400なので、これ持たせるとしたら完全なる置物として使うことになりますがそれでもスキル5個消しは超強いのです。

ということを3時までやって、そこからはお絵描きタイム。

まず久しぶりの雫おねーちゃん。なんのかんので全キャラ中いちばん好きなキャラはと聞かれたら彼女が一番好き。2番目はみのりんか瑞穂さん。

胸当て部分剥ぎ。実のところこっちが先にあり、Twitterにアップする用にあとから胸当て付け足したわけですが。

そしてエーリカ。エーリカは…辰馬くんの6皇妃のなかではいちばん嫌いというか苦手なキャラかもしれません。やっぱり人間味が強すぎまして、最終的に嫉妬心から瑞穂さんを殺しちゃうあたり、もろ手を挙げて好きとは言いづらいところ。

今日の成果物は以上、以下くろてんをやりますので、今日もお付き合い願えねばと思います!

………………
黒き翼の大天使.3幕4章14話.三軍も師を奪うべし

「盈力に盈力、ねぇ……。力を食み合わせることはできるとして、その間おれは戦闘に参加できなくなるな」
「ならば拙者が!」
 瑞穂の言葉に応えた辰馬の一言に、威勢よく挙手するのは出水。これまでのコンプレックスから一転、一躍辰馬の役に一番、立てるという自信を得た出水は、水を得た魚の勢いで鼻息も荒い。

「こらデブオタ、お前、ちょっと盈力手に入れたからっていい気になんな」
「そうだな。俺たちを忘れてもらっては困りますよ、新羅さん」
「そんなこたぁわかってるって。お前らのだれが一番とか、順番つけるつもりもねーわ」
「あー、じゃああたしたちのなかの一番は~?」
 雫が可愛い声で爆弾投下。ざわり、と女性陣が色めき立つ。特に前のめりなエーリカの目の本気ぶりが怖い。

「そうよ、そこんとこどーなのよ、たつま!?」
「近い! 寄りすぎ! だぁら誰が一番とかねーって言ってんだろーが。みんな平等、みんな一番!」
「そんなきれーごとで誤魔化されるわけねーでしょーが! アタシが一番って言いなさいよ! そしてヴェスローディア王家を継ぐの!」
「継がねーよ、ばかたれ! いつかおれが王様になったらみんなお迎えするって言ってんだろ、それまで待て!」
「待てないっつってんでしょーが、ばかたつまァ!」
「なんでそんなにキレてんだよ、お前は!?」
「あんたが最近他の子……とくに穣! ばっかりかわいがるからでしょーがッ!」
「え……そんな、贔屓したつもりもねーんだけど……してたっけ?」
 辰馬はここで本当に覚えがないと、きょとんとした顔で周囲を見渡す。まずシンタ、大輔、出水が神妙な顔でうなずき、転じて瑞穂たち女性陣に顔を向けるとこちらも重々しく首肯。最後に、救いを求めて客将のラケシスやアトロファ、マウリッツとレンナートに向き直るが、彼らもやはり困り顔で首を縦に振った。

「あ……あれ?」
「新羅がわたしに過保護だったのは間違いないと思いますよ? はっきり言って少し気持ち悪かったです」
 と、穣にバッサリ行かれるにいたり、辰馬はうぐ、と小さく呻吟する。だって仕方ないやんか、初子なんやもん、そりゃ、少し浮かれもするやろーが! と、思いはしてもそれを口にするのははばかられる孤立無援モードに、新羅辰馬、少し涙目。

「わかった!? わかったらアタシともしっかりイチャイチャしなさい、ってゆーかあたしにも子供仕込め!」
「なに言ってんだお前はぁ!?」
 エーリカの直接的すぎる要求に、辰馬はたじろぎ突っぱねる。辰馬のまわりの女の子たちは基本的に辰馬のことが好きすぎる所為か、羞恥心が薄くて困る。

「エーリカ、実際妊娠すると結構大変ですよ? 動きも相当、阻害されますし」
「く……っ、勝ち組の余裕……!」
 穣に諭され、悔しげにうめくエーリカ。その後ろで瑞穂や雫も、そこはかとなく辰馬の子種がほしそうな、狙ってる目をひそかにぎらつかせる。万事に控えめなメイドの鏡、美咲もちらちらと明らかに意識した視線を向けてくるし、本来生殖という概念を持たない女神・サティアも興味津々。文は無言、静かにしているが、そもそも彼女は今遠征軍の指揮統率で野営地にいるのでこの場に存在しない。

「まあ、あれだ……磐座贔屓しちゃってたのは悪かったとして……。今ここでおれがお前等に仕込んでだぞ? そんでおなかの大きいお前等をぞろぞろつれて進軍してたらなんかおかしーだろーが」
「確かに。なんだそれって感じっスね、それ……」
「シンタうっさい! 混ぜっ返すんじゃねーわよ! アタシはね、絶対に辰馬の一番になるの! あんたが王様になるなら第一王妃じゃないとぜーったい、納得しないんだからね!」
「今のうちからそげなこと言われても知らんが! なん先走ったこといいよっとかお前は!?」

「ともかく、まずはヴェスローディア奪還が先ではないですかな?」
 話題が堂々巡りになりつつあると見たか、それまで大人の余裕でにっこり事態の推移を見守っていたマウリッツが挙手して発言。そういえば部外者もいるんだった、とようやく思い至った辰馬とエーリカは、気恥ずかしそうにそれぞれの隻に着席する。

「東方は遠方であることと事態の危急がまだ実感できていないこともあるのか、反神魔戦線への参加の意思が薄いですが。エッダ、クーベルシュルト、ラース・イラ、そしてウェルス。この4国はヴェスローディア解放に参戦の意思を表明しています。やはりテレビ中継の効果が大きかったですな」
「そーだな。情報伝達手段としては現状、あれに勝るものなしか。……つーても、こっちが間違った情報を発信したら間違ったままに伝わっちまうからな、あんまり頼りすぎも……って気もするが」
「ともかくも4国連合軍は200万を超える大軍。……まあ、公称ですので実数は、100万にやや足りないくらいでしょうかな。まずはその旗頭を決める必要がありましょう」
 マウリッツがそう言うと、すかさず立ち上がったのはインガエウ。
「それなら俺しかあるまい! 将器、教養、血統、自分で言うのもなんだがおれに勝る指揮官がほかにいるとは思えん。東方の小猿など論外だからな!」
「はいはい、それでいーんじゃねーの?」
 辰馬はあっさり譲ろうとするが。
 黙っていないのは弟分と愛妾たちである。

「なめてんのか、このトウモロコシ! 自力で繁殖もできねー不完全穀物が、いっちょ前に吠えてんじゃねーぞ!」
「っ! 誰がトウモロコシだこの赤ザル!」
「お……シンタのあだ名見事的中」
「いや新羅さん、そこ感心しなくていーですから……」

「というか、新羅の指揮統率能力は相当に高いですよ? インガエウは正直に言ってわたしより下、話になりません」
「あれは……ミノリを立てて指揮を任せたに過ぎん! 俺の本気はあんなものでは……!」
「うっせーわねチンピラ。将器と教養と血統? ならアタシでいいじゃない!」
 冷静に力量を指摘されてもがくインガエウに、エーリカがぴしゃり、言い放つ。人並み以上の将器があり、ヴェスローディア女王としての教養があり、さらに「祖帝」シーザリオンからつながる皇統の嫡流(これに関してははなはだ怪しくはあるが)。総大将としてエーリカに勝るものはない。将器に関しては超一流に一歩届かないが、実際の指揮統率は辰馬たち実戦レベルの指揮官が盗るのだと考えれば、象徴としてはエーリカが最もふさわしいように思われる。

「え、エーリカ女王……」
「あによ、文句あンの? なんなら模擬戦でもやって決める?」
「……いいでしょう。その勝負、お受けする」

………………
「ってなわけで。会長の兵を少し借りたい」
「いいけど……、新羅くんが自分を通せばいいことじゃないの?」
 野営地の幕舎を訪れた辰馬に、北嶺院文は首をかしげた。血統で言うなら辰馬は魔王ウシュナハ家。ヴェスローディア王家やフリスキャルヴ王家と比べたって遜色あろうはずもなく、将器と教養に関してはまさに空前にして絶後の大才。インガエウは認めないかも知れないが、エーリカは辰馬が立候補すれば喜んで譲るはずだ。

「いや。おれは100万率いる器じゃねーし。ああいうのは将才とは別の器が必要なんじゃねーかな」
「あなたにそれがないとは思えないんだけど」
「ないよ。つーか、そういうもんはいらん」
「いらん、といってもね。世界と時代があなたを放っておかないわ。それに、王になるのでしょう? だったら……」
「説教やめよーや。ただでさえ人殺しの才能がある自分が嫌いなんだからさ、その才能が図抜けてるとかいわれると鬱になる」
「出水君ではないけれど、覚悟不徹底ね」
「……まあ、それは認める。けど人間そんなもんだろ、言行一致してるやつなんてそうそういない」
「確かにそうだけど……あなたの場合優しさが極端すぎて心配になるのよね。少しはしたたかになりなさい、新羅くん」
「あいよ。……んじゃ、兵2万借りる」
 借りる、といってケーキでも切り分けるかのように5万の中から2万を切り抜き、手足のように引き連れていく。ひと一人連れ歩いてその行動を完全に制御するのがどれだけ難しいか、それがわかるなら辰馬が行きをするのと変わらないたやすさで2万を率いていく手際がどれほど卓越しているのかわかろうというものだ。まだ十万百万の大軍を率いた実績はないが、文としてはアカツキの四隅将軍(本田・井伊・榊原・酒井)の誰よりも、彼にこそ100万の大軍を任せて天下を横行させてみたいと思う。おそらくそのとき、世界は彼に服すだろう。魔王ノイシュ・ウシュナハではなく、新羅辰馬という人間の王に。

………………
 エーリカとインガエウはそれぞれ1万5千ずつ、総勢3万の兵を率い、ハウェルペン郊外の平野で対峙した。2万は辰馬が文から借り受けたアカツキ兵だが、残りの1万人はハウェルペン精神病院という名目の政治犯・思想犯収容所にぶち込まれていた反魔軍の有志と、彼らによって招聘されたヴェスローディアの勇士たちである。ハウェルペンに臨時政府を置いたことが明らかになった以上、この先、この小さな町に人はどんどん集まるだろう。兵士も増える。

「さて。まああの礼儀知らずに、ヴェスローディアの流儀をわからせてあげるとしましょーか」
 深紅のドレスに着替えて、エーリカは呟いた。

インガエウはマウリッツとレンナートを抱き込み、クーベルシュルトの主流、すなわち1000人のパイク歩兵とマスケット兵からなり、剣と円盾で装備した歩兵が周囲を囲む混成部隊を三列縦隊で並べたテルシオを5部隊で編成。エーリカが軍師に選んだのは瑞穂でも穣でもなく、辰馬であり、辰馬は敵の布陣を見て戦線を細く長く引き延ばし側翼から叩くことを進言する。

この模擬戦はマウリッツにとって、昨年の兵法大会で敗北した愛弟子レンナートの雪辱戦、意趣返しでもあった。だからあえて一度破られたテルシオで再度辰馬に挑むのであって、突進中に側翼がもろくなると言う弱点は織り込み済み。その対策のため、マウリッツは前進する軍の側面に歩兵とパイク兵に守られたマスケット銃兵を並べさせ、斜行で進ませる。

まずはインガエウがテルシオの突破力をもって突撃。エーリカはこれを受け流し、側面に滑り込もうと機動。インガエウはそれをさせまじと猛撃を加えるが、エーリカは敵正面の鋭鋒を躱して則翼に回る。

ここで、エーリカは兵を展開、敵軍を外側から包囲するようにして銃撃を加え、弾幕で押し包みながら方位を縮めていくが、対するインガエウも斜行射撃を繰り出し、簡単には倒れない。銃撃は激しく、模擬戦用の空砲でなければ相当数の死人が出るであろう激戦になった。

テルシオはただの陣形ではなく、部隊の各中退ごとに作戦本部が設けられてそれが中央幕僚府のインガエウ、およびマウリッツに直結、兵を有機的に動かす。エーリカはその点、自分の才能を過信していたと言っていい。彼女は直接に自身で全軍を統括しようとしていたため、部隊長の数も少なく、そのぶん軍隊の即応力で負ける。兵力と作戦が互角であっても、軍のシステムでエーリカは敗勢にあった。

しかし両軍接戦となり、白兵の間合いに持ち込まれると、優勢に進むのはエーリカ軍だった。優勢のはずだったインガエウ軍の武器が、エーリカ軍の兵にことごとく弾かれる。エーリカの「盾の乙女」としての能力、部隊全体への加護は彼らの防御力を圧倒的に底上げする。ここに、引き寄せられた形のインガエウ軍は逆撃を受け、強烈なカウンターを食らって叩かれていく。

「神力の加護! 反則ではないのか!?」
「いえ、持てる能力を存分に使うのは戦場の常道。これはエーリカ女王お見事と言うべきでしょう」
 怒気もあらわに叫ぶインガエウに、マウリッツが飄然と答える。この状況でなお、マウリッツは勝利を疑っていない。

 マウリッツの能力は長船言継に似ている。幻覚能力。彼はそれを使って15000のうち3000を、自然の景色に擬態化させ、慎重に迂回させて敵背面を襲うよう指示していた。

「ははっ、どーよたつま! アタシもなかなかやるもんじゃない? ってゆーかあたしたちのコンビって結構、いけてるんじゃないの?」
「そーだな。側翼回って殲敵出来なかったときは焦ったが。まずこれでシャー・ルフか……」
 うきうきと笑うエーリカに辰馬が応じたその瞬間、3000のインガエウ軍別働隊ががら空きのエーリカ軍本営を襲う!

 両軍、どちらが先に敵の大将を取るか、という勝負になった。現状エーリカが不利、しかし彼女は持ち前のスタミナと「盾の乙女」の加護と防衛技術で相当に長時間、持ちこたえる。この状況、新羅辰馬がやるべきは一つ。

「インガエウ獲ってくる! それまで持ちこたえろ、エーリカ!」
 それしかなかった。

「一気駆けに馳せてきますな」
「ちび猿。いい機会だ。誰が支配者か、その身に刻みつけてやる!」
 勝利の果実が降ってくるまで、逃げ続ければいいはずのインガエウが、自分を頼んで突出する。

そして。
「我が名はインガエウ・フリスキャルヴ! この首、とれるものなら……ぐぶぅぅっ!?」
 一合もかからない。自信満々で口上をたれるインガエウの胸板に、ものすごい勢いでたたきつけられる模造刀。ぶつかった瞬間それが砕けると、インガエウの胸甲もパァン! と砕けてインガエウは勢いよく馬からたたき落とされた。

「三軍も師を奪うべし、ってな。おれたちの勝ちだ、インガエウ」
 銀髪をさらりとかきあげ、辰馬。銅鑼を鳴らさせ、両軍に戦闘の終了をしらせる。こうして連合軍総司令官の座は、エーリカ・リスティ・ヴェスローディアに決した。

………………

以上でした、それでは!

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遠蛮亭 2022/11/22 06:39

22-11-22.瑞穂さんイベントラフ(by広輪凪さま)!

おはようございます!

ツクールの顔グラフォルダ内にフォルダを作って整理してたらこのやり方、セーブができないという事実に昨日気づきました…。フォルダから出してリネームして、また全会話分について顔グラ設定し直しが少々手間ですがそれはさておき。今日は短いですが、非常に大きなおしらせです!

まずはこちらを。

広輪凪さまによる、瑞穂さんイベント絵①番、トイレで悪童にWフェラのラフ! ついにようやくとうとう、イベント絵作業に入っていただきました! 羞恥の表情と桁外れの爆乳、そして広輪さまの本領、顔くらいある乳輪! そしてなにより問答無用で可愛い! これはもしかすると首を吊るか国政を頼るかの二択だけでなく、ゲーム販売成功して難を逃れる、という道が見えてきたかも、という気がします。当然そのためにはテキストとシステムに関してもしっかりしたものを作ることが必要になりますが、ともかくもこれまでの無明長夜から一筋の光明が見えてきました!

現在仕上げ作業をお願い中ですので上がったらまたここに、と思いますが、以降順次上がってくるイラストに関してはトリミングした一部分のみのアップとします。全部ここにあげたらゲームのほう買ってもらえなくなりますから、そこはご容赦をお願いします。有料プランを作ってそちらで公開とかもありかなと思うのですが、そのあたりどうでしょう?

で、今日はくろてんなしです。SLGプラグインとタクティカルコンバットも昨日で修正ファイルが発行されてエラー回復し、制作がいよいよ順調になってきました! それでは!

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遠蛮亭 2022/11/21 07:05

22.11.21.くろてん3幕4章13話.群像

おはようございます!

昨日は何をしたのか…。シナリオをちょっと進めたくらいですが、SLGシステムに合わせて最初に巻き戻したので総じての分量としては下がったぐらいでした。ほかには新規の立ち絵とイベント絵を描いて、たぶんそれだけ。物語冒頭で瑞穂さんたち5位の姫巫女の顔見せをすませておきたくなったので、冒頭部のシナリオ書き直しです。

ほかにはたぶん、今日の夜に瑞穂さんイベント1の素案が上がるはずですがまだ未定。上がったらこちらで紹介しますが、ゲーム全体で19枚という分量上、トリミングした一部分のみの紹介になるかと思います。

こちら、新規立ち絵の「伏姫なずな」さん。鬼の血を引く虐○されてたひとで、みのりんの直属。非常に従順に懐いて見せたのでみのりんも警戒心を解きますが、実際には自分を虐げていたヒノミヤの体制を憎んでおり、国家戦略担当官であるみのりんを打ちのめす機械を狙っているという人物。長船言継が磐座穣という天才に勝つ理由というのを考えてみたところ、正面対決ではどうしても勝てそうにないのでこのひとの登場となりました。ちなみにこの絵は以前上げた「神子田さん」をちょっと変更したものです。

差分。上のシャツと腰部の鎧を外したところ。

差分。全裸アヘ顔。

もう一枚、「沼島寧々」さんイベント①。寧々さんを撃破した次のターンに発生する予定の凌○シーンに使用。エラーが直ってないのでまだこの条件分岐がしっかり働くかどうか、わからないんですが。一時黒髪キャラにした寧々さんですが、あちらを副官の「三刀屋名雪」さんにシフトして茶髪に戻しました。あと、巫女服の袴がミニスカートになってますが、ロングだった気が。

差分、事後放心状態。

以上、それでは今日もくろてんよろしくお願いいたします!

………………
黒き翼の大天使.3幕4章13話.群像

「あの餓鬼め、餓鬼め、糞餓鬼めっ!! わしの恩寵を……!!」
 怒りにまかせて床を何度も殴りつける、永安帝・暁政國。皇帝に求められる泰然自若とはほど遠い姿であり、臣民が見れば不安をあおられること疑いなしであるが、今の永安帝は自身がひどい不安に苛まれているため繕っている余裕などなかった。ふだんから宰相任せの政務も一切を人任せにして、宮廷の屋でただひたすら床を殴り続ける。鍛えているわけでもない拳はたちまちにすり切れ、軟骨が剥けて見えているが、永安帝はやはり気づくことなく拳を打ち付け続ける。

 怒りの矛先は新羅辰馬という一人の少年に収束される。まだ士官学校の学生に過ぎぬ身を大抜擢して魔軍討滅戦に抜擢してやったというのに、3ヶ月近くかけてろくな戦果報告もない。果ては召し戻して皇帝直属護衛官にしてやるという寵遇すらも無視だ。

 もちろん、これは永安帝の勝手な言いぐさに過ぎない。辰馬にしてみれば実姉を殺さねばならない魔軍討滅戦になど出向きたくもなかったし、そのための兵力を与えられたわけでもない。そして今、神軍と魔軍の動向を前にして、歴史の分水嶺ともいうべき緊張状態にある辰馬を召し戻すなど言語道断もいいところである。であるのに、永安帝は自分の保身のために辰馬を呼び戻そうとしている。実にはた迷惑きわまりない皇帝なのだった。

 ひとしきり床を殴り続け、殴り疲れた永安帝はやおら立ち上がり、ふら、とよろめく。ながらく座り込んでいた状態から立ち上がったことで貧血を来したらしい。奥の間からふらふらしながら出てきた永安帝を侍女たちが足り囲み、支えようとするが、好色なはずの永安帝はしかしいらだたしげに次女たちを振り払う。

「つまらん媚びを売る暇があったら、早くあやつらを除かんか!!」

 現魔王・クズノハの第二次魔神戦役宣言の時もこの皇帝はかなりの錯乱を見せたが、今回の狂態はそれに輪をかけてひどい。神族、ことに首魁たる混元聖母から特別に狙われる理由があるのかと言われると「なくもない」。

 もう、40年近く昔になる。当時皇太子であった暁政国は桃華帝国の首府・煌都に留学中であった。現在の桃華帝国皇帝・趙公瑾とは友人と言われると怒りたくなるが、まず悪友と言っていい関係だった。とくにことともに悪事を謀るにおいて、この二人は最高のパートナーだったと言っていい。一緒になって貴族の娘をさらったり、詐欺組織を作って小銭(一般人的な感覚では天文学的金額)を荒稼ぎしたこともある。

 そんな二人が若さに任せて行った悪行の中でも極めつけのものが混元聖母の「聖母廟」を訪問した際のこと。

「俺の国の主神はもうひからびて消滅しているという、桃華の主神もどうせババアだろう?」
 この言葉だけでも十分、不敬に当たるが。

「いやいや、我が国の主神、混元聖母は9柱の女神のうちでも最も古く最も新しい女神。永遠に若いまま、年を取ることがないのだ」
 趙公瑾が自慢すれば、政國の中の好色が頭をもたげる。若く美しい女神と致せるというのならそれに勝る誉れなし、と、二人は微行(おしのび)で聖母廟を訪れる。

 そこに女神の本体はなかったのだが、美しい官女が居た。かの官女はアカツキで言うところの齋姫、女神を我が身に降ろす資質の持ち主であり、魂の一部を混元聖母と共有していたのだが、政國と公瑾の二人はこの美貌の官女を押し倒し、無理矢理事に及んでしまう。そして事が終わった後。

「お前たち……許さない……。人間は……、特に男は、必ずわたしが……この地上から、粛清し、滅し去る……」
 それまでの官女の声とは違う声音。震え上がった政國は腰の剣を抜き、官女の頭をたたき割ると恐怖に任せて一目散に逃げ帰った。そのまま留学も切り上げ、アカツキに帰る。

その後皇帝即位前に桃華との国境付近の小邦、テンゲリを攻めて当時のテンゲリ王子、現ラース・イラ宰相ハジルと戦い、沙陀畷の戦いで大敗したわけだが、あれも実際にはテンゲリを打倒するためというより国境付近にある聖母廟を破壊するべくの進軍であった。ために、政國は即位し永安帝となった後もしばしば桃華帝国に兵を送り、国境近辺の聖母崇拝厚い地方を焼き討ちさせている。これまでこれらの行動は永安帝の貪婪さと執拗性の表れと表現されてきたが、実際にはこうした背景がある。

ゆえに永安帝は魔王や魔神よりも女神を恐れること甚だしかった。
「では、護衛官を雇い入れましょう」
 永安帝の懊悩に、参内した宰相・本田馨綋はこともなげにそう言った。

「何人かの目星はつけてあります。さすがに蒼月官を飛び級して卒業するほどの人材となると優秀ですな。まずはこの、覇城瀬名」
「覇城の……、……? 覇城とはいえ子供ではないか!? こんな餓鬼になにができる!?」
「いえいえ、この小僧はなかなかですぞ。神力や魔力の素養こそありませんが、4重詠唱、9重詠唱という絶技を使いこなす腕利き。なんといっても新羅辰馬の敵手を自ら持もって任ずる気宇の持ち主です」
「ふむ?」
「そして、月護孔雀。1年生時点では学年筆頭でしたな。血統のどこかで神族とのかかわりがあるらしく、男でありながら神術の素養を持ちます」
「なるほど……使えるのだな?」
「は。多少、二人とも人格的な難がありますが、指導者に人物を置けば問題はないかと」

………………
「……それで、指導者の人物ってワシか?」
「ははは、お菓子を持ってきましたよ、先輩。どうご細君と一緒にお食べください」
「やかましーわ、ばかたれ! なんでワシが今更、小童どもの更生指導員なんぞやらにゃあならん!」
 へらへらと笑って揉み手するこの国の筆頭宰相に、新羅牛雄はひげを怒らせ当然のごとく荒ぶった。かわいい孫(辰馬)や直弟子(雫)はともかく、本来的にはとうに隠居の身である。よその家の、それも素行不良児の更生などつきあっていられない。当然却下だ。

 なのだが。

「ボクたちも別に、あなたのような老いぼれに学びたいわけではないんですよ、ご老体。たいしたことを教えてくれるわけでも、ないでしょうし」
 覇城瀬名はいかにも老耄をさげすむ調子で言い放つ。声も態度も仕草も、魂の隅々から発せられる自分を軽んじるオーラに、牛雄はぴくり、と片眉あげる。

「おい小僧ォ、死にたいらしいな……」
 軽く、掌を床に触れる。

 その場には何も起こらない。大都市一つを軽く壊滅させるほどの衝撃波は床下、地面を通り、道場下に立つ瀬名に牙を剝く! 刹那、気づいてヘリオポリスの九神<エネアド>に霊讃を上げようとする瀬名だが、あまりにも間に合わない。

 ズゴゥアッ!!

まさに「食らう」というのがふさわしい轟音と衝撃。極大の局地地震エネルギーをまともに受けた瀬名は、瞬時にボロボロになって声もなく倒れ伏す。

「さて……ワシが指導員で不服というガキは、まだおるか?」
 睥睨する牛雄。一番の腕っこきである瀬名が瞬殺され、二番手、孔雀も震え上がる。三番手以下の連中に反抗心など残るはずがなかった。

「いや、よかった。さすがは先輩ですな。指導員を引き受けてくださり、感謝です!」
「あ? ……あ! いや違う、今のは言葉の綾じゃ、本田ァ!」
「いやいや、こんど最高級の吟醸酒をお持ちしますので。それではどうぞよろしく」
「本田ァーァ! ち、あのばかたれが……まあ、仕方ないわ。お前たち、ワシが指導員を引き受けたからには、なまなかの覚悟では生きていけんと覚悟せいよ!」
 こうして、覇城瀬名、月護孔雀以下のもと蒼月館エリート学生陣は新羅公南流古武術講武所師範、新羅牛雄の預かりとなって皇城<禁裏>の守護任務に従事することになる。

………………
 天使が迫る。
 天使、といってもかわいらしい妖精めいた存在ではない。ぶよぶよした肌色の球体に複数の目をもち、気色の悪い触手を無数に生やした化け物である。知性は高いが地上の言語を話すことは出来ず、やはり高等生物と言うには遠い。よその世界一般に言う天使という存在は、この天使を人間に憑依させた「神使」ということになり、そのわかりやすい例が朝比奈大輔の妻、長尾早雪であるが彼女が身体を壊していることからもわかるとおり、人間と天使の融合にはきわめて大きな危険が伴う。というか端的に言って、触手の化け物と融合させられるという事態それだけで忌避されるべき事だろう。

 猛然と列をなして突進してくる天使の群れ。辰馬ですらも一撃ですべてを倒すことは叶わず、撃ち漏らしがさらに突進する。シンタと大輔は飛び退いて射線を逃れたが、出水は避けようともせず迎撃の構えをとる。

「出水、だめだって、避けろ!」

「……心配ご無用でゴザル。……黒泉の深淵、深き淵の住人よ、汝冥府の獄卒、天秤と鎌を握るもの! 咎には罪を、罪には罰を! 反逆断罪<ダムナティオ・メモリアエ>!」
 新しい術式を学び直す必要はなかった。血と魂の中にそれはある。出水はただ心の望むままに術を呼び起こし、そして「反逆断罪」の一言が告げられるや。

数十体の天使が、まさしく断罪の鎌で切り刻まれたかのように、ずたずたになって地に落ちる。一匹たりと、生存しているものはなかった。まさに必殺。

「うぇ……デブオタがすげぇ……」
「これは……負けてられんな」
 シンタと大輔が口々に、驚きと頼もしさと対抗心を口にする。

「出水、今の……」
「は、盈力でゴザル。主様のおかげでゴザルよ。これからは、主様が殺せんというなら拙者が殺すでゴザル。もう主様だけに負担はかけんでゴザルよ!」
「んー……うん、まあ……、うん」
 出水と辰馬の間には多少の温度差がある。辰馬に出来ないなら自分がやる、という出水に対して、仲間にだってやらせたくない辰馬なのだ。しかし出水が自分のために燃えているのもわかる、強くは言えなかった。

 ともかくも、新羅辰馬一行はかくて、まぎれもなく強力な力を手に入れた。

………………
「神軍と魔軍の争いに乗じましょう。シェダルの野からヴァペンハイムまでの林道、ここに伏兵を置いて神軍・魔軍が激突した瞬間に一斉射撃、そこから突撃です」
「それはいいけど、そもそもあの聖母に伏兵とか効くんかよ?」
 辰馬の言葉に、瑞穂はあごに指を添え。
「……辰馬さま? 神力に魔力を流し込めば、相殺できるんですよね?」
「そーだな。でも聖母本来の力は盈力だぞ。魔力酔いさせて感覚を酩酊させるのは……」
「それなら、盈力に盈力をぶつければ……?」

………………

以上でした。それでは!

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遠蛮亭 2022/11/20 07:19

22.11.20.くろてん3幕4章12話

おはようございます!

昨日の夜に記事を上げて以降は本読んでたのでほかの作業をしてなく、ここに上げるべきなにかもありません…、と、思いましたが確かみのりんのイベント絵仮組用がまだあげていなかったかと思いますので、そちらを。もし既出でしたらすみません。

まず1番、初凌○シーン。以後娼館でも流用、瑞穂さん以外は娼館なしにしちゃおうかなとも思うんですが、システム的に「出産可能=娼館も可能」で片方だけをオフにするということができないのですよね。まあ、出産と娼館は配下増強と軍資金稼ぎのためのもので、メインストーリーのようにガッツリテキストを書く予定もないので大丈夫だとは思います。

2番、馬姦。捕獲した後、抵抗を続けるみのりんをボコってから「手柄を立てた馬のつがいにしてやる!」というシーン。なんかやっぱりこの絵は既出の気がしてきました。

3番、屈服足舐め土下座。瑞穂さん以外、みのりんと晦日さんは3枚ずつなのでこれで全部ということになります。瑞穂さんにも土下座あるし、ちょっとかぶっちゃってしまうわけですが。

それでは、以下くろてんをやります。宜しくお願いします!

………………
黒き翼の大天使.3幕4章12話.新生

「どうです、出水のやつ……?」
「大丈夫。おれが処置してんだから、大丈夫」
 大輔の言葉に応える辰馬の返事にも、やや力がない。強烈な、劇毒というべき神力をいちどきに流し込まれた出水、その身体に魔力を注いで相殺を試みる辰馬だが、2日ほど前から出水は昏睡して意識がない。

「あのデブ……、辰馬サンに断りなく勝手に死んだりすんなよー?」
 シンタもさすがに心配そうに呟く。新羅辰馬の一行において、辰馬が倒れることはしばしばあったがそれ以外の仲間が倒れるのはおそらくはじめてのことだ。辰馬には魔王であり、創世の神の片割れという存在力……いうなれば世界の恩寵……があるから仲間たちもある程度安心していたが、出水の場合はそういう特殊性がない。それだけに仲間たちの心配は一入だった。いつもなら出水をキモデブ呼ばわりしてあまり近寄らないエーリカですらも、枕元に立って献身的に濡れ手ぬぐいを換えてやっている。

………………
その頃、アカツキ。
「あの小僧を召し戻せ」
 永安帝、暁政國はそう言った。アカツキにおける魔軍の脅威は一段落しており、新羅辰馬を召し戻す必要はとりあえずないように思われる。にもかかわらずのこの一言に、廷臣たちは困惑顔を見合わせた。

「次は女神の攻撃があるのだろう? 魔王殺しの勇者、新羅狼牙も混元聖母を倒すことは出来なかったというではないか、ならば我が盾となる者はあの小生意気な小僧しかおらん! 外つ国の事情など知らぬ、早急に帰らせよ!」
 永安帝はヒステリー気味に叫ぶ。彼にとってアルティミシア大陸全土の平和などどうでもよかった。彼はただ自分の至尊が守られればそれでよく、他者の存在など自分の地位を固めるための道具でしかない。約20年間、大過なく治世を過ごしてきた永安帝だが、ここにきて小人のメッキはボロボロと剥がれつつあった。

………………
 混元聖母と魔神ローゲ、神族と魔族の軍は、ヴェスローディア王都ヴァペンハイムで激突した。

 30万近い魔軍に対し、神軍は混元聖母が神界から召喚した天使、あるいは地上の人間に天使をとりつかせて強○的に神使にしたものたち5万に満たない。だが、完璧なまでの統御と用兵によって戦場を支配しているのは、あきらかに神軍の側であった。

 聖母の持つあまたの宝貝……いわゆるところのマジックアイテム……のうちでも、特に戦場支配に有効なものが「坤地幡」という旗。これを一降りすれば瞬時にして平地に崖や山がそびえたち、湖は砂漠に変わり、隘路は闊路に、闊路は隘路に変わる。変幻自在の地形を駆使して敵を分断し、あるいは袋小路に大軍を押し込めて殲滅し、徹底的に圧倒する。

「クソが! クソがよ! あの女ァ、裏切った上に何してくれてやがる!?」
 炎の国<ムスッペル>の主にして詐術の巧、ローゲも、ここまで一方的に圧されるとは思ってもいなかった。魔軍の士気も準備も装備も、すべて粗漏なく整っていたのである。自信満々の敵を前になんらかの策があるだろうとは思っていたが、こうも戦陣をズタズタにされるとは。既に魔軍は軍隊としての体をなしておらず、個々の魔将の踏ん張りがかろうじて決着までの時間を長引かせているに過ぎない。ローゲは血涙すら流さんばかりの思いで敵陣を睨み付けた。今となってはわずか10キロにも満たないところにいる混元聖母に、牙を届けることも出来ない。追いすがる天使、神使の群れを右に左に斬り捨て、焼き殺しながら、ローゲは敗走、ヴァペンハイムの王城に退いた。

………………
混元聖母は急ごしらえの炉の前にいた。

副官となったシグンが引き連れてきたのは、数人の人間。すべて男。彼らは神の降臨を喜んですかさず神軍にはせ参じた敬虔な女神信徒であったが、それを睥睨する混元聖母の瞳はどこまでも冷厳で、酷薄であった。

混元聖母が盈力の使い手であり、並みの神力使い、魔力使いに比べて格段の力を持っているとは言え、坤地幡の地形操作のような巨大な力を連続で行使すれば疲労する。神域ならその清浄の気と女神の力の源泉・ネクタルとアンブロジァという霊酒で回復するのだが、ここにそんなものはない。

となるとどうやって聖母はどうやってその巨大な力をまかなうのか。

答えはすぐに出た。混元聖母の合図でシグンと天使たちが人間を炉に追い立てる。

「あなたたちはこの炉の中で生まれ変わり、女神に尽くす新たな力を得るのです!」
 シグンが言った。不安げだった男たちは不安を払拭され、女神に尽くすための力、を手に入れるべく我がちに炉へと突進していき。

 そして、消失した。

「人間10人程度とはいえ……、期待した霊力値より低い……。まあ、仕方ないけれど……」
 混元聖母は我が身に還元された霊力を確認して、淡々と言い捨てる。人間たちは確かに「女神に尽くす力」となった。消滅して純粋な「力」となり、女神に取り込まれるという形でではあるが。その残忍で非道な行為に、混元聖母とシグン、二人の女神はまったくなんの呵責を感じることもないのだった。

「あと1000人くらい? 使うとしましょう……、女の子を殺すのは可哀想だけれど、数が足りないなら彼女たちも……。それで、ローゲを殺すには十分。ローゲを殺せば……ロイアの封印も、解ける……」
 混元聖母はぽそり、ぽそりと静かに言うが、そこに人間たちの守護者たる女神としての顔はない。彼女は人間というものを完全に消耗品としか見ておらず、それは神軍全体一人残らず、同じ思考論法であり思想であった。

………………
「今……なんと?」
「新羅中尉およびその小隊にはアカツキ京師太宰への帰還を。今後は皇帝陛下の身辺警護に当たっていただきます。ヴェスローディアでの任務は北嶺院中将、あなたが引き継ぎなさい」
「………………」
 新羅辰馬送還命令はまずアカツキ-ハウェルペン駐留軍の北嶺院文にもたらされた。通信機から上官たる大元帥、本田姫沙良の言葉を聞いた文は人を道具扱いするアカツキ上層部の考え方に思わず激昂しそうになるが、かろうじて堪えた。三大公家の自分がここで下手を打って失脚すれば、辰馬を庇うことも出来なくなる、そう考えての沈黙を肯定と捉えたのか良心の呵責か、姫沙良はそのあとしばらく弁明めいた言葉を並べていたが、それが文の心を捕らえることはなかった。

「……さて、どうしたものかしら……」
「今のは、本田元帥ですか?」
 給仕姿で料理皿を盛って、そこにやってきたのは晦日美咲。いわゆる新羅-蒼月館一家全員ぶんの食事を賄う美咲は朝食を辰馬の拠点であるハウェルペン政庁からは離れたアカツキ軍の幕舎に持ち寄り、そして都合よくなのか折悪しくなのか、文と姫沙良の会話を聞いた。

「わたしに話させてください。さっきの元帥の言い様にはこちらも言い分があります」
 美咲にしては珍しく、怒色あらわにしての態度。文は小日向家の一使用人に過ぎない美咲が元帥相手に……と一瞬、思ったが、考えてみれば美咲は直接の軍属ではないにせよ国家レベルで見れば大元帥よりさらに上位にある筆頭宰相……丞相……本田馨綋の子飼いである。そういう意味で考えれば美咲の地位は文や姫沙良より上位ですらあり、地位を重んじる本田姫沙良という女に対してはこれ以上ないかも知れない。

つないだ。
「なんでしょう? 言っておきますが先ほどの通達は決定事項で……」
「よくそんな口がきけたものですね、本田さん」
 美咲は冷厳に、「本田元帥」と呼ばず「本田さん」と言った。すでにこの時点で美咲の怒りがしのばれる。

「この声に聞き覚えはありますでしょうか、晦日美咲です。ヒノミヤ事変において貴方が活躍できた恩人の声と名前を、忘れましたか!?」
「ひ……ッ!?」
 ガシャン、と音がして一瞬、通話が途絶える。どうやら向こうで受話器を取り落としたらしい。それにしてもなのは美咲の方で、常日頃自分を主張せず、功を誇らない美咲がわざわざ旧恩を盾にしてまで怒鳴りつけるとは珍しい。

「つ、つごもり……さん……? い、今の話を、どこまで……?」
「どこまででも関係ありません。皇帝に伝えなさい、あなたの御身は自分でお守りなさいと。いま、辰馬さまはこのアルティミシアの危急存亡を担っておいでです。あなたたちのくだらない権謀劇に付き合っている時間はないッ!」
 美咲の裂帛の怒号に、電話口の姫沙良のみならず隣で見ている文もが震えあがった。ことに文の驚きと動揺は激しく、ヒノミヤ事変以降文が蒼月館を卒業するまでの半年間、一緒に過ごした時期があったにもかかわらず、美咲がこれほどの激情を秘めていることに気づかなかった。

「……あ、あなたの今の言葉、本当に陛下に伝えても? 反逆の言と取られても仕方ありませんよ? 宰相の庇護下にあるあなたの主君も……」
「もし、ゆかさまの御身になにかあれば……わたしは貴女がたを許しません。鋼糸で寸刻みに切り刻んでさしあげます。その覚悟があるなら……ゆかさまも私の行動を止めようとは思わないでしょう」
「……ッ!」
 気圧されたのか、怒りか、屈辱か。姫沙良は叩きつけるように通話を着る。受話器を返した美咲と、受け取った文は顔を見合わせ、うなずき合った。辰馬の召喚命令は、このままもみ消す。

………………
出水秀規は混沌としたうねりの中にいた。これが夢であることは分かるが、瑞夢か悪夢かはわからない。ただ、痛みは感じないから、混元聖母に痛めつけられた直後より快方には向かっているらしい。

身体の中で脈打つ力。最初はそれが毒で身を蝕み、命を削るものだったのだが、新しく力が流し込まれることでそれは変容して、新しい自分の一部へと変わっていく。かつてないほどに強くいななく、奔馬のごとき力は所有者である出水自身の制御を離れようと荒れ狂うが、出水はどうにかこうにか、その暴れ馬を御してのける。

「……ん……シエルたん、主様……」
 看病疲れか、枕元で泥の様に眠る兄貴分と、じぶんのつれあい。出水はようやく自分が苦行から解き放たれ、新たな力を得て還ったことを知る。

 脈々と、身の内にたぎる力はおそらく神力でも魔力でもなく、盈力。強烈な神力を打ち消すべく辰馬が注ぎ込んだ魔力が、出水自身の持っていた霊力と融合し、固着化して、きわめて珍しいことにそのまま盈力として出水のものになったらしい。辰馬ほどの出力は出ないとしても、相当な戦力増には違いなかった。

「この力……主様がくれたものでゴザルな……これからは主様の甘さをどうこうなどとは言わんでござる。主様がその優しさ、甘さを持ったままに理想を遂げられるよう、拙者がお助けするでゴザルよ……!」
 出水秀規は新羅辰馬という太陽の、影となることを誓う。辰馬ができないということはすべて自分がやるのだと、辰馬のために自分の命を使うのだと、改めて、魂に刻んだ。

………………
以上でした、それでは!

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