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2022年 01月の記事 (4)

【上級妖精が愛しの冒険者を手に入れて丸呑みにして子種にする話】サンプル

2021年10月29日に販売した作品のサンプルです。
続きはこちらから読めます。

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 基本的に冒険者は複数人でパーティを組む。これがどれだけのメリットを生み出すかは、態々説明しなくとも誰にでもわかるだろう。

 しかし、それに伴うデメリットも存在する。人間関係の絡れは容易くパーティメンバー全員を危険に晒すし、報酬の取り分や仕事の負担量など、些細なことも含めれば数え切れないほどの厄介ごとも生じる。

 故に、あえてパーティを組まずにソロで活動する冒険者もいる。そのほとんどはモンスターハントや盗賊退治などと言った荒事ではなく、遺跡調査や宝探しを生業としていた。

 クリフもそんな冒険者の一人である。彼の場合は少し事情が違う。人間とは組んでいないが、ある異種族と行動を共にしているのだ。

「ようクリフ、今回の仕事はどうだった?」

「ぼちぼちってところさ、悪い稼ぎじゃなかったよ」

 酒屋の扉を潜るなり強面の戦士から声をかけられたクリフは「もうちょい稼げたら奢るよ」手を振ってからカウンターに着く。椅子に腰を置いた小さな揺れに合わせて、その肩から金色の鱗粉が溢れた。

「ねぇねぇクリフ、今日は好きなの頼んでいいの?」

 その鱗粉をちらちらと散らしているのは、身長二十センチほどの小さな少女だった。背中にはえた美しい蝶のような羽が動く度に光が瞬き、同じく美しい相貌が期待にあふれた笑みを作り、身体をわくわくと揺れている。

 これがクリフのパートナーである”妖精種”だった。自身の肩に乗る彼女に微笑みかけて、クリフは首を縦に振った。

「リリィには頑張ってもらったからな、ご褒美だ」

「やったー!」

 万歳して喜びを露わにする妖精に、クリフは微笑ましいと気持ちが和らいだ。店主から注文を催促され自身は軽めの酒を、リリィには彼女がねだった蜂蜜のミルク割りを注文する。

「ねーねークリフ、私たちが一緒に冒険を初めてどれくらいだっけ?」

 注文を待つ間の雑談で、ふいにそんな話題が出た。クリフはうーんと少し思い出すようにして、

「そういえば今月でちょうど三年か、長いようで短いな」

「うんうん、だから今日は記念日なのよ? お祝いしないといけないのよ!」

 テンションが上がったのか、リリィはクリフの肩から飛び立ってパートナーの頭の周りをくるくると飛び回る。光の粒が舞って目がちかちかする。

「記念日か……いいかもしれないな、追加で何か頼むか」

「やったやった! じゃあお菓子食べたい!」

「置いてあるかな……店主、甘い物はあるかい?」

 店主の「つまみ代わりならあるぜ」という返答に「それでいいから追加で頼むよ」と注文した。クリフの頬に、「ありがとー!」喜んだリリィの小さい頬が擦り付けられる。すりすりときめ細かい肌の小さな感触がして、クリフはまた和んだ。

「今日はご機嫌だなリリィは、そんなに記念日が好きかい?」

「もちろん! 妖精はお祝いごとが大好きなのよ!」

「はは、その明るい性格には俺も何度か助けられたな」

「そうそう、私はクリフの救世主ってやつなんだから、もっと甘えさせてよね!」

 もう横顔に抱きつくようにしているリリィの頭を指で軽く叩いてやると、彼女はまた嬉しそうにきゃっきゃっと喜ぶ。

 これらのやり取りを側から見れば、この二人は名コンビだとしか言えない。実際、妖精を従える彼は冒険者の中でも一目置かれる優秀だと言われる存在である。
 人間一人ながらもいくつもの未踏破ダンジョンを暴き、地図を作り、多くの冒険者パーティを助けてきた功労者であった。

 これが彼一人だけだったならば、いつかどこかでヘマをして一人寂しく生き絶えることもあったかもしれない。それを何度も防ぎ、手助けしたのが妖精のリリィだった。

 リリィは妖精種でも珍しい『ハイ・フェアリー』に属する高位妖精で、そこらの野良妖精とは比較にならない強い力を持っている。

 彼女たちのようなハイ・フェアリーは傲慢な者が多く、普通は人間に力を貸してはくれない。自身らを特別な存在だと自負し、同時にそれを態度に出してひけらかしているからだ。
 やろうと思えば弱い冒険者を単体で害せるのだから、調子に乗るのもおかしな話ではない。それでもリリィはクリフに力を貸していた。

 リリィは三年前にあった出来事を思い出すように目を細めた。
 彼女が病に冒されていた仲間を助けるために薬草を探していた最中、凶暴な妖精殺しの魔物が襲いかかってきた。その窮地を助けてくれたのが、そこを偶然通りかかったクリフだったのだ。
 それだけではなく、薬草を必要としていた仲間たちを貴重な薬で死の淵から救ってくれて、礼は要らないとだけ告げて彼は立ち去った。

 高位妖精を何の見返りも求めず助け、礼の言葉だけを受け取って去っていったクリフの勇姿は妖精たちも間では語り草となっている。
 リリィがその背を追ったのは、至極当然のことであった。

 そんなわけで、リリィはクリフに多大な恩がある。妖精種はそういったことを軽視しがちだと言うイメージが伝わっているのだが、実際には彼女らは大変義理難く、受けた恩は忘れないのだ。同時に、受けた仇も絶対に忘れないという少し怖い側面もある。

 人間からはイタズラ好きで、男を誑かす厄介な存在として見られることも少なくない。そんな妖精をパートナーに選ぶ冒険者も少なく、この近辺で活動し始めた頃のクリフとリリィは周囲の人間に認めれないこともあった。けれども今ではすっかり慣れられたもので、

「なんでぇお祝いか?」

「お前たちには世話になってるからな、こっちからも祝いとして奢らせてもらうぜ!」

「我ら冒険者を導く水先案内人に、乾杯!」

 酒場でもすっかり一人と一匹の冒険者仲間として認められていた。

 ハイ・フェアリーを連れて我先にとダンジョンへ飛び込み、罠の有無や迷宮の順路、それに危険なモンスターの巣などを暴いて生還するマッピングのプロは、遠回しに何人もの冒険者を救っているのだ。

 彼らを認めないのは相当な捻くれ者か、人気に嫉妬している者くらいである。

「みんなありがとう、ありがたくいただくよ」

「ふふん、もっと祝ってくれていいのよ! なんてったって今日はクリフと私の記念日なんですからね!」

「こら、あんまり調子に乗っちゃダメだろ? ちゃんとお礼を言わなきゃ」

 クリフにめっと叱られ、少ししょげて「はぁーい」と返事をしたリリィを見て、また酒場が湧く。まるで親子のようなこのやり取りは荒くれ者たちからしても微笑ましく思えるもので、この酒場の名物なのだった。

 ***

 やんやと盛り上がり祝杯場と化した酒場も、夜更けになるとがらんとなった。クリフ以外の冒険者は皆それぞれ帰路につき、店主も離れた位置の椅子に腰掛けてコップを磨くだけである。

「うぇーい……」

「だから酒はやめときなって言ったのに」

 酔い覚ましの茶を飲むクリフの横で、顔を赤くしたリリィがぐでんと寝そべっていた。机の上で打ち上げられた魚のようになっている彼女の顔は、嬉しそうに緩んでいる。

「みんなにお祝いされて、よかったねー」

「そうだな、見てくれはともかく気は良い奴らばかりだ」

「うふふ、みんな私とクリフの仲を認めてくれてるしー、これはもう、あれよねー」

「あれって?」

 ずりずりと机の上を這い、リリィがカップを持っているクリフの手首にしなだれかかる。温かい抱き枕を見つけたとばかりに顔をぐりぐり擦り付けてきた。

「あれはあれよー、伴侶ってやつよー」

「ああ、そういう……妖精種でもそういうのはあるのか」

 妖精種には女性しかいない。そのため番を作ることもないとされている。繁殖に関係する生態はあまり知られておらず、魔力による何らかの現象で増えるのではないかと推測されていた。

 その種族から伴侶という単語が出るのは、クリフにとって意外であった。
 調査専門の冒険者としての血が騒ぎ、クリフは酔って口が軽くなっているだろうとリリィに日頃の疑問を投げかけてみることにした。

「妖精の伴侶というのは、同族同士でやるものなのか?」

「その場合もあるけどー、それだけだと子供は作れないよー」

「子供がいるのか、見たことないけど作れるんだな……普段は隠れてるとか?」

「んー? いつもは隠れ里から出てこないもん、人間には見つけられないよー」

 隠れ里、という単語も初耳だった。『それなりに種類がいる割に目撃情報が少ない妖精は、人間に知覚できない空間に隠れ潜んでいるのではないか』と学者が仮説を立てているとは聞いたことがあったが、どうやら正解だったらしい。

「興味深いな……その中で子供を作るんだね」

「そだよー、でも、交尾は外でやってもいいのー」

「交尾ってことは、俺たちが知らないだけで異性が存在するの?」

「うーうん、妖精には女の子しかいないよ」

 首を振って否定されて、クリフは少し混乱した。
 異性が存在しない。同族で番を作ることはあっても子は生せない。だけれど交尾はする。
 ではどうやって妖精種は増えているのだろうか、それについて聞き出そうと口を開きかけたとき、

「そんなに知りたいならー」

 クリフを見上げるリリィの顔は、いつの間にか普段の顔色に戻っていた。いつ酔いが覚めたのか、どこから素で語っていたのか、クリフは思わずしまったと硬直した。
 そんな様子を見てくすくすと、元来の妖精がするようにリリィは笑った。

「その身で教えてあげよっか?」

「あー、いや……それは遠慮しとくよ……悪いね、酔ってるからって色々聞き出して」

 それを承諾するのは、なんとなくだが不味い気がした。なんとか謝罪の言葉を口にして誤魔化そうとしつつ席を立とうとするクリフだったが、立ち上がった途端にくらりと目眩がして姿勢を崩した。

「っ、これ、は……」

「えへへ、今日はクリフと私が出会ってちょうど三年目の記念日、ずっとずっと好きだったあなたに、想いを伝えるにはちょうど良い日よね?」

 がくりと椅子にもたれかかって崩れ落ちたクリフの耳元で、ハイ・フェアリーは囁く。

「大丈夫、何も怖いことはしないから──」

 それを聞いたか聞かないかで、クリフの意識は眠るように落ちていった。

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【人間の兄が巨人族の義妹に一方的なエッチで子作りさせられる話】サンプル

2021年10月18日に販売した作品のサンプルです。
続きはこちらから読めます。

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 青年カイトが暮らすこの島は、本土の人間には『巨人の島』と呼ばれている。
 そこは文字通り人間とは違う異種族であり、同時に近似種でもある巨人族が生活している島だ。

 島に閉じこもっている未開人と決めつける世間知らずも時折見られるが、実際には文明力は人間社会のそれと殆ど差がない。むしろ、魔術における能力はかのエルフに匹敵すると言われた。

 その上で強靭な肉体と巨躯を持つ彼らがどうして島にこもっているのか、それを至極簡単にして説明すると『心優しき種族だから』ということになる。

 元来から争いを好まず、肉体的強さから生まれる余裕からか、巨人族は他者を愛し慈しむ性質の者が多い。

 故に、外の世界で自分たちが活動するのは様々な観点から見て、確実にトラブルを生む危険が生じると考えた。そこで彼ら彼女らの祖先は、大陸の王から離島を貰い受け、そこを生活圏としたのだ。

 これらの理由から、逆に巨人の島に人間が暮らすということも滅多にない。生活器具や食料のサイズも合わないので、好き好んで住み着こうとする余所者もいない。

 にも関わらず、人間であるカイトはこの島で生活していた。今日もお気に入りの場所である丘の上で寝転び、のんびりと過ごしていた。

「兄様!」

 そこに声をかけて駆けてきたのは、彼の妹であるアリサだった。ようやく子供と大人の中間らしい体付きになってきた小柄な少女は、しかし人間であるカイトからすれば身長が四倍以上大きい巨人だった。

「アリサ、あまり急ぐと転んでしまうよ」

 よいしょと立ち上がって服についた草を手で払う。アリサは注意されたのも気にせず兄の隣まで来て、「えへへー」と美少女と美女の合間と称される顔で笑みを作った。そして来ていた服のスカートを畳み、膝を抱えて座る。

 アリサがカイトの前でこうするのは、大抵褒めてほしいか慰めてほしいときである。今回はえらく上機嫌なので、カイトは『これは何か褒めるべきことがあったのかな』と推測し、話を聞き出すことにした。

「何か良いことでもあった?」

「あのねあのね! 森で狩りをしてたら、大きなお肉を取れたの! そしたらお父様が、夕食にみんなを呼んでパーティにしようって!」

 巨人の島に住まう獣も皆、比例するように巨大である。大陸で人の街になど現れたら大変なことになるそれも、この島ではただの食料だった。

「ははぁ、それで僕を呼びにきたわけか」

「うん! 兄様にはお腹いっぱい食べてほしいから!」

「ありがとうアリサ、頑張ったね」

 座った妹の頬をカイトが背伸びして撫でた。小さな人間の手で撫でられただけでも、少女は更に嬉しそうに笑みを強める。ツインテールの先端がぴょこりと尻尾のように跳ねた。

 この妹は、自分より小さく弱い存在であるカイトを『兄様』と呼んでよく慕っていた。それどころか、両親も含めてこの島の巨人の大半は彼に対して友好的であった。

 小さい下等生物だからだとか、十数年前にこんな場所に捨てられた子だからとか、そういった保護すべき小動物に向けられるような見方も最初はあった。
 しかし、今は一種の尊敬の眼差しを向けられる立派な人物として見られている。

「兄様は今日も鍛錬してたの?」

「いや、今は休憩していたんだ。朝にたくさん動いたからね」

「そっかー、お昼寝してたんだね」

「そんなところかな」

 巨人に力で勝とうというのは無謀なことである。巨人の社会で育ったカイトもそれは重々に承知していた。それでも、いつまでも周囲に甘えた庇護対象でいるべきではない。幼くしてそう決意したカイトの努力は凄まじかった。

 巨人族であり人間嫌いの剣士に何度も何度も頭を下げて弟子入りし、巨人のための学校へ編入ができるだけの魔術の知識を独学で会得し、それからも決して手を抜かず、諦めず、力を得ていった。

 それだけならば、『小さい生き物が頑張っている』という微笑ましい風景に過ぎなかっただろう。だが、カイトは学校の行事である武闘大会で、見事に巨人族の強者に勝利して優勝するという実績を叩き出してみせたのだ。

 ちっぽけな人間でも、努力を重ねれば巨人族と対等になれる。それを思い知らされた巨人族たちは大盛り上がりだった。
 侮っていた種族の力を疎むのではない。自分たちと共に過ごせる異種族の仲間を得たことに、島中で歓喜した。

 この時から、カイトは護るべき愛玩動物という立場から脱却し、巨人族と共に歩む仲間としての地位を確立した。

「それはそうとして、狩りに行くなら誘ってくれればよかったのに」

 が、カイトもまだ学生の身である。種族など関係なく、単純に子供として大人から保護される立ち位置なのは変わりない。食料調達の狩りも、何かしらの理由がなければ参加させてもらえないのだ。

「だってだって、兄様がいたら狩り過ぎちゃうってお母様が……」

「そんなにバカすか攻撃魔術を使ったことなんてないのになあ」

「私が魔術の練習できなくなるってことなの!」

「ああ、そっちが理由か」

 ごめんごめん、頬を膨らませて年相応のやり方で不満を表明するアリサの顔をまた撫でる。それだけで不満気だった表情を和らげ、また嬉しそうに「へへへ」と漏らす。

「じゃあ戻ろうか、パーティの手伝いくらいはしないと」

「うん! じゃあ兄様、はい!」

 さっさと歩いて行こうとするカイトの前に、立ち上がってから腰を曲げたアリサの手が差し出された。地面に置かれた大きな手のひらを前に、カイトはふうと息を吐く。

「あのねアリサ、いつも言ってるけど、僕は妹に運ばれる趣味はないんだよ?」

「でもでも、兄様と一緒に歩きたくて……」

「アリサは歩けばいいじゃないか、僕は走るけど」

「それがやなの! 兄様、走ってるとお話してくれないでしょ!」

 妹の我儘をスルーしてさっさと避けて行こうとするが、その先に手が動いて通せんぼされてしまう。

「いいじゃないか別に、一緒に帰るのは同じなんだし」

「お兄様とゆっくりお話しながら帰りたい!」

 頭上からずいと整った顔を寄せられ、妹の剣幕に思わずうっと下がる。これ以上拒否していると掴み上げられそうな気がしてきたので、カイトは降参と両手を上げた。

「わかったわかったよ、でも落とさないでよ?」

「うん! 私に任せて!」

 右の手のひらに腰掛けた兄を胸の高さまで上げると、慈しむように左の手のひらで支え、アリサは自宅の屋敷に向けて歩き出したのだった。

 ***

「はああ、食べた食べた……」

 近隣の人々が集まって行われた宴会から抜け出し、カイトは自室への帰路へついていた。満足するまで飲んで食べて膨らんだ腹を撫でながら、一つ気になったことを思い返す。

「なんでだか、料理の手伝いをさせてもらえなかったな」

 人間サイズでならある程度の家事もこなせるカイトは、よく母親の家事を手元として手伝っていた。大木のような野菜や家屋のように巨大な魚や肉を、専用の包丁刀で切り刻むことくらいはお茶の子さいさいである。

 今回はそれをさせてもらえなかったのだ。母親と妹、ついでに近所の若い娘らまでやってきて『今日は私たちでやるから』とカイトを捕まえて台所から物理的に追い出してしまった。

「父上は、そんな日もあるとか言ってたけど……」

 父、この島どころか大陸含めても名家に含まれる一族の当主は、運ばれてくるつまみを酒で流し込みながら、『たまには女だけで集まって働きたいこともあろうよ!』と大笑い混じりで言っていた。

 巨人族で少数派の男性たちをまとめる男の言葉に、周囲の大人たちも『俺たちも男同士で仲良くやろうぜ!』『そうだそうだ!』とアルコールで真っ赤にした顔に追加で酒をぶっかけて同意し盛り上がっていた。

 流石のカイトと言えど、巨躯が織りなす大宴会に巻き込まれるのはごめん被る。
 ひょいひょいと大皿から食べ物を掠め取り、自分用のボトルに注いだ飲み物とそれで一頻り舌鼓を打って、さっさと退散した。

「まあ、気にすることでもないか」

 家事手伝いをさせてもらえなかったからと拗ねるのも、子供っぽ過ぎる。
 カイトはさっさと自室へ戻ると自作した風呂に入り、工芸家と合作したシャワーを捻りお湯を被る。
 暖かいお湯が心地よく疲れと汚れを流し、ついでにどうでも良い疑問も綺麗さっぱり洗い落としたのだった。

 着替えまで済ませると、心地よい疲労感に包まれた体を動かし、巨人サイズのベッドへと上がる。この部屋自体は巨人族用の部屋である。それをカイトが魔改造して使っていた。

「さて、明日は……アリサの誕生日か」

 今日の宴会でも度々話に出ていたが、明日は#の誕生日である。五歳差だった妹が明日には一時的に四歳差となる。妹の成長も、兄としては喜ばしいことである。目一杯お祝いをしてやろうと明日に行うパーティでの算段を組み上げる。

「これで、もう少し、兄離れしてくれればな……」

 その計画がまとまる前に、広いベッドの上からカイトの小さな寝息が聞こえ始めた。

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【プロレスラーが縮小ミックスファイトで小さくされて少女のディルドにされる話】サンプル

2021年10月10日に販売した作品のサンプルです。
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 男女混合プロレスもしくは男女混合総合格闘術と言うと、大抵の人は『男が女を力でねじ伏せて見せ物にするもの』だと認識しているだろう。そう言った風評を覆すべく、最新技術を用いて“それ”は開発された。

 長い正式名称を省いて、関係者からは『縮小リング』と呼ばれている。一定条件を満たしたと認識すると、自動で装着者の体躯を段階的に縮小させる。他にも特殊ルール用の機能が盛り込まれたこれは、退屈な戦いを盛り上げることに大きく貢献していた。

 生物の縮小など、ミックスファイトでのみ使うには明らかに度が越している技術の使い方である。本来は別の目的で使われるための技術であることは、少し考えれば誰にでもわかるだろう。

 しかし、このリングに立つ二人のレスラーにとって、そのような裏事情など知ったことではなかった。

 互いに互いの思惑と私欲があってこの場で対峙した二人、試合に挑んだ理由もそれぞれ違うが、どちらも勝利で得られる報酬を欲して参加してきた。

 若い男女が四メートルほど離れた位置で向かい合い、試合開始の合図を待つ。

 青年、丹精な顔立ちに無駄な筋肉のないスマートな身体を持つタクマは、身長百七十センチとレスラーにしては小柄だったが、タフさと根性は先輩レスラーからも一目置かれるほどの定評があった。

 一方、彼と向き合っている女性は、タクマの目には少女に見えるくらい若く映った。童顔な顔立をしているのもあったし、タクマの推測からして彼女の身長は精々百六十センチと見て取れるのもあった。
 女性としては並くらいだが、やはりレスラーとしては小柄な部類に入る。

 両者ともに同業者からは小柄と言われる共通点はあるが、そこにはやはり男女差からくる体格差があった。その上、

(……最低限しか鍛えていないのか?)

 タクマも筋肉の塊とは呼べない体型をしているが、彼女はもっとらしくない。体の二箇所以外に無駄な贅肉はついていないが、同時に力を発揮するための筋肉も少ない。

(なら、柔術や寝技、投げ技が中心か)

「ねぇ、そんなにじろじろ見ないでくれる?」

 冷静に分析していたタクマに、対戦相手が声をかけてきた。見た目よりも若く聞こえる高い声だったので、タクマは二十台前半だと思っていた予想を、下手をすると十台後半かもしれないと下げた。

「すまない、分析癖があってな」

「ふーん、私の体に見惚れてたんじゃないんだ」

「それもあるかもしれないな」

 苦笑と冗談混じりで応じるタクマに、少女はくすりと笑い返した。

「あんた、これまで見た相手の中だと一番好みかも、筋肉ダルマじゃないし、下品な目しないし、イケメンだし……欲しくなっちゃうな」

「欲しくなるというのはよくわからないが、気に入ってもらえたようで幸いだ」

 気障に返すタクマの相貌は、平均的な男性よりもかなり整っている。この業界にいなければアイドルでもしていたかもしれない。対する少女も美人と言って差し支えない。

 ぱっちりした強気そうな瞳に鮮やかなセミショートの黒髪、そしてレスラーと思えないほど白い肌を持つ体躯に似合わないサイズの胸と尻を持ち、それらがぴっちりとしたレスラー服で強調されている。

(問答から読み取れるのは、小細工を使ってくる手合いに見えることか)

 この会話の最中もタクマは相手の行動を予測していた。相手が可憐な少女でも油断はしないし、彼女のグラマラスな肢体よりもどう戦いを挑んでくるかに注意を向けている。

「まだ時間あるし、ルールの確認しとこっか?」

「……そうだな、互いにすれ違いがあると困る」

「じゃ、私が話すね」

 彼女の口から語られた今回の試合ルールは次の通り。

 ・選手は首に縮小リングを装着する。これは試合中には絶対に外せない。
 ・気絶やタップによる解放要求の旨を感知されると、身体の質量が減り縮小される。
 ・身体が約十分の一以下まで縮小されたら敗北となる。
 ・試合外周のロープを掴んだ上でギブアップを宣言した場合も敗北となる。
 ・勝者は主催者が叶えられる範囲での要求をする権利が与えられる。
 ・蹴り技と凶器の使用以外の一切が認められる。

 タクマにとっては報酬の内容が重要であった。彼にはどうしてもまとまった資金が必要であった。

(妹の治療費のためにも、ここは勝たせてもらう)

 これは難病に侵されている妹を救うための戦いであった。そのために対戦相手に大怪我をさせるつもりはないが、手心を加える気もない。相手が何か仕掛けてくる前にケリをつける。これが最善策だと試合運びの方針が定まった。

「ねえ、あなたの名前を聞いても良い?」

「タクマだ」

「いい名前ね、私はミキって言うの」

「良い名だな」

「……これが合コンとかなら嬉しいんだけどなぁ、そんな敵意剥き出しの顔で言われても、ちょっと困るよ」

 ミキの言う通り、表面上は紳士的な態度をしているタクマだが、その眼は対戦相手をどう叩き伏せるかしか考えていないことが読めるほど鋭い。

 そんな視線を受けてもなお、ミキは余裕たっぷりの笑みを浮かべたまま、胸を抱くように腕を組む。タクマの顔と同じくらいはありそうなほど膨らんだ二つの球体が、淫らに潰れる。

「名前を聞いておいたのは、これからゲットする玩具をなんて呼ぶか知っておきたかったからなんだけど」

「意味がよくわからないが、聞いても?」

「文字通りだよ、まぁあんたみたいなタイプにはピンとこないかもしれないけど」

 意図が読めない問答をしている内に小さいブザーが鳴り始める。試合開始のカウントダウンだ。五回鳴れば試合が始まる。

 二回目、タクマは相手の四肢に注目する。緩い構えだ。

 三回目、想定できる攻撃を考える。打撃を使う可能性は低く見た。

 四回目、対応策を考える。下手な打撃で腕を取られたら致命的、投げ技で応じる。

 五回目が鳴る直前、ミキの口がにぃぃと笑い歪んだのを視認して、

「じゃあこっちからね!」

 一際大きなブザー音と共に少女が突っ込んできた。僅かに前へ出ている手の狙いは読めている。

「しっ!」

 肩に伸びてきた少女の華奢な手を避け手首を掴み、前後を入れ替えるように後ろへ振るように投げて応じる。一瞬宙に浮いたミキの背へ追撃のジャブを繰り出す。

 ばしっと肌に拳が当たるヒット音。浅い。即座にバックステップを行い、振り向きざまに伸ばしてきたミキの腕の射程外へ逃れる。

 二メートルの距離が空いて、両者は睨み合う。

「いいね、すごくいいよあんた」

「お褒めに預かり光栄だ」

「私の身体目当てじゃないってだけでも高得点だし、油断しないで丹念に私をぶっ潰そうとしてくるのも最っ高に好き」

「負けるわけにはいかないのでな、悪いが手加減はしない」

 自分には絶対に負けられない理由がある。口にして己の決意を再確認して構えを取る。それに対して、ミキは「ああ、そういえば」と世間話をするように話し始めた。

「あんたの妹さんだっけ? なんとか病ってやばい奴で大変なのは」

「……どこでそれを?」

「まぁコネってやつだよ、私ってばそういうのに弱くてさぁ」

「なら話は早い、そこにあるロープに手をかけてギブアップしてくれないか」

 言いながらもタクマは構えを解かない。口先による誘いには応じないという意思表示だ。

「いやいやそれはダメだって、私だって欲しい物があるから来たんだし……だけど、そうだなぁ」

 逆に構えを見せないミキは、また頬を吊り上げてタクマの目を見据える。

「私の家ってお金持ちだから、そっちがギブアップしてくれたら妹さん助けてあげるかもね。ついでにあんたを貰うけど」

「だから貰うとはなんの」

 こと、と言い切る前にタクマの視界が真っ白に潰れた。同時に眼球に刺激が入る。うっと呻いて反射的に目を守ろうと構えを解いてしまってから気付く。

(外周のライトだと?!)

 リングを照らす照明の一つが動き、タクマの顔面を狙い撃ちにしたのだ。遠くからリングを明るく照らすほどの光を不意打ちで浴びてはひとたまりもない。

「くっ!」

 突っ込んでくるであろうミキを迎撃しようと振った腕に、柔らかいものが絡みつく感触がした。

「しまっ」

「言ったじゃん、コネがあるって!」

 焼き潰れた視界ではどう転がされるかも判断できず、タクマの身体は呆気なくマットへ転がされてしまう。急いで起き上げようとした上体を肉感の強い足が抑え込んできて、右腕の付け根が更に柔らかい部位で強く挟み込まれた。

(腕ひしぎ──)

「よいしょっと!」

 かけられている技を認識したと同時に手首を掴まれ引き倒され、負荷が加わった腕に激痛が走った。

「ぐっ?!」

 肘付近から骨が軋む幻聴がするほどの痛みにタクマの顔が歪む。その中でも状況を覆す術を瞬時に模索する。しかし、ミキの腕ひしぎ十字固めは理想的な形できまっていた。

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【冒険者パーティが巨大娘に強引に丸呑みされたり双頭ディルドにされたりする話】サンプル

2021年09月24日に販売した作品のサンプルです。
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 ギルドから出された新しい依頼は、それを受ける冒険者たちの間で物議を醸していた。

 それは一ヶ月ほど前にとあるモンスター生息域を調査しに行ったパーティの“遺品回収”であった。『救出』ではなく『遺品回収』というのは、パーティが消息不明になってから一ヶ月も経っていれば、ある意味当然の依頼内容だった。

 だと言うのになぜ、それを受ける冒険者が中々現れないのかと言うと、

「あのAランクパーティが全滅した森なんて、誰が行けるんだよ」

「命あっての物種だからな、いくら報酬が破格でもなぁ」

 冒険者の溜まり場でこのような会話がされているからである。上位ランクの四人組パーティが生きて帰れなかった森など誰が行くものかと、皆がそう思っていた。

 しかし、いつの時代にも周囲の空気を無視する者がいるもので、

「その依頼、俺たちが受ける!」

 受付カウンターでそう名乗り出たのは、若者四人組だった。

 見るからに筋肉自慢で大剣を持った剣士の青年、魔術杖を持ったメイジの少女、ガントレットを腰に下げた武道家の娘、そして立派な装飾の大盾を背中に背負う若い少年であった。

「依頼側から言うのもなんですが、この依頼は相当の危険が伴います。それでもよろしいのですか?」

 受付嬢が遠回しに『若く経験が浅いパーティでは危ない』と告げている。だが、最年少に見えるが意外にもリーダーらしい少年は「大丈夫だ!」と元気よく返す。

「俺たちは確かに冒険者になって日が浅いし、パーティを組んだばかりだけど、実績はちゃんとあるんだぜ!」

「ああ、これでも地方じゃ高難易度の依頼を何回も受けている。遺品回収程度なら、遅れをとることもない」

「そうそう、モンスターを殲滅するわけじゃないんだから、私たちでも余裕よ!」

「私も、そう思います……」

 少年の他のメンバーも口々に『自分たちならやれる』という主張を受付で捲し立てるので、受付嬢も根負けした。諦めのため息を漏らし、承諾のための書類を取り出す。

「今回の依頼はあくまでも遺品の回収だけが目的です。また、最悪見つからなくても無かったという事実確認ができれば十分です。そのつもりでお願いします」

「おう、任せてくれよな!」

 引ったくるように書類を受け取り、必要事項を書き込んだ少年は「さあ行こうぜ!」とパーティを引き連れてギルドから飛び出して行く。それを黙って見送っていた周囲の冒険者たちは、初々しいものを見たような目をしていた。

「俺にもあったなぁ、あーいう時期が」

「冒険者初めてすぐの頃に上手くいっちまうと、あんな風に調子乗っちまうんだよな」

「まぁ、遺品拾えなくてぴーぴー泣きながら帰って来ても問題ないだろ、そういう依頼だし、生きて帰るに越したことはねぇや」

「そうだな」

 かくして少年たちのパーティは念入りな準備を行った後、新種のモンスターが跋扈するという森林へと向かった。



 若者の四人組、盾を持つ小柄な少年でリーダーのクリフ、大剣を持った背が高い青年はワグナー、杖を使う天才メイジはカレン、そして拳にガントレットを装着した武闘家がエリーという名前だった。

 彼らが街から出立して一週間、少年たちはこれと行ったトラブルもなく、無事に目的地へと辿り着いた。途中に人が住む村が一つもなかったが、誰も気に留めなかった。

「ここが生きては帰れないって噂の森か……」

 山と谷に挟まれ、外界からの観測を拒んでいるかのような森林だった。木々はどれも背が高く、青黒くしげっている。森の中は相当に視界が利き難いだろうということは、彼らでもすぐわかる。

 木々の薄い森の境目、入り口と呼べるかもわからない場所に立つと、見上げなければ天辺が見えない木々の高さに圧倒された。

「あ、これ見て!」

 メイジ少女が足元を杖で指すと、そこには複数人分の足跡が残っていた。これが先にやってきたベテランパーティの物に間違いない。

「これで場所を間違えたってことはなくなったわけだ」

「ともかく中へ入ってみよう、動かなければ始まらん」

「そう、ですね……」

「よし、じゃあ行くぞ!」

 少年の声に各々が勇ましく返事をしたのを確認して、深く頷いた少年を先頭に、彼ら彼女らは草木を掻き分けて踏み込んで行った。

「事前に調べた限りでは、新種のモンスターは大型の肉食獣らしい」

 邪魔な草や木の枝を専用の鉈で切りながら歩く少年に、剣士の青年が説明し始めた。彼はこのパーティで最年長なので、情報収集を任される立場にあった。それでもリーダーをやらないのは、目の前を歩く少年の実力を信頼しているからだった。

「なるほど、でもこの森に入って戻ってきた冒険者はいないんだろ?」

 黙々と道を作っているクリフの問いに、ワグナーは否定するように首を振った。

「いいや、それは誇張らしい。実際には一人だけ生きて帰ってきた冒険者がいる」

「じゃあ、その話は、その人から聞いたのですか……?」

「だったら、新しく調査を依頼する必要もないじゃない」

 カレンに言われエリーが「あ、そうでした……」と返したのに、ワグナーも「その通りだ」と肯定した。

「そう、彼は精神を酷く病んでしまい、ろくに口も聞けないらしい。それでもなんとか聞き出せた情報がこれだったわけだ」

「つまり、今のところはそれしかわからないということね?」

「ああ、だから慎重に進まなければならない」

「何が出てきたって俺たちなら大丈夫さ! なんなら倒してギルドまで持って帰っちまおうぜ!」

「あら、クリフにしては良い提案じゃない」

「馬鹿言え、俺たちの装備じゃ大型モンスターの亡骸なんて運べないだろうが」

「そう、ですよ……」

 そういう彼らの言葉尻からは例え件のモンスターに遭遇したとしても、自分たちの実力であれば倒せるという自信が聞いて取れた。

 この四人がパーティとなってからまだ数ヶ月、それより以前からの知り合いでもあったことが組んだ理由だったが、連携には自信があった。盾役であるクリフが敵を引きつけ、ワグナーとエリーが前衛として攻撃し、後方から大火力の魔法をカレンが撃ち込む。

 確かに有効な戦い方であったし、年齢と経験に不釣り合いの自信を持つのもわかる。
 だから失念していた。一度パーティメンバーが分断されてしまったら、唯一の強みが完全に消えてしまうことを。

「ん、何か、物音がしませんか?」

 最初に異常を察知したのは最後尾のエリーだった。それに合わせてもう三人も立ち止まり、周囲を見渡す。辺りはようやく深い雑木林を抜けたところで、苔生した地面といくつものそびえ立つ大木がある場所で、先よりは視界が取れた。

 きょろきょろと辺りを見渡す一行だが、見える範囲にモンスターらしきものはいない。

「勘違いじゃないの?」

「でも、何かの足音が、聞こえた気がして……」

「こんなに静かだったら物音くらいすぐわかるわよ」

「……いいや、逆だなこれ、ワグナーもそう思うよな」

 そう言うと、クリフは警戒するように盾を構える。ワグナーもそれにならって大剣を手に持った。カレンが「どういうことよ?」と聞くと、ワグナーが代わりに答えた。

「こんな自然豊かな場所で、音がしないというのはおかしいんだ。普通なら鳥なりなんなり、小動物などが音を出すはず……だが、ここまでそれが一切なかった」

「そういうこった、そろそろ何か出てくるかもしれねぇってことだな」

 言われ、事態を把握したカレンも杖を油断なく構えた。エリーは気を張って周囲を探っている。ぴんと張り詰める緊張が四人を縛る中、ずしん、という足音を全員が聞き取った。

「例のやつか」

 クリフが呟き、全員が音をした方向を見る。木々の間をゆっくりと移動する足音が近づいて来る。四人には逃げたり隠れたりするという考えはない。問題なく倒せるという自信が、その選択肢を封じていた。

 そして油断なく身構えた四人の視界に、それは現れた。

「なに、こいつ……」

 カレンが慄くのも無理はなかった。それは端的に現せば『全裸の女性』だったからだ。それだけならば伝説のエルフや森の妖精など、存在を認知されているものとして驚愕もしなかっただろう。

 しかし、四人の前に現れた四つん這いで動き、虚ろな表情をしたそれは全長が八メートルはあった。二足で立ち上がったら見上げる必要が出てくる大きさだ。

 唯一エルフや妖精に近い要素があるとすれば、顔の造形は非常に美しいことだろう。それでも目は虚ろで口が半開き、そこから涎を垂らしているとなっては、嫌悪感を煽る一因でしかない。

「擬態型か!」

「惑わされるなよ! そういう狙いがある見た目だ!」

 そう言った存在を知っていて耐性もあったので、先に冷静になったクリフとワグナーが武器を構え直す。だが異性でなく同じ女性であったからか、残り二人は逆に動揺してしまっている。

「来るぞ!」

 モンスターの目が四人を捉えた途端、猛然と動き出した。それは咆哮や鳴き声をあげるでもなく、ただ無言で人間と同じ形をした手脚を降り、下に垂らした人間と同じ形の乳房を揺らしながら迫ってくる。

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