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年下攻めの記事 (33)

鶯命丹 2024/06/22 00:56

 DK×ガチムチ用務員おじさん【全文10,000文字】

 【お試し読み】DK×ガチムチ用務員おじさん【全文10,000文字】
 お付き合いを始めたふたりの初めてのお泊り話

 年下攻め×年上受け・美形攻め×ガチムチおっさん受け・挿入なし、初夜・兜合わせ・攻めフェラ・♡、濁点喘ぎ
 
 受け視点
 攻めに「好き♡」って言われたから気持ちを受け入れた受けが「俺も好きだけど…でもな~、俺の好きはお前の好きと違うかもしれないしほんとにいいのかな~」ってもだもだ悩む描写あり
 攻めの方がリードされたり、喘いだりしてる
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あのさ……明日金曜日でしょ? マサさんち、泊まりに行ってもいい? ちゃんと課題も持ってくし、家事も手伝うから」
 そうおずおずと聞いて来た和津沙に、博雅は一瞬固まった。
 ――これは、アレだ。とうとう来た。
 内心の動揺を悟られないように博雅は「おう、いいぞ」といつも通りに返答した。
「やった。ありがとうマサさん。じゃあまた明日」
 和津沙は嬉しそうにはにかむと、ソファーに投げ出していた博雅の手を握る。男にしては細くすらりとした綺麗な手だ。
 その手がぎゅっと自身の手を握り、愛おしげに指先が動くのを肌で感じて博雅はますます動揺した。
「ああ、また明日な」
 反射的に、和津沙の手の動きを封じ込めるように、ぎゅっと握り返して答える。
 握りしめられた手を見た和津沙はまた嬉しそうに口元を綻ばせると立ち上がり、用務員室のドアへ向かった。
 離すタイミングを見失った博雅はそれに着いて行く。
「それじゃあ……」
 別れを惜しむ瞳がじっと博雅を見つめている。
「そんな顔すんなって! また明日会うんだろ?」
 正直に、真っ直ぐに、愛情のこもった視線を向けられることが気恥ずかしい博雅は笑って誤魔化し、和津沙の背を強く叩いた。
「そうだよね……じゃあバイバイ」
 和津沙は咽せながら笑って部屋を出ていく。
 廊下を遠ざかっていく足音が聞こえなくなった後、博雅は大きく息を吐いた。

 
 最近、付き合うことになった和津沙はまだ若い。
 絆されて、つい交際の申込を受け入れてしまったが、若さ故か、和津沙の気性なのか、真っ直ぐに好きと伝えてくるその姿勢がありがたくもむずがゆい。
 嬉しい。
 嬉しいが、恥ずかしい。
 同じ熱量で返してやれないのが心苦しい。
「若さかなぁ……」
 見慣れた職場の天井を見上げて博雅はひとり呟いた。
 歳の差もあり、特段見かけの良いとも稼ぎが良いとも言えないと自負する博雅は、一体どこに若く綺麗な和津沙に選ばれる理由があるのか、理解できなかった。
 最初は断りもしたが、情を向けられ続けて避け続けるのも辛い。
 結局のところは己も和津沙を憎からず思っていたのだと気づき、付き合うことに了承はした。
 そんないきさつではあるが、決して同情だけで応じた訳ではない。
 ――そんなはずはない……けど、なぁ。
 和津沙から向けられる強い愛情に戸惑っている矢先の宣言。
 博雅も男だからわかる。あれは絶対そういうことをしたいと思っている時の目だ。
 困ったな。というのが博雅の正直な感想だった。
 確かに和津沙の気持ちは受け入れたが、博雅の心の準備は、まだ艶ごとには対応しきれない。
 ――和津沙で勃つかな……俺。
 下世話な思考だが、切実な悩みに博雅は眉間に皺を寄せる。
 今まで博雅の恋愛対象は女性だった。
 和津沙は普段、長い前髪でわかりづらいが実は綺麗な顔をしている。
 すらりと華奢な体躯ではあるが、骨格は男だ。
 肩幅はあるし、手は細いが筋張っているし、足も大きい。
 どこからどう見ても男にしか見えない和津沙に対して、そういう事ができるかわからない。
 和津沙があまりに健気に好いてくれるのを嬉しく思うが、しかしそこには、応えないと申し訳ないという罪悪感にも似た気持ちが、まったく無いわけではなかった。
 ――そうなると……そもそもこんな形で和津沙を受け入れたのが間違いだったのか? やっぱり断る方が良かったのかなぁ……
 ぐるぐると、自問自答が脳内を巡っている。
 和津沙の綺麗な顔が、悲しげにひそめられるさまを思い浮かべると博雅の胸が痛む。
「はぁ〜……」
 和津沙に悲しい顔はさせたくない……だが、気持ちに応えてやれるか不安だった。


 中略

 驚嘆と喜びに満ちた吐息が漏れ、細い腕が博雅の首にしがみつく。
「……ぁ……は、あぁ、マサさん」
 あわく開いた和津沙の唇が、何度も唇を啄んでくる。
 その感触がくすぐったく、いたいけで、博雅は少しの間共に暮らした猫の事を思い出していた。
 甘えてくる猫を撫でるように、和津沙の細いうなじを撫でると、首をすくめて小さく笑っていた。
「ふふ、くすぐったい」
 喜色のこもった吐息が唇に触れ、その熱に博雅の腹の奥がぞわりと蠢いた。
「……マサさん……」
 熱を帯びた呼びかけに薄く瞼を開くと、蕩けた顔をした和津沙がじっと瞳を覗き込んでいる。
 腹と腹がぴったり重なり、寄りかかってくるのを受け止めると、硬い感触が下腹部に当たる。
 思わずびくっと肩が跳ねた。
 端正な顔をした和津沙の男の部分を押し付けられて、博雅は動揺する。
「マサさん……好き」
 うっとりと呟く和津沙の腕が、きつく博雅の首すじに抱きつく。柔らかい唇が博雅の下唇を食み、熱い舌が挿し込まれ歯列を舐られる。
 隙間なく重なった腹に、へコヘコと擦り付けられる和津沙の肉棒を意識して、博雅は息継ぎを忘れてしまった。
「はっ、はっ! まて和津沙っ……」
 まるで初心な生娘のように固まっている博雅の手を取って、和津沙は艶然と微笑むと、それを自身の下腹部へと導いた。
 手のひらに触れた他人の性器の感触に、博雅は息を呑む。
 興奮に頬を紅くして、欲のとらわれた若い男の勢いに飲まれて、碌に制止もかけられなかった。
 戸惑う博雅の耳元に、熱に浮かされた和津沙の声が落ちる。
「俺も、マサさんの触っていい?」
 お願いの様相を呈しているが、和津沙の手は既に博雅のゆるく勃ち始めた陰茎を撫でている。
「マサさんも、ちょっと勃ってる。嬉しい」
 布団の中を覗き込んで、和津沙は嬉しそうに笑っている。
 和津沙が再びきつくしがみついてきた。
「一緒にしよ? マサさんお願い……」
 熱っぽく囁く和津沙に弱点を握り込まれ、ゆるゆると扱かれると、抗いがたい快感が腰から全身を駆け巡った。
「う、ぅ」
 思わず声が漏れる。羞恥に唇を噛もうとした瞬間、和津沙の唇にふさがれた。
 片腕は首に巻き付いて、片手で器用にスウェットと下着をずらされた。
「はっ、はぁ♡」
 剥き出しになった陰茎をじかに扱かれ、博雅は自身でも恥ずかしくなるくらい熱のこもった息を吐いていた。
「……俺のも、して♡」
 和津沙の切羽詰まった声が舌に絡まってぞくりと肌が粟立った。
 腹の奥で疼く熱に浮かされ、気づいたら博雅は和津沙のスウェットの中に手を入れていた。ガチガチに固くなっている肉棒を握り、激しく扱く。
「あっ♡あっ♡あっ♡マサさん♡あっ♡あっ♡きもちい♡好き♡んっ♡んぁ♡」
 和津沙は、面白いように博雅の手に翻弄され、甘く艶めいた声を上げて、はしたなく腰を揺らしている。
「あぅ♡うっ♡ふぁ♡……はぁ♡はっ♡あぅ♡」
 トロトロとした粘液を垂らす亀頭を撫でると、和津沙の腰がびく♡びく♡と不規則に震えた。
 喘ぐ唇が、必死に吸い付いてきて、ねっとりと濡れた舌を絡ませてきた。
「ん゛♡うぅ♡」
 縋るように絡む舌に、口内を舐られて博雅の喉から呻きが漏れた。
 快感の礼に、扱く手を速めると和津沙の背が反り甘い嬌声が上がる。 



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鶯命丹 2024/06/17 19:00

 ツノ舐め【全文10900字】

【お試し読み】ツノ舐め【全文10900字】



 夫婦♂になった鬼退治得意な桃瀬くんと鬼のおじさん鬼田さんが仲良く一緒にお風呂に入る話。
 攻めが受けのこと奥さん呼びしたりします。
 
 濁点喘ぎ・♡喘ぎ・いちゃらぶ・野外立ちバック・玉舐め・尻舐め
 



――――――――――――――――――


 夫婦となり、ともの暮らすようになって数日。
 桃瀬の視線が、隣で汁物をすする鬼田の髪をじっと見つめている。
 生えるままに自由に伸びてる蓬頭を見て桃瀬は「鬼田さん、髪を洗いましょうか」とぽつりと言った。
 すげなく断られるかと思っていたら、鬼田は椀から顔を上げて上機嫌に返答をくれた。
「おう、いいな。じゃあ風呂に行くか」
 思ってた以上の快い返答に、桃瀬は切れ長の目を見開いて鬼田を見返している。
「なんだよその顔」
「いえ、なんでも」
 静かに頭を振る桃瀬に、鬼田は一瞬眉根を寄せて訝しむが、すぐに飯をかきこんで昼餉を終えた。
「まぁいいや。とりあえず飯を食ったら早速行くぞ。早い方が良い」
「出かけるんですか?」
「ああ」
 桃瀬の想定としては、近くに掘った井戸から水を汲んできて沸かした湯で髪を洗うつもりだったが、鬼田はどうやら違うらしい。
「鬼田さんいつもどこで髪を洗ってるんですか?」
 慌てて昼餉をかきこみながら問いかける桃瀬に、鬼田はにやりと笑って立ち上がると、自分の食い終わった食器を土間へと運び、洗い桶につけて戻って来た。
「早く食え。先に行くぞ」
 ニヤニヤと意地悪を言う鬼田に、最後のひとくちを口に入れた桃瀬がバタバタと食器を洗い桶につけに行く。
 鬼田は、桶を出してくるとその中に洗って畳んでおいた着物とふんどし、手ぬぐいを入れ、立ち上がる。
「よし、行くか」
「どこへ行くんですか?」
 慌てて後を追う桃瀬に、鬼田はいたずらを企む子どものように含み笑いを浮かべるだけだった。

 


 棲み処から、少し山中を歩いたところに川がある。
 ごうごうと流れる川のしずくが風にあおられ、午後の明るい陽射しにきらきらと反射しながら大小数々の石が転がる川原に散っている。
「川で洗うんですか? まだ少し寒くありません?」
 首を傾げる桃瀬に向かって、鬼田はニヤリと笑うと「まぁ手伝えよ」と着ていた着物を脱ぎ、ふんどしに一丁となって川に入って行く。
 川原との境になる浅瀬に立ち、屈むと太い腕で川底を掘っていく鬼田。彼に続いて、桃瀬も着物を脱ぐ。
 川底を掘る鬼田の近くへ駆け寄ると同じように川底の石をどかして掘っていく。
 石を退かしていくたびに砂土が水中に、煙のように沸き上がり、川の水に流れていく。
 黙々と川底を掘る鬼田に合わせて、桃瀬も手を動かしていくと、もわっと水中に蜃気楼が立ち昇ったように見えた途端、手指に熱気が当たる。
「わっ、あつっ! えっ? お湯だ! これが目的だったんですね」
 突然の熱さに、驚いた桃瀬が顔を上げて鬼田を見ると彼はにっと顔を綻ばせて頷いた。
「やっと湯が出てきたな。熱いだろ。あとは俺がやるからお前は下がってろ」
「はい、ありがとうございます」
 皮膚の強い鬼は、沸く源泉の熱さを物ともせず、鬼田は川底を掘って行く。
 川原と川のはざまに出来ていく大きな窪み。
 土に濁ってた窪みの水は、鬼田の大きな手のひらが深く広く掘ることでこんこんと湧き出てる湯に押し流されて澄んで行った。
 窪みに溜まった熱い源泉の湯は、すぐ脇を流れる川との境目を曖昧に崩すと、冷たい川の水が流れ込んで来て、ちょうど良い温度に覚ましてくれる。
「そろそろ大丈夫か? おい、桃瀬。ちょっと湯を触ってみてくれ」
「すごい。あっという間に温泉が……」
 広く掘られた湯船に感心しながら桃瀬は、湯に手を入れる。
 川の水が常に流れ込み、触れる湯は滑らかでちょうど良い。
「大丈夫です。とてもいい湯加減ですよ」
「よし! じゃあ入るか」 
 顔を綻ばせ頷くと、鬼田は得意げに笑って早速ふんどしを解いた。
 ざぶざぶと湯を蹴立てて掘った湯船の中心に来ると、肩まで浸かる。
「あ〜……あったけぇ……ほら、お前も早く来い」
「……お邪魔します」
 呼ばれた桃瀬もふんどしを解き、恐る恐る湯へ足を浸ける。きちんと適温になっている湯の中に肩まで浸かるとじわぁ、と身体を包む多幸感に桃瀬もため息をついた。
「おわ〜……あったかいですねぇ……」
「そうだろ……」
「そっちに行ってもいいですか?」
「お~……」
 だらけた返事の鬼田に向かってぷかぷかと浮かびつつ近づいて行く桃瀬。
「あち! うわっこの辺、下が熱い!」
 温泉はどうやら鬼田の居る湯船の中心から湧いてくるらしい。
 足の裏をかばいつつ、桃瀬は湯船の中を跳ねながら川の水が流れ込んでくる方に逃げた。
「あれ、熱ぃか? もっと川の水が入るように掘れば良かったな」
 湯の中に後頭部さえ浸けてだらけていた鬼田が頭を上げて桃瀬を見た。
「いえ、お湯はちょうど良いんですけど、そこの辺だけ足元が熱くて」
「そっか、下から湧いてくるからなぁ。そんならここ座るか?」
 鬼田は桃瀬の方へ腕を伸ばし、腋の下に手を入れて抱き上げると自身のあぐらの上に乗せた。
「あ、ありがとうございます」
 鬼田の膝に乗せられた桃瀬は裸の肌が触れてしまわないように、なるべく小さく丸まった。
 真っ赤に染まった顔は湯の熱さだけではなく、潤んだ瞳は落ち着きなく彷徨う。
 それに比べて鬼田は、桃瀬を膝に乗せたまま湯船のふちに頭を預けてだらりと脱力している。
 無防備な鬼田の存在を裸の背中で感じた桃瀬はますます動揺した。
 桃瀬は鬼田をよこしまな目で見ているというのに、彼の方はまったくそんな事も考えつかないような素振りで、だらりと脱力している。
 純粋に温泉を楽しむ鬼田を邪魔するのは忍びない。桃瀬は腹の中にもやもやとくすぶる熱を理性で抑え付けて、鬼田の分厚い胸板に頭を預けた。この弾力を味わうくらいは許してもらいたい。
 張りのある分厚い肉に頭を擦り寄せると、ほかほかと温かい。
 目を閉じて鬼田の弾力と熱を堪能していると、川の流れる音や、木々の葉の擦れる音が意識にのぼってくる。
 閉じた目蓋越しに差す午後の柔らかい日差しに、涼しい風が熱った頬を冷ます感触に、桃瀬の気持ちも次第に落ち着いてきた。自然と深く息を吐く。
「……はぁ〜……気持ちいいですねぇ……」
「……お〜……」
 話しかけると、随分と間延びした返事が返って来た。

 

「ふぅ〜……すみません。熱くなってきたので先に出ます。ついでに鬼田さんの髪、洗ってあげますね」
「おぉ、助かる」
 桃瀬は持ってきた桶の中身を乾いた大きい岩の上に置くと、その桶に湯汲んで湯船の淵に預けた鬼田の頭にそっとかけた。
 湯をすくっては髪を濡らし、頭皮を温めるのを繰り返す。濡れ髪に持って来た櫛を何度も通して、湯で温まり柔らかくなった頭皮を指先で揉むと、鬼田は大きく長く息を吐いた。「……あぁ〜……極楽だぁ……」
「気持ちいいですか?」
「あぁ、いい心地だ……」
 ぐにゃりと脱力する鬼田を見下ろして、桃瀬は笑った。
 よく湯で洗って、櫛で丁寧に梳かしていくと、広がってボサボサとしていた鬼田の髪は真っ直ぐ流れるようにまとまってなめらかに櫛が通るようになる。
 乾いた手ぬぐいで水気を拭き取って「はい! 綺麗になりました」と桃瀬が満足げに言うと、鬼田は湯船のふちから頭を上げた。
「じゃあ次はお前だな」と桃瀬を振り返ってにやりと笑った鬼田。
「え、いや、私は……」
「いいからいいから。ほら、交代しろ」
 のっそりと湯から立ち上がると、桃瀬を抱き上げ湯船に下ろす。押し切られてしまった桃瀬はおずおずと湯船のふちに頭を預け、鬼田を見上げた。
「それでは、お願いします……あの! 優しくしてくださいね。頭の皮剥がさないで」
「そんなに乱暴じゃねぇよ」
 不安げに言う桃瀬に苦笑すると、鬼田はまとめていた少年の長い髪を解いて手櫛を通す。
 桶からすくった湯をかけて、頭皮を洗う鬼田の手つきは桃瀬が思っていた以上に丁寧で優しい。
「う、本当に優しいですね……」
「そうだろ。痛くねぇか?」
「痛くないです。気持ちいい……」
 太い鬼田の指が、慎重な手つきで髪をくしけずっていく。大切な壊れ物に触れるような丁寧な所作を感じて、桃瀬は頬を赤らめた。
「なんだ、お前顔真っ赤じゃないか。熱いか?」
「い、いえ! 大丈夫です」
「そうか? なるべく早く済ますから」
 丁寧に扱われることへの嬉しさと、気恥ずかしさに紅潮した桃瀬の顔を見た鬼田が心なしか手早く髪に櫛を通し、手拭いで髪を拭う。
 急いでいる手つきではあったが、髪が絡むことも、引っかかって頭皮に痛みが走ることもなく洗い終えた。
 桃瀬ははにかみつつ「髪を洗うの、お上手ですね」と話しかけた。
「そうか?」
「ええ。梳かされててちっとも痛くなかったです」
「痛くないなら良かったよ。おし、大体拭けたぞ」
「ありがとうございました。私は熱くなってしまったので出てますね」
「おう。俺はもう一度あったまってから出るわ」
 桃瀬は湯の中から上がり、交代するように湯の中に戻る鬼田のそば、湯船のフチに座って涼む。
 ほかほかと火照った身体に吹き抜ける川辺の風が涼しい。
「風が気持ちいいですね」
「ああ」
「なんだか贅沢ですね」
「そうだなぁ……酒持ってくれば良かったなぁ」
 桃瀬は、午後の明るい日差しの中で湯に浸かる贅沢に笑い、少し下にある鬼田の顔を見下ろす。
 鬼田の顔や肩口は赤らんでいた。
「鬼田さん。顔赤いですよ? 熱くないんですか?」
「そうか? そこまでじゃないぞ」
「真っ赤ですよ。こんなに赤いのにお酒なんか呑んだら身体に良くないですよ」
「人間じゃねえんだ、そんなヤワじゃねぇよ」
 鬼田は、湯船のフチに頭と腕をだらりと預けてくつくつと笑っている。
「本当に? だって角の根元の皮膚まで赤くなってますよ」
 鬼田の額、髪の生え際にある皮膚を突き破って生える角の根元は、顔と同じくらい赤く熟れたように色づいていた。
 赤くなった根元に指先で触れるとほかほかと火照っている。
「ああ、ほらやっぱり。ほかほかしてますよ」
「そうか?」
「ええ、こんなところも赤くなるんですね。でも角の部分は冷たい、かな?」
 桃瀬は角をよしよしと撫でた。鬼田はそれを意に介さず、じっと目を瞑ったままされるがままになっている。
「痛くない?」
「痛くねぇよ」
「感覚は、ある?」
 そう問うと、鬼田はちらりと瞼を開けて桃瀬を見た。薄くすがめた鬼田の瞳と、桃瀬の視線がかち合う。
 少し考えるように軽く頭が傾き、その後すぐに「根本のとこだけ。皮膚の境のとこだけちょっとある」と鬼田は言った。
「そうなんだ」
 呟くように返事をすると桃瀬は角を撫でていた手を下げて、額近くの、盛り上がった皮膚を指先で撫でた。
 硬いような、柔いような、不思議な感触に夢中になって桃瀬は指先でいじくり、擦り、指圧をし続ける。
 長く湯に浸かっていたせいか、ぼーっとしながら、桃瀬は指を動かして肉の盛り上がりに触れ続けている。すると低い笑い声が聞こえて来た。
「くすぐってぇよ」
 小さく頭を振って自分の手から逃げようとする鬼田がおかしく、桃瀬は手を伸ばして逃げる角を追った。
 桃瀬の指が鬼田の額に触れる。
「やめろって」
 顔を逸らして逃げる鬼田の表情は柔らかい。
 逸らされた顔を腕に抱きしめて桃瀬は角に唇を寄せた。
 ちゅっ、ちゅっ、と可愛らしい音を立てて、桃瀬は盛り上がった肉を吸い、舌先を伸ばして角と、めくれ上った皮膚とのさかいを舐めた。
「んっ、ふふ」
 くすぐったいのか、鬼田は首をすくめて小さく笑っている。
 甘い反応が返ってきた事が嬉しく、桃瀬はますます鬼田の頭をかき抱き、角に愛撫を繰り返した。
 角の先から口付けを落としていき、根本にまで降りてきたら舌でべろりと一周舐る。
「ふ、ふふ……んっ、何がそんな楽しいんだ」
「あなたの反応が可愛らしいから……あと、このめくれた皮膚が、私を受け入れてくれた時の尻の穴みたいで……♡」
 言い訳をしながらも、桃瀬の唇は角に吸い付いき、角と皮膚の間に舌先を挿しこみ、舐め回していた。
「ははっ見るもんすべてがすけべに見えて、そんでこんなに興奮してんのか?」
 鬼田はからかうと、自分の頭を抱え込み角を舐める桃瀬の細腰を抱き寄せた。
 桃瀬の下腹部には既に甘く勃ち始めている陰茎がある。鬼田はそこに、ふっ、と息を吹きかけ指先でくすぐるように裏筋を撫でた。



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鶯命丹 2024/05/03 21:00

DK×用務員さん 初デート・弁当話【全文10000文字】

試し読み

dk×用務員のおっさん
短編2本なのでひとつずつは短い

 
 約束した猫カフェ行こうねからの告白の返事
 博雅視点で少しおっさんの過去に言及してる
 作中に出てくる団体職場などはすべてフィクションです
 現実とは何も関係ありません創作です
 エロは無い
 
 後半はお互いにお弁当作ったりするふたりの話
 お付き合い後
 エロは無い
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 博雅はその日、昼前に駅前に立っていた。
 休日の駅前は、平日とはまた違う混み具合だった。
 春らしいのどかな気候に合わず、佇む博雅の眉間には皺が刻まれている。
 ――どうしたもんか……
 思案の元は今日約束した相手のことだった。
 明るい日差しの中、ガヤガヤと賑やかな街並みを見ながら、約束の相手――和津沙の事を思う。
 ――お節介して余計なことに構ってるからこういうことになんのかなぁ。
 ため息とともに心中のぼやきを吐き出すも、雑踏は博雅の心中など気にもとめず、休日を楽しむ嬉々とした空気に溢れていた。


 博雅は、所属する企業から高校の用務員として派遣されている身である。
 企業は、元々は警備会社で警備員の派遣を主にしている。
 その中に学校への用務員の派遣依頼があり、博雅はそれにあてがわれた。
 所属企業の社長は元警察のOBであり、博雅の警察官時代の上司であった。
 博雅は数年前に勤務中に事故に遭い、足を怪我して退職。その時既に小さな警備会社を設立していた元上司から声をかけられて、現在の会社へと入社する運びとなった。
 高校の用務員として出向する事となり早数年。
 日々学校の雑務を執り行う地味な職務にも、博雅はやりがいを感じていた。
 
 
 新学期の始まった四月。既に登校時刻も過ぎ施錠した門の前でうろうろと挙動不審の生徒――和津沙に出会ったのが、今現在の悩みの始まりでもある。
 登校途中に迷い猫を保護したという和津沙に助け舟を出し、ほんの数日猫を預かっただけだ。
 猫を心配し、様子を気にする和津沙を家に招いたのも深い意味はない。
 猫が心配なら観に来たら良い。とそれ以外の気持ちは全くなかった。
 向こうも同じだろうと思っていたが、和津沙は猫の件が片付いた後もちょくちょく用務員室に訪ねてくるので常備している茶菓子を渡すと、嬉しそうに頬張っていたので、てっきり無料のおやつ処として顔を覗かせているのだと解釈していたが……

 
 ――まさか好意だとは思わなかったなぁ。
 予想が大きく外れていた事は博雅をおおいに戸惑わせた。
「……大丈夫? ちょっと疲れた?」
 隣でスマホを見ていた和津沙が顔を上げ、心配そうに博雅を見ていた。
「ああ、いや……この辺じゃないか? 予約した猫カフェってのは」
 待ち合わせた駅前から少し離れた場所で博雅は立ち止まる。和津沙のスマホを覗き込むと、地図アプリが目的地にピンを刺してルートを示している。
「うん、そこの角を曲がったとこみたい」
 地図と、実際の道を交互に見て、和津沙は少し緊張した面持ちで頷いた。
 和津沙が博雅を気遣い、気負っているのが伝わってくる。それが妙にむず痒く、落ち着かない。
「あ、あったよ、マサさん」
 ホッとした様子で微笑む和津沙と視線が合う。前髪のあいだから覗く細めた瞳に、博雅の胸が跳ねた。
 好意を多分に含んだ視線を素知らぬ顔で受け流せる程、博雅は色恋沙汰に慣れている人生は送ってこなかった。
「あ……おう、そうか! 見つかって良かった」
 博雅は不自然に力んでしまう口角を上げて頷くと目的地の店内へと向かった。
 
 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 お弁当作ったり食べたりする話


  用務員室のドアをノックしてそっと中を覗くと、お目当ての人物がにっと口の端を上げて笑い、手招きをして和津沙を呼んでいる。
 その笑顔と、自分を呼んでいる事実を目の当たりにして、和津沙の顔も自然と綻んでしまう。
 だらしなく微笑みながら和津沙が後ろ手にドアを閉めると、博雅はソファーから立ち上がり保温ポットの方へ大股で歩いて行く。
「和津沙、昼飯食べたか?」
 ちらりと和津沙の方を見て、博雅は朗らかに尋ねた。
「まだ。今日マサさんひとりだよね? ここで食べていい?」
「いいぞー。お茶飲むだろ?」
 和津沙が頷くと博雅はマグカップにティーパックを入れて保温ポットからお湯を注いでいる。
 そんな博雅の後ろ姿を見つめながら、和津沙は備え付けの古いソファーに腰掛けた。
「よっこいしょ、と……ほい、お茶どうぞ」
「ありがとマサさん」
 隣に座る博雅の、そのソファーの軋みさえ愛おしく、和津沙はにんまりと頬を緩ませて弁当を広げる男を見ていた。
「……食わないのか?」
 手を合わせて箸を持つ博雅が怪訝な顔をして和津沙を見た。
「うん、食べる」
 和津沙は気もそぞろに菓子パンの包みを開けて、もさもさとかじりながら博雅を見つめた。
 博雅は大きな四角い弁当箱を持って気持ちの良い勢いで昼食を咀嚼している。
 その食べっぷりに和津沙は目を細め、胸に迫る愛おしさと一緒に乾いた菓子パンを噛み締めた。
 博雅はふと箸を置き、傍らに置いた緑茶に手を伸ばすとそれをゆっくりと啜る。
 視線を動かしたことで自分を見つめる和津沙に気づいたらしい。訝しむ博雅の表情が和津沙を見てそして、口を開く。
「和津沙、飯それだけか?」
「うん」
「足りるか?」
「うん。別に平気」
「そうか……ウインナー食うか?」
 弁当を向けて聞く博雅に、和津沙はパッと顔を明るくした。
「卵焼きがいい!」
 和津沙は図々しくも高らかに告げるが、博雅は特に気にした様子もなく卵焼きを箸で摘んで向けた。
「ほい」
「ありがとう! 頂きます!」
 差し向けられた卵焼きに食いつく和津沙の顔は、嬉しげに蕩けている。
「美味し。ありがとう」
 和津沙はニヤニヤとゆるむ口元を隠しながら礼を言うと、博雅は口の端をあげ更に「ほらこれも食え」と、卵焼きの隣にいたウインナーも箸で摘んで和津沙の方へ向けた。
 食べさせてくれる博雅に甘えて和津沙は口を開けて食事が運ばれるのを待つ。
 口の中に丁寧に落とされるウインナーを咀嚼しながら、和津沙は構われることへの幸福感を噛み締めていた。
 和津沙の家族は忙しく、一家団欒の記憶はほぼない。家族と共に過ごすことがない家庭環境だった。
 時折帰宅する父や母が、気まぐれに和津沙や家の中の様子を見て、その後、状況に合ったシッターなどの家政を取り仕切る職業の人間を派遣する。
 和津沙自身も、親に対して駄々をこねたりするような事もなく、置かれている自分の状況に疑問を呈することもなく今まで過ごして来てしまった。
 だから和津沙は、家庭的なものに興味が無いのだと自分では思っていた。
 しかし、博雅とともに過ごすようになって気付く。こうやって誰かとともに食事をしたり、お節介を焼かれたりするのはなんともこそばゆく、楽しいものだと。
 いつも博雅といると今まで知らなかった感情を思い知らされる。それは和津沙にとって、心躍る変化だった。
「マサさんと一緒に食べるの美味しいし……なんか、こうやって、食べさせてもらうの嬉しい……」
 胸の内に溢れてくる気持ちが、ぽろりと口からこぼれ落ちる。
 和津沙の言葉に博雅が「こんなもんで良けりゃ作ってやろうか?」と提案した。
 その言葉に、和津沙は目を見開きじっと博雅を見つめた。
 博雅は、和津沙の表情を不思議そうに見ていたものの、淡々と弁当を食べている。そしてたまに和津沙の方へおかずを差し向けながら言葉を待っていた。
 差し向けられたきんぴらごぼうを、ありがたく頬張りしゃく、しゃく、と噛み締めたあとようやく和津沙は「いいの?!」と返答をした。
「いいけど、そんな嬉しそうにされるようなもんは出てこないぞ。マジで大したもん入ってないからな。おにぎりだけになるかもしれないし……それでもよけりゃ次はお前の分も持ってくるよ」
 博雅は苦笑しつつ緑茶を啜る。照れているようで耳がほんのりと赤くなっていた。
「いいよ! 嬉しい! おにぎり食べたい!」
「じゃあ次のひとりシフトの時作ってくる……次はいつだっけか……」
「明後日! 明後日だよ」
 和津沙が自信満々に言う。
 博雅は和津沙の言葉に訝しみながら作業着の内ポケットから手帳を取り出すと、確かに和津沙の言う通り明後日がワンオペ勤務の日だった。
「あ、本当だ。よく覚えてるなぁ」と感心したように呟く博雅の声は、和津沙の胸に沁み渡り、得意げに顔を綻ばせた。
 褒めて欲しいという気持ちを込めて頭を差し出すと、わしわしと大きな手が惜しげもなく和津沙の髪をかき混ぜる。
「んじゃ、明後日の昼持ってくるからな。要らなくなったら前日の晩までに言えよ?」
「絶対食べる! うわ〜、楽しみだ……」
 弾む心地で齧る菓子パンはなぜだかさっきよりもずっと美味しい。
 菓子パンと、博雅がたまにくれる弁当のおかずを食べながら、和津沙の楽しい昼休みは過ぎていった。


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鶯命丹 2024/04/26 21:00

元奴○ショタDom×武人おっさんSub【全文12200文字】

【試し読み】 

 続き物

 元奴○ショタDom×武人おっさんSub【全文12200文字】

 前回上げたDomSubユニバースもの
 元奴○のショタDom攻め×武人おっさんSub受け
 DomSubの名称を変えてたりするので、そういうややこしくて厨二っぽいのが苦手な方はご注意ください。
 
 【あらすじ】
 元奴○で身寄りのない少年マリ(Domのショタ)は、貴族のアノンデア(Subのおっさん)に養子として引き取られることになる。
 前回少ししかUPしてなかったものの続きです。
 元奴○少年は養子に、武人のおっさんは養父になりました。
 義理でも近sin相kanがあるのでご注意ください
 
【あるもの】
 ショタ攻め・エロ・尻舐め・攻めによる手コキ・首輪をあげる・受けのストリップ・連続絶頂
 

――――――――――――――――――――――――
 
 夢の中から呼び起こされて目を開けると、窓の向こうはすっかり夕暮れの色になり始めていた。
 よく寝てましたね。と微笑むオーサ。
 マリは、うん……と寝ぼけた声で返事をしながら枕に顔を擦りつける。
「お父様ももう帰られてますよ」
「お父様って……首長様のことですか?」
 枕に頭をつけたままオーサへ問うと、彼女はころころと笑って「そうですよ。首長様だなんて呼ばないで、お父様と呼んで差し上げましょうね」と優しく諭す。
 ――親子と言っても俺らは利害が一致して一緒にいるだけだけどな。まぁ表面上はお父様で間違いないか。
 マリはひとり納得して、枕から顔を上げるとオーサへ微笑み、頷いた。

 
 夕食にもたくさんの料理がテーブルに並び、マリはそれを少年らしい勢いで料理を平らげた。
 アノンデアも、使用人も、それを目を細めて眺めている。
 穏やかな食事風景だった。

 
 マリが食事に満足し食後の茶を飲んでいると、既に食事を済ませていたアノンデアが席を立つ。
「私は執務室へ戻る」
 アノンデアは使用人の長であろう年かさの男に告げ、食堂の扉へと歩いていく。
「待って!」
 マリはテーブルを立ち、アノンデアの元へ速足で寄っていく。
 マリの動きをじっと見つめるアノンデアの金の瞳には、疑問がありありと浮かんでいた。
 マリは大柄な養父を見上げ、にっ、笑うと自身の服のポケットに手を入れて、握りしめた拳を差し出した。
「これ、渡そうと思って」
 それは、色とりどりの紐を組み上げて作った飾り紐であった。
「これ、俺が編んだやつです。故郷の村で作ってた飾り紐で、作物が育たない冬に編むんだけど……俺、これ得意だから、お父様になる首長様にあげたくて」
 差し出したマリの手元を覗き込んだアノンデアはそっと、飾り紐を摘まみ、まじまじと見つめる。そして、目元を僅かにほころばせて「ああ、ありがとう」と低く呟いた。
 唸るような声音だが、弛む表情で喜んでいるのがわかる。
 マリは再び手を出すとアノンデアの手から飾り紐をそっと取り上げて弧を描く赤い唇を開いた。
「じゃあ……“座って”お父様。俺がつけてあげます」
 マリの言葉に、目を見開いたアノンデアは崩れるように床に膝を着く。
 辛うじて、床に尻もちをつくようなだらしない座り方はせずに済んでいたが、アノンデアは驚きに目を白黒させてマリを見ていた。
 巨漢のアノンデアは、跪いてもまだマリより高い。
 マリは背伸びをして腕を伸ばし、アノンデアの太い首元へ飾り紐をかけると、するすると手早く飾り紐を結った。
「うん。よし、できた」
 太く逞しいアノンデアの首に、丁寧に編まれた飾り紐を結ぶとマリは笑った。
 給仕のために隅に控える使用人たちには、養父と養子の心温まる交流に見えているだろう。
 しかし笑みの形に細めたマリの瞳を正面から見つめているアノンデアにだけ、少年の瞳の奥に光る嗜虐性を見た。
 そしてマリもまた、人前で"戯れる”羞恥と、主人に首輪をかけてもらう快感に戸惑い、密かに身悶えているアノンデアを正面から見つめている。
 アノンデアはきつく奥歯を噛み締めて、とろりと蕩けただらしない顔にならぬように努めているようだった。
 自分のしもべに首輪をつける喜悦に、マリの心臓が早鐘を打つ。腹の奥から燃えるような熱が全身に駆け巡り、ぞわぞわと肌が粟立つ。
 きっとこの抗い難い甘い悦びを、目の前の男も得ているのだと思うと、マリは腹を抱えて笑い転げたい気分になった。
 身の内から滲み出る悦びにマリの表情が綻ぶと、アノンデアに結んだ飾り紐が動いた。間近に覗き込む金の一つ目は揺れている。噛み締めた唇がわなわなと震え、熱い息が漏れた瞬間、アノンデアは素早く立ち上がった。
「マリを部屋に案内してやってくれ。私は仕事に戻る」
 アノンデアの声が小さく聞こえたのは、顔の距離が離れたからだけではないだろう。
 さっさと食堂を出て行った男の足取りに妙なところはない、ように見える。
 食堂を出て行く広い背中を見送りながら、マリは頬を弛ませていた。
 
 
 夕食後、アノンデアは執務室で書類を睨み付けていた。
 書かれる文字を目で追うも、内容が頭に入ってこない。
「……ふぅ……」
 息を吐き、椅子の背もたれに身体を預けたとき、首元にかすかな圧迫感を得てアノンデアは首すじに手を当てる。
 そこには先ほどマリに贈られた飾り紐が付いていた。
 指先に触れる滑らかな組紐の感触は、アノンデアの背すじにぞわりと甘い痺れを走らせる。
 
 飾り紐と首の隙間に指を入れた瞬間、コツコツと扉を叩く音が響く。
「誰だ」
「俺です、マリです」
 返ってきた声に、アノンデアの肩がわずかに跳ねる。
 無意識に、ごくりと唾を飲み込むと「入れ」とだけ応じた。
 重厚な扉を開き、入室してきた華奢な身体。
 その姿を視界にとらえた瞬間、アノンデアの顔にカッと熱が昇る。
 思わず机の上に視線を落として書類を睨むアノンデアの耳に残る、ゆっくりと絨毯を踏み締める軽い足音。
 耳と気配に神経が集中してしまうのに、視線をマリへ向ける事はできなかった。
 

 
「ここがお父様のお仕事部屋ですか?」
 問いかけるマリ。視線の先には書類に向かうアノンデアがいた。
 マリの方を見向きもしないその態度は、不機嫌で無愛想な武人そのものであり、アノンデアの部下であれば恐れ縮み上がっただろう。
 しかし、マリはそんな顰めっ面のアノンデアに構うことなく無遠慮に近づき、ひょい、と彼の使う大きな机に乗り上がって腰掛けた。
「……そんなところに座るな」
 机に座ってにんまりと笑うマリに、アノンデアは口の端をぐっと下げて不機嫌な顔をする。
 だが、マリは執務室の机に座ったまま。更には机の上に完全に乗り上がって、膝で這ってアノンデアへ近づいていく。
「……おい」
 野太い声で静かに叱るアノンデアだが、マリはそれに構わず、アノンデアの目の前に来ると、再び机に腰掛ける。
 机からぶらりと投げ出されたマリの足はアノンデアの腿の上に、踏みつけるように置いた。
 鍛え上げ肥大化した筋肉の厚みと、むっちりとついた脂肪の軟さを楽しむために、マリは靴底をぐにぐにと動かす。
「……マリ、降りなさい」
 アノンデアの言葉には、先程まであった鋭さも厳しさもない。マリの視線を間近にして、眉間に険しい皺を刻んでいながらも、居心地が悪そうに瞳を彷徨わせている。
 義眼だけが、正面のマリを見つめていた。
 マリはアノンデアの注意を無視して、彼の太い首に巻き付く飾り紐に指を当てて「これ、嬉しい?」と問いかけた。
 問われたアノンデアはためらいがちに「嬉しい……だが、ああいうのはもう、止めてほしい」と懇願する。
「ああいうのって?」
「あ、あの時は、周りに人が、たくさんいて……そういう、人の前で“戯れる”のは、良くない……だから、今後はそういう事は、しないで欲しい」
「ええ? 人前でやるのが楽しいんじゃねぇの? 興奮しなかった?」
「それは……」
 アノンデアは苦虫を噛み潰したような渋面で、訥々と語っていたが、マリの新たな問いにかすかに肩を跳ね上げた。
 言いづらそうに唇を噛み、大きな手でしきりに顔を撫でている。
「“言って”アノンデアは興奮した?」
 命じるマリの言葉は、アノンデアにとって卑しい内心を暴露させる残酷なものだった。
 唇の端を上げ、意地悪く笑むマリの顔は美しい。
 美しい笑顔で、涼やかな声で、残酷な命令で、マリはアノンデアを支配した。
「こ、興奮した……主人が……マリが私の為に首輪をかけてくれて……嬉しかった……心臓が痛いほど速くなって、喜びに……叫び出したい気持ちだった」
 アノンデアは、耳まで真っ赤に染めて、心の内を告白する。
 屈強な顎を食い締め、金の目にうっすらと涙を浮かべているアノンデアの姿は、マリの笑みを一層深くする。
「そっか……俺も。俺のしもべに首輪をかけたのすっげぇ興奮したよ」
 マリが微笑むとアノンデアは嬉しそうに口元をわずかに綻ばせた。
 マリは赤く染まった猪首にかかる首輪に、細い人差し指をかけて軽く引く。
「ね。“キスして”」
 黒い瞳が、じっとアノンデアを見つめ、そしてつぅと視線を下げた。
 アノンデアは、主人の命令にこくりと深く頷くと、自身の太腿を踏み付けているマリの脚にそっと触れ、恭しく持つと、身体をかがめて少年の靴へ口付けをした。
「ふ……はぁ……マリ」
 アノンデアはうっとりと、熱い息を漏らしながらマリの靴の爪先へ額を摩り寄せている。
 マリはそんなアノンデアをにやにやと見ながら、自由な方の脚を伸ばして、彼の股間を踏みつけた。
「あ゛っ、ぐ……ぁ、マリ゛ッ……」
「はは、なんだよ。もうガッチガチじゃねえか」
 鼻で笑いつつ、マリは固く勃起したアノンデアの陰茎をぐにぐにと踏みつける。
「う、あ゛っ……マリ……はぁ、あ……ふ、ぅぅ」
「はははっ! ねぇアノンデア、このバキバキのやつ、"見せてよ”」
 マリの命令に、アノンデアはおとなしく椅子から立ち上がり、震える指でもたもたとズボンを下ろす。
 下着から解放された勃起肉は太く逞しく天を衝いている。
 アノンデアの裸の下半身。両の太腿は筋肉に覆われて太く、筋肉の溝も深い。屈強な下半身の中心にある勃起する巨根を見て、マリは下品な口笛を吹いた。
「すっげぇ巨根。こんなでっかいの初めて見たわ」
「は、ぅっ! ん……う、ふぅ……」
 足先でぺちぺちと陰茎を叩かれ、陰嚢を突かれる。
 からかわれるアノンデアは、真っ赤な顔でじっと辱めに耐えていた。
「”全部脱いで”」
 マリの言葉にアノンデアは唇を噛む。潤んだ目でマリをちらちらと見ながら、おずおず、もたもた、と服を脱いでいく。
 男らしい容姿とは裏腹に、生娘のように恥じらうアノンデアの姿はマリを大いに満足させた。
 躊躇いがちに脱いでいく仕草は、マリを楽しませるだけであるのに、アノンデアはそれに気づかない。
 震える指で衣服をすべて脱ぎ去り、裸になったアノンデアは羞恥に顰めた顔を真っ赤に染めて、執務室の机の前に立ちつくしている。
 武骨な髪は衣服を脱いだ事でわずかに乱れ、裸の肌には無数の傷がある。傷のいくつかは紅潮しており艶めかしい。
 山のような肩に力こぶの盛り上がる腕、巨大に隆起する胸、丸太のような屈強な太もも。
 その肉体は、何よりも雄々しく、猛々しい。
「すっげ……神殿の武神像みたいだ」
 マリはうっとりと呟き、目の前の裸体に手を伸ばして、傷の多い男の肌をつぅ、と撫でた。
「んっ、ぅ……」
 アノンデアは、マリの手にびくっびくっと身体を痙攣のように震わせている。
 主人の手に翻弄されるしもべは、恨みがましくマリを睨む。しかしその瞳は甘く蕩けており、恐ろしさなどみじんもない。
「顔、真っ赤。ほら“おいで”」
 呼ばれた瞬間、アノンデアは屈強な身体をびくっと跳ねさせ、よろよろと頼りない足取りで、机に座るマリの足元に跪いた。
 マリの細い指先が、自身が贈った飾り紐越しにアノンデアの首筋をぐるりとなぞると、盛り上がった喉仏が上下する。
「ははは、うっとりした顔してる。“いい子”……首輪嬉しい?」
「……うれしい……」
 アノンデアの唇から、熱い息が漏れる。
「そっか、そっか。喜んでくれて俺も嬉しいよ」
 マリの手がアノンデアの顎をぐりぐりと撫でまわしながら彼の傷付いた瞼に、頬に、唇に口付ける。
「え、あっ……マリ、ふ、ぅ……マリ、待てっ! う、ゔっ」
 アノンデアの男らしい肉厚の唇を食み、舐める。
 マリの手のひらは、アノンデアの屈強な顎を優しく撫でたまま。
「ん、ふっ……う、んっ♡」
 きゅっと唇を引き結んでいるアノンデアだが、顎を撫でられ、唇を啄まれると頑強に鍛えられたはずの腰からよろよろと力が抜けた。 
「ほら、アノンデア“口開けて”。あー、は?」
 唇を親指で撫でられ、アノンデアは震えながら薄く口を開ける。
「は、あ……」
 命令に従順に開かれた唇を食み、吸って、口内に舌を挿し入れる。
「んっ♡んぅ♡あ゛、あ゛っ♡マリ、んっ♡」
 柔い粘膜を舌先で撫でるとアノンデアの身体が跳ねた。それが愉快でマリは更に舌を奥へと伸ばし、アノンデアの舌をつつく。
 ぬちゅ♡、くちゅ♡
 甘く淫らな音を立て、舌が絡まる。
「ふ、ぁ゛ッ♡あ、はぁ♡あ♡うぅ♡」
 ぢゅる゛♡と、アノンデアの分厚い舌を啜ると、男の大きな手が、マリの手首を掴む。
「あ゛♡マリ……♡はぁ♡は♡うぅ♡」
 力は籠ってない。震える弱々しい力で、ほっそりとしたマリの手首を掴んだまま動かない。


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鶯命丹 2024/04/09 21:00

DK×用務員さん 告白編【全文11000文字】

【説明】 DK×用務員さん 告白編【全文11000文字】
 
 【あらすじ】
 和津沙が用務員のマサさんに懐いてる日常話部分と和津沙がマサさんに告白する部分が入ってます。
 一応、前にアップした出会い編の続き
 ヤマもオチも意味もないしエロもない

 おまけに
 和津沙の容姿の美しさをアピールするためだけに書いた、モブ女子生徒が和津沙に好意を寄せる部分があります。 
 その話に入る前に注意喚起あるので、モブ当て馬とか苦手な方はその手前まででおしまいにしてください。

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