投稿記事

無名@憑依空間 2024/06/18 00:01

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

無名@憑依空間 2024/06/17 11:51

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

無名@憑依空間 2024/06/16 15:49

★無料★<憑依>モーニング憑依②~実~(完)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

朝ー
目覚めし時計が鳴り、
誠吾が目を覚ますー

「さて、とー」
誠吾がカーテンを開けて、まだ太陽の光が昇り始めたばかりの外を見つめるー。

早起きなのは、彼女の香奈に”憑依”を始める前からで、
別に、特別意識して早起きをしているわけではないー。

前より”気を付けて”早起きしているものの、
それ以上のことはしておらず、誠吾自身も特には
負担に感じていないー。

「香奈、大丈夫かなー?
 まぁ、憑依すればそれも分かるかー」
誠吾はそんな風に呟くー。

昨日の夜、電話したとき”風邪気味”だと言っていたー。

最近は特に、何かが流行っているということは、
少なくとも、誠吾たちが暮らしている地域では起きてはいないが、
何が原因であるにせよ”熱”は侮ることはできないー。
誠吾だって、憑依能力を手にするきっかけとなった幼少期に、
インフルエンザで死にかけたのだー。

ただー、
幸い、昨日の夜の時点ではそこまで調子悪そうな感じじゃなかったし、
今日、朝起きてみて大丈夫そうなら、学校にも来るつもりの様子だったー。

香奈の体調のことを心配しながら、
自分の朝の支度やひと時を過ごし、時計を見つめるー。

「よし、そろそろ行くか」
誠吾は幽体離脱をすると、そのまま自分の身体がベッドに
横たわっていることを確認し、街を霊体の状態で飛び始めるー。

この感じは、嫌いじゃないー。
何だか、空を飛んでいるみたいで楽しいからだー。

小さい頃、何も分からずに霊体になってしまっていた
あの時とは違うー。
あの時は、苦しんでいる身体に戻るためにとにかく
無我夢中だったけれどー、
こうして”平時”の憑依であればー、
特に問題はないー。

「ーーーよし」
香奈の家に到着すると、中に入る誠吾ー。
香奈は少し寝苦しそうな表情を浮かべているー。

もしかしたら、まだ熱があるのかもしれないー。
今日も体調が悪いのであれば、大学は休んで病院に行く、と
確か昨日の夜はそう言っていたー。

「ーー…まぁ、とにかく一旦起こさないとな」
誠吾がそう言いながら、香奈に憑依すると、香奈は「うっ」と、
声を上げて、ビクンと震えるー。

いつもより、ビクッ、ビクッ、と身体が痙攣して、
苦しそうな声を何度か上げてからー、
ようやく落ち着くと、香奈は起き上がって、心配そうな表情を浮かべたー。

「ーいつもより”馴染む”のに時間がかかったなー」
香奈はそう呟くと、
汗びっしょりになっていることに気付いたー。

「ーーあ~~~~~…」
香奈に憑依してみて分かったー。
一気に”体調が悪く”なったー。

それまでは健康そのものだった誠吾が、
いきなりズンッ、と身体が重くなったような
そんな感覚を味わうー。

「ーーこりゃ…結構きついなー
 っていうか…熱、結構あるようなー」

喉もカラカラで、
汗は、恐らく熱が高くて出てしまったものだろうー。

そう思いながら、
”熱だけ、測っておくか”と、
香奈の身体で立ち上がろうとするー。

がーーー

突然、ふらっ、とめまいを感じて、
香奈は近くの棚にぶつかると
「ーやべ…こ、これー」と、そのままその場に倒れ込んで、
意識を失ってしまったー

”高熱”の香奈の身体が、”憑依により強引に目覚める”負担に
耐えきれずに、意識を失ってしまったのだー。

「ーーーーーーーー」

「ーーーーーーーー」

倒れたままの香奈ー。
しばらく、時間が経過するー

「ーーー!!!!」
香奈がようやく意識を取り戻すと、
「ーーえ…?あ…」
と、香奈に憑依したままであることに気付いた誠吾は
慌てて時計を見つめたー。

「ーーーぎ、ギリギリセーフ」
大学が始まる前の時間ー。

だが、既に香奈に憑依してから2時間以上が
経過しているー。

香奈の身体から抜け出す前に、誠吾は
香奈の身体で大学に連絡を入れておくー。

そして、ひと息つくと、
熱を測ったー。

「39.5かー。よくないなー」
さっきより体調が良くなった気はするが、熱は高いー。

「ーー高熱の時に憑依するのは、まずいみたいだなー」
さっき、意識を失った時のことを思い出しながら
そう呟くと、誠吾は香奈の身体をベッドに座らせてから
香奈から抜け出したー。

「ーーぅ…」
香奈が、ガクッと、ベッドに倒れ込むー。

「ーーーーー」
「ーーーーー」

いつもなら”すぐに”意識を取り戻す香奈ー

だが、今日はなかなか意識を取り戻さないー

「ーー…お、おいー…」
誠吾が心配そうにそう呟くー

既に5分以上経過しているー。

誠吾が慌てた様子で、香奈の身を心配したその時だったー。

「ぅ……」
香奈が、ようやく目を覚ましたー。

”あぁ、そっかー…憑依してる時間がいつもより長かったからかー…”
誠吾は思うー。

憑依時間が長ければ長いほど、憑依されていた相手が
意識を取り戻すのには、時間がかかるー。
今日は、香奈に憑依したまま失神してしまったことで、
いつもの倍以上、香奈に憑依していたー。

そのせいだろうー。

”大学には連絡しておいた
 熱が高いから、病院に行ったほうがいい”

香奈の身体から抜け出す前に、香奈の身体で書いておいた書置きを、
意識を取り戻した香奈が見つめるー。
そこには意識を失ってしまったことも書かれていたー。

香奈は調子悪そうにしながら、
”見えない”誠吾に向かって、
「わかったー。ありがとうー。面倒かけてごめんねー」と、
香奈が言葉を口にするー

「昨日、寝る時はこんな調子じゃなかったからー」
香奈がそう言うと、
誠吾は、霊体のまま頷くー。

と、言ってもー、
香奈にはその姿は見えないけれどー。

誠吾は、そんな香奈の反応を見ながら、
”とりあえずは大丈夫”と、確信すると、
そのまま自分の身体に戻るため、
自分の家に向かって引き返し始めたー。

がーーー

「ーーえ?」
誠吾は表情を歪めるー。

誠吾の家の”電気”がついているー。

いったい、これはー?

いつも、誠吾が幽体離脱をする際には電気は消しているはずだー。

そう思いながら、誠吾が慌てて自分の部屋の中に霊体のまま
突入するとー、
そこにはーーーー

「ママ… ママ… どこ? ねぇ、ママ~~~!」

「ーー!?!?」

”誠吾”の姿があったー。
幽体離脱して、抜け殻になっているはずの誠吾が
起き上がり、奇妙な言葉を口走って
部屋をウロウロしながら泣いているのだー。

「ーーな、なんだー…これ?」
”誠吾の身体”が、何故動いているのかー?
誠吾は戻っていないのにー?

「まさか、俺の身体が、誰かに憑依されてー…?」
誠吾がそんな風に思いながら表情を歪めているとー、
突然、誠吾の脳裏に”ある光景”が
フラッシュバックしたー。

幼少期ー
インフルエンザの高熱で死にかけた時のあの日の光景だー。

入院となり、ベッドに横たわるー。

当時は、インフルエンザが大流行していて、
付近にも数名の子供がいたー。

そしてーーー

”ーーえ…”
誠吾は、フラッシュバックをした光景を見ながら
呆然とするー。

親と会話をする自分ー
だが、自分が”スカート”を履いているー。

そしてー、
親と話し終えたあとに、鏡に”ツインテールの可愛らしい少女”が写るー。

”ーー!!!”
誠吾は、表情を歪めるー。

そしてー、
その子は、夜になり、苦しみ始めるー。

やがてー、高熱による脳症を発症し、
容体が急変するー。

その子は、医師たちの治療も空しくー、
そのまま息を引き取るー。

だがーーー
”その子”は、宙に浮いていたー。

自分が”幽霊”になっていると思いー、
その子は記憶もハッキリしないまま、
慌てて、”近くのインフルエンザで苦しんでいる男の子”の身体の方に向かっていくー。

そうー、
自分が”死んで”幽霊になって、記憶がハッキリしない彼女は
”インフルエンザで苦しむ”自分じゃない”男の子”を見て
それが自分だと勘違いし、その子に憑依したのだー。

”ーーーえ……”

何故、今になってその光景がフラッシュバックしたのかは分からない。

がーー
”身体の本来の持ち主”が意識を取り戻したことが何か影響していたのだろうかー。

「ーー俺…池岡誠吾じゃない…」
誠吾の霊体ー…
今までずっと”誠吾”だと思ってた、
小さい頃にインフルエンザで死んだ少女の霊体が、そう呟いたー。

「ーーーー……」

彼はー
”誠吾”ではなかったー。
あの時、同じ病院で死んだ、少女ー、元木 美穂(もとき みほ)の幽霊ー。
自分が死んで、幽霊になって、記憶がハッキリしなかった美穂は、
近くで苦しんでいた男の子ー…誠吾が、”自分”だと思い込み、
そのまま”自分の身体に戻る”つもりで誠吾に憑依したー。

以降、美穂はずっと、自分を誠吾だと思い込んで生きて来たー。

”それ以前の記憶”がハッキリしなかったのは、自分が誠吾ではないからー。
異性にあまり興味を持たず、下心も持たなかったのは、
そもそも、自分は誠吾ではなく、元々女だったからー。
幽体離脱がいつでもできるのは、自分は誠吾ではなく、誠吾に憑依した幽霊だからー。

「ーーーー…ママ!!ママ!! どこ? ねぇ!」
誠吾が叫ぶー。

そうー
”本来の誠吾”はー、
子供の頃、あの病院で憑依されてからずっと意識が戻らないままだったー。
だから、彼にとっては”身体は大学生”でも、中身はまだ子供だー。

「ーーー……う、嘘だろー…」
誠吾…ではなく、美穂の幽霊は呆然としながら呟くー。

今更、自分が”美穂”であることを思い出しても、
ずっと男として生きて来た彼女は、今更女として振る舞うこともできないー。

「ーーー…!」

”憑依してる時間が長いほど、本人が意識を取り戻すまでに時間がかかる”

誠吾ーいや、美穂は今まで”他人に憑依している時間は1時間まで”と決めていたー。
それ故に”長時間憑依され続けている誠吾本人”が意識を取り戻すことはなく、
今まで、普通に”自分の身体”として誠吾の身体に戻っていたー。

がー、今日は、
香奈の身体で意識を失ったことで”誠吾の身体”をいつもの倍以上の時間、
放置してしまったー。
それ故に、誠吾の意識が戻ってしまったのだったー。

「ーーーーーーー」
美穂は、呆然としながら、周囲を見渡すー。

もう一度、”誠吾”に憑依すれば
今まで通り、自分は誠吾として生きていくことが出来るー

だがーー

”「だってさ、自分が奪われる側になったら?を、想像したら
 そんなことできないじゃん?
 身体を奪われるとか、死ぬようなもんだしー。」”

”自分”が香奈に言ったセリフを思い出すー。

「ーーーーー………」

誠吾ーー…だった美穂は霊体のまま表情を歪めると、
もう一度”本当の誠吾”のほうを見つめたー。

身体は男子学生なのに、”本当の誠吾”は、
”子供”だー。

「ーーー…………」
美穂の霊体は、戸惑いの表情を浮かべながら
”誠吾”にもう一度憑依したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーうっ」

誠吾の彼女・香奈がビクンと震えるー。

そしてー、
香奈の身体で、香奈に憑依した誠吾…いいや、美穂は、
困惑の表情を浮かべながら、
”思い出した全てのこと”を紙に書き、そして、
香奈を解放したー。

正気を取り戻した香奈が、その紙を見つめると
「えっ…… う、嘘…!?」と、呆然とした表情でー、
今まで付き合っていた”誠吾”は、誠吾ではなかったー…
という事実を知るのだったー。

大学に向かう準備をしていた香奈は
「ーこれから、どうするの?」と、
まだ”近くにいるであろう”、誠吾ー、いや、美穂の霊体に向かって語りかけたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まさか、こんなこともできるなんてねー」

”俺もびっくりだよ”

香奈の言葉に、”美穂”がそう答えるとー、

”俺は誠吾じゃなかったけど、俺も今更、自分が誠吾じゃなかった、
 なんて言われてもしっくりこないし、これからも”誠吾”でいいかな?”
と、美穂ー…”誠吾”がそう答えるー。

「ーーふふ…いいと思うよ。わたしにとっては誠吾は誠吾だし」
香奈が笑いながらそう言葉を口にした相手はーーー

”ノートパソコン”だったー。

あのあと、美穂は誠吾の身体にもう一度憑依し、
”急に激しい頭痛が”と、救急車を呼んだー。

そして、誠吾の身体を解放ー、
”中身は子供のまま”の誠吾の元には、救急車が駆け付けて
そのまま”意味不明な受け答え”を続けたことで、
病院に搬送されたー。

脳に異常は見当たらないとは思うがー、
記憶障害のような、そんな扱いになればー、
何とかなるかもしれないし、
”あの状態のまま”放置するわけにもいかず、
やむを得ず、そんな対応をしたー。

あとはー…
両親が何とかしてくれるだろうー。

”誠吾”の両親には面倒をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいだし、
自分にとって、ずっと”母さん”と”父さん”だったから、
別れるのも辛いー。

しかし”誠吾本人”のことを考えると、こうするしかなかったー。

両親に全てを打ち明けることも考えたが
今更”憑依”とか”自分は誠吾じゃなかった”とか言っても、
かえって混乱させるだけだろうし、
”だったらそのまま誠吾の身体を使えばいい”と言われてしまうかもしれないー。

がー…乗っ取られたまま人生を終える”誠吾”のことを考えると、
誠吾にはー、いいや、美穂にはそれはできなかったー。

”誠吾”の両親には、これから何らかの形で間接的に恩返しを
していきたいー。

そしてーーー
身体を失った美穂は、香奈と相談した結果ー、
”パソコンとかに憑依ってできないの?”と言われてー
試したところ、なんと、ノートパソコンに憑依することができたのだー。

結果ー。
今、こうして香奈と”パソコンに憑依した美穂”が会話をすることができているー。

”でもまさか、こんなことになるなんて思わなかったよ”

パソコン上にそんな文章が表示されるー。

「ーわたしもー」
香奈が少し寂しそうに言うと、
「ーでも、わたしにとって誠吾は誠吾だし、
 これからも、大切な人であることには変わりないからー
 安心してね」
と、寂しそうにしながらも、前向きに微笑んだー。

”はははーありがとな”
”誠吾”がそう言うと、
”これからどうするかとか、色々課題は山積みだけどー
 とりあえず、こうしてパソコンに憑依できてよかったー”と、
文字で香奈に語り掛けるー。

香奈はそれを見て、
「ー今度はわたしが誠吾を助ける番!」と、
いつもの”モーニング憑依”に感謝の言葉を口にしながら、
穏やかな笑みを浮かべつつ、そんな決意を口にしたー。

”ははー”
誠吾はそう答えると、
”で、明日”モーニング憑依”は必要?”と、
パソコンの画面上に文字を表示して確認するー

「あっ!?うん!必要必要!
 って、またわたしが助けられてる!?」

香奈はそんな言葉を口にしながら、
パソコンに向かって
「次はわたしが誠吾を助けようと思ってたのに、
 今度もわたしが助けられる番じゃん~!」と、
苦笑いしながら言葉を口にしたー。

予期せぬ形になってしまった二人の絆ー。

これから、きっと色々な問題も起きるだろうー。

けれどー、
二人なら、そんな壁も乗り越えていくことが
できるかもしれないー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

まさかの結末(?)に…!

このあとずっとうまくやっていくことが
できるかどうかは、
二人次第ですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!☆

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

無名@憑依空間 2024/06/16 11:43

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

無名@憑依空間 2024/06/15 16:09

★無料★<憑依>モーニング憑依①~朝~

・・・・・・・・・・・・・・・・・

スマホのアラーム音が鳴り響き、目を覚ました
男子大学生ー。

スマホを手に、時計を確認すると、
「よし」と、呟いてから、スマホを近くの机の上に置くー。

少しひと息をつくと、
彼は”毎朝の日課”を始めたー。

イスに座ると、突然ガクッと、うなだれる男子大学生ー

別に”2度寝”することが日課なわけではないー。

彼はー…
とある目的のために”幽体離脱”をしたのだー。

池岡 誠吾(いけおか せいご)はー、
小さい頃に、インフルエンザで高熱を出した際に
”死にかけた”ー。

あまりの高熱に病院に緊急入院し、
その時、誠吾は”自分の身体から抜け出して”しまったことを
ハッキリと覚えているー。
そう、文字通り死にかけたのだー。

だが、彼は慌てて自分の身体の方に向かって
必死に自分の霊体を動かしー、
自分の身体に戻ったことでー
なんとか一命を取り留めたー。

それ以前の記憶は、小さい頃の出来事だったから
あまりハッキリはしないー。

がー…
不思議なことに、それ以降”幽体離脱”がいつでも
できるようになってしまったのだー。

死にかけたことによる後遺症ー…なのかもしれない。

そんな中で、彼は気づいたー。
幽体離脱した状態で、他人の身体に触れると、
”憑依”できることにー。

そして今ー、
彼は小さい頃に目覚めた”幽体離脱”の力で
自分の身体から抜け出しー、
”毎朝の日課”である憑依を行おうとしていたー。

「ーーーー」
誠吾の霊体が同じ大学に通う女子大生・川口 香奈(かわぐち かな)の家に
やってくると、そのまま家の中に侵入して、
香奈の寝顔を見つめたー。

「さて…と」
誠吾は、毎朝、加奈に憑依しているー。

昨日も、おとといも、その前の日も、だー。

「ーーうっ」
寝ていた香奈が、ビクンと震えて目を開くー。

「ーーー…っっ…」
誠吾に憑依された加奈が、ふらふらと頭を押さえながら
起き上がると、
「強引に身体を起こしてるからか、結構、ふわふわするんだよなー」と、
苦笑いしながら、ベッドに座りながら、少し休みつつー、
周囲を見渡すー。

”普通に起きる”のと”憑依されて起きる”のでは、
身体の反応が違うー。

”憑依”されて目を覚ますのはー、
いわば”強引に身体を起こしている”状態でー、
目覚まし時計などに叩き起こされるよりも
さらに、目覚めの感覚は悪いー。

だが、それでも誠吾は、こうして毎日、彼女である香奈に憑依しているー。

その、理由はーーー

「ーーー」
胸の方に視線を落とす香奈ー

そしてー、手を動かし始める香奈ー

がーー…
胸のほうを見たのはただ単に、足元を見ただけでー、
手も、胸を揉んだりはせずに、寝ている間に乱れた髪を
簡単に整えるために動かしただけだったー。

「ーーよしー…」
香奈はそう呟くと、よろよろと立ち上がって
そのまま洗面台に向かうー。

洗面台で何度も何度も顔を水でぬらすと、
「これで今日も大丈夫だろ」と、香奈は鏡を見つめながら笑うー。

”ーあぁ…やっぱ可愛いなぁ”
そんなことを思いながらも、鏡にキスをしたりはせずに、
香奈はそのまま自分の部屋に方に戻るー。

部屋に戻ると、しばらく腕を振ったりー、
軽いストレッチのような仕草を繰り返してからー、
イスに座って、ため息をついたー。

誠吾は、もう、香奈から出ていくつもりだー。
香奈に憑依したのに、したここと言えば、
起き上がって、顔を洗って、ストレッチをしただけー。

”何のための憑依”なのかー。

それはー…

「ぁ…」
座っていた香奈がうめき声を上げて、ガクッとその場に
髪をゆらしながらうなだれるー。

そんな様子を霊体に戻った状態で見つめていた誠吾ー。

やがて、香奈が目を開くと、
香奈は少し周囲をキョロキョロしてから、
天井を見上げるー。

「ーおはよ~~!」
香奈からは”見えない”誠吾の霊体に向かって
香奈が手を振るー。

「ーうん!今日もバッチリ!ありがとう!」
香奈からは”誰も見えない”が、
香奈は”誠吾”がいることを知っているー。

誠吾の霊体も、そんな香奈の言葉を聞くと
「どういたしまして」と、呟いたもののー
当然、香奈にはその言葉は届かないー。

誠吾は、香奈がちゃんと起きたことを確認すると、
そのまま自分の霊体を飛ばして、家の方に向かって戻っていくー。

家に戻り、”自分の身体”にまた入り込むと、
「うっ…」と、苦しそうに呻いてから、誠吾は起き上がったー。

すぐにスマホを手にすると
”香奈”から来たメッセージを確認するー

”今日も「モーニング憑依」ありがとう!
 おかげで目覚めスッキリ!
 またあとで、大学で!”

と、書かれているー。

”どういたしまして”
誠吾が、そうメッセージを送ると、スマホを置いて
「さて、とー。俺も支度するか」と、立ち上がったー。

そう、彼はー
毎朝、”モーニング憑依”を行っているー。

彼女の香奈は”朝”が大の苦手ー。
基本的に真面目な性格なのだが、
朝が苦手すぎて、どうしても大学やバイトに遅刻してしまうことがあるー。

その、朝の苦手ぶりはかなり重症で、
目覚まし時計を10個セットしても全部止めて寝てしまうし、
朝、電話して起こしても電話中に寝てしまって話にならないー。

”どうにかできないかなー”
と、悩む彼女の香奈を見て、
思いついたのが、”自分の憑依能力を使うこと”だったー。

誠吾は、自分が幽体離脱できるようになっていることに気付きー、
他人に憑依できることに気付いたあとも、
それを”悪用”するようなことはしなかったー。

人を助けるためだったりー、
一度、中学生の頃に怪しいお姉さんに声を掛けられた際に、
そのお姉さんから逃げるため、憑依能力を使ったことは
あったけれど、それ以外に使うことはなく、
どちらかと言うと”幽体離脱して空を飛んだり”だとか、
そんなことに使うことがほとんだったー。

幽体離脱も1回1時間まで、と自分の中で決めているー。
身体が抜け殻になっている以上、ずっと放置しておくと危険な気がするし、
実家で暮らしていた頃は、親を心配させてしまう可能性も
あったため、だー。

誠吾自身、中学生、高校生になっても不思議とあまり異性に対する
興味というのは沸かず、下心的なものはほぼ”皆無”であったと言ってもよかったー。

今、香奈と付き合っているのも、
どちらかと言うと”話が合う” ”一緒にいて居心地が良い”ということで
異性として見ているというよりかは、別の感情のような気もするー。

そんな、状態ー。

そのため、これまでに憑依能力を欲望のために使うようなことはなく、
”憑依能力を欲しがっている人たち”から見れば、
宝の持ち腐れかのような、そんな使い方を誠吾は
続けていたー。

がー、香奈が”朝が極度に苦手”だと聞き、
誠吾は香奈に自分の”力”を打ち明けた上で、
憑依して香奈の身体を起こすー…
”モーニング憑依”を始めたのだったー。

「ーおはよ~」
大学で香奈が誠吾に声をかけて来るー。

「お!今日もちゃんと起きれたみたいでよかった」
誠吾がそう言うと、香奈は「誠吾のおかげ!いつもありがとう!」と、
笑いながら誠吾に向かって感謝の気持ちを述べたー。

「ーでもまぁ、こんな起こされ方してるの、わたしぐらいだろうなぁ…」
香奈が笑いながら言うと、
誠吾は「はははー確かに」と、頷くー。

「でもさ、前から気になってるんだけどー
 俺に憑依されるとか、怖くないの?」
誠吾がそう言うと、香奈は「なんで?」と首を傾げるー

「いや、だってさー、俺に限らず
 ”他の人に身体を操られてる状態”なんだしさー。
 例えば俺がその気になれば、香奈の身体で自殺だって
 できちゃうわけだし」

誠吾がそんなことを口にするー。
しかし、香奈は「誠吾だから、大丈夫ー」と、笑うー。

「ー相手が知らない人だったらともかく、
 誠吾はそんなことしないでしょ?」

香奈と誠吾はお互いに強い信頼で結ばれているー。
だからこそ、誠吾は香奈に”誰にも話したことのない”憑依の力の
ことを話したし、
香奈は誠吾に”憑依で起こしてもらう”ということを
お願いしているー。

「ま、まぁ、確かにしないけどー」
誠吾がそう言うと、
「そこまで信頼されると、何だか照れくさいな」と、笑うー。

そんな会話をしながら、香奈は「でも、憑依ってすごいよねー
あんなに起きれなかったわたしがすぐに起きれちゃう」と、笑うと、
「ー俺が無理矢理、香奈の身体を起こしているようなもんだしなー」と、
言葉を口にするー。

以前の香奈は本当に”全然”起きなかったー。
大量の目覚まし時計でも、大音量のアラームでも、モーニングコールでも、
何をしても起きなかったり、2度寝してしまったり、
大変だったのだが、今は誠吾が憑依して、香奈の身体で”起きてしまう”ため
そんな心配はなくなったー。

「ーーでも、誠吾、面倒だったりしない?
 負担になってたら、無理しないでねー。
 毎日毎日、わたしに憑依するの面倒だろうし」
香奈が心配そうにそう言うと、
「いやいや、そんなことないよ」と、誠吾は笑うー。

「ー幽霊みたいな状態になって、空を飛ぶのって、
 結構、楽しいんだぜ?」

誠吾がそう言うと、
香奈は「え~…ちょっと、それ、やってみたい」と、笑うー。

「ーはははー…まぁ、何十年か先に死んだあと、きっと体験できるさ」
と、誠吾は苦笑いしながら言うー。

「ーでもさー、そういう力があって
 ”誰かの人生奪っちゃおう”とかそんなこと、思ったことないの?」

香奈が不思議そうに、改めてそんな疑問を口にすると、
誠吾は、少し考えるような表情を浮かべてから「ないな~」と、呟くー。

「だってさ、自分が奪われる側になったら?を、想像したら
 そんなことできないじゃん?
 身体を奪われるとか、死ぬようなもんだしー。

 今まで、香奈に憑依する前にやった憑依も
 知らずにやったのと、後はどうしても人助けとか、
 そういう時に使っただけだし、
 相手が悪いやつでも、必ず身体は返してるしー」

誠吾がそう言うと、香奈は微笑みながら
「ー”憑依”の力を手に入れたのが誠吾みたいな人でよかった!」と、
安心した様子で言葉を口にするー。

「ーだな。ヤバい奴がこの力を手に入れてたら、ヤバかったー」
誠吾も笑いながら、そんな言葉を口にすると、
「ー明日は土曜日だから、起こさなくていいかな?
 それとも起きる?」と、香奈に、いつものように
”モーニング憑依”が必要かどうか、
そんな言葉を口にしたー。

”人の人生を奪うなんてありえないー”

”憑依”の力に目覚めたのが
憑依能力を持ちながらにして、そんな風に考えられる
誠吾だったことは、
確かに、世の中にとっては幸運と言えたのかもしれないー。

この世のどこかには、
”憑依”で他人を滅茶苦茶にすることも厭わない
人間が、いくらでもいるのだからー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”う~ん、今日はちょっと、調子が悪くて”
電話の向こうの香奈が、そんな言葉を口にするー。

「ー大丈夫か?風邪?」
誠吾がそう言うと、香奈は”そうかも。友達も風邪ひいてたし”と、
言葉を口にするー。

「ーそっか。じゃあ、気を付けろよー
 で、明日はどうする?」

”明日の朝には、熱も引いてるかもしれないし、
 朝起きてから様子を見る感じかなー
 ダメそうなら病院行ってくるしー”

香奈がそう言うと、誠吾は「じゃ、朝の憑依は必要ってことだな」と、
笑いながら言うー。

”うんー。いつも本当にありがとう”

「いやいや、問題ないよ。じゃ、また明日ー」
誠吾はそう言うと電話を切ったー。

「ーーさて、とー。
 俺が寝坊しちゃったら本末転倒だからなー。
 そろそろ寝る準備をするか」

誠吾は、そんな言葉を口にしながら、
明日の朝、彼女を起こすために寝る支度を始めるのだったー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ある日の朝に思いついた作品デス~笑

★無料★作品なので、完結まで無料デス~!
安心して楽しんでくださいネ~!

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

5 6 7 8 9 10 11

記事のタグから探す

月別アーカイブ

記事を検索