美少女のいる生活/18
買い物袋を下げて部屋に帰ってくると、
「それじゃ、作りますね!」
と張り切った美咲に、貴久はエプロンを与えた。
「クマのプリントがなくて悪いけど」
「我慢します」
「何か手伝えることは?」
「特に何も。テレビで相撲でも見ていてください」
「相撲は別に好きじゃない」
「じゃあ、ゲームするとか、本を読むとか、お好きに」
「了解」
貴久は、もう何度も読んでセリフを完全に覚えてしまっている、アクション漫画を持ってきて読みながら、美咲が料理をしている姿を見ていた。さすがにこなれた動き方をしている。おそらく、料理だけではなく、家事全般できるのだろう。
小一時間ほどで、料理は完成したようだった。
「終わりました!」
「お疲れ様」
「貴久さん、わたし、シャワー浴びてきてもいいですか?」
「もちろん」
「それで……着替えのTシャツお借りしてもいいですか?」
「ああ、いいよ。じゃあ、ちょっと待って、確かまだおろしてないのがあったはずだから」
「わたし何でもいいですよ」
「いや、これはこっちの問題なんだ。汗染みができていたり、加齢臭がするものを、女の子に渡したくない」
「結構、繊細ですね」
「お年頃なんだ」
貴久は、まだ身につけていないグレーのTシャツを彼女に渡した。
「下はどうする? 短パンでも履く?」
「でも、これ大きいから、チュニックみたいになりません?」
「ならないと思うけど」
「やってみます」
貴久は、彼女がシャワーを浴びている音が聞こえてくると、それにもまた奇妙な気持になった。自分がここにいるのに、シャワーの水音が聞こえるというのは、つまり、自分以外の人間がここにいるというそのことだった。当たり前。
その当たり前に慣れないこともまた当たり前だった。二人で暮すことになってから、まだ半日ほどである。これに慣れる日が来るのだろうか、というか、これから彼女と一緒に暮していくということにどうにも現実感がなかった。
「さっぱりしました、貴久さんもシャワーどうですか?」
そう言って現われた彼女は、下着の上に貴久のシャツを身につけた格好であって、白い太ももを惜しげ無くさらしていた。ややもすると、ショーツが見えそうなほどである。
「大丈夫そうですね」
「どこがだよ!」
「気になります?」
美咲は、シャツの裾をちょっとめくるようにした。
「ストップ」
「冗談ですよ」
「キミはちょっとは警戒した方がいいぞ。随分とおれのことを信頼してくれているようだけど」
「警戒って、貴久さんに?」
「そうだよ」
「どうされちゃうんですか、わたし?」
貴久は美咲に近づくと、少女の腰に自らの腕を回すようにした。