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ウメ畑 2022/11/01 19:32

リクエスト作品 『天才王子の赤字国家再生術』 ニニム・ラーレイ

 ヴーノ大陸最北端に位置するナトラ王国が冬の季節になる頃、一人の少女が岩を組んで作られた質素な建物の中に囚われていた。
 手足を枷で拘束されているわけでもなく、建物内には見張りも居ない。
囚われているというには自由に見えるけれど、窓には柵が嵌められているし、ドアの外には見張りが立っている。

(この部屋の中だけなら自由、というわけですか……)

 そう考えるが、この状況を打開するための道具は室内に置かれていない。
 食事の際に使う食器はいつも兵士たちが回収していくし、そもそも、武器として使えそうな道具は箒の一本も残されていなかった。
 そしてなにより屈辱的なのは――彼女は何も身に着けていないということだ。
 装飾品や身を守るための武器を隠せる場所が無いようにという事だろうが、年頃の少女にとっては逃走できない事よりも、肌を見せる羞恥の方にこそ精神的な衝撃が大きい。
 僅かなふくらみしかない小振りな胸、うっすらとくびれた腰、こちらも肉付きに乏しい下半身。
 全体的に細身で、真っ白な肌。
見事な白髪も相まってどこか人形のような冷たさを感じさせる肢体は、部屋の隅で丸くなっている。
 整った美貌はこの状況でも理性を失うことなく状況を的確に思考し、瞳にはまだ知性の輝きが色濃く残っていた。
 ……見目麗しい少女だ。
 年齢は16を僅かに過ぎた程度で、瑞々しい張りのある肌は健康的なもの。
 透き通るような白い髪と日焼けしていないキメ細かな肌、燃え盛る火焔を連想させる赤い瞳の対比が少女の美貌を見る者へいっそう強く印象付けさせる。
 そんな美少女の裸体には、不自然な異物が嵌められていた。
 左右の乳首に一つずつ。
 そして、数日の監禁で手入れが出来ていない髪の色と同じ白色の濃い陰毛の少し下にあるクリトリスに一つ。
 計三つ。
 淡く色付く可憐な肉芽に、銀色のリングが印象的なピアスが嵌められていた。
 それが、少女が僅かに身じろぎするたびにカチンと、金属的な音を立てている。

「……っ……」

 少女の薄い胸に相応しい小さめの乳首は銀のピアスによって引き延ばされ、それは陰核も同様。
 以前は包皮に守られていた女体の中で最も敏感とも言える神経の塊は常に空気へ触れるようになり、今では寝ている間でもジンジンと疼いてしまうのだ。
 疼きは胎の奥へと溜まり、気が付けば興奮していなくてもまたが濡れてしまっている時がある。

(……絶対、違う)

 それがまるで、獣のようにいつも発情しているような気がして、白髪の少女は自分の思考を否定した。
 白髪の美少女、ニニム・ラーレイがこの村に囚われて、すでに五日という時間が過ぎようとしていた。

(いったい、いつまで……)

 彼女は建物の石壁に背を預けたまま身を丸くしている。
無駄な体力を消費しないようにしながら、これまでの事を考えていた。
 ナトラ王国がマーデン軍に敗北して、かなりの時間が過ぎた。
 主要戦力である軍の将軍たちや国の大臣たちは捕らわれ、ニニムもまたその中に数えられている。
 ナトラ王国は実質的にすべての戦力をマーデン軍に押さえられ、もはや反撃もままならない状態。
 ここから国を取り返すというのは、それこそ『奇跡』などという不確かなものを信じるしかない……そう考えるニニムの気持ちは、とても重いものだった。

「ウェイン……」

 彼女は心のどこかで今も信頼し、そしていまだ捕らえられたという報告を受けていない幼馴染の名を呟いた。
 無意識だ。
 ……助けてほしいと、願っているのかもしれない。
 それほどまでに――ここは地獄だとニニムは思う。
 手足に枷は無い。
 外は雪が降っているけれど、建物の中にある暖炉には火が灯されていて凍死する心配もない。
 食べ物や飲み物だって日に何度か運ばれてくるし、マーデンの人間たちの気紛れで沐浴だって許可されている。
 けれど、ここは地獄だ。
 ニニムは連日の凌○で穢された肢体を抱きしめ、身体を更に小さく丸くする。
 元から小柄だったニニムの肢体がより小さくなり、綺麗な白髪が服に隠されていない綺麗な肌を覆い隠してしまう。

「ぅ、ぅう……」

 凌○された。犯された。
 しかも、ニニムの初めては人間ですらない卑猥な道具に奪われたし、憎いマーデン兵に何度も中出しされてしまった。
 服を着る事も許されないニニムは『灰被り』の蔑称どころか、『雌』と侮蔑されるほど。
 もはや人間扱いですらないその呼び方は村に駐屯するマーデン兵たちの間に浸透し、彼女は『雌』として男たちの相手をさせられる。
 ……それは、女としての地獄だとニニムは思う。
 どれだけ泣いても涙が枯れることはなく、ウェインの副官として、最も信頼される友人として、彼の隣に立っていた時には感じられなかった弱々しさで身を丸くしたまま身体を震わせた。

「私は、絶対に諦めないから……絶対に……」

 今も鮮明に思い出せる幼馴染の顔に向けた宣言は、まだしっかりとした気力が残っていることを感じさせた。
 今は逃げる手段を思い浮かばないけれど、いつか必ず逃げ出してみせるという気力だ。
 ……けれど、ニニムはナトラ王国の冬を知っている。
 とても厳しく、普通に過ごしていても餓死者が出るほどなのだ。
 そんな冬のナトラを裸で逃げる事など、自殺するようなもの。
 小屋の中を見回せば、凍死しない程度の暖が取れる暖炉とベッドこそあるが、服に使えそうなものはなにも無い。
 精々がベッドに使っているシーツだが、こんなものでは冬の寒さを耐える事など不可能だ。
 後は喉を潤す水瓶に、武器として使うには耐久性に乏しい木製の食器程度。
 奇跡は起きないし、ただただ、今日も一日が始まるのだ――。




「……っ……っっ……っ!」
「ちっ、もう緩くなってるじゃねぇか……っ!」
「尻穴はいい感じだぞ。緩くなって、締め付けがいい感じだ」

 ニニムが泣いた後、建物の中に来たマーデン兵は二人だった。
 朝一番から、ニニムには人権など何もないと言わんばかりに男たちから犯される。
 拒否など出来ない。
 ニニムは捕虜であり、彼らの気分次第で何をされるか分からないのだ。

「ふ……っ、ぅ……っ」
(早く終わって……)

 男たちの侮蔑の言葉にも明確な反応を示さない――無視しながら腰の上に跨って男性器を女性器に導き、無防備な尻穴を犯されながらニニムは願う。
 もう処女も、尻穴の初めても奪われた。
 唇はファーストキスより先に男性器の味を覚え、薄い胸肉の先端ではピアスで飾れた乳首が下半身からの刺激とただピアスが揺れただけで硬く勃起してしまう。
 それでも声だけは抑えているのは、まだまだ彼女が強い気力を保ち、反抗的な証拠である。
男たちはそんなニニムの反応、気の強さを楽しむように腰の動きを激しくした。

「――ッ!? っ……ぅ、……ぅぅ……っ!!」
「おら、声を出せよ、声を!」
「へえ、一丁前に声を我慢するつもりか?」
「ッ」

 ニニムは答えず、キッと自分の下で横になっている男を睨みつけた。
 処女を奪われ、一方的に犯されていても折れない心。
 そんな反応は、凌○者にとっては貴重なものだ。
 なにせ、女を強○して悦に浸るような下種たちだ。
 心が折れて泣き続ける女よりも、強気に、『自分は絶対に負けない』とありもしない希望を信じ続けている女の心をへし折る方が楽しいと感じてしまう。
 そんな異常な性癖の持ち主なのだから――今の、囚われ、犯され、逃げ場が無くても諦めない……ニニム・ラーレイという女はいいオモチャだった。

「くくっ、その目がいつまでもつかな?」
「だが、抵抗はするなよ。お前が抵抗すれば、この村の人間を一人ずつ殺していくからな」
「くっ――下種ですね」

 マーデン兵の言葉を聞いて、ニニムはつい口を開いてしまった。
 溢れた悪態は憎しみに染まったものだが、けれど男たちは今日初めて聞いた女の声に内容など関係なく楽しそうに笑う。
 ニニムが何を言おうが関係ないのだ。
 ただただ、自分たちが面白ければそれでいい。
 気持ち良ければどうでもいい。
 憎しみで声を出し、殴りかかるのを我慢した……が、男たちの楽しみは別。
 抵抗しようとしたことでニニムの身体が強張り、膣と尻の穴の締まりが良くなったのだ。
 その反応が気持ちいいからニニムを怒らせた。ただそれだけの事。

「ったく。こんな役得が無けりゃ、ナトラなんて田舎になんか来ないっての」
「まったくだ。雪と岩しかない国だからな……」
「――――」

 その言葉に、ニニムは唇を噛む。
 ナトラにもいい所はある……と思う。
 景色は綺麗だし、夏は涼しいし、優しい気性の人が多い。
 そんなこの国がニニムは嫌いではなかった。故郷と言えるほど、愛着がある。
 ……ニニムは故郷を馬鹿にされたことに全身を強張らせ、目の前の男を殺したい一心で睨みつけた。

「おお、いいぞ。良い締め付けだ」
「っ。尻穴は緩めろよ、灰被り。すぐ出そうだ」
「へっ、早漏が」
「数がこなせると言え……っ、ぅっ」

 けれど、そんなニニムの気持ちなど完全に無視して、男たちは腰を振っていた。
 母国から遠く離れた敵国の遠征先で、女を○す。
 ニニムをただの性処理道具としか考えていない行為は乱暴で、だというのに若く健康な少女の身体は凌○に対して快感を覚えてしまう。
 ……それが悲しくて、悔しくて、だからニニムは男たちの前で嬌声を上げず、涙も見せないように努力していた。

「――っ、……ぅ、っ」
「はぁ、はぁ……うっ」
「くぅ! ふぅ……」

 男たちが現れて十数分後、二人の兵士はほぼ同時に達した。
 こやはり、ニニムの事など何も考えていない。
 ただただ一方的な、自分本位の絶頂。
 ……ニニムはもう少しで絶頂出来そうだったが、それよりも早く男たちの方が終わってしまう。

「よし、仕事に戻るか」
「だな」

 そうして、二人の兵士は服装を整えると小屋を出ていった。
 中に残ったのは、膣穴と尻穴から精液を溢れさせるニニム一人だけ。

「……うぅ……」

 ニニムは女としてすら扱われない情けなさ、膣内射精された屈辱、そして一人ぼっちで中出しされた精液を処理する自分に対する虚しさで目に涙を浮かべてしまう。
 こんな生活が、今日で三日目となる。
 まだ一日が始まったばかりだというのにニニムはすでに精神的な疲労を感じ、それでも泣きながら膣穴に指を入れて精液を掻き出していく。

(お願い……妊娠は、妊娠だけは……)

 処女を奪われ、身体を穢され、そのうえ妊娠までしてしまったら……。
 ニニムはその恐怖から、膣穴から精液を掻き出し終えると、小屋の中に用意されている水瓶から水を掬って膣穴を洗浄する。
 それでも万全ではないが、何もしないよりはマシだろうと思ってのことだった。

「うぅ、お尻も……」

 ニニムは次にお尻の穴も水で洗ったが、少しヒリヒリしただけで、痛みはほとんどない。
 ……それが、とても悲しかった。

(お尻なんかで、私……)

 たった三日の凌○で身体が作り変えられたと、ニニムは思う。
 処女だった膣穴はもとより、お尻の穴でも絶頂出来るように仕込まれたのだ。
 マーデンの兵士たちが言っていた、国で違法扱いされている興奮剤。
 ニニムはその存在を知らなかったが、使われたら分かる。
 凌○の痛みが消えて、身体が熱くなり、処女なのに膣穴で絶頂できるほどまで『興奮』した。
 その興奮剤を尻穴に塗りたくられ、それでは物足りないとばかりに浣腸され、男たちの前で違法な興奮剤……媚薬とも言うべき液体が混じった排便すら強○されたこと。
 マーデンの兵士たちだけでなく、この名も無い田舎村に住む人々の目の前で薄桃色の液体と茶色の異物が混ざり合ったモノをひり出し、馬鹿にされ、嘲笑され――だというのにニニムは尻穴を通る異物の感覚が心地好くて絶頂した。
 絶頂してしまった。
 何度も、何度も。
 お尻の中身が空になっても媚薬浣腸は続けられ、凌○二日目が終わる頃には排泄で絶頂出来るようになっていた。
 うんことおしっこ。
 ……今では、膀胱におしっこが堪るだけで、腸が排便を訴えるだけで、何もしていないはずなのに膣穴から淫液が滲んでしまう。
 今では日に数回のトイレの時間さえ恐ろしいと感じていた。
 ……逃げないようにとマーデンの兵士たちに囲まれる中での排泄。
 おしっこも、うんちも。
 見られているのに……。

「うぅ」

 自分でお尻に触れたことで排泄の快感を思い出すと、つい数分前に洗浄したばかりの膣穴から透明な液体が滲んでしまう。
 少し粘り気があって、そして男たちの体臭とは違うどこか饐えた臭い。女の蜜。
 ……排泄の妄想だけで濡れてしまったことが情けなくて、ニニムは慌てて新しく滲んだ淫液を手で拭い、水で洗った。

「……いつまで、こんなこと……」

 その呟きも、何度目か。
 いつか助けが来るのか。
 それとも一生このままなのか。
 ニニムには想像もできない。

「お、空いてるな」
「なんだ、自分で身体を清めていたのか? 灰被りにしては殊勝な心掛けだな」
「抱かれたいだけだろ、淫乱が」
「――――ッ」

 そして、ニニムがこれからの未来を悲しむ暇もなく、今度は三人の兵士が現れた。
 初日に現れた貴族は、あれ以降現れていない。
 その見た目の通り、忙しいのか。
 それとも、ニニムとは別の要人を嬲っているのか。
 どちらにせよ、裸のニニムにはここから逃げる術がない。
 服を奪う事も、戦う事も、抵抗することも。
 行動を起こしたとしてもすぐに捕まるか、脱走者として処分されるか、冬のナトラで別の村へたどり着く前に凍死してしまうか。

「おら、さっさとベッドに乗れよ!」
「待たせるなよ、灰被り」
「それ以外何の価値もないバカ女が、男を待たせるな!!」

 男たちがそれぞれ、自分勝手な言葉をニニムに投げつけてくる。
 ……ふと、視線を感じた。
 そちらを見れば、小屋の窓。
 外から、誰かがこれから襲われるニニムを見ていた。
 村の男性たちだ。
 若い男たちは戦争に駆り出されたことで不在。
 いるのは年寄りや子供たちばかり――その視線が、鉄柵が嵌められた窓の向こうから、ニニムに向けられている。
 綺麗な白髪、凌○されてもなお美しい肢体、その肢体を卑猥なピアスで彩った姿を。

「なんで、どうしてこんな事を……」

 ニニムは自国の民にも視姦されながら、けれど抵抗する気力もなくベッドの上に移動する。
 自分から足を開き、男たちに見せつけるために指で陰部を開いて見せる。
 ただ、最後の抵抗で顔を伏せ、美しい白髪で羞恥と屈辱、そして絶望が色付いた表情だけは隠した。

(誰か、助けて……)

 長い白髪の下で表情を隠すニニムの肢体に、男たちの手が伸びる。
 今度は三人。
 愛撫は最低限に、三穴……膣穴と尻穴、そしてキスもしたことが無い可憐な唇を犯された。





 それから、四日の日々が過ぎた。

「――――、――」

 ニニムの精神は、限界に達しようとしていた。
 毎日毎日男たちに犯され、凌○され、乱暴され、排泄すら監視され、仲間だと思っていた村の男たちにも見られ……そんな日々に、16歳の少女が耐えられるはずなどなかったのだ。
 強がることが出来たのは最初の数日だけ。
 むしろ、七日という時間をもった方が奇跡と言えるだろう。
 白髪の女は同姓でも嫌悪に顔を歪めそうなほどはしたなく両足を開いて男に跨り、自分から腰を動かして奉仕していた。
 もはや条件反射だ。
 そうしなければならないと頭に刻み込まれた動きで腰を動かし、その後ろでは尻穴にも男性器を挿入している。
 口も別の男性器を咥えて奉仕しているが、そのどれもが力が籠らない中途半端なもの。
 身体が反射的に動いているだけで、ニニムが自発的に何かをしよう気持ちは微塵も残っていないというのは誰の目から見ても明らかだった。

「ちっ、そろそろ限界か?」
「ここ何日か、反応が悪いらしいな」

 小屋の中には、男たちが四人。
 一度も干していないシーツは黄ばんだ汚れが複数あり、とても清潔とは言えないものへと変わり果ててしまっている。
 見た目だけでなく異臭を放ち、それは男たちの精液やニニムの尿などが混ざり合い、乾き、固まった匂いだ。
 そんなベッドの中央には、四日前からは想像もできないほど全身が汚れたニニムの姿があった。
 全身が埃で汚れ、所々に乾いて硬くなった白濁液の残りが付着している。
 美しかった白髪も乾いた汗や白濁液で硬くなり、櫛を通すのも難しい有様だ。
 表情は虚ろで、凌○されている間はただただじっと天井を眺めているだけ。
 喘ぎ声も我慢しているのではなく、もはや声を上げる体力すら残っていないようだ。
 それもそうだろう。
 ニニムの肢体には乳首やクリトリスへのピアスに始まり、昼夜を問わずに使われた膣穴と肛門はだらしなく広がってしまい、体付きだって筋肉が落ちてどこか弛んだものへと変化してしまっている。
 まだたった七日だが、16歳の少女には無限に思えるような凌○。
長時間の性行為による絶望。
 それが、ニニムの精神を完全に閉ざしていた。

「まあ、いいか」
「そうだな」

 だが、男たちは気にしていなかった。
 一人が小屋の外へ出ただけで、残り三人がそれぞれニニムを犯していく。
 一人は汚れたベッドの上で横になって白髪の美少女だった女を跨らせ、一人が後ろから尻穴を犯し、一人が美しかった白髪を乱暴に掴んで無理やり口を○す。
 そうして自分たちが気持ち良くなれる三つの穴を乱暴に使うのだ。

「……っ、……っ」
「ったく。これじゃ、娼館でババアに当たった時より酷いな」
「お前が下手糞なだけだろ」
「言ってろ。こんなガバガバに緩んだ穴じゃ、誰だって気持よくなれないって」
「口もダメだな。おい、舌を動かせって!!」

 口を犯している男はそう言うと、ニニムの頭を軽く叩いた。
 だというのに、自分の肉体を侮辱されてもニニムの心は動かない。
 無表情のまま、もはや心のどこかで「死にたい」とすら思いながら男たちの成すがまま、自分からは一切の反応を示さない。
 それはニニムなりの精一杯の抵抗であり、ナトラ王国の人間として生きる――いや、死ぬための行為だった。

(はやく、おわって……)

 それは男たちの凌○ではなく、自分の命に向けた気持ちだ。
 もう何日も食べ物を口にしていない。
 水もだ。
 口に含んだのは男性器と、そこから吐き出されるおぞましい白濁液だけ。
 純粋に栄養が不足し、思考が働かなくなっている。
 その上で体力を消費する性行為など行えば、時々、ニニムは意識が途切れる時があった。
 死が近付いてきている。
 それを実感する。
 ……けれどそれでいいと思うのだ。

(ウェイン……)

 最後に、今も記憶から消えない幼馴染の顔が脳裏に浮かんだ。
 馬鹿みたいに大声で弱音を吐いている顔だ。
 いつもいつも、自分の前に来ると出来もしない弱音を口にしていた幼馴染。
 自分の前だけで見せていた、弱音。
 その事を思い出した瞬間、ニニムの瞳から一筋の雫が零れ落ちた。
 だが――。

「よっと。新しい薬を持ってきたぞーっと」
「やっとかよ。ガバガバの穴を使ってたけど、全然楽しめなかったってのに」
「……いや、使うなよ」

 そう言ったのは、先ほど小屋から出ていった四人目の男だった。
 手にはニニムが知らない道具が握られている。
 先端に細い針が付いていて、その下には何か液体が入った筒。
 筒の中の液体はニニムが見覚えのある薄桃色で、それはマーデンでも違法とされる興奮剤だ。

「さっさと使えよ」
「待て待て。詳しい奴に聞いてきたが、間違えた場所に使うと死ぬそうだからな……簡単に殺したら、勿体ないだろう?」
「まあ、そりゃそうか」

 言うと、三穴を犯していた男たちが動きを止めた。
 口からは肉棒を引き抜き、ニニムは膣穴と肛門を貫かれたまま手に奇妙な道具……注射器を持った男を見る。

「ぁ、ぁ……」
「お、この道具が分かるのか? それとも、液体の色で何を注射されるか気付いたか?」
「いいぞいいぞ。怖がって穴が締まってきた」
「……変態すぎだろ、お前」
「いやあ、これが結構悪くないもんだぞ。尻穴の方も締め付けてきやがる」

 男たちが言う通り、処女の自分を発情させた液体をまた使われる――しかも未知の道具を使って。
 その恐怖と同様にニニムの身体が強張れば、緩んでガバガバになっていた膣と尻の穴が締まって程よい強さで男たちの男性器を締め付けてしまう。
 だが、ニニムはそんな事などどうでも良かった。

「いや、それはいやです……」

 掠れた声で呟くと、ニニムは力無く首を横に振った。
 久しぶりに出た声には明確な恐怖が宿り、身体が震えだす。
 見ているだけで可哀想だと思えてくる、哀れな姿――だが、男たちはそんなニニムの姿をニヤニヤと厭らしい顔で見る。

「だめだめ。無反応だったお前が悪いんだからな、灰被り」
「反応が良かったらもう少し使ってやったのに」

 男たちが何を言っているのか分からない。
 自分はもう死にたかったのだ。
 壊れたかったのだ。
 だというのに、ニニム・ラーレイという少女の本能が警鐘を鳴らす。
 これから何をされるか分からないけれど、これからされることはとてもおぞましい行為なのだという事は予想できる。

「やだ、やめて……っ」

 ニニムは数日ぶりに身体を暴れさせると、この場から逃げようとした。
 どこにも逃げられないと頭では分かっているのに、肉体が本能で抵抗してしまう。

「おいおいおい」
「どこに行くのかなぁ、灰被り……いや、名前なんだっけ?」
「知らね――に、に……」
「どーでもいいよ。どうせただの灰被りだ」

 腰を浮かせて男性器を抜いて逃げようとしたニニムの小さな肢体を膣と尻を犯していた男二人があっさりと捕まえ、口を犯していた男が拘束されてもなお身体を暴れさせようとするニニムの右腕を掴む。

「そのまま動かすなよ」
「分かってるって。――お前もあんまり暴れるなよ、灰被り。体の中で針が折れたら、本当に死ぬからな」
「やだ、やだっ!! やめてっ、だれかたすけてぇええ!!」

 そう言われても、ニニムは身体を暴れさせようとした。
 今まで無表情だった顔が赤くなるほど全身を力ませるが、けれど鍛えられたマーデン兵を振りほどけるほどではない。
 そのままニニムの右腕に注射器の針が刺さり、中身が血管の中に注入され、異物が体内を巡る――。

「ぁ、ああ……」
「よし、と」

 注射はほんの十数秒で終了した。
 その間、ニニムは自分の右腕を見つめ、信じられないものを見るような目で注射器と、注射をした男を交互に見る。
 ……暴れようとするニニムを抑えていた男たちが手を離した。

「な、なにを……」
「興奮剤だよ。効果はお前も知ってるだろ? それを、今度は体内に直接、ってやつだ」
「ぁ、ぁ……」

 その説明を聞きながら、ニニムが自分の身体を抱きしめた。
 今までの無気力さが嘘だったようにニニムの肢体が赤みを増し、全身から汗が噴き出した。
 同時に、目の前がグルグルと回り始め、視線が虚ろになると穢れたベッドの上に倒れ込む。

「あ、あへ……? ひ……」

 天井がグルグルと回っていた。
 まるで深く酩酊したかのような気持ち良さとなり、全身が脱力する。
 けれど身体の赤みは更に深くなっていき、汗の量も増す。
 先ほどまで、今にも止まりそうだった心臓が、今度は壊れてしまった様にドクンドクンと力強く脈動し始めたのが分かった。
 そんなニニムに、男の一人が水瓶から掬ってきた水を飲ませる。
 ……当然、こちらも興奮剤を混ぜたものだ。

「や、ら……なに、を。わらひになにお……」

 ろれつが回らない。
 視界も回ったまま戻らないのに、頭の中だけは霧が晴れてすっきりとした状態になっている。
 身体の感覚が変だった。
 ベッドで仰向けになっているだけなのに、シーツで擦れる背中がゾクゾクしてくる。
 心臓が高鳴っていて、全身へ血を送っている事すら自覚できるようだった。
 肌が異常なほど敏感で、そしてピアスを刺された乳首やクリトリスがジンジンと疼いてしまう。
 ――何より気になるのは、お腹だ。
 ズクン、ズクンと。
 まるで心臓のように、お腹の奥が脈打っているような気がしてくる。
 簡単に男性器を咥えこめるほど緩くなった膣穴と尻穴からは愛液と腸液が溢れ出し、敏感な粘膜がヒクヒクと勝手に動くだけでも絶頂してしまいそうなくらい気持ちいい。

(だめぇ……こ、こんな状態で襲われたら……っ)

 ニニムは不自然なほど鮮明になった思考でそう考えると、男たちから逃げようとベッドの上で身体を動かした。
 四つん這いになろうとするけれど、身体を上手に動かせない。
 寝返りを打つように動くのが精いっぱいで、汗の浮いたなだらかな背中が男たちの視線に晒された。
 洗身する気力も失っていたことで汚れた背中――それ以上に男たちの視線を集めたのは、胸と同じく薄い尻肉の間。
 こちらも手入れがされておらず、頭髪と同じく真っ白な毛がうっすらと生えてしまった肛門。
 女として最悪なほどだらしない箇所を晒してしまったことに、ニニムは気付かない。

「お、気力が戻ったか?」
「よしよし。まだ壊れるなよ」

 言うと、男たちは逃げようとするニニムの腰や肩を掴んで起き上がらせた。

「はぐぅう!?」

 瞬間、ニニムは今までの無反応が嘘のように大きな声を上げて全身を痙攣させた。
 男たちは腰や肩に触れ、力を籠めただけだ。
 けれど違法な興奮剤を直接体内へ注射され、水と一緒に飲まされたニニムは全身が恐ろしいほど敏感になり、他人の熱を感じただけでも身体が反応してしまう。
 飲んだ水の分を噴き出すように大量の潮を噴き、緩んだ肛門から「ブッ」と情けない放屁の音を響かせ、数秒の後に全身がガクガクと震え出す。
 あまりの変化に男たちも驚き、けれどすぐに面白がって笑いだした。

「おいおい、凄いな」
「こんな簡単に――おい、大丈夫か?」
「ひぃいい!? しゃ、しゃわらっ、しゃわらないれぇえええ!?」

 ニニムは美しい紅玉色の瞳を見開き、声を荒げた。

(なに!? なんなの!? なんでこんな――触られたところが、勝手に絶頂する!?)
「ひぎぃいい!? やべでぇっ!? やべっ、やぁあああ!?」
「俺たちは支えてやってるだけだってのに」
「勝手に絶頂すなよ、売女が」

 男の一人が泣き叫びながら絶頂するニニムを叱るように頬を叩いた。
 軽くだが。

「ほぉお!?」

 ニニムは頬を叩かれた刺激だけで奇妙な声を上げ、新しい潮を噴いてしまう。
 元から汚れていたベッドに新しいシミが作られ、腰があり得ないほど激しくガクガクと震えている。

「おお、叩いただけで絶頂したぞ」
「面白いな」

 男たちは口々にニニムの今の状態を観察すると、今度は肩や背中、腹や足などを叩き始めた。
 乱暴にではない。
 肌が赤くなる程度。『ベチ』と音がする程度の強さだ。
 子供が意地悪をするような、そんな弱い刺激。
 痛みよりも驚きの方が勝るような平手打ち。
 だというのに――。

「ひぃい、はひぃいい!?」

 ニニムはその一発一発で絶頂し、痙攣し、自分を起き上がらせた男の腕の中で支えられていなければ起き上がれないほど哀れに、簡単に、痙攣してしまう。

「やめでぇええ!? ひぃっ、やぁあああ!?」
(なんで、なんでぇええ!? 頭が真っ白になる、いたい、いだぃいいい!!!!)

 気持ち良すぎて頭痛すら感じながらニニムは絶頂し、気が付けばベッドの上で男に抱きしめられながらお漏らしをしていた。
 壊れたように尿道から黄色いおしっこを噴出し、飛沫はベッドを超え、小屋の床まで濡らしてしまうほど。
 それでも男たちはニニムの肩を、脇を叩き、乳首やクリトリスのピアスを引っ張ってニニムに刺激を与えた。
 どんな刺激にも白髪美少女の肢体は反応し、簡単に絶頂してしまう。
 全身の全部が絶頂できる性感帯へと変貌してしまったようだ。

「はひぃいい!? オォッ、ぉおおぁあああ!?」
(ぎ、ぎもぢわるいぃ……きもちよすぎて、きもちわるいぃ!?)

 それが数分も続けば過剰な絶頂で全身が不調を覚え、加熱した脳みそが吐き気を覚えさせた。
 その感覚のままニニムは粘り気のある唾液を大量に吐き出したが、けれど男の一人がやはり興奮剤混じりの冷たい水を飲ませて気付けする。

「はひ、はひ……」
「おお、こりゃいいや」

 冷たい水を飲んで少しは落ち着いたのか、ニニムが今にも途絶えそうな弱々しい呼吸を繰り返す。
 けれど男たちが興味を示すのは、その肢体。
 ピアスで飾られた乳首は痛々しいほど勃起し、クリトリスに至っては小柄な身体に不釣り合いな小指の先ほどの太さまで膨らんでしまっている。
 膣穴からは白濁した本気汁が溢れ、肛門からは粘り気のある腸液が零れ落ちて準備が万端であることを知らせていた。
 過呼吸気味で閉じる事が出来ない唇も涎で穢れており、三穴どれもが見ているだけで気持ち良くなれそうだと男たちは思う。

「――おい!」

 このまま犯したらさぞ気持ちが良いだろう。
 四人の男がそう思った時、大きな声と共に一人の男が小屋に入ってきた。
 身なりのいい男は、一目で兵士たちより上の立場に居る人間だと分かる。

「今日の仕事だ。さっさとその薄汚い『灰被り』を連れてこいっ」
「は、はいっ!」
「もうそんな時間か――すみません、すぐに準備を!!」
「それが終われば、貴様らは小屋の掃除だ!! 時間も守れない大バカ者め!」

 兵士……いや、マーデンの騎士はそう言うと、汚物を見るような目をニニムへ向けた後にドアを閉めた。
 小屋の中には行為の続きをするような雰囲気はなく、四人がため息を吐き――。

「くそっ!」
「ちっ、お前のせいだぞ!!」

 そんな乱暴な声とともにニニムの薄い胸を乱暴に叩いた。

「はひんっ!!」

 ニニムはそんな行為にも敏感に反応し、ビクンと肢体を震わせて痙攣。
 ピュッと一筋だけ潮を噴いた後、穢れたベッドの上に倒れ伏し……気絶した。





 次にニニムが目を覚ました時。

「は、あぅう……」

 乳首とクリトリスに鋭い刺激を受け、すぐに意識が覚醒した。
 場所は小屋の中、
 ニニムはベッドに腰掛けていて……。

「おい、起きろっ!」

 先ほど小屋に現れた騎士が手にした小さな鎖を引くと。

「ひぃいっ」

 ニニムはすぐに起ち上がった。
 乳首とクリトリスに、また鋭い刺激。
 立ち上がって視線を舌に向ければ、三点を飾るピアスに鎖が繋がれている。
 その鎖は騎士の手に伸び――。

「来いっ」
「あひい!? やっ、やめ――」
「口答えをするなっ!!」
「あっ、歩きまひゅ!! 歩きますから引っ張らないでっ!!」

 ニニムはすぐに騎士の言葉に従って歩き出した。
 興奮剤を直接注射された影響か、普通なら痛みを感じるほどの刺激だというのにニニムは股間から愛液と腸液を滴らせ、鎖を引かれた刺激だけで太ももまで卑猥な淫液が垂れてしまっている。

「あ、あのっ。もう少し、ゆっくり……」
「貴様にそんな自由が許されると思っているのか、灰被りっ!」
「はおっ!? お、ぉおお?」

 また、鎖を引っ張られた。
 それによってニニムの乳首とクリトリスは痛々しいほど伸びてしまい、けれどニニム本人はその痛みすら快感となってさらに多くの淫液で膝まで濡らしてしまう。
 そのまま歩き出したが絶頂と快感、そして先ほどまで生きる気力を失っていた肉体の活力不足によって足取りはとても危うい。
 足が上手に上げられず、ヨタヨタと今にも転びそうな足で歩けば、裸のまま外へ。

「ぅ……」

 冬のナトラは凍死者が出るほどの寒さであり、そんな冬空の下へ裸で出ればいくら寒さに慣れているニニムでも数分で凍死してしまう。
 けれど、小屋の外には大量のかがり火が用意されていて、その熱が冬の冷たさからニニムを守っていた。

「こっちだ」
「アッ!」

 また鎖を引っ張られた。
 ……痛みの声を上げなければいけないのに、ニニムの唇からは明確な、隠しようのない快楽に染まった熱い嬌声が出てしまう。
 それを恥ずかしいと思って身を硬くすれば足が止まり、また鎖を引っ張られて喘ぎ声。
 16歳の少女はそんな自分の反応が情けなくて、恥ずかしくて、悔しくて、けれどとてもとても気持ち良くて、股を濡らしながら歩きだす。
 小屋の外にはかがり火を用意したのだろう、村人たちが集められていた。
 逃げ出さないように大きく円を描くように、マーデンの兵士たちが周囲を塞いでいる。
 けれど、ニニムにはその状況を確認する余裕もない。

(ち、ちくびぃ……アソコも……ジンジンする。き、きもちぃぃ……)
「はぁ、はぁ……はひぃ……」
(こんな姿、見ないで……みないでぇ……)

 そう考えるだけでブルリと身体が震え、ニニムは何もされていないのに、男たちの視線を感じただけで絶頂した。
 向かったのは七日前、ニニムが村人たちの前で凌○され、生身の人間ですらない道具で処女を奪われた忌まわしい舞台の上。
 ここへたどり着くまでに五回ほど浅い絶頂へ至ってしまったニニムの股間は、男の指なら簡単に咥え込めるまで濡れていた。
 かがり火の明かりを反射してテラテラと濡れ光る奥では、連日の凌○でだらしなく歪んだ性器が丸見えになっている。
 それを見た女性たちは目を背け、男たちは王子の友人に対する引け目もあるが……興奮でニニムの裸体から目を逸らせずにいた。
 ……その中には、少年と呼ぶような年齢の男の子たちも。

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ウメ畑 2022/11/01 09:57

リクエスト作品 『魔王学院の不適合者』ミーシャ・サーシャのネクロン姉妹

「ここが、今回の課題に出ていたダンジョンね」

 そう言ったのは、気の強さが隠しきれていない瞳を持つ金髪の少女だ。
 まるで太陽の輝きのように美しい金髪をツインテールに纏めた少女は、魔王学院デルゾゲードの敷地内に突如出現したダンジョンの前で腰に手を当てながら仁王立ちになり、気炎を吐いている。
 強気に胸を逸らしながらダンジョンを見上げれば、制服の胸元に柔らかな曲線を描く形良い胸が押し出され、この美少女の見事な肢体が強調された。
 身長は同年代の少女たちとあまり変わらない平均的なものだが、気力に満ちた美貌はそれだけで見る者に強い印象を抱かせる。
 黒の外套とスカート、白いブラウスに包まれた肢体も均整がとれており、細身だが女性らしい丸みがきちんと伺えるもの。
 肉付きこそ乏しいが形良く膨らんだ柔らかそうな胸元、男の腕なら簡単に抱きすくめる事が出来そうな細い腰、スカートから伸びる健康的な美脚はどれもまだ学生の少女とは思えない色香を放っていた。
 紅のニーソックスに包まれた美脚を一歩踏み出せば、そんな彼女の強気に惹かれる学友たちの士気も上がる。

「それじゃ、さっさとこのダンジョンを攻略するとしますか」

 その気の強そう美貌は余裕に溢れており、今回の課題に絶対の自信を持っていることが伺えた。
 そのままダンジョンに踏み入ろうとすると――しかし、その外套が小さな手で握られる。
 最初の一歩を遮られる形になった金髪の少女が振り返れば、そこにあるのはどこか感情の起伏が薄い印象を抱かせる美貌の、銀髪の少女。
 金髪の少女とはまた真逆の、こちらはどこか自信というものが薄い表情をしている。
 だが身体付きは金髪の少女よりも起伏に富んでおり、胸に至っては一回りほどの違いがあるだろう。
 その肢体を白の制服に包んだ銀髪の少女は、金髪の少女がこちらの声に耳を傾けたのを感じてから、ゆっくりと外套から手を離した。

「サーシャ。突然現れたダンジョンだし……もっと慎重になった方がいい、かも」
「ミーシャ。貴女は心配性ね」

 ミーシャと呼ばれた銀髪の少女の言葉を笑い、けれどその言葉にサーシャと呼ばれた金髪の少女は足を止める。
 性格の違いによるものが多少あるのだろうが、どこか共通した要素を感じさせる二人の美少女は、姉妹である。
 ネクロン姉妹。
 金髪の姉は、サーシャ・ネクロンはネクロン家という優秀な家計の十六代目。
 銀髪の妹は、七魔皇老のひとり、アイヴィス・ネクロンの家系に連なる少女。サーシャの双子の妹だ。
 そして、そんな二人の背後には五人の男子生徒たち。
 こちらはサーシャに似た、男子用の制服に身を包んでいる。
 ブラウス以外が黒を基調とした制服で、気を凝らせば非力だが魔力を宿していることが分かる。
 魔王学院の生徒――誰もが二千年前に存在していた魔王に連なる家系の者たちであり、けれどその血は長い年月の間に酷く薄まってしまっていた。
 そんな中からこの時代の『魔皇』を育てる機関……それが魔王学院だ。
 その学院内に置いて優れた能力を持つネクロン姉妹、その補佐として五人の男子生徒たちが選ばれ、つい先日、突然現れたダンジョンの探索が命じられた。
 課題という題目だが、学生に行わせる当たり、教師たちもこの突然現れたダンジョンの安全性を理解している。
 ……なにせ、何の魔力的な脅威を感じないのだから。

「先生たちの話を鵜吞みにするわけじゃないけど、これってただの洞窟よ?」
「ただの洞窟は、突然現れたりしないと思うけど……」

 この時代でもそれなりの魔力を有するネクロン家の姉妹は、お互いに真逆の感想を抱く。
 姉のサーシャは何の脅威も感じない洞窟と。
 妹のミーシャはそれでもなお何か不思議な場所なのではないかと。
 ただ共通して『このダンジョンから魔力を感じない』というのはあるが。

「それはそうだけど……なんでいきなり、ダンジョンなんか出来たのかな?」
「さあ? 地震とか、誰かの魔法の失敗とか?」

 サーシャは思いついたことを口にするが、どれもしっくりこない。
 脳裏に浮かんだ黒髪の青年なら正しい答えを出してくれるかもしれないが、運悪く、彼は実家の方へ帰っていた。
 特に何かがあったわけではなく、気紛れの帰郷だ。
 戻ってくる予定は三日後と一定のを思い出す。
突然現れたダンジョンの探索はその間にも進み、魔王学院の教師たちが安全性を確認した後に一般生徒にも開放したのだった。

「でも、未知のダンジョンへ一番最初に潜れるっていうのも、中々楽しみね!」
「もう……サーシャったら」

 けれど、そんなダンジョンを警戒しているのはミーシャ一人だけ。
 背後の男子生徒たちも『突然現れたダンジョンの探索』というよりも、未知のダンジョンに潜る楽しさに興奮していた。

(アノスが居てくれたら、心配しなくていいんだけど)

 未知のダンジョンだったとしても、彼ならなんとかしてくれる。
 そんな信頼の気持ちは、けれど届かない。

「さ、行くわよ!」
「うん」

 サーシャの元気な掛け声に、ミーシャが、背後の男子たちが返事をする。
 そして、ネクロン姉妹、五人の男子生徒たちは何の魔力反応もない未知のダンジョンへと足を踏み入れるのだった。

「なんだか、妙な場所ねえ」

 そう言ったのは、先頭を歩くサーシャだった。
 彼女は豊かな金髪のツインテールと黒の外套を揺らしながら、とくに警戒した様子も無く歩いている。
 けれど実際には周囲を魔力で探索し、危険が無い事をきちんと把握してからだ。
 ダンジョン内にはいくつかの罠が仕掛けられており、けれどそれは隠蔽も甘い子供騙しのようなもの。
 ネクロン姉妹どころか後ろを歩く未熟な男子たちでも感知できる程度であり、それが彼女の足の歩みから緊張感を薄れさせていた。
 その数歩後ろを歩くミーシャもダンジョン内の甘い罠に安堵し、少しだけ警戒を緩めている。

「……何にもないわ」
「うん」

 サーシャの言う通り、ダンジョン内には何も無かった。
 いや、安全を確認するために教師が入っているのだから、もし何かあれば伝えられていたはずだ。
 ただ、ダンジョンと言えば宝箱、強力な魔物、危険な罠に未知の興奮……という期待が少しだけあったサーシャとしては、ここまでの道のりですでに『退屈』と感じているのかもしれない。
 実際、宝箱どころか強力な魔物も存在せず、隠ぺいの甘い罠ばかりなのだから退屈に思うのが当然か。

「これじゃ、時間の無駄じゃない……学院で本でも読んでいた方がマシじゃない」

 サーシャがあまりの退屈さに肩を落としながらそう言うと、後ろを歩く男子たちが小さく声に出して笑ってしまう。
 ミーシャでも我慢できずにその人形のように感情の起伏が乏しい美貌を僅かに緩めてしまいながら、それでも七人はダンジョンの奥へ。
 名誉にも一番手としてダンジョン探索を課題とされたのだ。
 ならせめて、最奥まで進んでしまおうと考えて。

「ところで、このダンジョンってどれくらい深いのかしら?」
「先生たちの見立てだと、そんなに深くないはずだけど……」

 ただ、学院の教師たちもダンジョンの最奥までは進んでいなかった。
 ……途中で飽きたから、生徒たちに課題としてダンジョンの探索を命じたことからも明らかだが。
 まあつまり、面倒ごとを生徒に回したというわけである。
 教師がこれほど甘いのは、平和な時代が続いたからか。

「あーあ。これじゃ、ただ疲れるだけじゃない」
「そう? 私は、静かで嫌いじゃないけど」
(アノスも、こういう暗くて静かなところは好きそう……かも)

 口や気配では周囲を警戒していても、頭の中でここには居ないアノスの事を考えているミーシャも随分と油断していた。
 ――七人はさらに奥へ進む。

「……どれくらい進んだのかしら?」

 ダンジョンは一本道ということもあり、迷うことは無かった。
 ただ、魔力を宿した瞳で暗闇を見通すことが可能な七人とはいえ、こうも似たような光景が続けば嫌気も出てくる。
 特に、何の変化もないダンジョン内に飽きていたサーシャはそれが顕著であり、気もそぞろになって先頭を歩いていた……が。

「――止まって」

 その声が、不意に緊張感を孕んだものへと変化した。
 今まで人が数人並んでも余裕がある一本道だったが、僅かに拓けた場所に出たところで前方から僅かな気配を感じたのだ。
 天井は高く、人が二十人くらいなら入っても余裕がありそう。
 学院の教室よりも一回り狭いくらいか。
今までの緩んだ雰囲気が消え、未熟な男子生徒たちでも分かるほどその小さな身体から魔力が溢れ出た。
 今まで楽観に緩んでいた表情は元の強気な色を取り戻し、サーシャは……ダンジョンの先、暗闇の向こうから現れた異物を視認する。
 異形、だった。
 魔王たちの時代が終わって二千年。
 遥か過去に存在していた異形――なのかもしれないとサーシャは思う。
 見た目は巨大化したミミズ……と表現するべきか。
 表面は岩のような凹凸があるけれど、しかし決して硬そうには見えない。
 蛇のように這って移動する様子は、表面が柔らかい、もしくは弾力がある証拠だ。
 それに、何か奇妙な粘液を表面から出している。
 粘り気があるけれど、異臭は無い。
 ただただ気持ち悪い――嫌悪感を抱かせる異様に、後ろに居るミーシャが「ひっ」と小さな声を上げた。
 それが蠢くたびに粘着質な音が響き、動体と地面の間に半透明の意図を引きながら移動している。
 その色は赤と紫が混じったような肉の色で、ダンジョン内の暗がりの中でも確認できた。
 サーシャも気持ち悪いと思ったが、持ち前の強気と、妹の前ということもあって弱気な態度は見せない。
 なにより、それはとても小さかった。
 本当に、少し大きな蛇くらいのサイズしかないのだ。
 ……現代では見掛けることのない未知の生命体が、ダンジョンの奥から現れた。

「な、なんだあれ!?」

 男子生徒たちが浮足立った。

「怯えないで! 魔力は感じない――ミーシャと皆は退路の確保を!」

 ただ、相手は未知の生物だ。
 サーシャは魔力の量から『勝てる』と思ったが、それでも念のために他の仲間たちには退路を確保するように伝える。
 そして……彼女はその両目でソレを見た。
 『破滅の魔眼』……魔王アノスには通用しなかったが、それでも現代まで残る超常の力の中では破格のモノ。

(やっと面白くなってきたじゃないっ!)

 生来の強気な感情が表に出れば、サーシャは不敵に笑ってその異物を睨みつけた。
 直後、たったそれだけで未知の生命体は胴体から粉砕――人と同じ赤い液体をぶち撒けて、真っ二つに分断される。

「さすがサーシャ様!」
「油断しないでっ!」

 男子の一人がサーシャの行動を偉業のように讃えると、けれど金髪の少女は緊張感を解かない。
 ダンジョンの奥からは更に無数の奇妙な生物が現れたからだ。
 どれも先ほど現れた蛇のような生物だが、今度は無数……五匹ほどの岩のような皮膚を持つ蛇が這い出てくる。

「うえ……」

 これにはサーシャも気分を害し、気持ち悪さに表情を歪め、一歩後退。

「きゃあっ!?」
「ミーシャ!?」

 すると、背後から悲鳴が聞こえた。
 サーシャが振り返ると、そこには今来た道には存在していなかったはずの同種の生物が道を塞ぐように存在していた。
 どれも小さな蛇だが、数が多い。
 前からは五匹ほど、出口がある後ろには十匹以上だ。

「このっ!」

 男子生徒の一人が『魔雷』を放った。
 手のひらから紫電が迸り、地面を這っていた蛇のような生物を吹き飛ばす。

「なんだ、俺たちでもやれるぞ!」
「そうよ! さっさと片付けてしまうわよ!!」

 怯えていたのは最初だけ。
 魔法が通用することを証明すると、七人は全員で奇妙な生物を倒すことにする。
 そのまま十匹以上――さらに数が増えて三十匹ほどの奇妙な生物を倒してしまえば、サーシャたちの周囲が粘り気のある気持ち悪い液体と、謎の生物の肉片に囲まれていた。

「な、なんとかなった……?」

 ミーシャが肩で息をしながらそう呟く。
 それほど肉体が疲労を感じているわけではなく、単に奇妙な生物を倒したことに対する精神的な疲労だ。
 サーシャも同様で、強気な雰囲気は崩していないが、初めて遭遇した生物の存在に動揺して息を乱していた。

「みんな、無事?」
「うん」

 全員の返事を確認して、サーシャは周囲を見回した。

「……一回、外に出るべきかしら?」
「うん。こんな生き物がいるなんて、聞いてないし……」

 ミーシャはその意見に賛成だった。
 他の男子たちもだ。
 さっきまでの余裕に緩んだ雰囲気は霧散し、未知の存在に対する恐怖に身体が強張っている。
 これではとても最奥まで向かうことは不可能だろうと思い、サーシャはその意見を取り入れた。

「それじゃ、戻りましょう。もし先生たちがこの生き物の事を知っていたら、ちゃんと説明を受けてからもう一回ダンジョンに……」

 挑みましょう、という言葉を最後まで口から出すことが出来なかった。
 地面が揺れたように感じると――さっきまでの小さな生物が嘘のような、見上げるほど巨大な岩肌の蛇が現れたのだ。
 ぬるりと。
 移動する音は聞こえない。
 肌の表面から粘り気のある液体を分泌する生物は、その液体を利用して音も無く地面を移動している。
 それが……二体。
 正面と背後。
 進も退くもできない状況だ。

「戦って、ダンジョンの外に出るわよ!!」
「う、うんっ!!」

 進退を塞がれて動揺していた仲間たちに目的を与えると、サーシャは改めて両目に力を籠めた。

 『破滅の魔眼』――それはあっさりと生物の皮膚を貫通し、抉り取り、文字通り注視していた部分を破滅させる。
 けれど、今度の存在は巨大だ。
 サーシャの視線程度ではその全域をカバーしきれず、抉り取ったのは皮膚の一部だけ。
 しかも、先ほどより魔眼の効果が悪い気がする。

(なに……?)

 その差異に疑問を抱くが、悩んでいる暇など無い。

「一匹は私が! ミーシャ、みんなでもう一匹を倒して、ダンジョンの外に!!」
「分かった!」

 一度で破滅させることができないなら、二度、三度と魔眼で視て奇妙な生命体の肉体を削っていく。

(そのまま身体を穴だらけにすれば、殺せるはず!)

 サーシャの予想通り、最奥に繋がる道から現れた巨大な岩肌の蛇は魔眼の前に倒れ、出来た傷から赤い血と透明な粘り気のある体液を流しながら絶命した。
 背後も同じ。
 こちらは学院の生徒たちが得意とする『魔雷』や『魔炎』によって全身を焼かれ、ついに耐え切れずに絶命した。
 だが、その液体には加熱する成分でも含まれていたのか、倒れた後に死体が爆発。
 全員が吹き飛んだ死体の残骸と透明な粘液に塗れ、汚れてしまう。

「きゃっ!?」
「やだ、なにこれっ!?」

 ミーシャとサーシャが悲鳴を上げ、男子たちも頭から被った奇妙な生物の死骸に表情を歪める。
 けれど、出口までの道は出来た。

「みんな、急いで外に――」

 そのまま走り出した直後、瓦礫が落ちてきた。
 魔法の衝撃で天井が崩れるかもしれない――生徒たちが顔を上げると、しかし今度は天井を破壊しながら岩肌の蛇が出現した。
 先ほどよりもずっと細いが、けれど長い。

「なにっ!?」
「いやっ!?」

 天井から伸びた蛇はネクロン姉妹の腰に絡みつくと、その細い外見からは想像できない力強さで軽々と美少女たちを持ち上げた。
 さらに多数の蛇が天井から出てくると、姉妹を掴んだのと別の蛇は地面に落ち、男子生徒たちを威嚇するように口を開く。
 顔は無く、先端が十字に裂けるとその下から生物と同じ薄桃色の粘膜が現れた。
 口内には牙も存在しておらず、粘液のように糸を引くだ液を零しながら蛇のように長い舌が伸びる。

「くっ!? 『魔雷』!!」

 男子生徒の一人がネクロン姉妹を助けるために、邪魔しようとする岩肌の蛇に向かって魔法を放った。
 ……が。

「な、なんで!? 魔法が使えない!?」

 何度意識を集中しても、魔法が発動しない。
 いや、魔力を練ろうとしても、身体の内から湧き上がってくるような独特の感覚が発生しないのだ。
 それは他の男子たちも同じで、五人は全員が動揺して後ずさる。
 けれどここはダンジョン内。
 逃げ場など何処にもなく、五人はあっという間に岩壁を背に追い詰められてしまった。

「みんなっ!」

 ミーシャは叫ぶと、両の目に意識を集中する。
 破滅の魔眼――見た物を破滅させる異能は……しかし、他の魔法と同じく、その効果を発動しない。
 体内に溢れる魔力……しかしそれが、彼女の意志に反応しないのだ。
 魔力が無ければ、どれほど強力な魔法の才能も、生まれ持った異能も、何の意味もない。

「くっ、なんで!?」
「どうしてっ!? 魔法が使えないっ!?」

 それはミーシャたちも同じだった。
 彼女たちも魔法が使えなくなっており、ミーシャに至っては『破滅の魔眼』すら発動しない。
驚きながらその事実を言葉にする。
 サーシャはその人形のように整った美貌を普段は見せない動揺に染め、何とか自由になろうと天井から生えた岩肌の蛇の拘束から逃れようと身体を暴れさせた。

「な、なんだ……?」
「こいつら、何もしてこない?」

 空中に持ち上げられたネクロン姉妹が何とか自由になろうとしている間に、地上では少しの変化が起きる。
 岩肌の蛇たちは男子たちを壁に追い詰めると品定めをするように観察し、それ以上の行動は何もしなかったのだ。
 まるで興味を無くしたように見ているだけで、攻撃してくる様子はない。
 ただ、十字に裂けた口だけはそのままで、魔法が使えない生徒たちでは直接攻撃を行っても返り討ちにあってしまいそうな恐怖がある。
 岩肌の外見もあって、さながら悪質な外見をした石像……に見えなくもない。
 何もされなかったことで動揺が収まると、少しだけ冷静になって男子たちはゆっくりと息を吐く。

「こっちは大丈夫みたいだな」
「こっちは大丈夫じゃないっての!!」

 男子の一人が言うと、しかしサーシャはその言葉に反論した。
 ネクロン姉妹は今も空中に持ち上げられているのだ。

「何もしないならっ、そもそも襲ってこないでよっ!!」

 そう言いたくもなるだろう。
 実際、最初こそ驚いたが、何もされないことに気付いて気持ちが落ち着いてくると腰に巻き付いてはいるが、それ以上の変化がない事が分かって少しだけほっとする。
 それ以上締め付けることも、攻撃してくることも。
 だからサーシャは身体を暴れさせて拘束を解こうとするが、相手は岩肌をした大きな蛇……胴体の弾力は相当なもので、魔法を使えない女子の細腕では簡単に解けそうも無かった。
 それでも諦めずに暴れるのは、サーシャの生来からの気質……何でも自分の力で解決しようとしてしまう性格からか。

「おぉ……」

 そんな彼女を……いや、サーシャとミーシャを見上げながら、男子たちが感嘆の声を上げる。
 空中に持ち上げられている彼女たちは気付かないが、かなりきわどい状況だ。
 なにせ、魔王学院の制服……女子の制服のスカートは、かなり短いのである。
 ダンジョンの暗がりは彼女たちにその事実を気付けなくしてしまっているが、魔力が使えなくなったとはいえ闇を見通す瞳は健在で――彼らの視線の先では、学園でもかなり上位に入る美少女姉妹のスカートの中身が丸見えになっていた。
 特にサーシャは拘束を解くことに躍起になっていて、手足を暴れさせている。
 そうすれば黒いスカートが揺れてしまい、その下にある情熱的な赤い下着が丸見え。
 学生という身分の女子が身に着けるにはかなり派手な形状で、クロッチ部分にこそ布が当てられているが、その両サイドは紐そのもの。
 女の子にとって一番大切な部分だけが隠れたとしか言いようのない形状で、彼女が両脚を暴れさせればスカートが捲れ、その中央を飾るワンポイントリボンまで見えてしまう。
 ミーシャの方は動きこそないものの、それでも下から見上げればどこか気弱な印象を受ける彼女らしい可愛らしい純白の下着がチラチラと見えていた。
 時折吹く風にスカートが揺らされると、姉より肉付きの良い大きなお尻を包み込む純白の下着が丸見えになる。
 白一色かと思いきや、赤のワンポイントリボンが可愛らしい形状の下着だった。
 男子たちはそのことに気付きながら声を上げず魅入っており……。

「ちょっと男子! 見てないで助けなさいよっ!!」

 ついには自力でどうする事も出来ないと気付いたサーシャが、息を乱しながらそう言った。

「あ、あぁ……」

 少し残念に思いながらも、男子たちは動かなくなった岩肌の蛇を避けてネクロン姉妹の下へ……。

「うわっ!?」

 しかし、この場所から動こうとすれば蛇が威嚇するように喉を鳴らす。
 シャーッっという耳障りな音に怯えると、男子たちはそれ以上動けなくなってしまった。

「む、無理だ!」
「くっ。何とかしないと」

 おそらくこのままでも、時間が経てば学院から救助が来るだろうとサーシャは思っていた。
 これは学院から言い渡された課題であり、教師たちはこのダンジョンに生徒が居ることを理解しているのだから。
 入ったのが昼過ぎであることも考えれば、早ければ半日もしないうちに救助隊が向けられるかもしれない。
 ただ。

「こんな情けないところ、見られたくない……」

 救助隊に助けられるなんて情けない行動をもし運悪くアノスに気付かれてしまったらと思うと、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
サーシャとしては何とか自力でこの危機を脱したいという気持ちが湧く。
 想い人に格好いい所を見せたいという乙女心からか、サーシャは役に立たない男子たちに見切りをつけると、もう一度天井から生えた岩肌の蛇の拘束から逃れようと身体を暴れさせた。
 けれど、それが不味かった。
 蛇たちが目的の為に動き出した際に、最初の目標として狙われてしまう。

「へ?」

 天井から音がしたかと思えば、新しい蛇が生えてきた。
 しかも。

「なっ!? あぐっ!?」

 ソレはミーシャの眼前まで頭部を伸ばしてくると見せつけるように十字に口を開き――彼女が驚きに身を硬直させた瞬間、その首筋に噛み付いたのだ。

「サーシャ!?」

 少し離れた場所でつられていたミーシャが声を上げた。
 男子たちに攻撃しなかった蛇が、金髪の姉に噛み付いたのだ。
 銀髪の妹は動揺し、彼女も身体を暴れさせてサーシャを助けようとする――が。

「ひっ!? きゃあっ!?」

 そのミーシャの首筋にも、同じように蛇が噛み付く。
 直後――ミーシャは耳元で何かに啜られる水音を聞いた。
 肌を介して耳まで届いたその音は、岩肌の蛇が噛み付いた首筋を吸われる音だ。

「あぐっ!? っはっ!?」

 ミーシャが驚きに目を見開く。
 肉体が本能的に暴れ出すと、首筋に張り付く蛇を引き剥がそうと両手を伸ばそうとする。
 けれどそれよりも早く別の蛇が天井から生え、今度はその両腕に絡みついた。
 ミーシャは空中で腰と両手を拘束され、動かせるのは両手だけ。
 そうなれば物静かな彼女でもスカートが捲れるのも構わず両脚を暴れさせてしまう。
 男子たちの目に人形のように可憐な美少女の可愛らしい純白のショーツが丸出しとなり、同級生が襲われている状況だというのに、男子たちは一瞬その光景に目を奪われた。

「うあぁああああっ!?」

 同時に、その隣――金髪ツインテールの姉もまた、声を上げる。
 こちらはもっと切羽詰まった……悲鳴だ。

「ひっくぅうう!? っひぃぃい!?」

 大きく開いた唇からは引き攣った声が漏れ、飲み込むことが出来なかった涎がいくつも筋を作りながら顎を伝って首筋に垂れていく。
 暴れていた両足を更に大きく動かし、派手な赤色の下着が見えてしまうことも意識せず必死に身体を捩じる。
 その表情は驚愕に歪み――けれど、頬どころか耳まで真っ赤になっているのはどういうことか。
 そのままサーシャも妹と同じように両腕を別の蛇に拘束され、ネクロン姉妹は揃って空中に吊るされたまま大の字にされてしまう。
 ただただ男子たちに女の子の下着を晒しながら……。

「っひっ!? っひぃっ!?」

 その唇からは引き攣った声が漏れるだけ。
 姉妹は揃って涎を垂らし、驚愕に目を見開き……初めて感じる気持ち良さに見開かれた瞳の端からは涙が零れ落ちる。
 しばらくすると暴れていた両足からも力が抜け、女子学生のしなやかな美脚は内股に畳まれると、頼りなげに震え出す。

(なっ、なひぃ!? なにこれぇ――魔力っ、すっ、吸われ……っ!?)
(ちっ、力抜けれぇ……なっ、なんれっ、なんれこんらぁ……っ!?)

 姉妹が感じているのは、どちらも同じだ。
 噛まれた数十秒を経て、ようやく何をされているのかを自覚する。
 この蛇たちは対象に噛み付くことで魔力を吸っているのだ。
 そして今、ネクロン姉妹を襲っているのは……未経験の快楽。
 なにせ、魔力を無理矢理吸収されるというのがこれほど気持ちいいなんて――学校では教えてくれない。
 その結果、学院でも屈指の実力を持つネクロン姉妹をして未知の快感によって混乱し……別の蛇がまた天井から生えてくると、今度は逆の首筋に吸い付いた。

「あ゛ひっ!?」
「ひぁぁああああっ!?」

 直前まで暴れて抵抗の意志を示していたサーシャは一気に魔力を吸収される衝撃に脱力感と危機感を覚え、さらに四肢へ力を籠めて抵抗しようとする。
 抵抗の意志を示していなかったミーシャは今までと同じく、けれど二倍になった魔力吸収の快感に翻弄されて引き攣った悲鳴を上げる。
 どちらにも共通したのは、その快楽に耐えきれずに頭の中が真っ白になり、これまで長時間ダンジョンへ潜っていたという事もあり――本人も意識していなかった尿意を解放すると、深紅と純白のショーツを履いたまま地面に向かっておしっこを漏らしてしまったことだ。

「み、サーシャ様!?」
「ふ、二人ともなにを!?」

 それを見た男子たちは動揺した。
 なにせ、学年最上位の美少女がいきなり自分たちの目の前で声を荒げ、全身を痙攣させ、それどころか今度はおしっこを漏らしはじめたのだ。
 アンモニア臭がする黄金水は美少女姉妹の足を伝って地面に落ち、その美脚を包み赤白のニーソックスやパンプスまで濡らしてしまう。
 けれど、ネクロン姉妹はそんな気持ち悪さを感じる余裕も無い――まだ魔力吸収は続いているのだ。

「あっ、ああぁぁっ!?」
「ヒィィイぃいぃっ!?」

 サーシャもミーシャも揃って目を見開き、首筋から魔力を吸収される快感に翻弄されて何も考えられない。
 見開いた瞳がブルブルと震えて焦点が定まらず、手足の痙攣が大きくなっていく。
 まるで血液に電気を流されたかのように、体中を巡る血管を通して首筋に魔力が流れていくかのようだ。
 その本流が快楽となってしまいの全身を襲い、身体が本人の意志を離れて暴れてしまう。

「んひぃ!? っ、ひぅっ、はぃいい!?」

 最初に大きな反応を示したのはサーシャだ。
 直前まで抵抗していた彼女からの魔力吸収はミーシャよりも激しく、圧倒的な快感が全身を巡り、脳を焼く。
 想い人は居てもまだ快楽というものをあまり知らない少女ではその快感を耐えられるはずも無く、耐え方が少しも分からない快感の爆発に反応して空中で両脚がピンッと伸びた。
 しなやかな太ももに筋肉が浮くほどの激しい硬直と、見開いた瞳が瞼の奥へ裏返り、そのまま脱力すれば二度目の放尿。
 膀胱に残っていた最後の一滴まで零して真っ赤なショーツのクロッチ部分を変色させれば、金髪ツインテールの美少女はカクンとその顔を地に向ける。
 あまりにも強すぎる快感に気絶したのだ。

「ふぁあっ!? はうっ、ああぁっ、ぅぁあああっ!?」

 その隣で、今度はミーシャが声を乱した。
 首筋の左右からゆっくりと魔力を吸収される彼女の快感はミーシャが与えられたものほど激しくないが、しかしむしろこちらの方が質は悪い。
 サーシャはそれを快感と認識する前に気絶することが出来たけれど、ミーシャはこれを『気持ちいい』と無理やり自覚させられる。
 首筋で行われる魔力の吸収は甘い刺激となって身体を焼き、どうしようもない熱が首筋に残るかのよう。
 妖しい性感に翻弄される銀髪の妹は物静かであまり感情を浮かばせない瞳を驚愕に見開き、腹の奥に溜まっていく熱の存在を自覚させられる。

(こんっ、こんなぁ!? あ、アソコが濡れて……っ)

 先ほど漏らしたおしっこではない。
 腹の奥から溢れてきた愛液は、時折、この学園で初めてで来た友人を思って肉体を慰めた時に流れる快楽の象徴だ。
 魔力を吸われることに身体が性的興奮を表している――ミーシャはこの状況が悔しくなり、また情けなかった。

「っぐっ!? ぅぅうぅうぅっ!!」

 歯を食い縛り、何とかその感情を押し出そうとする。無視しようとする。

(こっ、このままじゃっ。魔力を食べられて、私っ)

 絶頂する。イってしまう。
 夜、どうしても我慢できずに自分を慰めてしまった時に感じるような、鋭い刺激が向かってくる。
 しかも今回は、それが首筋からなのだ。
 今まで性感帯だなんて認識していなかった――今日まで、普通に露にしていた場所からの性的な刺激。
 そんな場所を、こんな未知の怪物に襲われて、魔力を吸収されるという異常な状況で、絶頂してしまう。
 それだけは嫌だった。
 サーシャはこの状況を理解する暇も無く絶頂させられ、強すぎる快感に気絶してしまったが、ミーシャはむしろその状況を自覚させられながら絶頂しようとしている。
 それが嫌で震える足へ懸命に力を籠めた。
 学院指定のローファーの中で足の指を丸めると、ミーシャは必死にその刺激に耐えるために目も強く瞑る。
 けれどそれは悪手だ。
 目を閉じたことで余計に首筋からの刺激を強く感じ、それどころか口内で蠢く蛇の舌が新しい刺激となって首筋に怪しい感覚を奔らせた。
 蛇の口内には無数の小さな下があるようで、十字に開いた口の面積全部が舐められるのだ。
 数えきれないほどたくさんの舌が甘えるように首筋を舐め吸い付くたびに首筋に続々とした感覚と、魔力を無理矢理吸い取られる快感を与えてくる。

「あっ、やめっ、やめ……んぅぅうつ!」

 額と言わず全身から大量の汗を流れ、その刺激にすら甘いものを覚えてしまう。

(だめ、だめぇ……これ、こんなっ……抵抗しない、とっ)

 ミーシャは必死に両手を拘束する蛇を振りほどこうと、力を籠めた。
 けれどそれを抵抗と感じたのか――突如、首に吸い付いた蛇からの魔力吸収が強まる。
 同時に口内の小さな下の動きも激しくなれば、ミーシャは耳元で肌を舐められる音を聞いたような錯覚を覚え、そのまま頭の中が桃色の快感と舐められる水音だけに支配される。

「あっ、ぅぁあっ!? いやっ、やだ……っ! っっ、ぅゃぁあああっ!?」

 そうして我慢できなくなると、ミーシャも姉と同じように全身を強張らせて絶頂――しかも、絶頂しながらも魔力を吸収され続ける。
 絶頂で意識が薄まった影響か、首筋から吸収される魔力の量が激しくなり、それが脳を焼きそうなほどの快感となって更にミーシャを追い詰める。
 脳が『魔力を吸収されるのは気持ちいい事』だと認識してしまいそうな、通常ではありえない変態的な快感に、銀髪の妹は目を見開き、空中で全身を強張らせ……数秒ほど硬直したかと思えば、次の瞬間にはスカートの裾が揺れてしまうほど激しい痙攣を披露した。
 想い人を思って自分を慰める程度の刺激しか知らない銀髪の妹は強すぎる快感に耐えきれず、そのまま白目を剥き、数秒の後にカクンと頭が落ちる。
 気絶したのだ。
 姉妹が気絶しても蛇は首筋に吸い付いたまま――新しい蛇がまた、今度は地面から生えてきた。

「なんだコイツ!?」
「くっ!? ど、どうしたら!?」

 男子たちが動揺したのは、その蛇がかなりの巨体だったからだ。
 女二人程度なら簡単に呑み込んでしまいそうなほどで、動体のほとんどはまだ地面に埋まったまま。
 今までと同じように頭部が十字に裂けると、無数の舌を宿した内側が露になる。
 けれど、ソレは噛み付かない。
 しばらく力を溜めるように姉妹の前で動きを止めた後、身体を仰け反らせ――その口から、今までよりもずっと粘り気の強い液体を滝のように吐き出した。
 それを正面から受けた姉妹は全身が粘液まみれとなり、美しい金と銀の髪までが穢れてしまう。

「ぅ……」
「ぁ……」

 その生暖かい感覚に美人姉妹が気絶から目を覚ませば、目の前に巨大な岩肌の蛇が居る。
 驚き、身を強張らせ、食べられるのかと恐怖に震え……が。

「えっ!?」
「きゃっ、やだっ!?」

 次の瞬間、二人の視線は自分の肢体に向けられた。
 液体を浴びた影響か、着ていた制服が白煙を上げて溶け始めたのだ。
 それはかなりのスピードで、あっという間に肌が露になっていく。
 消化液の一種だろうが、肌に影響はない。
 溶けていくのは衣服だけで、二人の白い肌がだんだんと露になっていく。
 細い肩、胸元、腹部、腰……液体を浴びた影響が強い上半身から、徐々に下半身まで。

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ウメ畑 2022/11/01 09:53

リクエスト作品 『淫靡な洞窟のその奥で』 レティシア『夢の中で犯される女王』

「ふぅ……」

 その日、レティシアが執務中にため息を吐いた。
 それは普通の人がすればそれほど気にならない、執務への疲れによるものと考えるだろう。
 けれど相手はこの国の女王――魔導王国フォンティーユにおいて『最強』とも語られる、勇者の妻であり、大陸最強の魔導士である。
 そんな彼女が……建国以来、精力的に働き、この十年で一度も誰かの前で疲労感など滲ませなかった彼女がため息を吐いたことに、傍に控えていた桃色髪のメイドは僅かに表情を強張らせた。

「レティシア様、大丈夫ですか?」

 それから十数分後。
 自室の執務机に座って貴族や騎士たちから送られてきた書類に目を通し終えたレティシアに、メイドが声を掛けた。
 ちらりとその美貌を横目に見れば、確かに疲労の色が浮かんでいるように見えなくもない。
 今まではそれを巧みに隠していたのだろうと思うと、メイドは自分たちがどれだけこの女性に頼り切っていたのかと思い知らされる。
 ――女王、レティシア。
 異世界から現れた黒髪の勇者と共に魔王と戦い、そして討伐を果たした勇者の仲間。
 そして、勇者の妻として二人の娘を授かった、この大陸最強の魔導士でもある。
 まだ姫たちは年若く、一人ではとても城外へ出る事も難しい年頃。
 それでも元気いっぱいで、女王たちの目を盗んでは城内を好き放題に歩き回り、時には王都へ出てしまうこともあるほどのお転婆たち。
 ……勇者がこの世界を去って、もうすぐ十年。
 それからは白のメイドたちの助力があったとはいえ女手一つで二人の娘を育て、女王としての執務を行い、国と民の生活の復興まで行ってきたのだ。
 その疲労はどれほどか――そう思えば、女王の疲労は当然であり、むしろ今まで気にしなかった自分たちの方が間違っていたのだと思い知らされる。

「ええ、大丈夫よ。ため息を吐いたくらいで、そんなに心配しないで」

 レティシアはニコリと微笑み、深く心配させないように冗談を交えながらメイドへそう言った。
 まだ年若いハーフエルフの女王の微笑みは性器が感じられ、たしかに疲労感はあまりない。
 けれど、これまで見せなかった部下の前でのため息は疲労の証明でもある。
 桃色髪のメイドはその微笑みに安心して肩から力を抜きながらも、けれどゆっくりと首を横に振った。

「急ぎの仕事はこちらで振り分けておきますので、少しオヤスミンなられてはいかがでしょうか?」
「……貴女って、結構心配性なのね」
「ありがとうございます。どうやらレティシア様は、あまりご自分からはお休みになられないようですので」

 そう言われると、レティシアが苦笑した。
 女王という立場にある自分に進言できる――その気の強さから傍に置いているこのメイドの言葉は、自分では気付けないことを気付かせてくれる。
 だからレティシアは、彼女の言葉には常に耳を傾けるようにしていた。

「でも、貴女が言うならそうなのかもしれないわね」
「お聞き入れいただき、ありがとうございます」

 慇懃に礼をする桃色髪のメイドの姿にもう一度苦笑すると、レティシアは執務机の椅子に背を預けながらゆっくりと伸びをした。
 美しい銀色の髪が後ろに流れ、床に向かって落ちていく。
 ――女王レティシアを表現するなら、まず誰もが『白』という単語が頭に浮かぶのではないだろうか。
 眩しいほどに美しい銀色の髪に、日焼けのあと一つ無い白い肌。
 本来ならエルフという種族は森の民と呼ばれるだけあって、緑に関した衣服を好む傾向がある。
 けれどハーフであるレティシアはエルフという種族全体から迫害を受けていた過去もあり、そう言った『エルフ特有の衣装』という物をあまり好まない。
 それに、夫である勇者が褒めてくれた銀や白といった色を好み、女王となった今はそれ系統の色合いをしたドレスを好むように身に着けている。
 まるで結婚式の際に身に纏うような純白のドレスに身を包めば、銀髪と白い肌、白いドレスで白一色――そんな中、その瞳だけがまるで色付いたような深紅の色を浮かべている。
 その美貌は二人の娘がいるとは思えないほど美しく、年齢はまだ二十代。
 ハーフエルフは年齢による変化が人間よりも少なく、まだまだ十代でも通りそうな若々しさだ。
 幼さが残る美貌から視線を下げれば、そんな童顔からは想像できないほど豊満な胸が視界に映る。
 まるで大振りの果実を二つ、無理やりドレスに詰め込んだようなふくらみだ。
 下着に支えられてツンと上向いた乳房はレティシアの小顔と同じか、もしかしたらそれよりも少し大きいかもしれない。
 更に視線を下げれば、コルセットに締め付けられた細い腰。
 彼女が休息のために立ち上がれば、スラリとした美肢体がメイドの視線に映った。

「そうか……今日はもう、こんな時間なのね」

 レティシアは壁一面がガラス張りになっている執務机の背後に視線を向ければ、時間は夜。
 疲れが表面に出てしまうはずである。
 窓の外は一面が真っ暗闇で、今夜は月の明かりすらほとんど無い。
 その窓から見える王都の街並みは一様に隠れてしまい、彼女は少しだけガッカリしてしまった。
 仕事の後、夫である異世界の勇者の知識で発達したこの国を眺めるのが彼女の楽しみなのだ。
 新月が近い今夜はそれが不可能で、それがちょっとだけ哀しい。
 それを自覚すると、また小さくため息を吐いてしまう。

「今日はもう休むわね」
「そうなさってください。湯浴みの用意を……」
「いいわ。貴女たちも疲れているでしょう? 湯あみは明日の朝に行うから、今夜はもう休みなさい」
「分かりました。そのように伝えておきます」

 桃色髪のメイドはそう言うと、一礼してレティシアの自室を後にした。
 それを見送ってから、執務室の隣にある寝室へとレティシアも向かう。
 いつもなら娘たちの姿を一目でも見てから眠りにつくのだが、この日はとても眠かった。

(……さっきまでは何ともなかったのに)

 メイドが自分の疲労を指摘したことで、肉体の疲れの深さを自覚してしまったのだろうか?
 レティシアはそう思いながら、乱雑にドレスを脱いでいく。
 いつもはメイドに手伝わせているのだが、この日は何故かそれをしない。
 背にある金具を外してドレスの胸元を緩めれば、衣服の上からでも大きいと思っていた胸元が更に一回り膨らんだようにすら見えてしまう。
 締め付けられていた谷間が深くなり、そして柔らかく揺れたからだ。
 そのまま肩から徐々にドレスを脱いでいけば、純白のドレスに隠されていた白い肌が露になっていく。
 首元、肩、胸元……ドレスと同じ純白の下着の次は、二児の母とは思えないほど引き締まった見事な腹部。
 更にドレスが下がれば、ブラジャーと同じ意匠のガーターベルトとストッキング、そしてショーツ。
 可憐な花の意匠が施され、細かな細工が印象的な高級感のある下着だ。
 女王という立場に相応しい下着の露出に、けれどレティシアは少しも気にしない。
 いつもならメイドたちが着付けや片付けを手伝ってくれるのだが、今夜はそれが無かった。
 だから寝室の真ん中でドレスを脱げば、ただ、皺にならない事だけを考えてクローゼットの中へと収める。
 ……その際にクローゼット傍の姿見に、その全身が映った。
 お尻まで伸びた長い銀髪と、均整の取れた肢体。
 その見事な美肢体を包む純白の下着も、自分の印象だがとても似合っているように思える。
 …………ただ、レティシアは気付かない。
 その瞳以外の全部が白い姿の一点。
 腹部――臍の下に、奇妙な紋様が描かれていることを。
 魔王と戦った経験、そして魔導士としての才能があるならそこに不穏な気配を感じるべきなのに、けれどそれを認識できない。

「ふふ。まだまだ、私も綺麗なものね」

 結局、レティシアは自分の異変に気付かないまま自分なりに美貌を評価するだけだった。
 ドレスをクローゼットへ納めると、しかし寝間着は手に取らない。
 レティシアはガーターベルトを外す事すら億劫に感じて、下着姿のままベッドの上へ。
 夜とはいえ、まだまだ暖かい季節だ。
 それに疲労感も相まって僅かに身体が火照っているような気もする。

「ふう……最近は疲れが溜っているのかしら?」

 ここ数日、いつも夜はこんな感じのような気がした。
 少し記憶が朧気なのも、疲労によるものだろうと思う。
 レティシアはベッドへ横になると、そのまま目を瞑る。
 最後に指を動かして魔力を練り、何とか寝室の明かりを消すが……それが限界だった。
 すぐにその瞼は落ち、下着だけの姿のまま深い眠りの中へ……。





「…………ッ!!」

 その深夜。
 下着姿のレティシアが飛び起きると、目の前に人影があった。
 新月の明かりではその顔が認識できない。
 だが、女王の寝室に忍び込むような輩である。

「何者っ!!」

 そう声を荒げると、レティシアは瞬時に魔力を練って手の平に風の弾丸を生成。
 詠唱も無く、魔力を練ったのも一瞬だけ。
 けれどその手の平に作られた風の魔法は明るい場所なら空間を歪めてしまうほど濃密なもので、それが直撃すれば屈強な騎士でさえ打撲ないし骨折までしてしまうかもしれない。
 それほどまで強力な魔力が込められた風の魔法が――。

「は――ヒィィイッ!?」

 けれど、ベッドの上で上半身を起こしたままのレティシアが素っ頓狂な声を上げて全身を痙攣させれば、すぐに霧散してしまう。
 どれほど強力な魔法でも当てなければ無害であり、そしてレティシアは――。

「なっ、なっ!?」
(なにっ、これ!? なんでっ、なんれぇええっ!?)

 久しく感じていなかった性的な刺激――しかも魔力を練った瞬間、攻撃の意志を示した直後の警戒している中での刺激に、レティシアが混乱する。
 激しく疼いたのは二児の娘がいるとは思えない美肢体全体ではなく、ただ一点。
 臍の下……胎の奥にある子宮なのだ。
 夫しか刺激したことのない初々しい子宮が激しく震え、そう、これは……。

(イ、 イって!? 私っ、なんでイってるの!?)

 昔、夫から教えられた言葉を無意識に思い浮かべながら混乱する。
 魔法を使おうとしたら絶頂した。
 そんな経験など初めてで、驚きながらレティシアはベッドの上で自分に覆いかぶさろうとしている影を睨みつける。

「はなれっ――はひぃいい!?」

 もう一度、今度も風の魔法を発動しようとしたが、けれど魔力を練るだけで子宮が激しく蠢動してしまう。
 しかも二度目ともなれば快感が両脚にまで伝わり、勇者にしか見せた事のないピンと足の先まで伸ばした情けない絶頂する姿まで晒していた。
純白のストッキングに包まれた両足へ僅かに筋肉の筋まで浮かせ、腰が浮きあがるほどの激しさで――レティシアが絶頂する。
 何もされていないのに。
 何もしていないのに。

「ひっ、ぐぅうう!? な、にをっ!? 私に何をしたのっ!?」

 それでも我を失わない姿は、流石魔王を倒した英雄の一人と言えるだろう。
 レティシアは寝起きで状況を理解できず、しかも即座に二度も絶頂した混乱の中、しかし敵意を失わずに自分へ覆いかぶさる人影に強い視線を向けた。
 ズクン、ズクンと子宮が疼いているのが分かる。
 まるでお腹全体が痙攣しているかのようだ。
 その美貌を屈辱と羞恥、そして混乱に強張らせながらの言葉に――覆い被さっている影がクツクツと低い声で笑う。

「凄いな――もう十分だと思って起こしてみれば、まだ抵抗するか」
「何者っ!!」
「さあ? 名前は無い」

 それが男の声だと気が付くと、自分の不利を気付かせないようレティシアは更に鋭い視線で顔が見えない男を睨みつける。
 体勢の不利、体格の不利、腕力の不利。
 理由は分からないが、魔法が使えない状態でこの不利は……女として致命的だ。
 それを気付かせないようにレティシアが睨みつければ、男の手が自分の手に重ねられた。
 しかも、あろう事か指まで絡ませてくる。
 ……まるで、恋人たちがそうするように。
 ドクン、とレティシアの胸が高鳴る。
 それは、夫との情事を思い出してしまう他人の体温だったからだ。

「ゃ、やめて……」
「くく……随分と弱々しい声だな、女王レティシア。夫への愛は、手を握られただけで揺らいでしまう程度なのか?」
「――――ッ!!」

 その言葉と同時に、レティシアは反対の手を振り上げた。
 夜の寝室にパンッ!という乾いた音が響く。
 男の頬をレティシアが平手打ちしたのだ。
 その衝撃で男の顔が僅かに横へ向くが、けれど男は気にしていないのかまた低い声で笑う。
 そして。

「相変わらず乱暴な性格だ。これは、勇者も手を焼いたんだろうな」
「貴方に何が分かると――ォぉおおっ!?」

 レティシアの反論の途中で、逆の手が彼女の豊満な胸に乗せられた。
 そのまま純白の下着の上から力強く胸が揉まれてしまう。
 本来なら乱暴で、何の技巧も無く、ただただ痛いだけだろう――大振りの果実のように豊満な胸が瓢箪のように歪み、下着の裏地に肌が擦れてしまう乱暴な揉み方だ。
 だというのに、レティシアの表情が驚愕に歪み、その唇からは甲高い悲鳴が漏れてしまう。
 ジン、と痺れる刺激が胸から迸り、目の前が真っ白になる。
 胸に向いていた驚きに染まった視線が見開かれ、そのまま半眼となって女王の美貌を快楽に蕩けた女の貌へと変えてしまう。

「ひっ、ふぅう!? なっ、なんれっ!? やっ、っぁあああっ!?」

 そのまま男がグニグニと乱暴に胸を揉むと、そのたびにレティシアは自分が絶頂していると認識させられてしまう。
 あまりの気持ち良さに下半身が勝手に暴れ、両脚がシーツを乱しながらベッドを蹴る。

「ふぁあっ!? とめっ、とめなさぃ! そのてをぉおっ!?」

 レティシアが止めろと訴えるが、男はそのまま胸の形が変わってしまいそうな、下着の金具が歪んでしまいそうな力強さで胸を揉み続ける。
 シュッ、シュッと衣擦れの音が聞こえる。
 肌が硬い布地や金具と擦れて、赤くなっていく。
 痛いはずなのに――その痛みすら気持ちいい。
 二人の娘を育てた胸はまだ僅かに母乳を蓄えていたのか、ブラジャーの中央部分が灰色に変色していくほどだ。

「ひっ、くぅう!? とめっ、なっ、なんれっ!?」
(こんな……こんなっ!? 胸が熱いっ、溶けるっ、胸が溶けるっ!?)

 本気でそう感じたほど、気持ち良かった。
 ジンジンとした痺れは夫に揉まれた時よりもはるかに強い刺激であり、しかも一揉みだけで頭が真っ白になってしまう。
 絶頂していると自分でも気付いているが、認めたくなくて必死に拒絶の言葉を口にする。
 けれど男は手を止めず、まるで子供が玩具で遊ぶような気軽さで、そして相手の事など少しも気にしない乱暴さで揉んでくるのだ。

「くぅうううっ!?」

 レティシアはあっという間に次の絶頂へ追い込まれると、激しく腰を浮かせて痙攣した。
 自分に圧し掛かっている男を持ち上げるほどの力強さだ。
 そして、腰を浮かせたまま数秒、情けない痙攣を披露してしまう。

「ああっ、やだ――これはぁ……っ」

 しかもその際に指を絡ませた手に力を籠められると、まるで恋人同士の睦み事のような気持ちになってしまう。
 女王の細い指と、何者かも分からない男の指が握り逢えば、お互いの体温と気持ちが伝わってしまうようだ。

(あぁ……ごめんなさい、ごめんなさい、アナタ……)

 レティシアは心の中で夫に謝罪するが、

「くぅう!? まっ、なんでっ!?」
「何故って……俺がまだ満足していないからさ」

 男はレティシアの状態など少しも気にした様子も見せずにそう言うと、激しい絶頂を晒したレティシアの胸を更に激しく揉み、それどころか今度は下着のフロントホックを外してしまう。
 下着に押し込められていた巨乳が解放を喜ぶように震え、その全容を露にした。
 かなりの大きさだ。
 よく見れば顔が見えない男はかなり大柄だが、そんな男の手でも掴み切れないほど大きな胸。
 しかも柔らかさも相当で、掴めば指の合間から乳肉が漏れ出てしまうほど。
 仰向けになっていることで僅かに垂れているのは、二児の娘を育てたからだろう。
 乳首の先端から僅かだが母乳を滴らせる胸を前に、男は空いている手と顔を近付ける。

「ひっ!? やめっ!?」

 人妻で、性経験のあるレティシアは何をされるか理解し、悲鳴を上げる。
 夫である勇者もそうだった。
 男好きする童顔に不釣り合いとしか表現のしようがない豊満すぎる胸。
 男はその片方を手で乱暴に揉み、もう片方に顔を近付け――乳首に吸い付いた。

「ふぅううっ!?」
(やだ、いやぁ!? 気持ち悪いっ!? 気持ち悪いっ、のにぃ……ッ)

 けれど、感じるのはそれだけではない。
 もう十年近くも性行為を忘れていたからだに、突然与えられた快楽。
 見知らぬ男に与えられた嫌悪感よりも、頭の中が真っ白になってしまう快楽の方に意識が傾くと、レティシアはまた思考の中で謝罪の言葉を口にする。

(ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、アナタっ)

 夫としか性経験がないレティシアは、この行為がとても悪い事に思え、何度も何度も謝罪する。
 紅玉を連想させる瞳からは罪悪感からの涙が溢れ、口からは強○と共に嗚咽が漏れてしまう。
 レティシアとて女王である前に、一人の女性である。
 好いた男に対する不貞の気持ちには、どうしても涙が流れてしまった。

「んー……いい母乳だ。魔力に溢れて、力が漲ってくる」
「――ッ!! やめてっ!? それはメルティアの、マリアのものなのにっ!!」
「違うさ、レティシア。これは俺のものだ。母乳も、胸も、その身体も……全部」

 男はそう言い切ると、またレティシアの胸に顔を埋める。
 そのまま音を立てて乳首を吸えば、レティシアは腰が抜けそうなほどの快感に襲われてまた腰を浮かせるほどの激しい絶頂に至ってしまう。

「ひぁああ!? やだ、止めてっ!! もうやめてっ、やめなさぃい!!」

 それでも女王としての威厳を保ったまま強い口調で言うと、空いている手を男の背中に回した。
 そのまま服を掴んで引き剥がそうとするが、けれどそれは、まるで自分から抱きしめているようにしか見えない。
 両脚は脱力と硬直を繰り返し、メイドたちが整えてくれたシーツを激しく乱してしまうだけ。
 自分に覆いかぶさっている男を蹴る事も出来ないままガーターベルトとストッキングで飾られた美脚を暴れさせれば、数十秒ごとに腰を浮かせる激しい痙攣を披露してしまう。
 恋人同士のように指を絡めたまま不貞の絶頂を何度も披露すると、ようやく男の顔が胸から離れた。
 十数分もの間、舐めしゃぶられていた乳首がようやく解放される。
 そこには男の唾液に濡れ、痛々しいほど勃起してしまった僅かに色が濃くなった人妻の乳首が露になっている。

「はひ……ひぃ……」

 そしてレティシアは、どうして自分がこんなにも感じてしまうのか分からないまま十回以上も絶頂させられ、混乱と同様、そして堪えきれない快感の余韻で半ば白目を剥いたまま荒い呼吸を繰り返している。
 ……いつの間にか、自分から男の手を握るように指へ力を籠めていたことにも気付かないまま。

「レティシア」

 男が名前を呼ぶと、顔を近付けてくる。

(ぁ、やだ……)

 銀髪の女王はそう言って拒絶したかったが、数十秒おきの絶頂によって全身が弛緩し、抵抗する気力が湧かない。
 そのまま男と唇を触れさせると……その紅玉色の瞳から新しい涙が溢れた。

(ごめんなさい……アナタ)

 勇者への罪悪感で胸がいっぱいになる。
 ほんの十数分で女王としての、妻としての矜持を粉砕された女は泣きながらその口付けを受け入れてしまう。
 最初は触れるだけだった口付けだが、男が舌で突いてくると自分から唇を開ける。
 生暖かい他人の舌が口内へ侵入し、歯茎を舐め、自分の舌に絡んでくると、ゾクリとした震えが背筋に奔る。
 その間も指は絡ませたまま、開いた手は胸を揉み続けていた。
 気持ちが繋がり、自分でも信じられないほど敏感になった胸からの快感、そして生暖かい粘膜ごしに重なった舌からの快楽で全身どころか頭まで溶けてしまいそうだ。

「ふーっ、ふーっ」
(なに、これ……なんでこの男、私の弱い所ぉ……)

 男の舌使いは巧みというだけでは説明できないほどレティシアの弱点を熟知したものだった。
 それにレティシアの方も、もう何度もこんな経験をしているかのようにあっさりと受け入れてしまっている。
男の舌が自分の舌に触れた瞬間から、今度は自分から舌を絡ませてしまうのだ。

「ふぅっ、ふぅ……ッ!」
(いや、いやぁ……こんな事、こんなことしたくないのにっ!)

 頭ではそう思っているのに、レティシアの舌は言う事を聞かずに男の舌に絡みつき、流し込まれた唾液まで飲み込んでしまう。
 そうすると口内だけでなく喉も、胃も熱くなっていくかのようだった。
 いや、実際に熱くなっているのだ。
 身体の芯から熱くなり、汗が溢れ、全身が火照ってしまう。
 下着しか身に着けていない肢体が汗で締めれば男との密着感が増し、今更ながら男が裸であることに気が付いた。

「や、めっ……はなれ、へ……」

 口付けを交わしたまま、それでも必死に否定の言葉を口にする。
 けれどレティシアはすでに自分から舌を絡ませており、絡ませた指は男の手の甲が白くなるほど力が込められていた。
 男は敢えてそれを指摘しないままレティシアの唇から離れ……舌だけを伸ばす。
 すると、レティシアは何も言われていないのに男の舌に吸い付き、唇を窄め、陰茎へ奉仕するかのように男の舌を咥えたまま枕の上で顔を前後させてしまう。

「はっ、はぅ……やら、なんれ……こんな事、止めてぇ……」

 自分から男の舌に吸い付きながら「やめて」というのも変な話である。
 男はそんなレティシアの反応を楽しそうに眺めているのに、レティシアは屈辱を感じながら奉仕を止められない。
 そのまま何度も何度も男の舌を嘗め、しゃぶり、吸い付き――そして、その背に回している手に力を籠めると、本人は意識しないまま男の身体を抱き寄せる。
 勇者と共に魔王と戦ったレティシアの腕力は魔導士とは思えないほど強く、普通の女性よりはるかに上だ。
 そんな腕力に抱き寄せられると男の身体と美肢体が密着し、より性感が増してしまう。

「ぁ……」

 レティシアが本能に従って男を求めるようになると、男はその唇を離してしまう。
 ……レティシアの口からは寂しげな声が漏れ、直後、そんな自分の反応を恥じる。

「貴方は、何者なのですか……?」

 その声は、目覚めた直後の時と比べれば、とても弱々しい声音だった。
 ようやく女王から険が取れ、非力な女らしい声が聞けたことへ満足したように、男が嗤う。

「なに。ただのインキュバスさ――ただ、ここ最近はお前から魔力を吸っているからな。かなり力が強くなった……感謝するよ、レティシア」

 男……インキュバスと名乗った魔物はそう言うと、胸を揉んでいた手を離し――その手を背に回すと純白のショーツの上から豊満な尻を鷲掴みにした。
 たったそれだけでレティシアは「きゃっ」という少女のような声を上げ、全身を強張らせる。
 胸や口だけではない。
 まだ触られていなかったお尻も……いや、肌全体が異常に敏感になっていた。
 久しぶりの性的な快感を得た影響だけでは説明が出来ない――夫との性行為でも感じる事の無かった激しすぎる快感だ。

「いっ、インキュバス……っ」

 レティシアはその名前を知っていた。
 魔物インキュバス――魔王が生み出した男性型の淫魔。
 女性を篭絡する事のみに特化しており、戦闘能力は皆無。
 だが、こうやって一度肌を合わせてしまえば……いくらレティシアのような実力のある魔導士であっても、抵抗できない。
 女にだけ強い魔物。
 しかも、戦いではなくこういったベッドの上でだけ。

「けどっ、たった一度肌を重ねただけでっ!?」
(どうしてこんな、敏感に?)

 しかし、レティシアが言うように一度肌を重ねただけなら、レティシアなら抵抗できたはずだ。
 篭絡される前に攻撃すれば、簡単に倒せる程度の実力しかないのだから。
 だというのに……。

「ひぐぅうう!?」

 インキュバスの腕の中で、レティシアの身体が激しく痙攣した。
 その名前を聞き、相手が魔物だと分かれば手加減する必要など無いのだから。
 強力な魔法で吹き飛ばしてやろうと思ったのに――魔力を練った瞬間、腹の奥、子宮が疼いて強○的に絶頂させられてしまう。

「はっ、はっ!? なっ、なんれっ!?」
「最初もそうやって絶頂しただろうに……馬鹿だな、レティシアは」
「ばっ!? ふざけなっ!? くひぃい!?」

 侮辱の言葉に怒って魔力を噴き出せば、並みの魔族ならそれだけで吹き飛ばせるはずなのに、しかし現実にはレティシアが一方的に絶頂してしまうだけ。
 そのまま男の手が尻を揉み、絡めた指に力を籠めれば、抵抗心が湧くどころか、むしろ男の体温を受け入れて自分から指を絡めてしまう始末。
 男が顔を寄せてきた。
 口付けではない。
 ハーフエルフの人間よりも長く、エルフよりも短い耳に口を寄せ。

「気持ちいいだろう?」

 インキュバスが言うと、ゾクリと背筋が震えた。
 お尻を掴んでいる手に力が込められ、絡めた指をもっと強く握られる。
 それだけでゾクゾクとした快感が背筋を奔り、魔力を編んでいないのに腹の奥が疼いてくる。

「ぁ、やだ……だめ、これだめ……だめっ」

 レティシアはインキュバスを見ず、ベッドの天蓋を見上げながらそう呟く。
 ゾクゾクとした疼きがどんどん大きくなっていく。
 それを堪えようと全身を強張らせる。

「ほら、絶頂しろ」

 ……ハーフエルフの女王の耳に、インキュバスの低い声が響く。
 もう、夫の顔も思い出せなかった。
 頭の中が桃色に染まり、腹の奥の疼きがさらに強くなり、お尻を掴んでいる男の手のぬくもりを感じ、絡めた指の硬さを実感してしまう。

「絶頂しろ、レティシア」
「ぁ……あぁ……」

 そう呟かれた。
 男の低い声が頭の中で反響すると、レティシアはたったそれだけの刺激で絶頂してしまった。
 ブルリと全身が震え、腰から力が抜け……あろう事か、インキュバスの腹の下でおしっこを漏らしてしまう。
 絶頂の脱力感と放尿の解放感に腰から下だけが痙攣し、ショーツと、お尻の下にあるシーツが濡れていく感覚がまるで現実では無いかのようだ。

「よくできました」

 インキュバスはそう言うと、レティシアの頭を撫でた。
 美しい銀色の髪を梳かすように撫で、耳にふっと息を吐く。

「な、なんでぇ……」

 たったそれだけなのに、腰が抜けるほど気持ちが良い。
 レティシアは自分の状態が理解できないまま子供のように頭を撫でられる――その快感に、酔いしれてしまう。
 重ねた手が、絡めた指が、触れあう肌が……ただそれだけで気持ちが良い。
 訳が分からない。

(こんな、こんなのはじめて……)

 どうしてこうなったのか。
 何故こうなったのか。
 何も分からない。
 理解できない。
 分からないのに、ただただ気持ちが良い――まるで身体中……いや、気持ちの中まで見透かされ、開発されてしまっているようだった。
 すでに自分の弱点の全部を丸裸にされているような心地良さに、レティシアの頭の中が真っ白になっていく。

「さて、と……相変わらず、簡単に股を開くな、レティシアは。仕事が忙しいようだし、欲求不満なんだろうな」
「ち、ちがう……」

 侮辱の言葉に反論するが、けれど蔑まれる言葉が心地好い。
 声が子宮に響くような感じがした。
 ゾクゾクと腹の奥が震え、何もされていないのに陰部からは愛液がにじみ出てしまう。
 おしっこで透けて見えるほどまで変色した純白のだったショーツの下で、頭髪と同じ銀色の陰毛に飾られた陰部がすでにうっすらと口を開いている。
 インキュバスがレティシアの美肢体から身体を離すと――レティシアは何かを予感して、その表情を強張らせた。
 口付けや胸、尻への刺激だけで与えられた連続絶頂で力が入らない身体に鞭打って、必死の形相でベッドの上を這って逃げようとする。
 ……インキュバスへ背を向けて。

「どこへ行こうとしてるんだい、レティシア?」
「ゃ、やだっ!? 誰かっ、だれかある!?」

 レティシアがなけなしの力で声を荒げたが、反応は無い。
 いつもなら資質の外に護衛の騎士が控えているはずなのに。

「言っただろう? 君の魔力のおかげで、俺の力は強くなったって。今なら、男相手でも眠らせることが出来る程度には、強くなったのさ」

 インキュバスはそう言うと、下着姿のまま背を向けて逃げようとするレティシアの頭を掴んだ。
 そのまま乱暴に引っ張ると……あろう事か、先ほど嬉しくて漏らしてしまったおしっこに濡れたシーツの上に、女王の美貌を押し付ける。
 自分のおしっこによる生暖かい濡れた感触に、レティシアが表情を歪ませた。

「いや、いやぁっ!!」
「いつもその反応だな――生娘ではないだろうに……夫へ操を立てているつもりなんだな」
「ふざけないでっ! いっ、今ならっ、今なら見逃してあげる――見逃すからっ!」
「その言葉もいつも通りだ」

 レティシアは今までの無抵抗が嘘のように身体を暴れさせた。
 当然だ。
 女として、人妻としての本能が訴えている。
 このインキュバスは自分を○すつもりなのだと。
 だというのに――自分のおしっこに濡れたシーツに顔を押し付けられ、後ろに向かってお尻を突き出すような格好なのに、レティシアはそんな屈辱に性的な快感を覚えてしまう。
 腹の奥の疼きがますます強くなり、もう一秒だって我慢できない――最強の魔導士レティシアでも認識できない、インキュバスに刻まれた刻印。
 “初めて犯された十日前、無防備に眠っている間に、一方的に刻まれてしまった”のだ。
 それにより、レティシアはもうどう足掻いてもこのインキュバスには勝てない。
 大陸最強の魔導士と十日前まではただの何処にでも居るような魔物の一匹でしかなかったインキュバス。
 その魂が繋がり、そしてレティシアはこのインキュバスが望むときに発情し、肉体に変調をきたし、逆らえない。
 今は一方的にインキュバスへ魔力を供給し、その際の魔力吸収の快楽に絶頂してしまう程度だが。
 いずれ、精神もこのインキュバスへ従うようになるだろう。
 臍の下にある子宮の形に浮かび上がった紋様が淡く輝くと、それにあわせてインキュバスは自分の魔力がまた一段、強くなったのを自覚した。

「やめてっ!! お願い、それだけはっ!!」
「そんなに嫌なのか?」
「あっ、あっ、当たり前ですっ!!」

 レティシアは自分のおしっこで顔を汚す屈辱すら忘れて、荒い言葉を向ける。
 当然だ。
 好みは勇者である夫に捧げ、そして二人の娘に恵まれる幸運を知ったのだ。
 その身体を魔物なんかに穢されるなど、耐えられない。

「おっ、おねがい……ああっ、いや、いやぁあっ!!」

 けれど、インキュバスはそんなレティシアの悲鳴に興奮し、陰茎を勃起させると硬くなったソレを下着越しにレティシアの豊満な尻に擦り付けた。
 そのおぞましい刺激に女王は悲鳴を上げ、けれど胎の奥は自分に刻まれた紋様の主の熱に興奮してしまう。
 魔物に子供を作る能力は無い。
 人と魔物では、子供を作れない。
 そうと知っていても、レティシアは怖い。

「いやあぁああ!? だれかっ、だれかっ!!」

 助けを求めるが、誰も来ない。
 この十日間でレティシアの魔力を得たインキュバスによって、王城内の全員が眠ってしまっていた。

「ははは。無駄さ。無駄、無駄――」
「くぅうううっ!!!!」

 ならばと、レティシアは最後の力を振り絞って何とか可能な限り背後を向き――。

「こっの――ぉぉおほぉおおッ!?」
(耐えるっ、耐える耐える耐える――たえるぅううぅう!!)

 渾身の力で魔力を練り、全力で全身を力ませる。
 この夜で一番濃い魔力を練ったことで下腹部の紋様が激しく反応し、その輝きは新月の輝きで青く染まった夜闇の中を照らしてしまうほど。
 それに合わせてレティシアに子宮どころか脳天まで焼き尽くしそうな快感が襲い掛かった。
 一瞬で目の前が真っ白になり、身体が勝手に絶頂し、腰の痙攣が激しくなる。
 尻肉に感じるインキュバスの陰茎に自分から腰を押し付け、まるで男の精をねだるような大胆な腰の動きを披露してしまう。
 ――それでも必死にレティシアは歯を食い縛った。
 瞳から涙を流し、涎を垂らし、汗を吹きながら。
 それでも背後に向けた手に魔力を集め、インキュバスを攻撃しようとする。

「ほぉぉおぉおお!? はぎぃぃいいいいぃいい!?」
(だめっ、がまんっ、がまんん!? がま――むりぃいいっ!?)

 ――が。
 インキュバスはその手首を掴むと、そのままベッドに押し付けた。
 魔法を放つことだけを考えていたレティシアの抵抗はほとんど無く、放たれた魔法がベッドの一部を傷付ける……事もない。
 一応、危険だからと対応したけれど、無駄だった。
 魔法を放つ瞬間にレティシアはこの夜一番の激しい絶頂に襲われ、何もしていない股間から激しく潮を噴くと全身を壊れてしまったように痙攣させてしまう。
 そのまま何度も何度も潮を噴き、勢いがなくなっても身体の痙攣はしばらく続いてしまうほど。
 激しすぎる絶頂はレティシアの意識を吹き飛ばし……金髪の女王は、気絶していた。
 自分のおしっこで濡れたシーツに顔を向けたまま、白目を剥いてしまっている。
 あまりにも強すぎる快感で、開いたままの唇からは舌が伸び、可憐な小鼻からは鼻水を垂らす無様を晒し――。

「ぁ、ぇ……」
「さて。それじゃあ、今夜も魔力を貰うよ、レティシア。その後はまた、記憶を消してあげる……そして、また明日もよろしくな」

 ――インキュバスはそう言うと、汗と愛液、そしておしっこで濡れた汚い純白だったショーツを乱暴に太ももの半ばまで下げた。
 ショーツのゴムの後が残る大きな白いお尻、銀色の陰毛に飾られた陰部、そして女として致命的に恥ずかしい肛門まで晒してしまうが、レティシアは目を覚まさない。
 そのまま乱暴に犯されるが、気を失っているレティシアは人形のように揺れながら抵抗せず……朝まで犯されるのだった。






「ん……ん~……」

 翌朝。
 いつもより早い時間に、レティシアは目を覚ました。
 ベッドから起きると、身体の調子を確かめる。

「少し、身体が重いわね……疲れが溜っているのかしら?」

 そう呟くだけで、それ以外に身体の異変は感じない。
 昨晩の記憶を失った彼女はベッドから起き上がる。
 シーツや下着が濡れていたけれど、彼女はそれすら認識しないまま着替えるためにクローゼットの前まで移動した。

「今日はどれを着ようかしら」

 ふと、クローゼットの傍にある姿見へ映った自分の肢体を見る。
 清楚な色合いながらどこか煽情的な意匠が目立つ、大人びた純白の下着に包まれた美肢体だ。
 二人の娘を産んだとはとても思えない豊満な肢体を汗や愛液、おしっこで濡らしたまま……けれどそれを認識できない。
 当然――その下腹部に刻まれた、子宮の形に浮かび上がった卑猥な紋様にも。

「……やっぱり、汗を掻いたままだと気持ち悪いわね。朝に湯浴みをすると伝えていたけれど、準備は出来ているかしら?」

 レティシアは自分の異変に気付かない。
 十日前に魔力を奪われてしまった失態も忘れ、大陸最強の魔導士はこれからも夜になればインキュバスに魔力を奪われ続けることになることに今日も気付かないまま、平穏な生活を続けていく。

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ウメ畑 2022/11/01 09:50

リクエスト作品 『淫靡な洞窟のその奥で』 マリアベル『胸凌○』本番なし

「くヒィイイっ!?」

 室内に、女性の甲高い悲鳴が響いていた。
 けれどそれは、苦痛ではない。
 ……快楽に甘く溶けた嬌声だ。
 その証拠に、甲高い悲鳴が途切れた後は荒い呼吸が繰り返され、その吐息は今にも火が点いてしまいそうなほど熱いもの。
 もしこの声を聞いたものが居たら、これが『勇者』と呼ばれる存在だとは誰も思わないだろう。
 まるで盛った犬猫のように激しく、しかも少しの間も我慢できていない。
 これならまだ娼館に勤める娼婦のほうが人間らしい嬌声を上げるのではないだろうか。
 そう考えてしまいそうなほど発情した嬌声を上げながら、声の主――黒髪の女勇者、マリアベルは額から流れる汗で美貌を濡らして、すぐ目の前に在る姿見の鏡に映る自分の表情を見てしまう。
 そこには快楽で真っ赤に染まった……先代の勇者である父に劣らぬ勇者であるために繕っていた凛とした美貌とは真逆の、快楽に蕩けた女の貌が映っていた。

(ち、がう……ちがう、こんなのちがう……)
「ぅ、ぁぁ……」

 さくらは言葉にして否定したかったが、数時間の凌○によって喉が枯れ、声を出す事すら辛い状態だ。
 しかも、彼女を襲うスライムはすでに弱点である『核』を失い、死に体の状態……のはずなのに。
 勇者の体液を吸って延命するソレは、すでに数時間もの時間を生き続けている。
 けれど、勇者の体液を元に粘液を増やす事も出来ないのだろう。
 その質量は彼女を襲った時のまま、服に浸透し、上半身を覆う程度。
 スライムが浸透した服は拘束具のようにマリアベルの肢体を締め付け、そして残った粘液では少女のように貧相な胸を覆う程度でしかない。
 ……そのはずなのに。

「ふぁぁ……も、やめ……おっぱいばっかりぃ……っ」
(いったい、いったい何時までっ、こんなっ)

 マリアベルがそう思うのも無理はなかった。
 彼女がスライムの有無を確認するために入った物置小屋で不意を突かれてから、すでに数時間。
 スライムはマリアベルの胸だけを嬲り続けているのだ。
 本人はそれほど敏感とは思っていなかった可愛らしい貧乳だが、けれど数時間もずっと嬲られ続けては嫌でも意識してしまう。
 しかもスライムには取り込んだ人間たちの知識があり、その一つ――マリアベルは知らない、胸の側面にある性感帯を開発されてしまった。
 スペンス乳腺と呼ばれるその場所は、この数時間でマリアベルにとって最悪の弱点へと変貌してしまっている。
 服に浸透した粘液の所為で脇を絞める事も出来ないまま、快楽にとても弱くなった胸を覆うスライムが動き出すと、マリアベルは無力な少女のように眉を「ハ」の字へと変え不安そうな表情になった。

「もうやめて――おねがい、もう……」

 無駄だと分かっていても、弱気な声が口から漏れてしまう。
 そして――スライムが動き出した。
 ゆっくりと、ねっとりと。
 その粘液をマリアベルの胸へ浸透させるように……薄汚れた黒に近い灰色の粘液の舌で、僅かなふくらみしかないマリアベルの胸が勝手に動く。
 粘液が揉んでいるのだ。
 スライムはその変幻自在な粘液でマリアベルの薄い胸を包み、その全体を刺激してくる。

「ぅぁあ……ふ、ぅ、ぁぁ……っ」
(だ、めぇ。声、出ちゃう……とめられない、っ)

 少しも我慢することが出来ずに、マリアベルの可憐な唇から娼婦のような快楽に蕩けた声が漏れる。
 それだけでも恥ずかしいのに、マリアベルの下半身は胸を揉まれただけでガクガクと痙攣してしまう。
 あまりの気持ち良さで簡単に浅い絶頂へと至り、頭の中が真っ白になってしまいそうだ。
 すぐに大きな絶頂で意識を浚われてしまいそうになるが、それだけは嫌だった。
 必死に意識を繋ぎ止め、数少ない自由に動かせる場所……拳を強く握って、手の平に爪を喰い込ませる痛みで意識を保つ。
 ……それでも限界があり、マリアベルは徐々に自分が追い詰められていることを自覚する。

「は、あっ、はひ……や、やめ……てっ!」
(止まらない……止まって、くれなぃ……っ)

 必死に制止の声を漏らすが、当然だがスライムは止まらない。
 粘液の下で薄い胸が形を変えていくのが見える。
 まるで人間の手に揉まれるように五つの窪みを作りながらギュッと握られたかと思えば、まるで子供がおもちゃで遊ぶように小指の先ほどくらいある太さの乳首だけが激しく左右に弾かれる。
 時には乳輪ごと乳首を揉みしだき、時には見ているほうも痛みを感じてしまいそうなほど激しく揉みしだかれ――そして。

「ふぁあああ!? それだめっ、そこだめぇえ!?」

 服に拘束されて少しも動けないまま、けれど口からは切羽詰まった悲鳴が漏れた。
 胸を覆うスライムがその側面――薄い胸の横にあるスペンス乳腺を刺激し始めたのだ。
 粘液越しにも分かるほど乳肉の側面が窪み、その綺麗な形を整えるように円を描きながら刺激するだけ。
 気持ち良さよりも脇の近くを刺激されるくすぐったさの方が強そうだが、けれどマリアベルは違う。
 必死に我慢しようと強張っていた美貌から強張りが抜け、快楽一色の表情へと変わっていく。
 腰の震えが大きくなる。
 情けない前後運動を披露しながら、マリアベルのすらりとした肢体が強張り、徐々にその動きが激しくなっていく。
我慢できなかったのか最後に激しく震えると、握り締めていた拳から力が抜けた。

「はっ、はひ……っ、はあ――――と、とまっ……」

 明らかに絶頂したというのに粘液が浸透した服に支えられて倒れる事も許されず、それに……スライムは止まらない。
 マリアベルが嫌がる、この数時間で開発されたスペンス乳腺は彼女の薄い胸の中で最大の性感帯となってしまっている。
 少し刺激されただけでも腰が震え、服の拘束が無かったらすでに床へ尻餅をついてさらなる情けない姿を晒していただろう。
 それほどまでに敏感な場所だと、マリアベルは知らなかった。
 自分の胸にこんな弱点があるなど想像もしていなかった。
 しかも、スライムはそこを重点的に責めれば簡単に女勇者を絶頂させる事だと気付き、少しでも彼女が抵抗しようとすればすぐにスペンス乳腺を刺激するようになる。
 学習したのだ。
 マリアベルを無力化する方法を。
 女を快楽で無力化するなど、数時間前のマリアベルなら嫌悪感と共にスライムを微塵に斬り刻んでいたかもしれない。
 けれど今は。

「はぁぁ……やめ、もうそこは……っ。やめ、てぇっ」
(また、また胸がっ。私のおっぱいが、変にされちゃうっ)

 変になる。
 正にその表現の通りだ。
 マリアベルは、自分の胸が溶けて消えてしまうのではと思ってしまうほどの気持ち良さに襲われている。
 強弱の有る責めで刺激され続けた胸はもう全体が異常なほど敏感で、乳首も、乳輪も、スペンス乳腺だって刺激された瞬間に浅い絶頂に全身が震えてしまう。
 胸全体の感度が増し、まるで自分の胸が無くなってしまったような感じだった。
 それに加えて、スライムの手管。
 人間には二本の腕と十本の指しかないけれど、スライムの粘液はその常識すら超えてくる。
 五本指に見立てた粘液が胸を揉みながら、別の二本でも乳輪を揉み、追加の日本で乳首を扱き、大きな塊のような粘液でスペンス乳腺を刺激する。
 時には十本前後の異なる指による刺激で薄い胸全体を刺激されると、偶に王都で利用していたマッサージを思い出してしまう。
 人体の急所を的確に刺激して肉体の疲労を癒し、凝りや張りを和らげる効果がある施術だ。
 けれどスライムの行為は胸に限定され、しかも人が行う施術よりもずっと複雑で、繊細で、力強く……なにより、性感にのみ特化している。
 そんな刺激を与えられると、マリアベルは胸の感度がさらに上がったような気がして、また腰をガクガクと震わせてしまった。
 それどころか履いたままの黒いズボンの股間部分の色が濃くなってしまう。
 すでに何度も、何十回も絶頂したことでショーツの吸水力は限界を超え、絶頂の際に潮を噴けばそのままズボンを濡らしてしまう状態だ。
 まるでお漏らしをしてしまったようにズボンの内股部分を濡らしてしまった事実を、恥ずかしいと思う余裕も無い。
 物置部屋にあった姿見に美貌を快楽に蕩けさせ、小刻みな痙攣を止められず、ズボンを濡らすという情けない姿を映しながら、それでもマリアベルは少しでも嬌声を堪えようと歯を食い縛る。

「はひぃ、ひぃ……ま、まけなぃ……こんな、ことでぇ……」
(お姉様、カーラ……)

 脳裏に最愛の姉と親しい友人の顔を思い出し、絶対に生きて帰るのだと意識を強く持つ。
 そうする事で快楽に屈しようのとする精神を奮い立たせると、マリアベルは涙に濡れた瞳の奥に意識を取り戻し、必死になって四肢に力を籠めた。
 まだ逃げる気力は失われていない。
 ――――が。

「ふぐぅうう!?」

 歯を食い縛っていたことで、なんとも間抜けとしか言いようのない声が漏れた。
 鏡の中で、マリアベルの乳首が乱暴に引っ張られ、捏ね回され、そして激しく前後に扱かれたのだ。
 突然の強い刺激。
 しかも痛みと快楽がない交ぜになった「痛気持ちいい」刺激で目の前が真っ白になり、次の瞬間にはまたズボンのシミが広がっていく。
 潮を噴いただけではない。
 胸だけとはいえ、数時間の刺激で敏感になっていた性感帯での絶頂により下半身から力が抜けてしまったのだ。
 それによって膣穴だけでなく尿道まで緩み、溜まっていたおしっこが漏れだしてしまった。
 量はそれほどでもなかったが、けれどおしっこはおしっこだ。
 物置小屋に濃いアンモニア臭が広がり、マリアベルの鼻孔にも届くほど。
 下半身が生暖かい粘液を感じ、自分が漏らしてしまったことを嫌でも自覚させられる。
 そのまま溢れたおしっこは両脚とズボンを濡らしながら足元まで垂れ、ブーツの中へと流れ込んでいく。
 手と同じく、粘液の拘束から逃れていた足をブーツの中で動かせば、気持ち悪い水の感触が溜まっていくのが分かった。

「う、ぁぁ……」
(私、何てことを……)

 勇者でありながら、成人している女性でありながら、二十を超えた年齢だというのに漏らしてしまった屈辱を思いながら、けれど思考の大半は一瞬だけ乱暴にされた乳首へと向いてしまう。
 引っ張られ、扱かれ、捏ねられた乳首。
 ほんの一瞬の刺激だったけれど、その刺激はまだ残っていて乳首がジンジンと痺れている。
 その余韻だけでマリアベルは小さな痙攣を繰り返し――そして。

「ぁ、え……」

 引っ張られたことで僅かに伸びた乳首の先端に、刺激があった。
 マリアベルはまた乳首を刺激されるのだと思い、動揺しながらも覚悟を硬くする。

(も、もう我慢する……絶対、次は……っ)

 それでもマリアベルには光明があった。
 様々な刺激を与えられ、全部を経験したと思う。
 ならば、後は我慢するだけだと。耐えるだけだと。
 相手は『核』を失ったスライム。
 いずれ死ぬ相手なのだから、それまで耐えれば自分は勝つのだ。
 結末が分かっているのなら、その時まで我慢すればいい。
 しかし。

「あ゛っ――え、えっ!?」

 しかし、次にスライムが与えてきた刺激は、これまでとは全く異なるものだった。
 胸の先端……今まで意識したことも無かった場所。
 母親にならなければ、一生意識しないかもしれない場所。
 乳首の先端にある乳腺……その僅かな隙間に、スライムの粘液が侵入してきたのだ。
 乳首は粘液に包まれたまま、上下左右に動かされる。
 動機が早くなり、乳首の感度が増し、どうしても意識がそこへ集中してしまう。
マリアベルの胸を包み込んでいる粘液が乳首を扱き始めると、ゾクゾクと背筋が震え、乳首はもっとイジメてくれと叫ぶように感度を増していく。
 乳房全体に粘液が絡みつき、少し動くだけでニチャニチャと粘り気のある音を立てながら、胸全体を撫でられる。
 薄い胸を少しでも強調するように粘液が触手状になって根元を締め付けると、マリアベルの可愛らしい貧相な胸が僅かに前へと突き出した。
 そうして、強調された乳首。
 いつもより僅かに大きくなったように見える胸に支えられた、ツンと勃起した乳首。
 その先端にある窪み。
 乳腺から……体内に何かが入ってくる。

「んぅ……あ、はぁ……」

 けれど、嫌悪感より先に快楽を覚えてしまった女勇者は唇から艶やかな声を漏らし、その刺激へ感じ入るような熱い吐息を零してしまう。
 一瞬だけ未知の快感に瞳が揺れ、ぼう、と姿見に映った自分の顔を見てしまった。
 そこには快楽に負けた女の貌があり――それに気付くと、「ちがう」と小さく声に出して否定し、瞳に僅かだが理性の光が戻った。

「あ、ぁ……なに、して……私の身体に、なにを……」

 マリアベルは疑問を言葉にするが、返事はない。
 乳腺の入り口に入った粘液が少しずつ、けれど止まることなくマリアベルの胸の奥まで侵入してくるのが、感触で分かった。
 見えないのに、身体の中に何か異物が入り込んでくる。
 それなのに……と、マリアベルは怯えた。
 自分の胎内にスライムの粘液が入り込んでくる……恐怖心を覚えなければいけないのに、そんな事よりも気持ちが良い。
 気持ち悪いはずなのに、痛みが全くない。
 その粘液は液体であることを生かして乳腺を通り、女勇者の乳房を内側から犯そうとしている。

「あぁっ! だめ、おねがいだめ……それは、それだけは……っ」
(やだ……なにこれ、なにこれ!? 怖い……助けて、お姉様、お母様ッ)

 マリアベルは未知の刺激に怯えていた。
 今まで性感帯だと認識していなかった胸を揉まれただけで絶頂させられる。
 それも異常だが、けれどまだ常識の範囲だ。
 けれどこれは違う。
 胸を犯される。
 揉まれるとかではなく、乳腺の中を侵されている。

「いや、いやぁっ!!」

 恐怖心に負けたマリアベルは、身体を揺すって胸から粘液を振り落とそうとした。
 けれど無理だ。
 今までだって不可能だったことを、この場でいきなり達成することなど絶対に無理である。

「ひぃい!? やだ、やだぁ!? なかっ、胸の中でっ、おっぱいの中で何か――」
(う、動いてる!? おっぱいの中で、スライムが動いてる!?)

 マリアベルはそう感じた。
 粘液が奥へ進むたびに続々と形容しがたい感覚が襲ってくる。
 それは胸全体へと浸透していき、今でも怖いほど敏感だと思っていた胸が、さらに敏感になっていくのが分かる。
 乳肉の表面だけではない。
 内側からも変えられていく――それはもう、興奮や快楽では隠しようのない、恐怖だ。

「いやぁあああ!? 止まって、動かないで!? 私の中に入ってこないでぇええっ!?」

 マリアベルは泣きながら叫んだ。
 勇者としての対面などどこにもない。
 犯される女の、恐怖に歪んだ声。

(どうなっているの!? なんなの、なんなのよこれ!?)

 恐怖に犯された頭で、マリアベルが自問する。
 当然だが、いくら勇者として優れた能力を持っていても、マリアベルには乳肉の中を透視する能力などない。
 今行われている行為の全部は乳肉の内側で行われており、ただ粘液が胸全体に広がっていくという事しか分からない。
 それが――異常なのだ。

「やだ、やだ!? なにこれ――私の中に入ってこないでっ!!」

 マリアベルは叫んだけれど、スライムは止まらない。
 まだまだ彼女の薄い胸の中へと粘液を侵入させていくと、ついには男の手で簡単に覆い隠せる程度しかなかった女勇者の胸が、僅かに膨らみ始めた。
 肌が張り、胸が膨らみ、その圧迫感に苦しくなってくる。
 けれど、そんなものよりもずっと、ずっと……気持ちが良い。
 乳首やスペンス乳腺、表面からの刺激で敏感になっていた乳房は内側からの刺激にもしっかりと快感を覚えるようになっており、マリアベルは『乳房の中を犯される』という異常な状況でも気持ち良くなってしまう。
 しかも胸の中の粘液たちはゾワゾワと蠢き出し、その刺激でマリアベルのすらりとした美肢体がビクンと跳ねた。
 粘液は乳腺全体へ広がるように枝分かれを起こして、胸全体へと広がっていくのだ。

「あっ、あっ、あっ!?」
(う、動いてる!? 胸の中でっ!? 胸の中がっ!?)

 今まで侵入されるだけだった乳房の刺激が、今度は満遍なく乳房全体へと生き渡る。
 乳腺の全部を丹念に刺激されると、それこそ言葉に出来ない、常識ではありえない、まるで乳腺の全部を丹念に開かれていくようだ。
 心臓まで届きそうなほどの激しい刺激にマリアベルは目を見開き―――。

「ふぁあああっ!!」

 ――絶叫した。
 その拍子に流れていた汗や涎、鼻水まで噴き出し、その美貌を穢してしまう。
 けれど、それで終わりではないのだ。

「ひぃいい!? なにこれ、なにこれぇええええ!?」

 粘液は乳腺の侵略を完全に終了する。
 可能な範囲でマリアベルの薄い胸全体へと生き渡ると、その乳房はもうマリアベルのモノではなくなってしまう。
 快楽によってスライムに支配され、マリアベルにはもう抵抗できない。
 なにせ相手は自分の体内に存在し、攻撃する手段が無いのだ。

「ぁ、ぁ……」

 けれど、そんなことを考える余裕も無くマリアベルが声を震わせる。
 胸への侵入だけでこんなにも気持ちいいのだ。
 これが本格的に動き出したらどうなるか――それを考えるだけで恐ろしい。
 マリアベルはスライムを刺激したくない一心で何とか身体の震えを止めようとするが、けれどそんなことは無意味だ。
 スライムにとって大切な母体に快楽を与え、子を宿しやすくするというのは本能であり使命である。
 ――だから、胸全体に行き渡ると、スライムは数秒の後に蠢動を開始した。
   胸が内側から圧迫され、脳天まで貫くほどの衝撃にマリアベルが全身を痙攣させる。

「ひっ!? おっ、おっ、ぉぉおおほぉおおおおっ!?」

 瞬間、女勇者は激しく全身を痙攣させ、ズボンの股間部分が僅かに持ち上がる勢いで潮を噴いた。
 股間からシャーという水音が聞こえるほどの激しさだ。
 マリアベルは何が起きたのか分からないまま目を見開き、天を仰ぎ見、けれど視界には何も映らない。
 自分の状況を考える余裕など無く、全身を拘束されて動けない今のマリアベルには一方的に与えられる刺激を受け止める以外に選択肢がないのだ。

「やっ、やめっ!? これはっ、これだけはっ!?」

 体内から犯されるような刺激に、マリアベルが堪らず制止の声を上げる。
 けれど、言葉を理解しないスライムは止まらない。
 そのまま乳腺全体に広がった粘液を修道させるだけでなく、今度は乳首から侵入している粘液を引き抜き始めた。
 乳首を刺激されるどころか、まるで性器のように乳腺の入り口が凌○されるような感覚だ。
 胸を引っ張り抜かれるような刺激に、マリアベルは可能な範囲で背を仰け反らせると、その薄い胸を差し出すように胸を前へと突き出した。

「ひぃいいいいっ!? ひゃめっ!? ぬけっ、ぬけるぅうう!?」
(こんなっ、こんなぁあああ!?)

 頭の中が真っ白になっていく。
 胸から何かが飛び出していくのだ。
 乳首を扱かれるだけでも絶頂してしまうほど気持ち良かったのに、そんなものなど比べ物にならないほど気持ちいい。
 頭の中が真っ白になって、乳首の先が爆発したように気持ち良くて、何も考えられなくなってマリアベルはただただ胸からの刺激を受け入れて身体を痙攣させるだけ。
 我慢など最初から無理だった。
 未知の刺激に翻弄される女勇者は我慢どころか抵抗の声すら上げる事が出来ず、ただただ懇願することしかできなくなる。

「あひぃい!? 出ていって、出てい――ぁあああっ!? また入ってぇえええ!?」

 乳首近辺の粘液が外に出ると、また新しい粘液が侵入し始めた。
 本当に、文字通り乳首が性器に作り変えられてしまったようだった。
 侵入してくるのは糸のように細い粘液なのに、けれどそこから与えられる刺激は脳を焼き尽くしてしまいそうなほど気持ちいい。
 マリアベルは胸からの刺激だけで何度も絶頂し、耐えられなくなると潮かおしっこを噴き、何度も何度も絶頂させられる。
 触れられても居ない陰部からはとめどなく愛液を溢れさせ、ズボンの下では何もされていない黒色のショーツが濡れて張り付き、気持ち悪い。
 けれど、そんな事などもう考える事も出来なかった。

「くぁあああっ!? ほぉおっ!? また出てぇええ!? はいってぇぇっ?!」

 翻弄される。
 少し力を籠めれば簡単に千切れてしまいそうな糸のように細い粘液に、スライムを殺し尽くそうとしていた女勇者が翻弄されている。
 その情けない姿を姿見に映したまま、黒髪の女勇者はまた絶頂した。
 胸――乳首だけの刺激で絶頂し、全身を痙攣させ、足元に愛液とおしっこの水溜りを作りながら、それでも乳首への刺激は止まらない。

「ひぐぅうう!? やめぇええ!? 遊ぶなっ、わたしのむねで遊ぶなぁアアアッ!!!!」

 マリアベルが叫ぶけれど、スライムは止まらない。
 それどころか、それを抵抗ととったのか、ただ単に彼女が言う通りに遊び感覚なのか。
 胸内部への凌○に加え、今度はその表面からも刺激される。
 つまり、乳腺に広がった粘液を蠢動させながら、今度は力強く胸を揉み始めたのだ。

「ほおぉおお!? だめええええっ!?」
(むねっ、おっぱいっ!? わたしのおっぱいがへんになる、こわれるっ!?)

 マリアベルは本気でそう思った。
 内と外からの刺激で、今までが限界だと思っていた胸の感度が更に上昇したようだった。
 胸が溶け、無くなり、その全部が『気持ちいいもの』に変わってしまったようにも感じる。
 胸を揉まれるたびに外圧と内圧によって感度が際限なく上昇し、乳首を捏ねられながら粘液の意図を引き抜かれると数倍の快感となって脳を焼く。
 いくら勇者として肉体的に優れているマリアベルでも、性感を中心とした感覚ばかりは鍛えようがない。
 どれだけ強靭な精神力を持っていようと、限界はあるのだ。
 休みなく、延々と快楽を与えられては、いずれその限界は訪れる。
 凌○が始まってこれまで、休みなく絶頂に晒されていたマリアベルも例外ではなく――。

「……あえ……っ」

 数十回目の絶頂の後、突然その意識を失った。
 脳が快楽に耐えられず、気絶したのだ。
 糸が切れたようにその美貌がカクンと落ち、美しい黒色の前髪がその美貌の一部を隠す。
 ――が。

「ぁ……おっ……ぉっ……」

 その下から聞こえるのは、気絶してもやむことのない刺激に反応する低い声。
 マリアベルは気絶したまま胸を揉まれ、乳腺を刺激され、そして。

「ぉ゛っ……」

 数秒の後、低い嬌声と共に身体が大きく痙攣した。
 気絶していても肉体の反応は顕著で、絶頂する事も出来る。
 だから。

「ぉっ……ぁ、ぉ……っ」

 数分間、マリアベルは自分でも知らないうちに胸を更に敏感にされてしまう。
 まるでパン生地を捏ねるように揉まれると、粘液の侵入で僅かに膨らみを増した胸が肌を包み込む粘液の下で乱暴に歪んでいく。
 乳首は先ほどよりもわずかに膨らみ、ぷっくりと太くなった様子は小さな豆のよう。
 その乳首を捏ね回し、乳腺を凌○し、スペンス乳腺を刺激してあげれば……。

「ぁ゛っ、ぉ……っ」

 また絶頂。
 勇者とは思えない、快楽に弱い身体……いや、胸へと作り変えられていく。
 激しく、乱暴に。
 けれどスライムからしたら丁寧に、丁寧に、慎重に。どこまでも優しく。
 大切な母体を開発しているのだ。

「ぁ……」

 そして数分の後、マリアベルは意識を取り戻し――。

「ぃ゛っ!? ぃいぃひいいい!?」

 突然感じた快感に絶頂してしまう。
 それはもう気持ちいいという限界を超えていて、痛いほどだ。
 頭が痛い。脳が痛い。
 まるで頭の中を針で何度も刺されているような刺激――だというのに。

「ひぎぃいい!? なっ、なんっ!? はひぃいいい!?」

 頭が痛いのに、身体が絶頂している。
 気持ちいいのに痛い。
 気絶から意識を取り戻したばかりで混乱しているマリアベルはその原因を理解する暇も無く、痛いのに絶頂してしまう。
 身体が激しく痙攣したまま止まらなくなり、腰から下の感覚が消えうせる。
 腰が抜けたのだ。
 けれど倒れない。
 服に浸透して肢体を拘束している粘液が、倒れる事を許さない。
 マリアベルは断ったまま腰を抜かし、全身から力が抜け、ただただ意識が胸にだけ集中する。

「はひぃいい!? こんなっ、なんれぇええ!?」
(わたっ、しっ。絶頂してる!? なんれっ、なにがぁぁああ!?)

 気絶するほど気持ち良かった刺激が、今はただただ苦しい。
 絶頂のし過ぎで心臓の動きが激しくなり、このままでは壊れてしまいそうだった。

「ぉぉおおぉお!? ひぐぅうう!? どまっでぇええっ、どめでぇえええ!?」
(死ぬ――このままじゃ死んじゃう!?)

 何度も何度も乳腺を前後する動きで乳首を嬲り、胸の内側から震えて刺激される快感に、マリアベルは確かな生命の危機を感じた。
 このままでは絶頂のし過ぎで死んでしまうと、本気で思った。
 それほどまでに強く激しい絶頂。
 頭が真っ白になって、叫び過ぎて喉が痛くなり、呼吸すら満足にできなくなっていく。
 絶頂しただけで酸欠になりながら、徐々に身体から力が抜けていく。
 絶頂による体力の消耗という、最悪の死が脳裏をよぎるのは当然の結末なのかもしれない。
 ……けれど彼女は死なない。
 マリアベルは勇者の娘であり、その力を受け継いだ存在だ。
 この程度の刺激では死ぬことが出来ず、女神の力が彼女を生かそうとする。
 ――だから、死ねないのだ。

「あおぉおっ!!」

 獣のような嬌声を上げながら、マリアベルが自慢の黒髪を振り乱して絶頂した。
 けれど、まだまだスライムは止まらない。
 尽きかけている生命をマリアベルの体液で補充しながら、その体液を得るためにもマリアベルを絶頂させなければならないのだ。
 だから。

「ひぎいいいい!? ひぃいいっ、はひぃいいい!?」

 ついには言葉を発する余裕も無くなったマリアベルが、また絶頂した。
 水音が響くほど乳腺の入り口、乳首の先端を嬲る粘液の刺激でマリアベルの乳首はこれまでにないほど固く勃起し、大きく膨らんでしまっている。
 その乳首を揉みしだかれながら粘液が乳腺の内部で蠢けば、記憶が途切れ途切れになるほどの激しい絶頂に襲われてしまう。
 マリアベルが願う『スライムの死』でこの凌○は終わらない。

(おっぱいっ、おっぱぃばっかりぃいっ!?!?)

 ……助けが来る数日後まで、黒髪の女勇者は『胸だけ』を犯され続けることになるのだった……。

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ウメ畑 2022/11/01 09:48

リクエスト作品 『オリジナル』 杠葉さくら『悪霊憑依、搾乳』

「杠葉さん。これは友人の家のお話なのですが……」

 都心から少し離れ、交通の便の悪さからあまり住む人も居らず、その土地の多くが農家や酪農を行っている地域。
 いわゆる『都心の田舎』とも言うべき場所で、そんな言葉を思い出した。

(確かこのあたり……)

 時間は夕方。
 あと2時間もすれば日が暮れるだろうという時間帯、都心では見掛けない制服姿の少女が長閑な風景を演出する黄金の畑を見ながら歩いていた。
 腰まである艶やかな黒髪をポニーテールに纏め、灰色のブレザー、白のワイシャツにプリーツスカートといういで立ち。
 黒のストッキングに包まれた両足はしなやかで美しく、無駄なぜい肉などほとんど感じられない健康的なもの。
最寄りの駅からこの場所まで歩いてに十分ほどだが、少女は少しも息切れしていない。
 渡された目的地の住所が書かれている紙と長閑な風景に何度も視線を動かしつつ、黒髪の少女……杠葉さくらはぼんやりと昨日の事を思い出していた。

「久しぶりに、こんなに歩いたかも」

 貸してもらっているアパートから駅までも、駅から通っている高校までも、歩いて十分もかからない。
 そんな便利な立地に慣れていたからか、久しぶりに人通りの少ない長閑な道を歩いていると少しだけ懐かしい気持ちになれた。
 彼女、杠葉さくらは退魔師だ。
 現代においてもまだ科学で証明できない霊障――悪霊による怪異を祓う存在。
 その為に物心がついたころから修行に明け暮れていた彼女にとって、人の気配が少ない田舎というのは、むしろ都会よりも慣れ親しんだ雰囲気である。
 これが仕事だということも忘れてしまいそうな穏やかな気持ちで歩いていた。

(たしか、今回の依頼は……家畜を飼っているところだとか)

 さくらは機能説明されたことを思い出す。
 依頼主は八雲傑――彼女が通う高校、八雲学園の理事長だ。

「少し相談があるのですが、よろしいかな?」

 八雲傑がそう切り出した時、さくらは特になにも気にしていなかった。
 彼から受けている依頼――八雲学園内で頻発していた怪異は、その原因こそまだつかめていないが、さくらが夜の見回りをするようになったことでその数を減らしていた。
 それに対する事ではないと、心のどこかで思っていたからだろう。
 実際、八雲傑が口にしたのは、それとは全く別の事。

「杠葉さん、これは友人の家のお話しなのですが……」

 八雲傑の友人――中学時代から付き合いがある人物らしいが、彼の家で怪異が起きているのだという。
 その家では牛を飼っているのだが、朝になると牛小屋に……誰とも知らない女性が入り込んで、眠っているのだと。
 もちろんその友人は事件の原因に心当たりはなく、すぐに警察に連絡した。
 けれどそれによって友人が飼っている牛は悪評が立ち、値段が激減。
 生活が立ち行かなくなりつつあるのだという。

「警察に調べてもらい、防犯カメラも設置したそうですが原因が分からず困っているようなのです」
「もしかしたら、悪霊の仕業かもしれないと?」
「はい」

 八雲傑が神妙な顔で頷いた。
 聞けば、このままでは酪農家を続ける事も出来なくなるかもしれないのだという。

「もし違うならまた別の手段を考えますので、一度、杠葉さんの目で確認してもらえないでしょうか?」
「それは構いませんが……」

 さくらは住む場所も支援してもらい、月に少なくない額の報酬ももらっている。
 八雲傑の申し出を断るつもりはなかった。

「それで、その女性というのはどこから……なにか、女性たちの間で共通している事などはあるのですか?」
「私や警察が調べた限りでは、特に共通点は無いようです。女性という以外は」
「なるほど」

 科学的な事件に精通した警察でも関連性を見付けられないとなれば、非科学的な原因があるのかもしれない――と考えるのが普通だろう。
 それに、被害者は女性だけなのだと八雲傑は言う。
 ならば、同じ女性であり非科学的な問題に対応できる杠葉さくらという存在は、彼にとって信頼できるということだ。

「それと、女性である杠葉さんには言いづらい事ですが……」
「なんでしょう?」
「……女性たちは皆、上半身が裸で発見されているのです」
「上半身が?」

 変な話だ、とさくらは感じた。
 べつに、女性が半裸に剥かれた事への嫌悪感ではない。
 何故上半身だけなのか――という疑問だ。

(もし悪霊による性的な霊障だとしたら、裸にすると思うけど)

 上半身だけを脱がすという行為を、さくらはどうにも理解できなかった。
 そういう……理解が難しい性癖なのか、何か意味があるのか。
 八雲傑も詳しく分からないという事なので、後はその情報をもとにさくら自身が調べるしかないと締め括る。

「では、私が直接見て確認してみます。場所は遠いのでしょうか?」
「いえ。いつも使っている駅から、電車で行けます。移動の費用と当日はいつもとは別途に報酬を用意いたしますので」
「わかりました。その依頼、お受けいたします」

 それが昨日。
さくらと八雲傑が理事長室で交わした会話である。

(上半身が裸になった女性が見付かる家畜小屋で飼われている牛、か)

 しかも警察からは、その友人が犯人として疑われてしまい、酪農家としての仕事もできない状態が続いているのだという。

(それは確かに、私のような人間に話が回ってくるのも頷ける話……かな)

 悪霊の存在を信じていなければ、それこそ藁にも縋るという気持ちなのだろう。

(何か手掛かりがつかめたらいいけど)

 さくらはそう思いながら、左手に持った大きめのボストンバッグと右肩に吊った黒革の竹刀袋を持ち直すように軽く揺らした。
 彼女の商売道具――もし悪霊が原因だった場合を考えて持ってきた巫女装束と霊刀だ。
 その様子はまるで女子剣道部のようにも見え、誰にも疑われることはない。
 そうして左右を畑に囲まれた田舎道を歩いていると、ようやく目的の建物が見えてきた。
 都心から離れているとはいえ、かなりの大きさだ。
 木造平屋建て。
 おそらく、古い建物をそのまま購入し、外装の一部と内装をリフォームしたのだろう。
 古き良き日本家屋といった風情があり、けれど庭先に停車している高級車がその雰囲気を台無しにしてしまっている。
 その日本家屋から少し離れた所へ視線を映せば、問題の家畜小屋……その日本家屋よりかなり大きな建物があった。
 家畜の声は聞こえない。
 牛農家という事だったが、どうやら今は飼っていないようだ。

「ごめんください。八雲傑氏の依頼できた者ですが……」

 さくらはインターフォン越しにそう伝えると、家の主が現れた。
 それなりに年配の人物だ。
 八雲傑と同級生ならまだ四十歳を超えた程度の年齢なはずだが、かなり老けて見える。

(精神的に追い詰められているみたいね)

 悪霊の影響かもしれないが、事件の所為で仕事が上手くいかず、周囲からも責められてきたのだろう。
 それによって精神が疲弊し、とても肉体も魂も弱っているのだと一目で分かるほど。
 退魔師の来訪に八雲傑の友人――進藤は僅かに明るい声を上げたが、それがまだ年若い女子高生だと分かると途端に表情を暗くした。
 けれど、さくらはそれほど気にしない。
 この業界、年齢や外見で初印象が変わるというのはいつもの事だ。
 そのまま玄関先で簡単な挨拶を済ませると、さくらはすぐに家畜小屋の案内をお願いした。

「いつも夜になると女性が現れるのだと聞いているのですが」
「はい。最初は警察の方でも見張ってもらっていたのですが、その場合でも、朝には女性が……」
「防犯カメラもあるとか……警察やカメラには何か情報は?」

 さくらが聞くと、振動は首を横に振った。

「警察はいつの間にか眠ってしまうし、防犯カメラには女性がふらふらと歩いてくる映像ばかりで……」
「ふむ」
「警察なんて、私がクスリを盛った可能性があるとまで言われたんですよ!? しかも、任意同行で警察署にまで……ウチの信用はもう……」

 どうやら、かなり警察への不満が溜まっているようだとさくらは思った。

(それも当然か)

 犯人を見付けられないどころか、自分が犯人だと言われているのだ。
 進藤からしたら、警察への不満……いや、不信が高まるもの当然だろう。

「ここが問題の家畜小屋……牛は、居ないのですね」
「ええ。とても飼育していく余裕も無くて……」

 都内の有名店にも卸している有名ブランドだったらしいが、その牛も最低値で手放したとのこと。
 仕事どころか家庭の維持も出来ない状態になり、進藤はとても追い詰められているようだ。
 表情と言葉の端々に感じる同様にさくらは同情しつつ、家畜小屋の中を見回した。
 彼が言う通り、家畜小屋の維持も出来ていないようだ。
 牛舎はボロボロで、当時から敷いてあったのだろう敷き藁も枯れてとても生物がすめる状況ではないように見える。

「ここに女性が?」
「ええ……朝になると突然」
「監視カメラもあるようですが、ご自分の目で確認したことは?」
「ありますが、全然覚えていなくて……眠っていたわけではなく、その女性たちが来たことに気付かなかったと言いますか……」
(来たことに気付かない……か)

 そのまま牛舎を見て回れば、ある点に気が付いた。
 木の枷だ。
 中世の時代、罪人をつないでいたような首と手を同時に拘束できる木の枷。
 それがぽつんと、牛舎の一角に落ちている。

「あー……それは」

 そこで進藤が言葉を区切ったのは、事前に八雲傑から聞いていた……女性が上半身裸でいたということを女子高生に話していいのか、という迷いからだろう。
 だから、むしろさくらの方からそこは質問することにした。

「女性が上半身裸だったという事ですが、この敷き藁の上で眠っていたのですか?」
「あ、いえっ! ……女性はいつも繋がれているんです、牛たちのように……いえ、牛たちより酷い状態で」
「酷い? どのようにですか?」

 さくらが見た限り、牛たちはかなり自由だ。
 仕切られた牛舎の中に作られた自分の部屋で、のんびりと過ごしている。

「その、どこから持ってきたのか木の枷で手と頭を固定されて……あの、中世のギロチンみたいな? 格好で」
「ギロチン……」

 その物騒な言葉を反芻すると、進藤が慌てて首を横に振る。

「あっ、ギロチンというのは言葉の綾で、本当に首が斬られたわけでは」
「分かっています。そうなったら、殺人事件で私はまだ関われませんから」

 いくら悪霊に詳しいとはいえ、それは現代社会ではあまりに認知されづらい現象だ。
 警察などは、むしろ霊感商法とばかりに責め立てる時すらある。
 そんなさくらでは殺人事件には関われないのだが……木の枷、というのは穏やかではないと思う。

「なるほど。枷に繋がれて、ここに上半身裸の女性が……」
「はい」

 確かに異常だ、とさくらは思った。
 その状況もだが、その女性たちはどこから連れて来られたのか、声を出して抵抗すれば進藤や近所の住人たちにも気付いてもらえるはずなのになぜそれをしないのか。
 警察は進藤を容疑者として考えているようだが、それを疑われても仕方のない状況にも思えてくる。

(でも、この人の精神的な疲労は本当だわ……)

 くたびれた表情、目の下の隈、覇気のない声。
 そのどれもが、精神的に追い詰められているということが分かる。
 犯人は進藤ではない。
 さくらはそう感じた。

「分かりました。少し見て回っても?」
「どうぞ、どうぞっ!」

 さくらはそう言うと、振動と離れて牛舎の中を見て回ることにしたが、結局は真新しい情報は無かった。
 けれど、これは確かに悪霊が起こした問題だという確信がある。
 霊気、とでも言うべきか。
 退魔師として鍛えた勘が告げる、悪霊が存在していた痕跡。気配。
 それを確かに感じたのだ――木の枷から。

(地縛霊……というわけでもなさそうね。この家に恨みがあるのか、それとも土地の過去に問題があったのか……)

 気になったが、けれどまずは夜に現れる悪霊をどうにかするべきだろうとさくらは判断した。
 進藤の様子はとても危うく、このままでは霊障によって体調を崩す……もしくは自死を選んでしまうかもしれない。
 精神的な疲労からも、まずは牛舎の悪霊を祓うべきだと思ったのだ。

「……確かに悪霊の気配がありますね」
「そ、そんなっ!?」
「まずは今夜、私がこの牛舎に泊まり込んでみます」

 さくらはそう言うと、手にしていたボストンバッグと竹刀袋を揺すって見せた。

「着替えが出来る場所はありますか? あと、よろしければ夕食もいただけたら……」
「は、はいっ!!」







 その日の夜、さくらは進藤邸の一室に居た。
 今回の件で悪評がかなり酷くなり、妻と娘は実家に帰らせているそうだ。

「お子さんは中学生だと言っていたわね」

 その年頃で、親の仕事場に毎朝半裸の女性が現れるとなれば、精神的な負担が大きかったことだろう。
 学校でも話題になっていたかもしれない。

(ご実家の方へ行かせたのは、正解だったかも)

 そう考えながら、さくらは進藤の娘の部屋の中に持ってきた荷物も置いた。
 防犯カメラの映像も確認したが、情報はゼロ。
 夕食もいただいたことで、あとは自分が直に牛舎で一晩を過ごして確認するしかない――そう気持ちを決めて、さくらはその指を制服へと伸ばした。
そのまま退魔師の衣装を着るために、制服を脱いでいく。
 灰色のブレザーと彼女の学年を表す赤いリボンを外せば、その下に現れたのは白いブラウスを挑発的に押し上げる豊満な胸。
 155センチの中学生にも間違われそうな低身長に反比例して育ち過ぎた、92センチのFカップ。
 進藤と並べば文字通り大人と子供のように思える身長差があったというのに、その胸は大人顔負けの豊満さである。
 ブラウスのボタンを外せば、そんな白い薄布に抑え込まれていた胸が姿を現していく。
 成人女性でもそうは見掛けないような深い胸の谷間に、大人びた紺色のブラジャー。
 可憐な花の意匠が施されたブラジャーはかなり大きめのサイズで、胸の大部分を覆ってしまっている。
 ……しかも、それでもさくらの胸は完全に収まっていない。
 ブラジャーの縁から柔らかな乳肉の一部がはみ出してしまっており、あきらかにサイズが合っていないのだ。
 そのままブラウスのボタンを外し終えると、今度はスカートのホックへと指が伸びた。
 何の躊躇いも無く腰を締め付けるスカートの金具を外せば、重力に引かれてチェック柄のスカートが床へと落ちてしまう。
 臍の下まで黒のストッキングに包まれた美しい下半身が露になる。
 退魔師として鍛えられた美脚、引き締まった腰、鍛えられた腹部。
 子供のように低い身長と比べてアンバランスとしか言いようのない肉感的な肢体を露にすると、さくらはそんな自分の肉体を一度見下ろした。
 黒ストッキング越しに見えるブラジャーとお揃いの大人びた意匠の紺色のショーツ。
 胸には劣るがお尻も大きめで、ショーツのゴムが食い込んで少し形を変えてしまっている。
 男好きする肢体を、サイズの合っていない小さな下着に包んでいる――肉感に富んだ肢体を余計に際立たせるような小さめの下着がさくらの魅力を卑猥に際立たせているが、本人は気付いていない。
 いや。

「また大きくなってる……」

 自分の肉体がまた卑猥に成長してしまった事にため息を吐きながら、黒ストッキングを脱いでいく。
 黒い薄布を足から抜くために身体を前屈みにすれば豊満な乳房が重力に引かれて形を変え、ブラジャーの布地の形に歪みながらその柔らかな乳肉を揺らしてしまう。
 後ろに突き出すような格好になったお尻が余計にショーツを尻肉へと食い込んでしまい、うっすらと女性器の膨らみすらクロッチに浮かんで見える。
 そうして黒ストッキングまで脱ぐと、最後にブラウスも脱いでさくらは下着姿となる。
 まるで墨を流したような艶やかな黒髪も解けば、その長さは腰の低い位置に届いてしまうほど。
 日本人形を彷彿とさせる容貌と豊満な肢体を紺色の下着で飾った姿になると、ボストンバッグから巫女服を取り出した。
 そのまま慣れた仕草で着こんでいく。
 八雲学園指定の洋風な制服から、日本に古くから伝わる巫女装束へ。
 最後に竹刀袋から愛用の冷凍を取り出し、ボストンバッグの奥にしまっていた霊符を数枚、巫女装束の袖に納めた。

「よし」

 さくらが退魔師の仕事をする際の衣装に身を包めば、自然と身が引き締まる気持ちになれた。
 小さく声を出し、最後に身嗜みをもう一度だけ確認し、そして進藤へ挨拶をしてから問題の牛舎へと向かう。

「……さて。何か見付かるといいのだけれど」

 さくらは牛舎の電気を消し、暗闇の中でそう呟いた。
 悪霊は闇を好む。
 電気を付けていては来ない可能性があるし、もし電気を消されてしまったら夜目に慣れていないというのは不利になってしまう。
 だからさくらは敢えて最初から電気を付けず、暗闇の中で待つことにしたのだ。

(今夜も来る……はず)

 場所は朝になると女性が発見されるという場所。
 ここなら霊障の気配をより強く感じられるかもしれないと考えての事だ。
 手入れがされていない敷き藁の上に腰を下ろせば、周囲からは風が吹く音ばかり。
 静かなものだ――。

(車の音もしない……)

 まるで、修行していた山奥での生活を思い出しそうな静けさだと思った。
 季節は秋――そろそろ、虫たちの鳴き声も聞こえなくなっていく季節である。
 僅かに肌寒さを感じたが、さくらはこの季節に慣れていた。
 山中での修行に比べればこの肌寒さは苦にならない程度でしかなく、集中力を乱す原因にはなりえない。
 だから……それから数時間後。
 さくらが精神を集中させて微動だにせず牛舎の真ん中に座り込んでいると、何かの気配を鮮明に感じた。
 進藤ではない。
 彼には家から出ないようにと言い聞かせていたし、何より……足音がしなかったからだ。

(来た)

 さくらはその不審な気配を感じながら、けれど問題となっている牛舎の場所から動かない。
 周囲を鉄の柵に囲まれており逃げ場は無いが、けれどそれは逆に、相手が必ずこの場所に来るという事でもある。
 黒髪の退魔師は暗闇の中を足音も立てずに移動している気配に動揺することなく、無音のまま愛用の霊刀を手に取った。
 衣擦れの音もしないまま、その柄に手を添える。

(抜けば、音で気付かれるわよね)

 ならばと、さくらは座ったまま居合い抜きの構えをした。
 刀を鞘に納めたまま、音を出すのは最初で最後の瞬間だけ。
 暗闇の中では夜目が利かず、本当に真っ暗だ。
 それでも気配を頼りに、ソレが冷凍の間合いに入ってくるのを待つ。

(もし、人間だったら……)

 明らかに人外の気配を発しているが、その点も考慮し、その姿を視認するまでは斬らないように考えながら、ゆっくりと静かに深呼吸。
 夕方の見回りでは霊障の気配は感じなかったけれど……と考えるのはそれまで。
 さくらは藁の上に座る自分の前に、ソレが立ったのを視認した。
 悪霊だ。
 ……悪霊、だと思う。

「二つ!?」

 それは『牛』と『人』だった。
 夜の暗闇の中、その闇よりも暗い悪霊が二つ。――いや、もっと多い。
 『人』と『牛』が立っている後ろには、さらに多くの『牛』の霊体が並んでいるように見えた。
 その数は十を超えているだろう。
 牛舎の中ではうまく確認できないが、これほどの数が来るとは思っていなかったさくらは明らかに動揺してしまう。
 けれど牛と人の形をしたそれらを視認し――さくらは躊躇わず座った状態から刀を抜いた。
 動揺しながらも身体が動いたのは、これまでの修行と実戦で得た経験によるものだろう。
 膝立ちの体勢なので腰を回せずに威力が乗っていないが、悪霊を斬るには十分な威力。
 振り抜いた刃は牛が逃げないようにと囲んで作られた鉄の柵すら切断し、蒼く煌めく白刃を一閃。
 その一撃は確かに牛を斬った、が。

「浅いかっ」

 悪霊が人だけでなく牛の姿をしていたことに動揺して剣先が鈍ったのを自覚した。
 傷が浅い。
 さくらは追撃のために立ち上がろうとすると――。

「くっ!?」

 そのまま牛の突進。
 けれどその身体はすり抜け――いや。

「えっ!?」

 なんと、牛の悪霊がさくらの身体に吸い込まれてしまった。

「な、なに!?」

 さくらは動揺する。
 悪霊が実体に近い質量をもって人に触れてくることは知っている。
 けれど、人体に入り込むというのはあまり効かないし、それはかなり危険な悪霊だと知っていたからだ。

(マズい!?)

 そう思ったが、さくらは足を止めずに前へと飛び出した。
 『人型』と『牛型』を斬るためだ。

「はあっ!!」

 そのまま霊刀を二閃。
 近くに居た牛型の悪霊の首を、今度は綺麗に断ち落とすことに成功。
 生身ではないこともあって斬った感触は軽く、腕への負担も少ない。
 ――が。

「くっ!?」
(身体が重くなってきた……っ)

 それは最初、仕留めそこなった牛の悪霊が原因だ。
 体内に入られたことで、自分の肉体に干渉してきている――さくらはその原因を理解しているからこそ勝負を急ごうとする。

(これ以上憑依される前に何とか決着を……ッ)
「はああっ!!」

 今まで以上に気合を入れて霊刀を振るう。
 牛たちはとても大人しかった。
 生来がそういう性格なのかもしれない。
 さくらに斬られるまま――だというのに。

「くぅうっ!?」
(またっ!?)

 さくらが一撃で仕留め損ねると、反撃とばかりに彼女へ憑依してくるのだ。
 それに気が付いたのは、黒髪の退魔師が七体目の牛を斬った時だった。

「もしかしたら、これ……」

 息は乱れていない。体力もまだ十分あるように感じる。
 けれど身体が重い。
 すでに三体の牛に憑依されたさくらは、まるで複数の重りを手足に付けられたように感じてしまうほどだ。

(攻撃した相手に憑依するの? まさかこれで、女性たちを操って……)

 それが、憑依能力が発動する条件だとしたら、最悪だとさくらは思う。

「一撃で仕留めないと」

 そう思うが、もう遅い。
 さくらはすでに三体の牛に憑依され、手足がとても重い状態だった。
 剣閃の鋭さは最初に比べれば見る影も無く、逃げようにも悪霊たちは攻撃するために牛舎から出たさくらの周囲を囲んでいる。
 今の状態ではとても逃げられそうにないと判断……。

「失敗した……っ」

 もっとよく観察するべきだったと、今更になっての後悔。
 ただの動物霊と人型の悪霊だと思って侮ってしまい、自分から攻撃を仕掛けてしまった。
 そのことを悔やむが、けれど現状は好転しない。
 ならばと、さくらはキッと牛と人の悪霊を睨みつけると、霊刀を構え直した。

「それなら、最後まで我慢するだけっ」

 さくらはそう言うと、力任せに憑依した牛の重さを無視して攻撃を仕掛けた。
 残りは牛が五頭と人型だけ。

「これでっ!!」

 そのまま一気に三頭の牛を斬れば――当然、鈍った剣筋では仕留めきれずに憑依されてしまう。
 けれど、影響は身体が重くなるだけだ。
 肉体の変化を無視して一気に牛を仕留め終えると、さくらは最後に残った人型の悪霊に視線を向けた。
 今ではもう、両手両足に数十キロの重りを付けているかのような感じがするけれど、まだ彼女の戦意は衰えていない。
 人型悪霊の方も、まさか十頭以上の牛の悪霊が憑依してまだ人間が動けるとは思っていなかったのかもしれない。
 すでに死んで霊体となりながら、それでも動揺したように動かないでいる。

(やれるっ! こいつを祓って、霊符で憑依した牛たちを成仏させればっ)

 さくらはそう考えると、次の一撃で悪霊を仕留める――その意思を籠めて一歩を踏み出した。
 ――そのまま、牛舎の外で四つん這いになる。

「……え、なんで!?」

 それに動揺したのはさくらだ。
 身体が重い。自分の意志で動かすのが難しい――そのまま黒髪の女退魔師は巫女装束が汚れるのも構わず地面に両手両膝をつき、人型悪霊の足元に首を垂れる。

「くっ!? なんでっ!?」

 怒声を上げて身体を動かそうとするが、さくらの意志で動いたのは指先程度。
 しかも、かなり動かせる範囲が狭い。
 そのまま霊刀を握っている事も出来なくなると、まるで自分の意志でそうしたようにあっさりと愛刀を手放してしまう。

「ぅ、く……ッ!!」
(そんなっ、口まで!?)

 抵抗の声を上げようとした口まで動かなくなった。
 呼吸は出来ている。
 目線は鋭いままだ。
 けれどさくらは全身が動かなくなり、彼女から見ても非力にしか見えない人型の悪霊の前に四つん這いの体勢を晒してしまう。
 その屈辱と羞恥、そして困惑に思考を乱しながら顔を上げれば……人型の後ろに無数の牛の形をした悪霊の姿があった。

(そんなっ、まだこんなに!?)

 その数は、三十頭は居るのではないだろうか。
 夜闇を照らす月明りの中、無数の牛たちがさくらを囲み……。

「…………」
(くっ、来るなっ!!)

 さくらは必死に抵抗しようとしたが、口も開けない。
 そのまま一頭、二頭……五頭の牛がさくらの肉体に憑依し、その数は合計十頭となる。
 そうなるといくら退魔師としての才能に優れるさくらでも抵抗できなくなり、ついに体の支配権を奪われてしまった。
 表情から感情が消え、目は虚ろ。
 しかしそれでも諦めていない彼女の意識だけは健在で――。

(なんとか、何とかこの状況から逃げないとっ)

 諦めることなく、身体の自由を奪われた状況でも逃げる方法が無いかを志向していた。
――そんなさくらの目の前で、人型の悪霊が踵を返した。
 帰るわけではなく、離れた場所に置かれていた木の枷を取りに行ったのだ。

「…………」
(くっ、やめてっ! やめなさいっ!!)

 四つん這いで口も開けないままさくらは無表情に……けれど内心では悪霊を睨みつけ、拒絶する。
 ……そんな声など聞こえない悪霊は、何の苦も無く彼女に木の枷を嵌めた。
 手と首が同時に拘束され、さくらは犬がミルクを舐める時のような格好で無様に牛舎の床に跪く。
 黒髪と白衣が泥と枯れた藁で汚れてしまうが、動けないさくらではどうしようもない。

「…………」
(マズい、これじゃ本当に抵抗できなく……っ)

 さくらはそう思ったが、この状況からでは反撃も出来ない。
 ならばと、彼女は必死に足へ力を籠める。

(逃げないとっ)

 逃げて進藤に木の枷を外してもらい、今度こそ仕留める。
 今はもうそれしか勝ちの目は無い――というのに。

(動いてっ、動いてっ!!)

 さくらの身体は、彼女の命令を聞かない。
 いや。

「…………」
(くっ、身体が勝手に!?)

 さくらは立ち上がった。
 無表情で口も開かないまま、鍛えられた足の力だけで立ち上がると、自分から進んで牛舎の中へと戻っていく。
 そして、お尻を後ろへ突き出すような格好になると、まるで家畜の牛たちがそうするように、牛舎の中に繋がれてしまった。
 五十頭以上が入りそうな大きな牛舎の中に一人だけが繋がれる光景は何とも異様だが、その当人は表情を少しも変化させない。
 だがその内心では。

「…………」
(そんなっ!? これじゃ、逃げられない……っ)

 首に嵌められた枷をロープで繋がれては、武器が無いさくらにはもう逃げられない。
 後は声を上げて助けを求めるだけだが、その口も動かせない状況に彼女は鳥肌が浮かぶような恐怖を覚えてしまう。

(まずい、これじゃ……)

 さくらはこの牛舎に現れる女性たちの話を思い出し、何とか逃げようと全身を暴れさせようとした。
 けれど、少しも身体は動かない。
 牛が一頭も居ない牛舎の中に繋がれた状況で身体を強張らせる事も出来ないままロープで繋がれ、緋袴に包まれたお尻を後ろへ突き出すと足を肩幅に開く。
 そうすると牛舎の中に空いている、おそらく数か月前までは普通の牛が繋がれていたであろう場所に、牛の悪霊たちが自分から入っていった。
 帰ってきたのだ、この場所に。

(まさか……ここで死んだ牛?)

 そんな考えが頭に浮かんだ。
 家畜の霊、とでも言えばいいのか。
 さくらは初めて見たが、ありえない事ではない……のかもしれない。
 ただ。

(だったら、この悪霊は……)

 さくらに枷を嵌め、牛たちと共に現れた人型の悪霊。
 まるで動物霊を操るように立つ悪霊に、隠し切れない悪意を感じた。

(まさか、この悪霊が家畜の霊を操っているの?)

 思考の中では何とかこの状況を打開する手段を考えながら、けれど身体は彼女の意志に従わない。
 ……無言で体勢を維持するさくらに、人型の悪霊が近付いてくる。

(来るなっ! 近寄るなっ!!)

 さくらは必死に怒声を上げようとするが。

「…………」

 肉体は反応せず、口は閉じたまま。
 そして……悪霊の手が、白衣の上からさくらの胸に触れた。
 お尻を後ろへ突き出したことで前屈みの状態になった胸は重力に引かれ、地面に向かって伸びようとする155センチの低身長に不釣り合いな92センチの爆乳。
 けれど白衣と下着が邪魔をして、その白い布地を僅かに引っ張っている程度の変化。
 その爆乳に悪霊の手が触れる。

(くっ……やめなさいっ、触らないでっ!!)

 強い言葉で抵抗しようとするが、やはり声は出ない。
 そのまま、悪霊の手が白衣の上から胸を撫で始めた。
 ただ、地面に向かって伸びる爆乳の輪郭を確かめるように、表面を撫でるだけ。
 白衣と下着越しではほとんど刺激を感じない。けれど、確かに胸の表面を何かが這っていると分かる微々たる刺激。
 それは生者であるさくらには嫌悪感しか抱かせず、ゾワリと背筋に冷たい汗が流れた程度だ。

(離れてっ!! くっ、何とかしないとっ!)

 さくらは動かない身体を何とかしようとするが、けれど意志の力ではどうにもできなかった。
 そのまま、悪霊の手が形を確かめるように二往復、三往復と胸を撫でる。
 微々たる刺激だが、嫌悪感だけは増していく……というのに、当のさくらの表情は少しも崩れず、成すがままだ。

(どうしたら……そうだ)

 木の枷を嵌められてしまったさくらに動かせるのは、もう両脚しかない。
 まずはこの状態を少しでも脱するために、黒髪の退魔師はその意識を下半身に向ける。
 胸元からの刺激は一旦無視して、何とか両足を動かそうと力を籠めた。
 意志を強く持ち、動物霊の憑依に抵抗しようとする。
 憑依とは結局、意志の力の対抗だ。
 退魔師として修業していたさくらは自分の意志を残せたことで、まだ抵抗の手段が残っている……そう思っていた。

「あぁ……もっと強く触ってください……」
(…………!?)

 しかし肉体に変化が起きると、その考えも変わってくる。

「もっと強く揉んでもらう方が気持ちいいです」
(なっ、なっ!? なにをっ!?)

 さくらは突然開いた自分の口――しかも、思ってもいないことを言葉にしたことに動揺した。
 目を見開き、怒りのままに否定したかったけれど、やはり身体も口も動かせない。
 他人が――いや、身体に憑依した動物霊が喋っているのだ。

「もっと強く、乱暴なのが好きなんです」
(そんな訳ない!! 勝手な事を言わないでっ!!)

 さくらは激昂して両足を動かそうとするが、やはり身体は動かない。
 しかも、時間が経つごとに言葉が流暢になっているような気がする。
 ……肉体に憑依した無数の動物霊が、さくらの肉体に馴染んでいる証拠だ。

(マズい、マズいマズい!? これは、どうしたら……っ!)

 さくらはこの状況の危険さを改めて認識するが、けれど身体が動かせない。
 最初はこうなる前に全部斬り伏せればいいと簡単に考えていたが、たかが動物霊が修行を積んだ退魔師の肉体を完全に封じるほど強力だとは想像もしていなかった。
 事前の情報収集が甘かったと言えばそれまでの、状況を理解していればどうとでもなるような相手だったように思うが……憑依され、動けず、勝手に身体を動かされる状況になってしまっては、ただの言い訳だ。

(動いて、お願い私の身体っ!!)

 そう訴えるが、やはり身体は動かない。
 そして。

「んアッ!」

 さくらの身体が、勝手に嬌声を上げた。
 その言葉に従って、人型の悪霊がさくらの胸を白衣の上から力強く揉んだのだ。
 いや、揉むというよりも掴むと表現した方が正しいか。
 地面に向かって垂れていた胸が瓢箪のように形を変えてしまうほどの力強さだ。
 本来なら痛みを感じるほどなのに、けれどさくらの口は興奮した声を上げてしまう。

「ああっ! そうっ、そうっ! もっと強く、乱暴にっ!」
(ふ、ざけ……っ! やめてっ、私の口でそんなことを喋らないでっ!!)

 さくらは叫ぶが、肉体は無視。
 それどころか胸を揉まれる刺激に興奮したように身体を揺すり、特に緋袴に包まれた大きなお尻を左右へ大きく動かしながら全身で快楽の気持ち良さを訴えている。
 それに気を良くしたのか人型の悪霊はさらなる乱暴さで胸を揉み始めた。
 白衣の合わせ目が乱れるほどの力強さと激しさで、さくらの身体の事など少しも考えていない自分本位の愛撫で。

「ふぁあっ! もっとっ! 私っ、これっ、乱暴にされるの好きぃ!!」
(っ、いたっ!? やめっ……やめてっ! そんなことないっ、私はこんな事されたくないっ!!)

 さくらは乱暴に揉まれる胸の痛みに苦悶の声を上げながら、必死に心の中で否定する。
 けれど、多くの人が……そして霊体が信頼するのは、その口から発せられる言葉だ。
 その言葉の通りに悪霊の手が動けば、ついに白衣の合わせ目が乱れて紺色のブラジャーの一部と成人女性も顔負けな深い谷間が現れた。
 悪霊の手の動きに合わせて柔らかな胸の谷間が揺れ、形を変え、下着が食い込み、ただ痛いだけ。
 さくらにはそうとしか感じられなかった。
 痛い。
 それだけのはずなのに。

「ふぁあっ!? そう、そこっ! もっと強くっ! 気持ち良いですっ!!」

 木の枷を嵌められた美貌を蕩けさせながらさくらが声を上げると、悪霊の手がさらに強くぎゅぅっと女退魔師の胸を掴んだ。
 白衣と下着の上から正確に胸の芯を捉え、まるでリンゴを潰すような乱暴さで潰される。
 そうとしか表現のしようのない荒々しさで――そうなれば白衣だけでなく下着まで引っ張られ、背中の方でバチンという音が聞こえた。

(ああっ!?)

 元からサイズが合っていなかったことも災いしたのだろう。
 背面にあるブラジャーの金具が壊れたのだ。
 一瞬の後に下着の締め付けから解放された92センチのFカップという爆乳がタユン、と音が聞こえそうなほどの勢いで膨らんだようにも見えた。
 まるで質量が増したように白衣を内側から押し上げ、乱れた白衣の合わせ目から覗いていた谷間がより深くなる。
 柔らかさも増したように感じた。
 白衣越しでも92センチの胸が悪霊の手の動きに合わせて柔らかく揺れ、少し力を籠めただけで卑猥に揺れる。
 どれだけ肉体を鍛えて若さからの張りに支えられていたとしても、それでも胸は脂肪の塊だ。
 前屈みになって重力に囚われてしまえば、地面に向かって垂れるしかない。
 その重量感は素晴らしいもので、悪霊が垂れた乳房を掌に乗せて上下に動かせば、それだけでまるで水風船か何かのように白衣がたわんでしまうほど。
 さくらはまるでおもちゃのように扱われる自分の胸に羞恥心を増しながら、けれど悪霊を睨みつける事すらできない。
 これだけ怒りを抱いているのに、身体はやはり少しも動いてくれないのだ。
 それどころか。

「ぁぁ……んっ! もっと強く……んぅ、上手ぅ……」

 さくらの身体に慣れたのか、ついには表情まで崩してそんな情けない事を呟いてしまう。

(やめてっ! これじゃまるで、私が本当に感じているみたいじゃない……)

 そんなことはないとさくらは思っていた。
 気持ち良くない。
 気持ち悪くて痛いだけだ。
 だというのに。

「はぁ……んぅ……あっ、ぁ……」
(やめてっ、やめてやめてっ! 私の声で喋らないでっ!!)

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