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2022年 08月の記事 (2)

Quietude. 2022/08/13 06:58

値段/アウトの数 (コスパ>音)

コスパ>音

前回の続き。

たくさんのスピーカーを並べてパフォーマンスを行う場合、当然たくさんのI/Oが必要になるわけで、製品の値段/アウトプットの数が物を言うわけだ。
本当はAntelope AudioのGALAXYとかferrofishのA32なんぞの高級機種を使ってやりたいわけだが、困ったことに1台くらいそういったものを買えても、波面合成をまともにやるには結局複数台いるんだからタダでさえ火の車の家計が四輪駆動だ。

まあそういうメーカーのイイ奴は確実にイイ音がするのだけれどもね。

ADAT戦法

実装が安価(というかライセンス料がいらない)ADAT/TOSLINKをたくさん積んだインターフェースを探していた。
ADATの場合、クロックさえ合ってりゃなにから出してもおおよそは似たような結果が得られはするので家にあるオーディオインターフェースを総動員させて48chぶん稼いで
あとは山積みにしたBehringerのADA8200にドスリとさせば1台で8個のスピーカーを駆動させることが出来るようにはなる。

・お値段


BehringerのADA8200、マイクプリアンプだがADATとラインアウトがついている丁度いい物件。これがサウンドハウスで28,000円
1chにつき3500円。
ADATつきのオーディオインターフェース、安くて4万
これを足して割ると1chにつき8500円。

ADA8200の前のバージョンの同じ機能で古いAD/DAのADA8000が中古で1万〜1.5万
これの間をとって12500で計算すると1chにつき6562円。

ADATが4系統実装されたRMEのDigifaceというやつの場合、4万円のオーディオインターフェースを3つ買うのと同じ値段でもう8chお得なのだが
Digiface+4台のADA8200だと1chにつき7250円。
Digiface+4台のADA8000だと1chにつき5312円。

RMEのハードウェアは全部知り合いにくれてやってしまったので我が家にないのだが、なかなか手が出そうではないか。何かと便利そうだ。

AES67戦法

我が家のオーディオシステムはUSBでもThunderboltでもFirewireでもなく、LANケーブルでつないでるRavennaというやつなんだが、対応製品に高いものが多くてアウトオブ眼中であった。

しかし灯台下暗しというやつで、LANケーブル1本で48kHzならば128chの信号をやり取りできるAES67ファミリーの規格であるAudioLANが乗っかってる上にそこまで高価ではないレコーダー/プレイヤーが我が家にあり、しかもそこには24in24outのLine in/outもついているではないか。

Cymatic Audio uTrack24だ。
このCymatic Audioという会社はAudioLANという規格を作ったArchwaveという会社と一緒にRIEDELというでかい会社に買収されてしまったのでディスコン。嗚呼。

アナログ24in24outを備えるレコーダーで、USBメモリやSSD、HDDに録音できるばかりか拡張カードで上記のAudioLAN、ADAT、MADIなどに対応。
さらにはUSB接続でオーディオインターフェースとして動作する事もできる。

が、こまったことにUSBメモリを挿してレコーダー及びプレイヤーにした場合



このよう録るときは出力が死ぬし聞くときは入力が死ぬというふざけた排他仕様が存在し、これを回避して入力されたものを出すときはUSBケーブルをコンピュータにプラグしてオーディオインターフェースとして動作させなくてはならない。

逆にUSBオーディオインターフェースであるとuTrackが認識さえすれば同時に信号が出入りするようになるので、コバンザメのようにRaspberry PiなんぞのシングルボードコンピュータをUSB接続して天板にでも貼り付けておけば良い。
ラズパイっていいよね。パイズリに似てるからね!

あとはバリバリ言わないバッファタイムを設定してJackなりPipewireなりで入るところと出るところをルートすれば24個のスピーカーを駆動できるオレンジ色のニクいヤツの完成。LANケーブルであるという都合上、ライトパイプよりも長距離を伝送できるのでこっちのが広い会場で有利かもしれない。
ラズパイ4Bでバッファ512サンプル、24chでとりあえずドロップしなかったのでもう少し切り詰めてみようか。

・お値段

国内代理店だとなぜか高いのだが輸入すると送料ほかコミコミで70,000円
1chにつき2917円
AudioLANカードが価格まちまちなのだが45,000円とした場合、1chあたり4791円

あちこちへの道

Macの複合ドライバ機能っていいよね!でもLinuxのPipewireとかJackとかもっとトチ狂ったことが出来るからおすすめだよ!みたいなルート。

コアとメモリが山盛りのマシンを組んで、Linuxをインストールして、32でも64でもRavenna ALSA LKMで受けてたものをPipewireなりでUSBポートに繋がった膨大なオーディオインターフェースのアウトにルートと言う手。
https://bitbucket.org/MergingTechnologies/ravenna-alsa-lkm/

64ch縛りであってもコンピュータの台数を増やして128でも256でも好き補題増やせる辺は良い。
ただこれ、RavennaがPTPでシンクしていたとしても、オーディオインターフェースのハードウェア側の理由で本当に全ての音がジャストのタイミングで出るか不安ではある。

というわけでCymaticAudioのuTrack24をもう一台買おうかなと思います。
いや?それよりももっと安く済みまっせ! というアイデアがあるならこっそり耳打ちください。

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Quietude. 2022/08/08 23:01

波面合成はファントム音像じゃなくて実際に真ん中から音が出るという

波面合成がやりたい。

手短に説明するとたくさんのスピーカーを並べて波と波を足したり引いたり遅らせたりしながら合体させて別の波として再生する技術。あとはキルヒアイス-ケツホルデス積分とか原理を説明した場合、寝たりするやつが続出しそうなので軽くちょうどそのへんに転がってた動画で済ませる。つまりはこういう話。

できることは

・普通に目の前にあるスピーカーのような点音源
 ┗並んでるスピーカーの前を歩けば左右のバランスが変わるような、ようは普通のやつ。

・平面波
 ┗歩いてると太陽や月がついてくるような、どこへ移動しても定位が変わらないやつ。
https://www.youtube.com/watch?v=3ALsjtMNsiE

・フォーカスド点音源
 ┗なにもない場所から音が聞こえるという、ようは音のホログラフ。
https://www.youtube.com/watch?v=TiZdgdd3lZE

つまるところ音のホログラフを作ったり、会場のどの位置で聞いても同じバランスで聞こえるという、空間オーディオとして非常に理想的な特性がある。
ついでに仮想化された音源に対して人間大砲などで射出された場合、ちゃんとドップラー効果がついたり、音源の裏側の特性までちゃんと物理的に出せたり下記の特性なんかのおかげで空間をまるっと、音響心理効果を排除して音源としてコピーする用途にも向いてる。

つまるところ、ステレオ録音やサラウンド録音において、2つの離れたスピーカーの波形と音量が合ってるときに真ん中から音が出るといういわゆるファントム音像なんぞの音響心理効果でなくて、実際に波と波を足したり引いたり遅らせたりしながら合体させて真ん中から音が出るということが出来る。

あとついでにアトモスみたいなライセンスはない。なのでなにを作っても自己責任において問題ない。閉鎖空間おなら地獄WFSとかな!

問題点

・まだまだ未開拓部分が多い。
・さいきん庶民の手に届くようになったアトモスやAuroに比べて遥かに高く大掛かり。


みてくださいよこの大掛かりな装置を。

アレイが長くなれば長くなるほど(=スピーカーの数)、アレイが円形に近づけば近づくほど波形の再現性が増すこまったちゃん。どこに置きゃいいんだっていうね。



アトモスだろうがAuroだろうが、はたまたプラネタリウム用半球アレイを遥かに超える数のアウトプットを備えたi/oとスピーカーが必要。

この辺は工夫してやりくりしたい次第。すでに24in24out+12in12outの環境があり、1辺を構築して2平方メートルの範囲にホログラフィック音像を動かしたりすることができるのだが、こんどはスピーカーが問題になってくる。

この辺のモデルが実に使い勝手がよさそうで、ギャラが入りしだい8個くらい買おうと思うのだが14.2cmあたり16000円となるとあんまりコスパがよろしくない。
そして8台、12.8万も払って作れる理想的な平面波領域は50cm四方くらいしかない。
後述の資料なんかにあるとおりのDIYで済ませるのも良いかもしれない。

フルレンジのスピーカーの5インチユニットが5000円という格安であったとしてもゲームオブライフ財団の資料にあるような192chぶんも作ると96万円ではあるが、どうせ定員2,3名もありゃいいという日本の住宅事情に合わせた2平方メートルの正方形アレイを設計する場合、5インチに少し間もたせて14cmとした場合1辺が14個で4辺で56個で28万円…ってやっぱり高えじゃねえかよ!と前途多難である。ああ。

悩んでる。最高の悩みだね。
楽しくて仕方ない。

エロ音声の制作のなにに役立つかというと、空間をまるっと切り取って来れるのでようは声優をスピーカーで囲んでNeumann KU100だとかのS/N比を上回るアンビエンスでマスクしてノイズ除去なしでそのまま作品にしたり、あとまあ、携帯電話からOSC吐いてこっちのコンピュータで受けてその場で効果音や場面転換を行ったり鳴らしてもらったりとか、編集をしないドラマということができるかもしれないというお話。

単純に好き勝手やってもらって録音してあとで加工みたいなのじゃなくてね。

資料

みんなこれ、やろうとするときに途中で折れそうな条件が多い。

・予算(こればっかりは先立つものではある)
・初歩的なプログラミングの知識(俺でもどうにかできるようなハロワー的な)
・基本的な音響知識(文化祭のライブPAが出来るならば上等)
・部屋の広さ(お金持ちになるか田舎に住むしかない)
・こういうテーマに率先して飛びかかっていく軽率さ(生まれつきかもしれん)

まあ、そういう技術を研究してる学生とか企業でないと中々手を出しづらいとは思う。


日本語の資料が困ったことに全然ない。
日本語で手に入る情報は読んでてワクワクするような記事が多いのだが、困ったことに自分でやろうとするときに中々どうしようもない。
需要ないんかなあ?無いだろうなあ。

■波面合成ってなんだろうみたいな解説・フランス国立音響研究所
http://recherche.ircam.fr/equipes/salles/WFS_WEBSITE/Index_wfs_site.htm
だいたいここを見ればどんな技術かわかる。

■スピーカーアレイを作って記事中のマンコマークみたいなシミュレート図を描いたり鳴らしたりできるやつ
https://github.com/sfstoolbox/sfs-python/tree/0.6.2
※要Python or Matlab

■Supercollider用波面合成パッケージ
https://sourceforge.net/projects/wfscollider/
※ソースからビルドしたい人はGithubから。

■Max版、波面合成出力パッチ
https://wfs-diy.net/
※要Max

■英ウィキペ
https://en.wikipedia.org/wiki/Wave_field_synthesis
ムカつくことに日本語よりも遥かに充実している。
そしてリンクも充実。

■ゲームオブライフ財団のライブ波面合成システム How To 設置
https://gameoflife.nl/en/about/working-with-our-system/
非常に参考にしている。既に何度もショーを成功させているので間違いなさそうだ。
つまるところ複数オーディオインターフェースをまとめて、192ch出力して
お値段も恐らくは他システムよりお得みたいなDIYプロジェクトによって成り立っている。おそらくこの中で一番参考になる。

いやー、前途多難。

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