遠蛮亭 2023/06/22 06:48

23-06-22.くろてん再掲2幕3章1話+アンケート結果

おはようございます!

昨日は「お狐様」の動画を上げた後また寝てしまったのであの後の進捗はありません。とりあえず出産シーン可否のアンケートについては全11票中「あったほうがいい」8票、「必要なし」が3票でしたので出産ありとしますが、出産でないと作れないモンスターとかいると出産イベント不要の方に対して不公平になりますからね……、確率は低くても召喚で全部のモンスターを輩出できるようにしたほうが良いでしょう。とりあえず、今朝はこんなところです。

それでは今日もくろてん再掲、よろしくお願いいたします!

………………
黒き翼の大天使.2幕3章1話.欲禽姑縦は心を攻める

 軍人を目指す。

 そう志した以上、道程は容易ではない。

 兵卒として軍に投じるのとはわけが違う。そしてヒノミヤ事変期のときのようにイレギュラーな指揮権委譲《しきけんいじょう》で士官となるのとも違う。大佐までの位は売官制度《ばいかんせいど》で買えないこともないが、そんな方法で将官になって、兵を服しうるとは思えない。

 人を従えるに足る将になる。よって、勉強が必要だった。

 そうなると普通の学問ではなく、兵学・軍略に関する専門知識が確実に必要となる。幸いに辰馬の周囲には神楽坂瑞穗《かぐらざか・みずほ》、長船言継《おさふね・ときつぐ》、そして隠れもないヒノミヤの天才軍師・磐座穣《いわくら・みのり》という3人がいて、さらには政治向きの才覚なら比類ないエーリカ、そして普段から親密というわけではないが傭兵として実戦経験に豊富なジョン・鷹森らの人材が揃っている。教師に不自由はしなかった。……雫は、体育教師で実のところおバカさんなので、この際戦力にはならないが、その応援は力になる。

 史学に関しては辰馬自身、興味と学識があったのもプラスだった。砲兵の弾道計算に必要な計算知識なども、辰馬は苦手なわけではない。やはり問題は兵学という専門知識、ということに集約される。

 というわけでその晩は、辰馬は瑞穗と勉強中。

 そろそろ夏が近くなってきたこの頃、なぜか無防備すぎるうえになぜか辰馬を逆レしたがる新羅邸の少女たちは暑さを理由に以上な薄着であり、瑞穗も超神話級の柔肉のすさまじさゆえになかなか合うシャツがなく、男物の薄手のLLLなど着ているものだからはっきりいってこれ下着じゃん、みたいな状態でしかない。辰馬は鋼鉄の意思力でどうにかそちらを見ないようにこらえるが、最近ご無沙汰だったせいか瑞穗の眼光が妖しく、身の危険を感じる。

「えー……欲擒姑縦《よくきんこしょう》……これはまあ、わかるな。つまり心を服させろってことだろ? または追い詰め過ぎるな、ってことか」
「はぁはぁ……は、はい。その通りです、さすがに辰馬さまは理解が早いです」
「いらん世辞いーから。実例として、なんかねーのかな?」
「では、辰馬さまがお好きな東西戦争期のお話ですが。燕熙帝の将・天童将入《てんどう・しょうにゅう》6万の兵で凌河帝の都、現在の副都少弐ですが……を囲みました。しかし、伽耶聖は当時としては圧巻のその大軍を、4000の寡兵で退けています。それはなぜでしょう?」

 瑞穗は興奮に頬を赤くしながらも、一応辰馬の勉強を見なければならないという使命感はちゃんとあるようで。そんな過去問を出す。

「ん……ちょい待て。2分で考える……。まず、天童が名将だったらありえん話だな。とにかく聖を舐めてたってことと、この欲擒姑縦という設問からするとあれだ、たぶんだが、逆をやったんだな。逃げ場を空けてやるべき所を、囲みまくって聖を追い詰めた……んじゃないかと思うが?」

 辰馬が本当に2分でそれを導き出すと、瑞穗は流石に瞠目《どうもく》する。実際、天童将入は勇猛果敢ではあるが思慮に欠ける男であり、伽耶聖率いる牢城軍を敢然包囲して袋のネズミとしたはずが逆に窮鼠《きゅうそ》となった聖たちの突撃と伏兵戦術にやられ、6万の兵のうち2割近い9000人を失い、戦線を維持できなくなり撤退に追い込まれるという憂き目に遭った。ちなみにこの当時から今に至るも兵士は農業労働力であるから、勝敗にかかわらず数万の軍勢が一度に消滅するような事態はまずありえない。敵を鏖殺《おうさつ》する殲滅戦《せんめつせん》、というのはここ最近、それこそヒノミヤ事変において初めて発生した「総力戦」以降のことであり、それとても完全に敵を滅ぼすなどと言うことはまず、ない。ありえたら国の人口がごっそり減ってしまうのだから、少し考えればわかることだ。それにしても、辰馬の才能を甘く見たつもりはないとして、ここまで的確に見抜かれるとこれまでヒノミヤで軍学を長らく仕込まれてきた自分が揺らいでしまう。

「正解……です。すごいですね……」
「ん? 凄いかなぁ。こん程度で士官学校のトップは狙えねーと思うんだ」

 辰馬はこのあたりの自己評価が頗《すこぶ》る低い。軍学の専門家ならまだしもこれまでほぼ素人だった人間が、軽く説明を受けただけであの回答を導き出せるものか。本当に紛れもないレベルで、新羅辰馬は天才だった。この天才に自分の持つ軍略の全てを伝授したなら。ヒノミヤでの凌○により後天的な淫魔の資質を得ている瑞穗だが、その性的興奮を忘れるほどにこの生徒の教え甲斐は素晴らしい。

「そんじゃ、次か。「敵すでに明らかにして、友いまだ定まらざれば、友を引きて敵を殺さしめ、自ら力を出さず、損を以て推演《すいえん》す……借刀殺人、か。あんまし使いたくない手だなぁ、これは……」
「でも、非常に有効な手ではあります。たとえば自力ではどうしてもかなわないような強敵がいたとして……」
「あー、ガラハドみたいな」
「はい。ガラハドさんが敵として、こちらの手で倒せないのなら偽情報を流してラース・イラ上層部の手で殺させれば……」
「あー……聞きたくねーなぁ、そーいうの……まさか瑞穗の口からそーいうのが出るとは……」
「はぅ……だって、兵法ってそう言うものですから……」

 半眼になる辰馬に、瑞穗は思わず縮こまる。縮こまるほどにバカでかい胸の方は強調されて非常によろしくないことになるのだが、それは置くとして。

「辰馬さまの頭脳ならそこまで無理な勉強は必要ないと思います。適度なペースで進めれば十分かと……」
「そーかなぁ?」

 瑞穗の言葉に、辰馬は上古の兵法家がものしたという兵書をぺらぺらとめくる。特別に難しいことが書いてあるわけではない。むしろやってしかるべきことを確実に、無理押しはせず、情報をしっかり集める、そういう当然のことを執拗に書いてあるのだが、これがまた、いろいろと現代に通じる示唆と教訓に飛んでいるから古代人畏るべしだ。

「そんなら、そろそろ寝るか」
「ぁ……はい?」

 嬉しげにシャツに手を掛けようとする瑞穗に、辰馬は慌てて待ったを掛ける。前回までで確実に瑞穗たちを「自分の大事な女」と認めた辰馬だが、だからといって猿のようにセックスするのはいかがなものか。というより自分の中に始めると歯止めのききにくい好色さが眠っている自覚のある辰馬は、あまりそれを表に出したくないのである。

「だめですか?」
「あれだな、向こう1年待て。おれが卒業して、士官学校入ったら……」
「そんなの無理ですよぅ。いくらなんでも気が変になっちゃいます!」
「とはゆーてもなぁ……いや、あれか? 我慢できない感じ?」
「はい……少しおかしくなっちゃいそうです……」
「……んじゃ、一回だけな。一回。それでどーにか……うあぁ!?」

 『一回』の許可を得た途端、瑞穗は辰馬を押し倒す。辰馬は50キロ前後しかなく、瑞穗はその豊満すぎるPカップの重さが20キロ超のために70キロ近く。体格差もわずか3㎝であり、油断している状態だと瑞穗のどんくささを差し引いても押し倒される。特に、淫魔の性質が発現している今の瑞穗は、快楽をむさぼるために身体能力の引き上げを受けている。

「ちょ、お前、いきなり押し倒すな、ばかたれ。なんでいつもそーいうやりかたで……」
「それは、辰馬さまがかわいーからです? だからイジメたくなっちゃうんですよぉ~?」
「ふざけんな黙れドS! まさかお前から加虐発現が飛び出すとは思わんかったわ!」

 辰馬は完全にマウントを取られた状態でじたばた暴れるが、瑞穗は太腿の圧迫だけで辰馬の動きを完璧に制圧する。普段の瑞穗とはまったく、わけの違う身体能力だった。

「それじゃ、しますね? 辛くても苦しくても、やめてあげませんけど?」
「ひ……や、うっぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」

 辰馬の悲鳴を、談話室でゆかが聞いた。

「ねーねー、美咲? いまのお声なぁにぃ?」
「ゆかさまがお気になさることはないことです」

 主君である新羅家正妻9才の無邪気な疑問に、晦日美咲《つごもり・みさき》は怜悧に答えつつ内心で頭を抱える。

 新羅さんの閨房《けいぼう》事情をどうこう言うつもりはありませんが、これ以上ゆかさまの情操教育に悪いと、少し懲罰が必要かも知れませんね……。


・・
・・・

「くぅ、っあ……ぉあっ……くひ……」
「あんっ、ん? も、もっとです、辰馬さまぁ?」
「ちょ、すこし……休憩……つか、一回だけって……ひぃぃ……」
「もっと、もっと、あぁっ、もっとぉっ?」

 恐るべきは淫魔の好色。辰馬は一方的に搾精され、搾精され、搾精され、死ぬほど搾り取られた。こと閨事《ねやごと》に関して、新羅辰馬にとって神楽坂瑞穗以上に恐ろしい相手はない。一度スイッチが入るともう、普段の清楚が嘘のような貪婪になって足腰立たなくされてしまう。アスリートである雫だってここまでではない。


・・
・・・

「大変、申し訳ありませんでした!」

 翌朝。我に返った瑞穗は辰馬の前で全裸土下座である。全裸である必要はないというか、出来ることならさっさと服を着て欲しいのだが、深く深く反省した瑞穗は服を着るより前にまず謝罪なのである。やはりこの子はどこかおかしい。

「いーから服着れ。あと、頼むからガッコはじまるまでちょっとだけ寝かせてくれ」

 心底嘆願する辰馬、そこにドアが開き。

「たぁくんおはよー! って、あれ、あれれれれ?」

 というおねーちゃんが、今までの普段とはなぜか違う風に不機嫌に眉根をつり上げ。

「辰馬、起こしに来てあげたわよ……って……っきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」

 西方の姫君は巨大ゴキブリでも目にしたかのような絶叫を発した。

「ぁ……おはようございます、牢城先生、エーリカさま」

 二人のライバル相手にのんきに応じる瑞穗に、辰馬はこりゃ今日は休憩どころじゃねーよなぁ、と嘆息する。兵学だなんだより、結局の所こちらの方がよほどに難しい。

………………

以上でした、それでは!

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