有坂総一郎 2022/10/29 00:00

考察:大東亜共栄圏と大陸縦貫鉄道<3>

4,支那方面輸送体系

支那方面は南北軸が二軸存在する。京漢幹線・粤漢線と津浦幹線・海南線である。前者は北京~武漢~広州を結ぶ路線で香港に連絡し、後者は天津~徐州~南京~上海を結ぶ路線。

ただし前者は新郷~漢口(武漢)が重慶政府側勢力下であるため不通。また、武昌(武漢)~広州も重慶政府側勢力下のため不通である。しかし、北京~開封は毎日一往復運転を行っている。

■京漢幹線:北京~開封 毎日一往復運転

201レ:北京1050→保定1559/1614→石門(石家荘)2110/2135→彰徳(安陽)0747/0805→新郷1200/1225→開封1700
北京~新郷622.4km、新郷~開封102.9km 表定速度24km

202レ:開封1120→新郷1550/1615→彰徳(安陽)2028/2048→石門(石家荘)0657/0722→保定1149/1206→北京1720
北京~新郷622.4km、新郷~開封102.9km 表定速度24km

■津浦幹線:北京~浦口(南京) 毎日一往復運転

101レ:北京0815~天津北駅1159/1202~済南2050/2105~徐州0750/0820~浦口(南京)1750
北京~天津139.4km、天津~浦口1013.2km 表定速度34km
102レ:浦口(南京)1030~徐州2030/2100~済南0720/0735~天津北駅1651/1654~北京2030
北京~天津139.4km、天津~浦口1013.2km 表定速度34km

■海南線:上海~南京 毎日特急・急行・普通計六往復

特急1レ「天馬号」:上海1030~南京1540
上海~南京311km 表定速度62km
急行3レ:上海800~南京1330
上海~南京311km 表定速度56km
急行5レ:上海1500~南京2045
上海~南京311km 表定速度54km
特急2レ「天馬号」:南京1100~上海1610
上海~南京311km 表定速度62km
急行4レ:南京800~上海1330
上海~南京311km 表定速度56km
急行6レ:南京1500~上海2045
上海~南京311km 表定速度54km

※ジャパン・ツーリスト・ビューロー発行満州支那汽車時間表昭和15年8月号より抜粋

これを基礎とする限り、華北交通の運行区域の運転本数は区間運行がいくつかあるのを除くと一日一往復が基本となっている。北京に近い地域や山東半島は一日三往復程度が確保されている。特に北京~天津は特急や急行などを含んで九往復となっている。内五往復は奉天と結ばれている。

しかし、華中鉄道の運行区域は比較的運行本数が多い。これは運行区域が華北交通よりも少ないことと華北交通の運行区域にくらべるといくらか治安が安定していることも影響しているのだろう。また、大都市間輸送という点も大きいのかも知れない。

これらの情報から前線地域に近づくほど治安の悪化と輸送効率の低下が裏付けられていると言えるだろう。

別に書いたが、表定速度が時速20km以下の列車が9本あり「日本一の鈍足列車運転線区」とも評される線となった倉吉線(簡易線規格)のそれと比べても引けを取らない鈍足だ。だが、これでも京漢幹線:北京~開封の201レ、202レは、1・2・3等各等級を完備した列車なのである。

保線状態が悪いのか、そもそもの線路規格が低いのか、それともそのどちらもなのかは判断しづらいが、抗日ゲリラのお陰で保線と破壊の繰り返しであったのは間違いない。それは華北交通が鉄道愛護村を沿線に誘致して住民に保線を協力させていたことから裏付けられる。※尤も愛護村の住民が昼に修復して夜に破壊しているというマッチポンプであるという事実も付随するそうだが。

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