ヴァレンタインＳＳ【年下執事くん×落ちこぼれ魔女 過去編】

お世話になっております、ジャク三世です。
大変お待たせしました！
2月滑り込みギリギリですが、予告していたヴァレンタインＳＳの投稿です！

内容は【落ちこぼれ魔女のあなたが大好きな年下執事くんに処女を捧げて幸せなお嫁さんになる話】の、主役二人の過去編です。最初から最後までライ視点、というかライの妄想のお話です。会話と擬音メインで進行する軽めの読み物となっております。

タイトル【お嬢様と「う゛ぁれんたいん」したい俺の話】

【※諸注意とおことわり※】
※説明がとくに行われない、本編を読んだことを前提に進んでいくお話です。
※本編で語られる二人の過去について、若干のネタバレを含んでおります。
※えっちシーンは♡喘ぎや擬音が使われており、また、主人公視点ではなくヒーロー視点で進行します。
※えっちシーンはライ少年の妄想なので、色々と彼の都合のいいように進行します。
※過去編と言っても本編開始のちょっと前なので、ライはショタではありません。

導入(ライと大魔女の会話)はどなたでも、
話の前半まで（ライの独白⇒お嬢様との掛け合い）はフォローすれば、
後半のＲ１８シーン（ライが妄想の中であまーくお嬢様をいただきます。キス、クンニ、手マン、白昼夢から覚めてエンディング）はこの記事のバックナンバーご購入で閲覧可能となります。

　お楽しみ頂けましたら幸いです！

お嬢様と「う゛ぁれんたいん」したい俺の話

「――――お館様、10時のおやつはチョコレートですよ」

　窓の外に灰色の空が広がる、しんと冷え込む冬のある日。
　入室を「すきにすればぁ」と許された俺が声を掛けると、キレイな執務机――･･･もとい、書類が床にはたき落とされた執務机に突っ伏しておられた館様が顔を上げられた。

「あら？ ついにこっちでもヴァレンタイン文化が爆誕したの？」

　サイドワゴンに乗った冷えた陶器の皿の上、ハートやら花やらで飾り付けられた芸術的なチョコレートをしげしげと眺めながら、お館様はどこのチョコレートメーカーの戦略かと続けてご質問された。
　しかし、俺は答えを持ち合わせては居なかった。いや、この世界の誰にも答えられないだろう。
　お館様は異世界のご出身だから、時折こうして俺たちには理解できない会話をふっかけてこられるのだ。

　俺が名前が違うだけで同じ事かもしれないから、と「う゛ぁれんたいんぶんか」なるものの説明を求めると、お館様は９００年以上前に経験した故郷での記憶を、昨日のことのようにスラスラと語って下さった。

　曰く、本来はどこか遠い大陸の聖人の名を冠した感謝を伝え合う行事だったが、お館様の国に伝わってきたとき、あまり知名度のなかったその行事を利用して商品を売ろうと考えたチョコレートメーカーがあった。そのメーカーがなんだかんだと頑張った結果、お館様の国は「女の子が好きな人にチョコレートを渡す愛の告白の日」としての「ヴァレンタイン文化」が根付き、翌月の「ほわいとでー」が「チョコをもらった男の子が何か白いものをお返しする日」として定着したらしい。

「･･･え？ 女性からの愛の告白に男性が『何か白いもの』を返す･･･？」

　その意味深な限定の仕方はなんなんだ、と思わず口に出すと、お館様がケタケタと笑って「やぁね、精子じゃないわよ、なんか砂糖が白いから？とか、純粋？なイメージとか、そういう感じのあれよ」と、分かるような分からんような説明をして下さった。

「まぁ、『恋愛』『甘い』っていう連想で運んでるわけだし？ 臭くて不味くておなかに入れたら妊娠しちゃってお先真っ暗になるものは、趣味が合うカップル間でお好みで、って感じかしらね」

　後は「えーぶい」や「まんが」の話だ、と。また理解不能の単語をぽんぽんと無遠慮に使いながら、お館様は俺が遙々押してきたサイドワゴンの上からチョコレートをひょいっとつまみ上げられた。

「んー、これ、なんかゴテゴテついてて食べにくそうね。あ、やだ！ 年とると映えるかどうかでものが見れなくなるのね～！ときめきが減って寂しいわ～」

　「ばえ」なるものは理解できないが、お値段の大部分を占める芸術性が不要なものだったことはよく理解できたし――･･･

「よーし！ おやつがイマイチだったからやる気起きなかったってシツジチョーに言ってきて！」

･･･――かつて世界を救ったこの大魔女様が、俺たちを上司の八つ当たりから救ってくださらないことも、しっかりと理解できたのだった。