プロローグ まだ見知らぬアナタへ[音声作品 好きになったらダメなのに エピソード0]
こちらでは初めまして!シナリオの羽山千鳥ですっ!
2月22日発売の第三弾音声作品
好きになったらダメなのに
~頼れる人妻上司美帆さんはエッチは上手いけど愛を知らない~
のシナリオ担当させていただきました~!
なぜ、シナリオライターがCi-enに来たかというと
書き下ろしのプロローグっすよ!!
ふぉふぉふぉ!
今回の音声作品が最高すぎて、もぉ~~書きたくてたまらなくなりまして
エピソードゼロを書いてしまいました。
ぜひこちらのプロローグを読んで、販売開始まで熱く、
ギンギンに昂ってお待ちくださいね!
はぁ~、もうねっ!これはですね!
CVの柚木つばめさんの低音ボイスが脳内に聞こえてきそう~~!
ふふふ、想像してみてください。たまらん~~って感じがしますよぉ!
以上、羽山でした!ヒュー!人妻最高~!
素敵な挿絵をミツギさんに書いていただきました…!
応援イラストありがとうございます!
プロローグ まだ見知らぬアナタへ
ふとパソコンの画面から顔を上げる。
「あら……もうこんな時間」
すでに日付は変わって日曜日になっていた。
そこでようやく、私は作業の手を止める。
「ん~~……はぁ、体が冷えてしまったわ」
ぐぐっと背もたれに寄りかかって固まった背筋を伸ばす。
作業に夢中で、自分の指先が冷えていることにも気がつかなかった。
思わず、手と手を擦り合わせて椅子から立ち上がる。
エアコンはゴウゴウと音を立てて稼働しているし、
厚いカーディガンだって前を留めてしっかりと羽織っている。
しかし、やはりどこか”寒さ”を感じる。
理由はわかってる。こんな広い家にひとりぼっちでいるからだ。
さて、コーヒーでも飲もうと一歩踏み出した時にスマホが鳴る。
メッセージアプリの音だ。
「あっ……!」
ぱっと手に取って確認する。なんでもない、ただのセールのお知らせ。
一瞬でも夫からの返事を期待した自分に嫌気がさす。
長期の出張だと夫から連絡が来たのはもう一年前。
どこへ行き、いつまでかの返事は来ないし、メッセージは既読にならない。
毎月生活費が振り込まれるのを眺めて生存を確認し、
日に一度はお伺いのメッセージを送る。
もうルーティンと化しているむなしい作業だ。
半年前、親切な友人が夫が女性と肩を組んで歩いていたと教えてくれた。
今にして思えば、私の中で何かが壊れたのはその時だったと思う。
そして馬鹿な私は、ようやくそこで夫は私に関心が無いのだと気がついた。
それでも、指輪だけは外す気になれなくて。
「はぁ……気が重くなるから思い出したくないのに」
無意識に左手の薬指に触れる。
硬く冷たい金属の輪、今はそれだけが彼がくれた気持ちのすべてだった。
気を紛らわせようと奥歯を噛んで、首を振る。
薄暗い部屋の中で、パソコンの画面だけが私の歪んだ顔を照らしている。
そこには、完成したばかりの仕事のマニュアルと、
新入社員向けのウェルカムボード用のポスター。
今度の火曜日に新人の男の子が入社してくると聞いて、
私が個人的に用意したもの。
「……喜んでくれるかしら」
ふっと口をついて出たのはそんな言葉だった。
不安と緊張と、ほんの少しの期待が入り交じった声音に自分でも驚いてしまう。
何かが変わる気がするだなんて、そんな夢みたいなことあるわけがないのに。
「って、私ったら……ふふ、やっぱり浮かれてるのね」
新人に気持ち良く仕事をしてもらうためだなんて言い訳で、
本当はただ、このどうしようもない寂しさを埋める行為なのかもしれない。
それでも今はただ、まだ見ぬ彼へ精一杯の気持ちを込めて。
ほんの少しあたたかくなった頬に手を当てて、私はもう一度小さく笑った。