投稿記事

創作BLの記事 (17)

黄昏の梅干し 2022/09/20 18:14

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

黄昏の梅干し 2022/09/17 23:19

#赤青:番外編・まるで桃春の画のごとく【R18】【再掲】

「あなたは逃走経路となりうる北側を塞いでください。そしてあなたは……」

 民街の地図上を、鋭利な簪の先が流れるように指し示していく。そのしなやかな仕草に見惚れる者もいるだろう。しかしそんな素振りを少しでも見せれば、この太守補佐は容赦なく官を剥奪し、路頭に迷わせることも厭わない。

 ようするにそれだけ任に対して真摯なのではあるが、まるで冰《こおり》のような補佐だと、太守館に勤める文武、そして女官たちは噂する。当然耳に入っているであろうその噂を知って尚も、冷たく光る青い瞳には畏怖の念さえ覚えさせられた。

「それでは、みな各位置へ。必ず任を遂行するように」
「――はっ!」

【 かりかり梅プラン 】プラン以上限定 支援額:100円

プランに加入すると、この限定特典に加え、今月の限定特典も閲覧できます 有料プラン退会後、
閲覧できなくなる特典が
あります

バックナンバー購入で閲覧したい方はこちら
バックナンバーとは?

月額:100円

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

黄昏の梅干し 2022/09/16 23:13

#赤青:番外編・白絹の【再掲】

「喧嘩だ! ちょいと誰か止めておくれよ」

 その声を聞き、青明は咄嗟に駆けだした。
 市井の視察中、突如聞こえた声だった。太守である赤伯とは別行動をとっている。これが殴り合いや刃傷沙汰にまで発展しているとしたら……単独で収められる問題であることを願いながら、人だかりの中に飛び込む。

「なにごとですか」

 補佐様、と野次馬たちが口々にほっとした声を漏らすと、中央で揉み合っていた人影は動きを止めた。それは男と女が一人ずつであった。

「両者ともに、手を離しなさい」

 青明が淡々と言うと、男と女は再び睨み合う。女は男の髪を掴み、男は女の衿元を掴んでいる。

「早くなさい。離さなければ召し捕りますよ」

 三、二……と青明が数え出せば、ようやく彼らは互いを解いた。

「なにを揉めていたのですか。このような往来で」
「こ、こいつが……可愛げのねえことばかり言うから!」
「ちょっと! そう言うあんたこそ分かってないんじゃない!」

 ……はあ。遠慮ない青明の溜息が、やり合う声に紛れて消える。薄々勘付いてはいたが、ようは痴話喧嘩というやつだ。

「せっかく髪飾り買ってやったのに、趣味が悪いとか言うのはお前だろ!」
「なによ!  それでも趣味の悪いこの簪着けてあげてるじゃない!」

 女の黒髪には確かに簪が挿し留められている。青明は内心で、特段彼女に似合わないものでもない、と意外にも冷静に思うことができた。
 近ごろ流行りの珠飾りがついているあたり、決して男の美的な感性が欠陥しているわけではないように見える。……いや、そうではなく。

「お前はいつもそうだ! 夫である俺を馬鹿にして、感謝の言葉もなければ罵ってばかり! 愛想尽かされても仕方ねえだろ!」
「は? 狭い男ね! 言わなくたって……あたしがあんたをどう想ってるかくらい分かってよ!」

 あ……と短く呻いたきり、男は開いた口をぴたりと止めると、瞼をしばたたく。周りで観戦してい野次馬たちは堪えきれず、どっと笑い声を弾かせた。

「なんだよ、素直になれないのか!」
「かわいいなー!」

 声援に近い言葉があちこちから投げかけられる。女は耳まで真っ赤にすると、うるさいわよ! と誰にともなく怒鳴った。

「だけどよ、俺も全部が分かるわけじゃねえんだ。たまには素直になってくれよ」
「……な、なによ。簪だって……本当は嬉しかったし、気に入ってるの……ただ、買いに行くなら一緒に行きたかったなって」

 一体、なにを見せられているのか。青明は一つ手を打ち鳴らすと、その鋭い音で騒々しさに静寂を戻した。

「……よろしいでしょうか。いたずらに騒ぎを起こすようでしたら、次こそ引っ立てますので」
「はい……すみません。お前、帰るぞ」

 見物の輪は散り、件の夫婦も青明に頭を深々と下げると、肩を並べて去っていく。

「ああ……」

 青明は何度目か分からぬ溜息をついた。とんだ茶番に付き合わされたものだ。呆れたためかどっと疲れた。

「おーい! せーめー!」

 徐々に近づいてくる声。およそ太守とも思えぬ無邪気な呼び声だ。あわせて軽やかな足音も間近に迫ると、青明の目の前で止まる。

「……お疲れ様です。そちらは?」
「おう、異常なしだ。青明は? 一人で大丈夫だったか?」
「は? 異常もありませんし、一人で問題ないに決まっているでしょう」

 青明は夜空色の髪をさらりと流し撫でると、進んで歩き始める。うん、それならよかった。と、赤伯の温かな声が背中にぶつかった。
 ――たまには素直になってくれよ。先ほどの夫婦のやりとりが頭をよぎる。

「どうした?」

 先を行く青明の足が止まり、赤伯もそれに倣って立ち止まる。
 ――彼も、そう思っているだろうか。ただでさえ青明は小言が多い。加えてこの態度だ。
 『馬鹿にして、感謝の言葉もなければ罵ってばかり!』そんな覚えが、ないわけでは、……ない。

「あ、の……、……気にかけてくださり、ありがとうございます」

 もぞもぞと唇を動かすと、青明はまた、咄嗟に駆けだす。空色の衣が風に揺れた。

「えっ? なんだって?」

 耳に届き損ねた言葉を追いかけるように、赤伯は地面を蹴った。



おわり

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

黄昏の梅干し 2022/09/16 23:05

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

黄昏の梅干し 2022/09/16 22:53

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

1 2 3 4

記事のタグから探す

月別アーカイブ

記事を検索