ツクールMVの解像度を1920×1080(フルHD)にできないか実験してみた
こんちゃっす。システム担当の破廉荒です。
SHINOBUからイラストが上がってきたのでゲームに組み込んでみたのですが、ツクールMVデフォルトの低解像度ではどうしても粗くなってしまいます。
ウィンドウもこのサイズならまだいいのですが、24インチモニターで全画面にした場合、明らかにぼやけが目立ちます。
前作スクールアライブもツクールMVで作っているのでまぁ予想はしていたのですが、改めて見てみると2人で「うーん…」となってしまいました。
※SHINOBUの都合で元画像は高解像度で描いているため高解像度対応は可能
誰もが大きなモニターでプレイするわけではないのですが、それでも2022年現在、ツクールMVのデフォルト解像度である816×624はやっぱり小さい。
そこでどうにか解像度を引き上げられないか検討してみました。
※本来であれば一番最初に検討すべきところなのですが、最初はデフォルトサイズで行く予定だったのと、現時点であればギリギリ変更可能なレベルだと判断したので試してみました
どうせやるなら1920×1080にしてみて、どんな問題が起こるのか、それらの問題に対処できそうか…という実験です。
解像度の引き上げ自体は簡単にできるけど…
実はツクールMV(現在のバージョン)では解像度の引き上げ自体は簡単にできます。公式プラグインの『Community_Basic』で「screenWidth」と「screenHeight」のパラメータを変更するだけ。
ただし本当に解像度『だけしか』変わりません。
つまりどういうことかというと
このように、ツクールMVはデフォルトの816×624想定で素材やプログラムが作られているため、解像度『だけ』を変更すると様々な問題やサイズの違和感が発生してしまいます。
この画面だけでも
- 戦闘背景画像
- エネミーの画像
- エネミーのHP等ゲージ
- 戦闘コマンドウィンドウ
- 主人公のHP等ゲージ
のサイズ感がおかしいのがわかります。
それ以外にも想定される問題として
- メッセージウィンドウのサイズ感
- フォントのサイズ感
- アイコンのサイズ感
- マップタイルや建物、キャラクタードットのサイズ感
- 画面が広大になるため小部屋など小さなマップが合わなくなる(画面の大部分が真っ黒の画面になってしまう)
- ツクールMV用に作られている無料・有料素材が全てサイズ感が合わなくなる
- レイアウト系のプラグインで幅や高さが設定されている部分は全て調整が必要になる
- そのほかプラグインで座標を指定しているものは調整が必要になる
- 使用するプラグインによっては正常に動作しなくなる可能性がある
制作ツールにRPGツクールを選ぶ大きな利点として、無料・有料問わず多彩な素材やプラグインが出回っていることが挙げられますが、それらがそのままでは使えない、画像やレイアウトは拡大して引き伸ばして違和感が少ないならまだいいけれど、ものによっては思うように使えなくなる可能性も考えられます。
特に816×624(デフォルト)→1920×1080(フルHD)への変更ともなると、単純なサイズが大幅に変わるだけでなく、縦横比(アスペクト比)も変わってしまうため、画像素材も単に拡大して引き伸ばすだけでは大きな余白ができてしまい実用に耐えません。
さらに現段階で想像している以外の問題が制作中盤や終盤で出てきてしまった場合、スムーズに対処できなければ何らかの妥協が必要になるか、最悪作り直しになる可能性すらあります。
とりあえずやってみる
ですがまぁものは試し。現段階で想定できる問題全てに対処してみて、対処が不可能だったり、異常に工数が増えてしまうようであれば諦めも付きますし、全て問題なく対処できた場合はそこで改めて解像度を引き上げるかどうか検討すればいいのです。
その過程でツクールの仕様がより深くわかったり、知らないプラグインを発見したり、解決のために入れたプラグインが他のプラグインと干渉して問題が起きたりすれば、現段階では想定できなかった問題が想像できるようになるはずです。
戦闘背景画像
ということで、とりあえず見えている範囲から手を付けてみましょう。
戦闘背景画像です。
とりあえず素材の画像を拡大して一部切り取り、1920×1080サイズにしてみます。縦横比があまりにも違うためこのまま使うのは難しいですが、この方法で問題ないのであればフルHDサイズの背景画像を作ったり、素材を探すなどすれば実現可能ということになります。
しかし予想外の問題が。
いやなんぞこれ。この下の部分。
画面サイズぴったりで作ったのになぜか画像が途中で途切れて、もう1枚同じ画像がループされているではありませんか。
違和感は感じていたのです。なぜならツクールMVのデフォルトサイズは816×624なのに、デフォルトで用意されている戦闘背景素材のサイズは1000×740なのですから。
どういうわけかツクールMVのコアスクリプトでは、『解像度816×624の時、1000×740の戦闘背景をした場合に画面ぴったりに戦闘背景画像が収まる』という謎の処理がされているようなのです。
つまり解像度を変更した場合、戦闘背景画像を画面サイズピッタリで用意しても、ツクールMVはそのままではきれいに表示してくれないということ。
この問題を解決するには
- この変なプログラムを無効にする(コアスクリプトをいじる)
- 解像度と画像をデフォルトの縦横比(816×624に対して1000×740の比率)に合わせる
どちらかが必要になります。
2は現実的ではないというか、対症療法だし、そもそも根本的におかしいのはコアスクリプトの方なのでそっちをいじるべきですが、果たして私にツクールの膨大なコードの山からこの部分を見つけ出せるのか…
と思っていたのですが
- 他に解像度を変更するプラグインはないのか
- あるとしたら、同じ問題に直面して対処済みではないだろうか
と思ったので探してみました。
ありました。
ツクール準公式プラグインの『YEP_CoreEngine』
これでスクリーンの幅と高さ(これがそのまま解像度になる)を調整して
よし。謎の画像ループ処理はなくなりました。
戦闘画面のウィンドウ、文字、HPなどのバー
あとは画面サイズに合わせてウィンドウ、文字、HPバーなどの大きさを調整してみましょう。
ウィンドウ幅だけ細いのが違和感ありますが、戦闘画面はなんとかなりそうです。
※プラグインはフトコロ様の『FTKR_DisplayEnemyParameters』と『FTKR_CSS_BattleStatus』を使わせていただきました。
ステータスアイコン
アイコンが小さかったので『YEP_CoreEngine』でアイコンサイズも2倍にしてみました。
これだけだとアイコン画像が縦2列横2行で4つ表示されてしまうので、アイコン画像も2倍にしてみます。
テスト中なので余計なサンプル画像が表示されてしまっていますが、それはともかくアイコンサイズもいい塩梅です。
が、ここで問題が。
制作画面のスキル設定画面でのアイコン選択は、元のサイズを1マスとして計算するよう設計されているらしく、面積が4倍となってしまったアイコン画像ではアイコン番号76番はこのアイコンの左上4分の1と認識されてしまうようになりました。
これはゲーム制作においてだいぶ嫌な問題ではあるのですが、あくまで制作上の問題でありプレイヤーには影響がありませんし
- データベースを設計してしまってからアイコン画像を拡大する
- 万一後からデータベースをいじりたくなったら、その時だけアイコン画像の大きさを元に戻す
ことでさほど大きな問題にはならないように思います。
ただ、様々な素材を拡大していくと今後このような問題がいくつも発生する可能性が高く、そのうち想定外かつ致命的な問題が発生しうる可能性が高い、そう思えるタイプの問題です。
マップのタイルサイズ
タイルが問題になるであろうことはある程度想像していました。というのもいくつか理由があります。
まずフルHDでは画面サイズが大きすぎるためにデフォルトの48×48を1マスとするタイルでは建物やキャラクターが小さくなりぎてしまいます。
かといってマップタイルを全て自作するのはSHINOBUの作業工数的に現実的ではありません。
しかも仮に1マスを大きくできたとしても、アイコンのように、マップタイルは1マス48×48を前提としたプログラムが髄所になされていることが想像できます。
- マップサイズを拡大したらそれに合わせて制作画面の1マス(イベントを配置するところ)も大きくなってくれるのか
- 1マスが大きくなったらキャラクターの歩行ドットもそのサイズに合った画像を用意するだけで正常に動作するのか
正直試す前からどちらもNOな気がしてなりません。
単純に倍にするという手法ではうまくいかないだろう、と思いつつ、まずはとりあえずやってみます。
公式プラグインの『ChangeTileSize』を使ってタイルサイズ(1マスの大きさ)を96×96に設定してみます。
やはりこのままではシステム上のタイルサイズと画像のサイズが合っていないのでおかしな表示になってしまいます。
では単純に画像を拡大した場合どうなるのでしょうか。
きれいだった村が「なぞのばしょ」になってしまいました。
タイルセット画像にはツクールに読み込ませた時正常に動作させるために『制作の際のルール』が定まっていたはずなので、やはり単純に拡大しただけではうまくいきません。
しかし使用するタイルセット全てを分解し、拡大調整したうえでそのルールに基づき配置し直す、となるとそれだけで作業量が膨大になることはゆうに想像がつきます。
一旦再検討
手軽に試せることはひと通り試してみたので今回の実験はこのあたりで一旦ストップし、得られた情報を元にSHINOBUと相談して最終決定を行います。
今回の実験は一番多く複雑な問題が起こりそうな高解像度かつデフォルトと異なる縦横比で行いましたが、選択肢がフルHDとデフォルトの2択しかないわけではありません。また、フルHDにするとしても「ツクールMVの素材をそのまま大きくする」以外にも方法はあります。
例えば妥協案として
- タイルサイズはデフォルトのまま、マップをフルHDに合わせてイラストで描き、裏で通行リージョンを設定してマップを作る
- フルHDではないサイズ(チップセットなどがデフォでも違和感のないくらい)にする
- とりあえずデフォルトサイズで完成させ、その後改めて高解像度版の開発に挑戦してみる
といった選択肢もあります。
せっかくなのでデフォルトサイズよりは高解像度で作ってみたいと思いますので、応援して頂けると幸いです。頑張るますっ!