イーグリ設計局 2018/05/12 15:22

皆さんの中に職人技がある

近年はテレビ報道などで町工場の「職人技」が持て囃されています。
都内の一角にある無名の町工場には実はすごい職人がいて、作った製品はとある大企業の有名製品で重要な部分に使われていて…というような大企業の影に隠れて今まで表舞台に上がってこれなかった企業にスポットライトが当たっています。
しかし、これらの企業にはなぜ今まで脚光が当たってこなかったのでしょうか?

マスプロダクションとは職人技の排除だった

マスプロダクション(大衆による大量生産)とは作業のマニュアル化によって「誰がやっても手段や結果に再現性のある」工程づくりを目指すものであり、「作業者の熟練度によって大きく結果が左右される」ような職人技は生産ラインから排除されていきます。
本田技研工業(ホンダ)の創業者である本田宗一郎はバイクの設計を指示するにあたって、「職人技が必要なものは作るな」と語りました。
日本製のバイクや乗用車は戦後間もない頃は欧米では劣悪な品質のものと酷評されていましたが、設備や技術が更新され、品質管理のノウハウが蓄積していくとアメリカの自動車業界から脅威と看做されるメーカーにまで成長していきました。
現在の自動車メーカーの製造ラインでは、正社員も一定数いますが期間従業員(いわゆる期間工)や、派遣労働者もかなり在籍しており、溶接どころか運転免許さえ持っていない従業員もいます。
これは分業とマニュアルが徹底的に進んだ結果であり、特定のスキルを持った人間は工場全体の中で最低限だけいればよいという体制が出来上がったためです。

こういった中で、「職人技」というものは人の目の届かないところへ追いやられてしまい、職人とは一体どういう人だったのかも忘れ去られてしまうことになりました。

日本におけるマスプロの危機

ところが、21世紀に差し掛かると、中国・タイ・ベトナムといった新興国でマスプロダクションが発展し、日本におけるマスプロは品質での優越性を維持しながらも、コストカットを推し進めなければならないという苦境に遭遇します。
自動車業界では日産がルノー傘下に入り、家電業界ではシャープが台湾企業に買収されてしまうなどこれまでの日本人のアイデンティティを揺らがす事件が続発しもはやトヨタやホンダといった日本を代表する大企業の看板も絶対的なものではないと露見してしまったのです。
そこで、大企業によるマスプロから中小企業の職人技へと関心が移行していったのだ、と考えられます。

皆さんの技も職人技だ

職人技とは、習得に気の遠くなるほどの年月がかかり、かつ「誰がやっても過程や結果に再現性がある」保証ができないスキルなのです。
これを読んでいる皆さんの中にも、実は職人技が潜んでいます。それは、学校や会社が終った後も、寝る時間や友達と遊ぶ時間を惜しみながらも、お金が出るわけでもなく一生懸命打ち込んできた創作のスキルです。
テキストや曲を書き、または絵を描き、またはゲーム制作を進めてきた皆さんのスキルです。
私はすでに長編RPGを3本完成させています。そのへんの人なんて、いくら時間もらったどころで、中編すらマトモに作れません。これは私の立派な職人技だと誇っています。まだお金にはなっていませんが。

私のゲーム制作は友人や家族から「お金にならない」という理由だけで散々バカにされてきました。しかしあとひと押しだと思っています。
新作の東方鉄飛船BPはすでに累計販売本数500本に迫りつつあり、このエロRPG氷河期の中でかなり奮戦していて、かなりの手応えを感じています。

皆さんの中にも似たような悔しい経験をしたことがある人もたくさんいると思います。
しかし、バカにされたままくすぶって、夢を諦めてペンを折ってしまうような、そういう悲惨な創作活動の終わり方をしてほしくないのです。

私なぞよりデキる作者さんは星の数ほどいました。しかし皆夢を諦めていなくなってしまったのです。
なぜ彼らはいなくなってしまったのでしょうか?それは私は彼らが「技術をお金にする能力」に関心がなかったか、またはまったくお金に関するセンスがなかったかのどちらかだと考えています。

私は経済学や経営学を専攻してません。そのへんに関しては、東洋経済あたりを読んで勉強してはいますが、ド素人です。
しかし、創作活動で生計を立てる、という極めて小さな事業にはマクロ経済学だの、ミクロ経済学だの、そんな大げさなものは要りません。
ゲームや創作にばかり熱中しすぎないで、時としてニュースを見る程度でよいと思います。

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