ヒルチャールに穢されていく高潔な女たち ジン、リサ編
『原作』原神
『人物』ジン、リサ
『あらすじ』ヒルチャール討伐に向かったジンとリサを待ち受けていたのは喋るヒルチャールたち。彼らは人間との間に生まれた新種だといい長く太い肉棒を見せ付けるのであった。
※本作品は2024年にはpixivで全体公開を予定しています。
※全体で約14500字程度となっております。
【1】
モンドに本部を置く西風騎士団への依頼は休まることがなく多忙を極めていた。
迷い猫の捜索に、貸し出された本の返却依頼に、食材の調達に、創作料理の品評に、モンドの内外で起きる騒ぎの沈静に、周辺地域の警備に……モンドの民の悩み事はすべて西風騎士団が引き受けていると言っても過言では無い。
そのため騎士団の団員は出入りが激しく、モンドの警備に当たっている者以外は忙しなく毎日が奮闘の連続であった。
「はぁ……」
窓際に立ち景色を眺めながら溜め息をついたのは西風騎士団代理団長ジンだ。輝くブロンドの髪とアイスブルーの瞳をした美女である。純白と青を基調とした煌びやかな騎士装束を身に纏う美女は憂鬱な眼差しでモンドを見ていた。
彼女の悩みは仕事の多さだ。西風騎士団へ毎日やってくる大量の依頼を捌ききれなくなっていた。
「……いけないな。こんな調子ではヴァネッサ様に叱られてしまうな」
「そうね、あなたがそんな顔をしていたら周りの皆も辛くなるわ」
窓のガラスに深い青色の帽子を被った美女が見えた。
「リサか……すまない、少し惚けていたようだ」
リサ。ジンと同じ西風騎士団に所属する女性である。
ジンの青よりも深いディープブルーを貴重としたドレスのような衣服は豊かな胸元は大胆に開かれ、腰部にはスカートともマントとも呼べる布地がついている。
ジン同様にプロポーションは完璧で胸と腰そして長く美しい脚はモンドの男たちの鼻の下を伸ばすことが容易であった。
どこか妖艶さを感じさせる彼女だが美しいお姉さんを思わせる優しい笑みを絶えず浮かべている。
「謝る必要は無いわ。ジン、仕事に精を出すのはいいけれど休むのも大事な仕事よ」
ジンが窓に背中を向けたまま立っているとリサは軽やかなステップで近づき抱擁した。
「お、おい!?」
「だめよ。深呼吸して……わたくしの香りを嗅いでみて」
「なっ?! ん……この香りは……」
あまりにも扇情的な声に驚いたがすぐにリサの言葉の意味が理解できた。モンドの外の風の香りであった。
「さっきまで外に出ていたの。他の団員ならいざ知らず、わたくしにヒルチャール退治なんてさせるものだからちょっと風を浴びてきたわ」
「そうだったな。ご苦労」
モンドの外にはヒルチャールが何体もいる。徒党を組んで悪さをするというわけでないが、たまに余計なことをして暴れるのだ。
「最近ヒルチャールの相談が増えているからな。できる限り対処しておきたい」
リサ以外にも何人もの団員がヒルチャール討伐の任務に当たっていた。おかげでモンドの警備が手薄になるほどだ。
「わたくしが片っ端から退治してきてもいいけれど」
「リサも疲れているだろう、そこまでさせられない。今日は休んでくれ」
ドンドンドン!!
ジンが言い終わる前にドアを激しく叩く音がした。
「なんだ!!」
ドアを開いて入ってきたのは団員の男だった。
「ジン団長! リサ様……失礼しました! ですが急を要する話で」
額にびっしりと汗を掻いていた。急いで走ってきたことは開いたまま何度も呼吸を繰り返す口を見れば一目瞭然だった。
ジンとリサはお互いの顔を見やった。
「焦らず話してみなさい」
リサの声に一度深呼吸をして男は話を始めた。
「清泉町との間にヒルチャールが数匹確認されました。どうやら食料の運送ルートを狙ったものと見られ、被害が出ております! 我々の部隊で討伐を試みたのですが……その……少々手こずりまして……」
「……またか」
以前にも同じ事があった。あの時は各団員が協力し幾つもの依頼を同時進行させたのだ。モンドに滞在していた旅人の協力もあって事なきを終えた。おまけにジンの慰労パーティーまで開くこともできたほどだ。
だが今は違う。旅人は去ってしまったし騎士団で手の空いている者などほとんどいない。
「ジン。思い詰めないで」
「だが今動けるのは私くらいだ……なに体調は万全だ。ここは私が動くのが一番の解決になるよ」
「わかったわ。わたくしももう一仕事するとしましょうか。フフッ、ジンよろしくね」
「ああ頼むよリサ」
報告にやって来た男の顔が明るくなった。
「では、お二人で!!」
「ああ……すぐに向かう。たかがヒルチャール、すぐに倒すよ」
「ええ、わたくしとジンで向かえばすぐですわ」
男は深く頭を下げると部屋から出てドアを閉めた。気配が遠ざかっていくとジンとリサはまた顔を見合わせた。
「どう思う」
「ヒルチャールに手こずるのは良くないわ。でもそうじゃないのよね、ジンはヒルチャールの方に原因があると思っている」
「ええ、何かよからぬ事になっていなければいいけれど……まずは行ってみよう。外の状況を確認しなくてはいけないかもしれない」
二人は装備を整えるとヒルチャール討伐へと向かった。
外に出ると曇っていたジンの顔も明るくなってくる。空気と風によって彼女の体調がよくなってきた。
リサも疲労していたがジンの傍にいると徐々に力が回復した。
辺り一面に広がる緑の景色のなかに黒い影が散見される。
ヒルチャールだ。テイワットを彷徨う原始住民。人と同じ四肢を持つ二足歩行の存在だが知能と精神は既に失われている。顔のような紋様が描かれた白い面をつけており長い髪で顔や頭が隠れている。
知能がないため戦闘力は低く戦技なども扱わない。だが時として人を襲い混乱を巻き起こす厄介な連中であった。
「いたな……あれが問題のヒルチャールみたいだね」
輸送ルートを塞ぐようにヒルチャールが屯していた。数は八匹。
傍には輸送に使われていた荷車がひっくり返されている。積まれていた食料が食い荒らされている形跡が見られた。屯しているヒルチャールの腹を見ると膨れているのがわかる。
「早く倒してしまいましょうか」
「そうだな。私たちならあの程度、一瞬だ」
ヒルチャールへ近づくと気づかれた。だが手を止めることなく蹴散らす。
「なんだこいつら?! 妙な動きをする!」
「ええ、なんだか荷車を守っているようね……でもその方が纏めて倒せるわ……おしおきしてあげるッ!!」
できれば荷車から引き離して倒したかったが離れなかった。荷車にはまだ食料が積まれているが死守するほどの価値はない。
ヒルチャールは荷車を守るように離れない。そこを狙って蒼雷を放つ。青空が一瞬にして暗くなり雷が降り注ぐ。荷車もろともヒルチャールたちを一網打尽にしてしまった。
「ふぅ……お姉さん達を手間取らせた罰よ」
「さすがリサだ。奴ら一瞬で消し炭だな。でも……ちょっとやり過ぎている気がするな」
「あら、ジンたら、わたくしを労ってくれないの?」
ジンに身体を預けるようにして密着した。
「ああ労っているよ。今日はありが……まて!」
前方にヒルチャールがいたがジンとリサをじっと見ると逃げ出した。どこへ向かっているのか確認していると丘のほうで姿が消えた。
二人はすぐにヒルチャールの後を追う。すると姿の消えた場所に洞穴があった。
「これは……ヒルチャールの巣なのか」
「おかしいわ。ヒルチャールはほら」
リサが指を指した場所にはボロ小屋があった。ヒルチャールが木などを拾ってきて作り上げた家だ。知能がなくとも本能で家を作るのだろう。それは全員が知っていることだ。
「だが洞穴があったら利用してもおかしくない。あまり気は進まないが確認しておこう」
「ジンがそういうならわかったわ」
二人は慎重に洞穴を進むのであった。
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