りっぱな聖竜になるために ~負ければオシオキ、毒責め唾責めニオイ責め修行~
登場キャラクターのソフィアとフェルナのイメージは依頼者様の作品をご覧ください!
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「聖竜様!」
「こちらを! 我が街で作られた一級品の――」
「オ、オラたちの村に魔物が――」
「次の聖竜祭についてですが――」
「おい! オレ達が先だろうっ!」
「なにをっ――」
「貴様ら! 聖竜様の前で――」
「聖竜様っ! 聖竜様ぁあ!!」
かつて初代聖竜セレスエディアによって建国されたと言われるセレストリア聖竜国。
光の力に守られた巨大都市を一望できる霊山には、今日も多くの人々が訪れている。
口々に賛辞や懇願を述べる大勢の人々が向かう先には、彼らが崇め奉るに相応しい巨大な存在が座していた。
「フフフ……慌てないで。 ちゃんと皆さんの話を聞きますからね」
「おぉ……!」
「白く、輝いて……これが……」
「うっ、ぐすっ……私達の旅も、これで……」
ゆったりと、大らかに、まるで母のような温かさで。
降りしきる太陽の光を受け、神々しいまでの淡い輝きを返す純白の体毛に包まれた、王宮よりも遥かに巨大な竜――【ソフィア】は小さな人間たちに向けて微笑んだ。
竜の表情筋による微笑みはヒトのそれとはかけ離れた物であったが、その場に居合わせた者たちは皆息を呑み、涙を流して跪く者までが居た。
人智を超越した存在である聖竜――厳密にはその代行だが――であるソフィアは、光の力で聖竜国を守るだけでなくこうして定期的に人々から願いや陳情を受け、人々の心の支えとなっていた。
「ふむ……悪さをしているのは低級な魔物の群れのようですね。 それではフェルナ、今回の件はあなたに任せましょう」
「うん! 分かったよソフィアさん!」
「おぉ……フェルナ様だ!」
「聖竜フェルナ様!!」
ソフィアの呼びかけに応えるようにして、彼女の足元から子供の背丈ほどの黄色い鱗の幼竜が歩み出た。
【フェルナ】と呼ばれた彼こそは正統なる聖竜の末裔であるが、まだ幼く未熟なため、ソフィアの元で修行している最中であった。
無邪気そうな可愛らしい見た目に違わぬ元気良さと溢れる正義感でもって、フェルナはその小さな胸をドンと打ち鳴らして村人に応える。
「フェ、フェルナ様……どうか、どうかオラ達の村を……!」
「うん! ボクに任せて! すぐにみんなを助けてあげるからね! じゃあソフィアさん、行ってきますっ!」
「あ、ありがたや――っ!? フェ、フェルナ…様……もう…!?」
「あらあら……相変わらず慌てん坊ですね」
うずうずとした興奮を抑えられなかったのか、村人の案内も待たずしてフェルナは小さな羽に似合わぬ速度で風のように彼方へ飛び去ってしまった。
ニオイや顔ぶれで察していたためか村の方角はもちろん正しいが……その場に取り残された村人数名はポカンと口を開けて固まってしまっていた。
「フフフ……まぁ、場所は分かっているようなので問題は無いでしょう。 あなた達は私が魔法で送り返してあげますね。 準備はよろしいですか?」
「へっ!? あっ、そんっ、あ、ありがとうごぜえます……!」
「送り返し……って、うぉっ!?」
「体が、光って――――っ!?」
ソフィアが純白の羽を僅かに羽ばたかせると、先ほどの村人達の足元から体全体に光が広がり、やがて光が収まった時には村人たちの姿は既に消えていた。
世界最高峰の魔力を有するソフィアは様々な高位魔法の使い手であり、村人たちのような魔力の無い人間達を転移させる事などは造作もない事であった。
「さて、次はどなたですか?」
――――――――
――――――
――――
「ふぅ……」
やがて日が落ち、闇に包まれた霊山の頂上で、ソフィアは一匹だけで物思いに耽っていた。
最近はこうして夜に上手く寝付けない事が多い。
厳密には代行とは言え、聖竜という超越種である彼女が睡眠不足程度で体調を崩す事は無い。
しかし、問題は睡眠不足の原因でもある、彼女が抱える"ストレス"にあった。
「うぅん…………」
聖竜代行としての仕事は人間には耐えきれない程の激務であるが、"竜"という超越種であり、またそれを進んで請け負っている彼女にとって、ストレスの種は日々の仕事ではない。
「グルルゥ……はぁあ……」
(ダメですね……そろそろ限界が近いみたいです)
重苦しい唸り声を漏らしながら腹を擦り、彼女はフェルナが飛び去っていった方角へと首をもたげた。
(久々の"獲物"……やはりフェルナに任せず自分で私自ら行くべきでしたでしょうか……)
「ジュル……ジュルル……っ!」
いつの間にかソフィアの巨大な口の端からは粘ついた涎が溢れ、地面に小さな水たまりを作っていた。
しかし、彼女はハッと我に返ったように首を振るう。
(いけませんね……フェルナの修行のため、今は戦いの経験を積ませるべき。 そう判断したから行かせたというのに……)
人々に慕われ、名実ともに"聖竜"と称されるに相応しい強大な力と高潔な精神を兼ね備えているソフィアであったが……彼女の心には一点だけ、黒く濁った特異な感情が備わっていた。
(修行……そう、そうですね……フェルナには修行によってなるべく早く力を付けて貰わなくてはなりません……)
「ジュル……ジュルル……ハァ…ハァア……」
またしても、彼女の口の端からはドロリとした涎が地面に滴る。
人前で決して見せることのない状態で今の彼女が堪えているのは、不調でも空腹でもなかった。
熱に浮かされたような彼女の脳裏に、クリクリとした目の可愛らしい幼竜の姿が浮かぶ。
「ハァ……ハァア……」
(前回から間も空きましたし、そろそろ実践稽古が必要な頃合いですよね……)
「ハァア……んっ♪」
ブボォオオオオオオオオオオッ!!!
ソフィアが長い尻尾を不意に上へ反らすと、その付け根から巨大な重低音が響き渡り、後方へ砂塵が巻き上げられた。
しかし、この霊山において、彼女の"ガス"を嗅いでしまって悶絶し、失神してしまう哀れな生き物はもう既にどこにも居ない。
「フフフ……楽しみですねぇ……♪」
久々に禁を破る事を決意したソフィアは満足気にグルグルと喉を鳴らし、目を閉じて眠りについたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数日後、フェルナが魔物に襲われていた村の問題を解決して戻ってきた次の日のこと。
霊山から少し離れた広い荒野にて、フェルナとソフィアが距離を取って対峙していた。
泰然とした様子でゆったりと佇むソフィアとは対照的に、フェルナは闘志満々といった様子で小さな前足や尻尾を振るい、バチバチと魔力による火花を飛び散らせていた。
「ソフィアさん、また稽古をつけてくれてありがとう!」
「良いのですよ。 あなたを強く立派にすることは私が頼まれた事でもあります」
「うん……よーし、今日こそは一本取るぞぉ!」
「フフフ……その意気です♪ 最近の修行の成果を見せてくださいね」
未熟な幼竜であるフェルナを一人前の聖竜へと鍛え上げるため、今回以前にもソフィアは定期的にフェルナへ実戦形式の稽古をつけていたのだ。
遥か格上の存在であるソフィアに対するフェルナは臆することなく、久々の実践稽古と張り切りを見せている。
フェルナは闘志を漲らせ、後ろ脚に力を入れて前傾姿勢を取る。
ソフィアは姿勢こそ変えないものの、静かに魔力を練っていた。
毎度のこと、開始の合図は無い。
油断しているように見えて全方位への対応が可能な状態であるソフィアに対し、目いっぱい力を溜めたフェルナが突っ込んだ瞬間から二人の戦いが始まる。
「それじゃこっちから……行くよっ!!」
「フフフ……♪」
地面を強く蹴り、小さな翼を羽ばたかせながらフェルナが素早く突進する。
常人ならば反応が難しい速度で一直線に飛翔するフェルナに対し、まるで予め決められていたかのような正確さでソフィアの方から眩い光弾が放たれる。
「よっ! ほっ! ふっ……くっ!? わわっ!!」
羽だけでなく魔力を使ってジグザグに移動するフェルナであるが、ソフィアの光弾は彼女の周囲からどんどん生まれては正確に放たれ、二匹の距離が近づくにつれてフェルナの回避にも余裕が無くなっていく。
(前よりは近づけたけど……やっぱり避けるだけじゃキツいな……!)
「ここらへんが……限界っ! えぇいっ!!」
「あら?」
光弾の密度が更に増し、数発の光弾がフェルナに直撃するかと思われた次の瞬間、フェルナの両手には輝く光の剣が生み出され、殺到した光弾は瞬く間に切り裂かれて消えてしまった。
「以前より光の密度が上がっていますね。 順調に力を付けてきたようですね、フェルナ」
「えへへっ、ありがとうソフィアさん! もうちょっと温存しておきたかったけど……でも、ここからが本番だよっ!」
「フフフ……では、これならどうでしょう♪」
ズドドドドドドドドドォッ!!
「――っっ!? はぁっ!! やっ!! てぇえいっ!!」
先ほどまでは様子見だった事を示すように、ソフィアから先ほどの倍以上の光弾が放たれた。
フェルナに襲い掛かる攻撃は光弾だけでなく水弾や炎弾まで混じっていたが、フェルナはそれらの全てを回避、もしくは光剣で打ち消していく。
フェルナは未だ無傷ではあったが、ソフィアの攻撃の激しさにより、ある一定の距離からは近づけないでいた。
しびれを切らしたフェルナは、攻撃を防ぎながら魔力を練り上げる。
(防いでるだけじゃダメだ……こっちも攻撃しなきゃ!)
「ふっ! はっ! くっ……行けっ!!」
ボボボッ!
ジュウウウウッ……
「――えぇっ!? うわわっ!!」
「フフフ……遠距離魔法はまだまだのようですね♪ んぁ……」
攻撃の合間を狙ってフェルナが光弾をいくつか撃ち出すが、ソフィアの光弾に当たった途端に蒸発するようにして消えてしまった。
二者の光弾の大きさはほとんど同じであったが、魔力の密度に大きな差があったためである。
自身の光弾を打ち消しながら迫るソフィアの攻撃に慌てているフェルナに向けてソフィアが大きく口を開くと、体内から喉元へと魔力が充填されていく。
「これはちゃんと避けてくださいね……ガァアアアアアアッ!!!」
「うぇっ!? うわぁああああああっ!!?」
巨大竜に相応しい咆哮が荒野に響き渡ると同時に、魔力の奔流が極太の光線となったドラゴンブレスが放たれた。
少し掠っただけでタダでは済まなそうな激しい光はフェルナの小さな体を飲み込み――――
「はぁ、はぁ、はぁっ……!」
「うんうん、よく避けましたね、フェルナ」
「い、今のは危なかった……けど、これでっ!!」
間一髪でブレスを躱したフェルナは、攻撃が止んだ隙を突いてソフィアへと肉薄する。
対するソフィアは全く慌てるそぶりを見せず、数多く備えた手札の一つを切る。
「フフフ……いらっしゃい♪」
ズルルルルルッ!!
「うっ!? 出たなっ……!」
尚も無防備のような姿勢を崩さないソフィアの腰のあたり、両側から持ち上がったのは蛇のようにうねる二本の触手であった。
輝くような純白の体と相反する暗い色で禍々しい見た目の触手は普段のソフィアのイメージからかけ離れたモノであるが、れっきとした彼女の体の一部である。
「うっ、くっ! このぉっ!」
「おや、この速度にもついて来られるようになりましたか」
先端が超音速となる勢いで振るわれる二本の触手を、フェルナは必死に光剣で迎え撃つ。
長大な鞭のような触手は小柄なフェルナにとっては脅威であり、ソフィアの体の一部であるためか、フェルナの光剣をもってしても切り裂く事が出来なかった。
そしてその触手は彼女の心の二面性を写すかのように、悪辣で嫌らしい性質を兼ね備えていた。
ギュルルルルルッ!!
「うわっ!? しまっ――――」
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!
「うわぶっっ!? うぐぅうううっ!!」
「フフフ……油断大敵ですよ♪」
激しく打ち付けるばかりであった触手が不意にフェルナの光剣に巻き付き、フェルナはバランスを崩した。
そして、そのまま触手の先端が口のようにグッと窄められると、次の瞬間にはフェルナの顔目掛けて勢いよく紫色の液体が噴出した。
咄嗟に口を閉じて顔を背けたものの、その液体はフェルナの顔に直撃し、目の中にまで入り込んだ。
「ぐぅっ!! め、目がぁあ……!! うぇえっ!! ゲホッ! ゴホッ!!」
「フフフ……♪」
触手から分泌されたのは、ソフィアの体内で生成された酸性の毒液であった。
幼くとも竜であるフェルナがそれを受けて失明するような事は無いが、それでも目は激痛で一時的に開けられなくなり、彼はその場にうずくまるようにして苦しんだ。
おまけに、その毒液はまるで腐敗した排泄物かのような悪臭を帯びており、荒げた呼吸のまま吸い込んでしまった凄まじい腐臭に激しく咳き込んだ。
その様子を見てソフィアは心から楽しそうな笑みを浮かべている。
普段は清廉潔白を体現するような見た目のソフィアであるが、心の内にはこのようにして、自らの悪臭によって相手が苦しむ姿を眺めて楽しむという魔性の悪戯心を持ち合わせているのであった。
「ゴホゴホッ!! ゆ、油断し――――むぐぅっ!!?」
「ほぉら、すぐに立たないとこうやって追撃されてしまいますよ?」
「ぐっ……んぐぐっ!!? ゲホッ!! うぅうううっ!!!」
咳き込みながらも必死に目を擦っていたフェルナだが、突如として顔全体を締め付けるような強烈な圧力が掛かる。
そして同時にヌルリとした感触に顔全体が包まれ、鼻先には濃厚な悪臭が突き付けられる。
大きく先端の口を開いたソフィアの触手が、まるで蛇のようにフェルナの顔に喰らいついているのであった。
状況を悟ったフェルナが触手を顔から外そうとするも、触手の表面はヌルヌルとしながらも強靭で、上手く爪を立てることすらできなかった。
「ふっ、ぐっ……ゲッホッ……うぐぐっ……!!」
(相変わらず凄い力で……く、臭いぃっ!! まずい……このままじゃ前みたいに……!!)
今までの特訓の中で、この触手攻撃を受けた時の嫌な記憶が蘇る。
特訓で何度も敗北したフェルナは、この触手による責めがこれだけでは終わらない事を知っていた。
「フフフ……では今回も、思う存分味わってくださいね♪」
ヂュルルルルルルルルッ!!!
「んっぎゅぐぐぐぐっっ!!??」
ビシュビシュッ!!
ブシュウウウウウウウウウウウウウッ!!!
「ん゛んんんんん~~~~~~~っ!!!!!」
「ウフフフフ♪♪」
フェルナの頭を丸ごと覆うように喰らいついている触手の先端がまるで本物の口のように収縮し、フェルナを呑み込もうと吸引する。
そして吸引によって顔中にベッタリと張り付いたヌルヌルの触手の奥からは、凄まじい悪臭を放つ汚毒液が勢いよく噴き出して来たのである。
ビリビリと肌を刺すように刺激する汚毒液から顔を背けようとするも、ピッタリと顔に吸い付いた触手からは逃れられない。
それどころか、しっかりと手で押さえて足を踏ん張っていないと、全身がこの触手の中に呑み込まれてしまいそうであった。
触手の奥からゴボゴボと湧き出してくる汚毒液の臭いと不快感は凄まじく、まるで下水管に顔を突っ込んでいるかのような心地であった。
「むっ、グッ……んぐぐぐぐ……!!」
前回までの稽古では、この体勢になってから抜け出すことは一度も出来なかった。
いずれ絶えず浴びせられ続ける汚毒液によって力尽きてしまったフェルナはそのまま"お仕置き"と称して触手の口にモグモグと咀嚼された後で吐き出されてしまう――――
「むぐ、ぐぐっ…………ガァッ!!」
「あら?」
――――かと思いきや、フェルナは頭を呑み込むようにして喰らいついている触手の内部に向けて口を開け、小さなブレス攻撃を放った。
輝く火花が一瞬だけ散ると、ソフィアの触手が驚いたようにフェルナを離して引っ込んでしまった。
「ゲホッ、ゴホッ!! うっえ゛ぇっ……ぺっ、ぺっ! 口に……う゛っ、お゛ぇええええっ……!!」
「……今のは少し驚きましたよ」
柔らかいように見えて強靭なソフィアの触手も、外に比べて内部は脆かったようだ。
拘束から何とか脱したフェルナであったが、その代わり口を開いた時に汚毒液を飲み込んでしまったらしい。
口の中をチクチクと刺すような刺激と共にとんでもないエグみと臭みが広がり、フェルナは紫色の汚物を地面にゲエゲエと吐き戻していた。
精神と肉体の両方のダメージから身動きが取れないでいるフェルナに対し、感心した様子のソフィアが地面を揺らしながら歩み寄る。
「ぜぇ、はぁ、うぇぇっ……はぁ…ど、どうだった……? ボクも結構強くなってたでしょ……?」
「えぇ、そうですね。 ではご褒美に、私がキレイにしてあげましょう♪ んっ……れぇ~~ろ♪」
「へっ……? わぶっ!!??」
ニコリとほほ笑んだソフィアは巨大な口を開けると、地面に突っ伏していたフェルナに対してピンク色の長大な舌を伸ばした。
唾液の滴る弾力のある舌がベチョリとフェルナに押し付けられ、そのまま体についた汚毒液が取り除かれていく。
「ウフフフ……♪」
「んぶぶっ――ぶぇっ!! ちょっ、ソフィ――むぶううぅっ!!?」
浄化の魔力を用いているのか、フェルナの体を覆っていた汚毒液は舐め取られるというよりは消滅していっているようだ。
しかしその代わりにフェルナの体中にはネバネバと泡立つ濃厚な唾液が厚く塗り広げられ、お世辞にも良いニオイとは言えない生臭い悪臭が全身を包んでいく。
「ぶっ!! んぶぇっ!! ゴホッ! ペッ!! ソ、ソフィアさんっ! もういいよっ! 十分キレイに――っ!?」
「フフフ……何を言っているのですかフェルナ? まだ稽古は終わっていませんよ……んれぇ~~~~ろ♪」
「えっ!? うぶぅうっ!!?? むぅっ!? ん゛むぅううう~~~~!!!!」
ソフィアは楽し気な笑みのまま、長い舌を使ってフェルナを仰向けにし、その小さな体を押しつぶすようにして、平らに広げた舌を強烈に押し付け始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「むっぐぐぐぐっ!!?? ん゛むむっ!! ん゛ーーーーっ!!!」
(お、重くて……息がっ……!? 逃げなきゃ……ダメだ! ヌルヌルして……!!)
二者における圧倒的な体格差によって、たかが舌を押し付けられているだけのはずが、フェルナは全身が潰れそうな程の圧力を味わっていた。
舌の表面は濃厚な唾液でヌルヌルネバネバとしており、爪を立てようにも満足に力を込める事すら出来なかった。
「ンフフフフ……♪」
「んっぐっ……ゴホッ! うぅ…ツバくさい……ゴボッ!? ゲッホゲホッ!!」
全身にのしかかっているソフィアの舌はやはり口臭と唾臭が混ざったような不快なニオイで、顔を動かして必死に息継ぎをするたびに生温かい空気に乗った悪臭を嗅いでしまう。
それだけでなく、傾斜になっている舌の上をソフィアの喉の奥からの唾液がドロドロと滑り、フェルナの小さな口と鼻に入り込んでくる。
柔軟に形を変えてフェルナの顔に張り付く舌肉から完全に脱する事は不可能で、何とか顔を背けた僅かな瞬間に息を吸おうにも、気分が悪くなるほどの臭気を含んだネットリと湿った空気か濃厚な唾液のどちらかしか入ってこない。
「むぶっ……ぶはっ! ガァアッ!!」
「ンフフフフ……♪」
「あっ……!? ゴボボボッ!??」
苦し紛れにブレス攻撃を放つも、フェルナの口から放たれた光撃は、魔力を帯びた唾液で厚く覆われた舌肉に当たった瞬間にジュッと音を立ててただけで消え去ってしまった。
お返しとばかりに大量の唾液がジュワリと分泌されると、フェルナは白濁した高粘度の唾液に顔を覆われてしまう。
「ガボゴボッ!! ぶふっ!! む゛ぅううう~~~!!!!」
ただでさえ圧迫と悪臭で呼吸が苦しかったところへ、喉が詰まるくらいにこってりと濃厚な唾液が大量に流れ込み、フェルナはまるで地上で溺れたかのような状態になってしまった。
あわや窒息といったところで、フェルナを抑え付けていた巨大な舌が不意に持ち上がり、彼は地獄のような責め苦から解放された。
「ゴボボボッ……ぶはっ!! ゲホッゴホッ!! お゛えっ、うぇえぇ…………」
「フフフ……カワイイですよフェルナ……私のニオイに包まれて、太陽のような鱗も臭くて汚い唾で汚れてしまって……♪」
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……ソ、ソフィア……さん……?」
「ほら、稽古はまだまだ続きますよ。 頑張って耐えないと……もっとヒドいコトになってしまいますよ♪ ん、あぁあ~~~……♪♪」
「……えっ!? やっ、待って! それはっ――――」
ズゴゴゴゴゴォオオオオオオオッ!!!!
「うわわわわわわっ!!!??」
唾液まみれでゼェゼェと息を整えていたフェルナの近くにソフィアが頭を下ろすと、彼女は巨大な口をあんぐりと開け、凄まじい勢いで息を吸い込んだ。
その強烈な吸引により、フェルナの体がどんどんとソフィアの口へ向かって吸い寄せられていく。
慌てて地面に踏ん張ろうとしたフェルナであったが、吸引の凄まじさに加え、唾液でぬめる地面はフェルナの抵抗をヌルヌルと受け流してしまう。
背中の小さな羽を必死に羽ばたかせるが、焼け石に水といった様子だ。
「わわわわわっ!!? 止まってっ!! 止まっ――――うわぁああっ!!?」
「あ~~~~~~んむっ♪」
必死の抵抗も空しく、地面の上をズルズルと滑っていったフェルナはソフィアの巨大な口に呑み込まれてしまった。
外に向けて必死に手を伸ばすフェルナの目の前で鋭い牙がガチリと組み合わさり、狭苦しい口内が暗闇に包まれる。
「おやおや……簡単に捕まってしまいましたね♪ この攻撃を受けたらどうなってしまうか、もう忘れてしまったのですか?」
「んぶっ!! ぐぐっ!! わ、忘れてな――――むぎゅううっ!!?」
「フフフ……忘れてしまったというなら、存分に思い出させてあげますね♪ んっ……クチュッ……あむ、あむっ♪」
「んぎゅぎゅぎゅっ!?? やめっ――ふぐぅっ!!? ん゛んん~~~~~っ!!!」
グチュグチュ、ニチャニチャと音を立てて、ソフィアは舌と顎の力で口内を混ぜ込み、掻き回す。
さすがのソフィアも実際に歯を立てるわけではないが、まるで食べ物を咀嚼するような勢いで唾液を分泌しながらうごめく口内で、フェルナはピンク色の粘肉によって揉みくちゃにされていた。
「むぐぐぐぐっ……ぷはっ!! はぁっ、はぁっ、や、やめっ――――」
「んゲェエエエエエエ~~~~ップ♪♪」
「ふに゛ゃあああああっ!!?? ゲホゲホゴホッ!! く、臭いぃいっ!!!」
「あら、ごめんなさい♪ んっ、むっ、あむあむあむ♪」
「うわぁあああ!? またっ!!」
「んっ……ゴェエエエエエエエ~~~~~ップ♪♪」
「んぶぁっ!!? ゲッホゴホッ!! ぐざぃいっ!! やめてぇえええっ!!!」
ソフィアはフェルナを軽く咀嚼した後、口内にフェルナが居るにもかかわらずに特大のゲップを放った。
謝罪の言葉とは裏腹に、悪びれる様子どころか恥じらいすらも全く無しに何度も放たれるゲップは凄まじい臭気の塊であった。
村人たちからの貢ぎ物の食料が腹の中で溶け合わさった腐敗臭に加え、胃酸が持つ強烈な酸性の刺激臭が合わさったニオイは、ひと嗅ぎするだけで涙と鼻水が止まらなくなる程に刺激的である。
口内の密室空間に閉じ込められた状態で竜すら涙する程の激臭ガスに全身を包まれたフェルナは、両手で鼻を押さえながら悶え苦しんでいた。
咀嚼、ゲップ、咀嚼、ゲップ、咀嚼、ゲップ……。
まともな空気が一切無いピンク色の密室空間で上も下も分からない程に舌で転がされ、フェルナは両の手で収まりきらない程の回数、ゲップを浴びせられ続けた。
いつしかフェルナの悲鳴は消え、荒野にはソフィアの咀嚼とゲップの音だけが響いていた。
「んっ、グッ…ゴェッ……ゴォオエエエエエエエエエエエエエッップぅ♪♪」
ベチャアッ!!
「あ゛っ……うっ……うぁ、あ…………」
ソフィアが最後に今までで一番大きなゲップを放つと、その勢いで口から飛び出したフェルナが地面にベチャリと落とされた。
もはや動く事も出来ないフェルナの全身は白く濁ったネバネバの唾液で完全に覆われており、モワモワと白い湯気が僅かに立ち上っている。
フェルナの顔は涙か鼻水かソフィアの唾液か分からないものでデロデロに汚れており、もしもこの場に人間が居れば耐えきれず吐き戻してしまいそうな程の濃密な悪臭を纏っている、
「ふぅ……美味しかったですよフェルナ♪ ニオイも……フフフ♪ さて、そろそろ限界でしょうか?」
飲み込まされた粘っこい唾液をゴボゴボと吐き出しながら呻くフェルナを覗き込んだソフィアがヒクヒクと鼻を動かし、いたずら気に笑う。
フェルナは今までの稽古の中でも今回が一番長く粘っており、未だに気絶せず何とか意識を保っている。
それはもちろんフェルナが修行により順調に力を付けている事の表れであったが、また同時にソフィア意図による面もあった。
触手で呑み込もうとしてフェルナが抵抗した時に二本目を使わず、先ほどの咀嚼攻撃においても実際に呑み込んでしまったりはしなかった。
幼いとはいえ竜種であるフェルナの体は一般的な生物や魔物に比べて遥かに丈夫であるが、同種の中でも遥かに格上の存在であるソフィアの胃袋に長居すればやがては消化されてしまうであろう。
そのため、今までの修行で何度かトドメに丸呑みにした際にも、喉越しの感触や体内での悲鳴をある程度味わってからはすぐに吐き戻されていた。
しかし今回において、彼女は別の方法で"楽しむ"つもりであるらしい。
「うっ、ぐっ……はぁ、はぁ……や、やっぱりソフィアさんは…強いや……」
「ウフフ、ありがとうございます♪ では、降参しますか?」
「うん……悔しいけど…降さ――――えっ?」
涙を拭い、ぎこちない動きで顔を上げたフェルナの視界に映ったのは、一面を覆い尽くす巨大な壁のような白い体と、その中心でヒクヒクと動く裂け目のような"孔"だった。
「はい、降参ですね♪ それでは……あっ」
ブボォオオオオオオオオオオオッ!!!
「うわぁああああっ!!!??」
ズシン、ズシンと地響きを鳴らしながら近づいてくる純白の巨体――尻尾を上向きにピンと伸ばしたソフィアの後ろ姿である――の下部にある裂け目がグッと窄まったかと思うと、次の瞬間には猛烈な勢いでガスが噴射された。
思わず体が仰け反る程の風圧を受けて驚いたフェルナであったが、ハッと何かに気付いたように息を止め、顔を目いっぱいに逸らす。
しかし、どうやらその対処は遅すぎたようだ。
「むっ、ぐっ……!!? うぇ゛ぇええええっ!!?? ぐざっ!!? ぐざいぃいいいっ!!!」
「あらあら、ちょっと漏れてしまいましたか……もったいない」
「ゲホゲホゴホッ!!? お゛ぇっ!! ゴホゴホッ!!!」
純白の体毛の奥にあるピンク色の裂け目――ソフィアの肛門から噴出したガスを吸い込んでしまったフェルナはその凄まじい悪臭に悶絶した。
肉食が主体の腸内で限界まで熟成されたオナラガスのニオイはまさに殺人的で、腐敗臭や排泄物臭だけでなく、科学的な毒素を感じる程に刺激的であった。
少しでもこびり付いたニオイを落とそうとビリビリと痺れる鼻先を叩くように擦り、喉を押さえて咳き込みながら悶え苦しむフェルナは、ソフィアが漏らした言葉に戦慄した。
痛みと疲労で動かなかったはずの体を必死に動かし、尻をついた状態でズリズリと後ずさる。
「ゲホッ! ソ、ソフィアさん……? えっと、ボクもう、降参なんだけど……?」
「はい、もちろん分かっていますよ。 ですので、今からはいつもの敗者への"オシオキ"の時間ですね♪」
「オ、オシオキって……そんな毎回する必要あるの……?」
「それはもちろん。 私以外の凶暴なモンスターに負けてしまったら死んでしまう事もあるのですから、しっかりと敗北の恐怖を心に刻んで、次の戦いの糧にしてもらわなければ困りますから」
「そ、それは、そうかもだけど……そのっ、ゲホッ……な、なんでオナラとか――」
「自然界には毒や悪臭を武器に使ってくるモンスターもいますからね。 もちろん稀な存在には違いありませんが、だからと言ってその攻撃に慣れずにいるといざその攻撃を受けた時にそのまま負けてしまう可能性があります。 将来に備えてそのような攻撃への耐性を安全に付けられるに越したことはありませんね」
「えっ、えぇえ……!?」
やけに早口で持論をまくし立てつつ、後ろ向きの状態のソフィアがジリジリと距離を詰める。
ヒクヒクと拡縮を繰り返す彼女の肛門はフェルナの小さな体を丸呑みにできる程に巨大で、それが迫りくる様には本能的な恐怖を掻き立てられる。
痛みと疲労を無視してどこからか沸き上がる力に任せて必死に後ずさりをするフェルナに対し、「それに」と前置きしたソフィアの口から信じられない言葉が零れた。
「……ずっと我慢していたので、もうお腹がパンパンで破裂しそうなのですよ。 しっかりと全部、味わってくださいね♪」
「えっ…………ひぃっ!?」
長い首でこちらを見返り、ニンマリといたずら気に微笑むソフィア。
彼女の肛門はブスブスと燻るような音を立てながら、見るからに体に悪そうな茶色いガスを漏らしている。
「やっ……待っ……やだぁあああああああああああっ!!!!」
「あら? ウフフ、急に元気になりましたね。 でも……逃げられませんよ♪」
恐怖でガタガタと震えていたフェルナは絶叫と共に身を翻し、体を輝かせながら凄まじい速度で飛び去った。
尽きたかと思われていた魔力が嘘のように湧き出している様子は潜在能力の覚醒か、火事場の馬鹿力と言ったところであるが……ソフィアの"オシオキ"から逃れるためには力不足であった。
一瞬で弾丸のように飛び去って行ったフェルナを微笑ましく眺めながら、ソフィアがドンと地面を踏み鳴らせば、彼女の足元に巨大な輝く魔法陣が現れる。
そしてそれと同時にフェルナの頭上にもまた、高速で追従するように巨大な輝く魔法陣が現れたのであった。
「やだやだやだやだやだっ!!!! 誰か助け――――」
ズドォオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
「むぎゅううううううううううっ!!!??」
頭上の魔法陣がより強く光を放ったかと思えた次の瞬間、フェルナは大質量の柔らかい肉に全身を押しつぶされて墜落した。
数百メートルの距離を文字通り一瞬でテレポートした巨大竜が、グリグリと尻穴の位置を調整し、哀れな幼竜へと狙いを定める。
「さぁ、オシオキを始めますよ♪」
ブッボォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
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