灰色 2024/04/19 19:18

1984を読んだよ。


サムネはびっくりする位関係の無い、最近描いたクリスマス絵。4月だぞ。

1984。

実は壮大な作品だと思っていたというか、主人公が大活躍してディストピアを破壊する系かと思ったら、全然違った……日常のささやかな幸せを噛み締めながら、未来に希望を残す為だけに足掻く内容だったのか……最初若いお姉ちゃんに好かれるシーンが出て来て冷めてごめんね。

いやほら、中年が何故か若い子に好かれる系、キツくて……自分に置き換えて見ちゃうからこそ、しんどくて……同年代だからこそ、耐えられないというか。でも、主人公の場合は相手が他の男ともやってる事を知って本気で喜んでいたから、他のやれやれ系中年とは違うんだよね。良かった。

君達が生き残る事は無い。君達は死ぬだけだ。って最初に言われているのが凄い好きですね。

君達が命を懸けて戦っても世界が一世代だけで変わる訳が無い。人々が自由に生きる未来が訪れるのは1000年後かも知れない。けれど、今戦わなければ世界が変わる事はきっと無い。ってのが良い。

読み終わる前→まぁ、主人公は死んじゃうんだろうけど、希望は残る終わりなんだろうな……

読み終わった後→そんなのって無いよ……

ここまで徹底的に「完成されたディストピア」を書いて来るとは思わないじゃんよ……。

凄い面白かったけど、好きでは無いな……私は人間賛歌が好きなタイプの人間だからさ……。でも、それはそれとして、話としては滅茶苦茶面白いな……グロ描写とか、腹立つクソ系登場人物とかは一切出て来ないのに、救いがここまで無い話を書けるものなんだな……凄いな……。

未来への希望とか人間賛歌要素を丁寧に丁寧に削ぎ落して、静かに静かに人間をただの部品や装置にしていく様を見せ付けられる小説だった……。

これ絶対に夢幻廻廊の元ネタだろ。

1984の凄い所は、好きなタイプの作品では全然無いんだけど、話自体は凄く面白いんだよ。

でも好きじゃない。全然内容的には好きじゃ無いし、下手したら嫌いなんだけど、その好き嫌いを飛び越えて、内容自体はただ面白いのよ……何だこれ。基本的に好き嫌いが全てなタイプだから、頭が混乱している

全然好きじゃ無いし誰も救われないけど、その救いの無さというか人間の精神の壊し方や希望の潰し方が徹底的過ぎて「仕方無いよ……お前は悪くない、悪くないよ、ウィンストン……」になってしまう。こんな世界に救いがある筈もない事を読んでて納得させられてしまったから怒りも出ないよ……

唯一愛した女性を裏切るシーンが顕著なんだけどさ、彼女の方も同じ事されてるって匂わせがあってだね、そんで彼女も同じ様に○問されて裏切ってるのが後から判明するんだけど、お互いに再会して、其れを告白する場面が、ただただ悲しかったね……。

○問が読んでておぞましさを感じさせるレベルの描写だったからさ……見た目すら完全に変わるレベルの。だからこそ、2人共互いを責めないのよね。だからこそ、悲しい。そして、そうなってしまったら、もう誰も信じられない事を噛み締めて別れるのがな……精神は変えられてしまうと言い残して。あんなに精神の自由を信じていた彼女が……。

普通、精神「だけ」は潰れない方向に行くじゃない……それすら党は理解して、反骨精神や信じた振りすら完璧に塗り潰して、この世界は素晴らしいと主人公が本気で感じた瞬間(※治療が完了した瞬間)に射殺とかさ……どうやったら、こんなラストが思い付くんだよ……

こんな究極の「尊厳破壊」があるかよ……。

ここまでやられちゃうと、すげぇよ……。内容的には全然好きじゃ無いけど、凄さと面白さは認めるしかねぇよ……オーヴェル……(知り合い?)

救いがない……と思っていたら、あった! 最後にある付録が、救いだった! 良くある解説かと思って飛ばしていたんだよね。そこでは「ニュースピーク」が「過去に使われていた言語」になってる! つまり、少なくとも「言語の支配」は無くなっているって事だ! 良かった……本当に……。

言語の支配は思考の支配に繋がる。「自由」という言葉が無ければ、人間は「自由」について考える事が出来ないから「自由」は存在しなくなる。ってのが作中であってさ。それがなされている作品の付録が「ニュースピークが過去の物になっている」事を示しているってのは、凄く洒落ているし、粋だね……。現在は普通の英語(作品内で言う所のオールドスピーク)を使っているみたい。本当に良かった……。

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