無名@憑依空間 2024/06/01 16:41

★無料★<憑依>憑依自粛要請

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”憑依薬”ー。

その世界では、今から100年以上も前に、
そんな夢の薬が完成し、
”娯楽”と”医療”の分野に用いられていたー。

医療分野での利用は、
患者に憑依することで、患者の症状を医師が正確に把握したり、
手術治療や、注射等の治療を怖がる患者に対して、
同意を得た上での憑依を行い、苦痛を和らげる目的などで、
利用されているー。

がー、その用途はあくまでも限定的で
製造された憑依薬の8割以上は、”娯楽”の分野で使われていたー。

「ーーまた”憑依”っすか?先輩も好きですねぇ」
後輩社員の牧田(まきた)が笑いながら言うー。

「ーへへ…生涯独身の俺にとっちゃ、そんぐらいしか
 楽しむ場がないからなー」

40代に突入した男性会社員・黒橋 健太(くろはし けんた)が
そう呟くと、
「いやいやいや、先輩だってまだチャンスがあるかもしれませんよー。
 ほら、40代前半はまだ、生涯未婚率に含まれる年齢じゃないですし」
と、後輩の牧田は笑いながら言うー。

「ーははは、ないないないー
 それにこの歳になると、もう結婚願望とかもねぇしなー。
 憑依風俗一択よ」

堂々とそんな言葉を口にする健太ー。

”憑依風俗”とは、
客が金を払い、その店の”憑依嬢”に、店が決めた時間だけ
憑依して、自由に乗っ取った身体を楽しむことができるー。
そんなお店だー。

当然、女性向けに、”イケメンに憑依して楽しむ”
”憑依クラブ”も、存在しているー。

憑依クラブも、憑依風俗も、各店とも
”安全装置”が設置されていて、
憑依を楽しむ”部屋”から出ようとすると、
強○的に憑依状態が解除されるようになっているー。

”持ち逃げ”を防ぐためだー。

また、時間が過ぎても
”俺はこの身体から出たくない!”みたいな人が出て来た時のために
”強引に魂を抽出する特殊な装備”も各店に備わっていて、
憑依する側はお金を払い、欲望を満たしー、
憑依される側は、身体を貸すことで金を得るー。
そんなビジネスがこの世界では成り立っていたー。

以前、憑依嬢の身体で”自殺”するという事件が起きてからは
危険物の持ち込み、および、撮影物の持ち込み禁止も
徹底されているー。

「ーー憑依なんかして、得るもんあるんすかねぇ…
 快感なんて、その場限りでしょうしー

 先輩も、他の趣味見つけたらどうっすか?
 憑依店ばっか通ってないでー」

後輩の牧田の言葉に、
「はは、うるせー!俺は憑依だけが生きがいなんだよ」と、
笑いながら答えると、健太は「さ、今日もあまねちゃんに憑依しに行くかなー」と、
嬉しそうに笑ったー

「ー金、かかりそうな趣味っすねぇ…
 俺なんか、ハムスターのピンキーちゃん見てるだけで十分っすけど」

「ーはは、まだ生きてんのか、あのハムスター」

そんな会話をしながら、二人は、会社の敷地内から出ると、
そのまま挨拶を交わして、帰宅していくー。

「ーあまねちゃん、今日は空いてる?」
憑依店に入った健太がそう言うと、
店員は「あ~、あまねちゃんは今、憑依されてます」と、
苦笑いするー。

この店に通っている健太は、既にこの店の常連で
店員たちも、健太のことはよく知っているー。

「ーーさっき憑依されたばっかなんで、今頃喘いでますよ」
店員の男が冗談を口にすると、
健太は「じゃ~…お、この子可愛いじゃん」と、
”憑依嬢”の一覧を見つめながら笑うー。

「ーーお!さくらちゃんですね!
 先日、他の店舗から移籍してきたばかりなんですよ

 僕も憑依しましたけど、いい感じですよー」

店員の言葉に、健太は「よ~し、じゃあ、さくらちゃんで行こうー
今日は…そうだな1時間コースで」と、コースと相手を選び、
支払いを済ませるー。

健太は、そのまま、憑依薬のある部屋で、
憑依薬を服用すると、さくらに憑依したー。

この世界でのこのシステムは”働く側”にもメリットがあるー。
憑依されている間、自分の意識はないー。
もちろん、そのことを怖がる人もいるし、
自分の身体で何をされているか分からないことを
気味悪いと感じる人間もいるー。

が、憑依店からの持ち逃げはできないし、撮影もできないため、
”店を信用”さえできれば、それほど危険はないー。

憑依嬢からすれば、憑依されている間の意識はなく、
”寝ているだけで”仕事をしたことになっているのと同じような感じー。

身体が痛くなったり、筋肉痛になったり、そういうことはあれど、
”正気で客をもてなす”よりも、楽だと考える憑依嬢も多いのだー。

部屋で待っていて、憑依されて、解放されるまで待つー
それだけで、良いのだからー

「ーえへへへへへ… あ~~…♡ たまんねぇ…」
”さくら”に憑依した健太は、気持ちよさそうに
胸を揉みながら、一人、笑みを浮かべたー。

がーーー
”それ”は起きたー。

”憑依自粛要請”が、発令されたのだー。

人間にとって”強毒”を持つ”蚊”が、突然変異により、
生まれてしまい、それによる被害が爆増していたー。
突然変異した”蚊”はどんどん増え、被害はさらに拡大していくー。

事態を重く見た世界各国は、共同で
その毒に対抗するための解毒剤が開発、
あらかじめそれを注射しておくことで、
変異した蚊に刺されても”毒”を無力化することに成功したー。

だがー…
一つ問題があったー。

その解毒剤を注射するためには、”特殊な注射器”を使う必要があり、
”かなりの激痛”に耐えなければならなかったー。

しかし、”変異した蚊”は増え続けており解毒剤なしでの
生活を続けることは、非常に危険な選択だったー。

とは言え、”激痛を伴う注射”は、子供もそうだし、
大人でも、嫌がる人が大勢いたー。

とにかく、普通の注射の非でないほどに、痛いのだー。

それでも、変異した蚊に刺されれば、そのままだと死んでしまうー。

そこでー”医療用”に用いられる憑依薬の需要が急増したー。

”娯楽用”とて出荷されていた憑依薬も”医療用”に回されることになり、
解毒剤を注射するために、多くの憑依薬が使われたー。

その結果ー、
”娯楽用の憑依”に対して、自粛要請が出されたのだー

「あららー」
後輩の牧田が、そのニュースを見つめながら苦笑いすると、
健太は、震えながら呟いたー。

「ーーー…マ、マジかー…」
呆然とする健太ー。

健太は仕事帰りに慌てて”いつもの店”に駆け込むー。

がー、”いつもの店”に入ると
顔馴染みの店員は、苦笑いしながら答えたー。

「憑依自粛要請がでちまいましてねー…
 憑依薬がなかなか入って来ないんですよー
 なので、料金が少し高めになってしまってー」

店員の言葉に、料金表を見つめる健太。

料金表には、今までの10倍以上の金額が
表示されているー

「ふ…ふ…ふざけるな!」
健太がそう叫ぶー。

だが、店員は首を振るー

「こっちも商売ですからー。
 それに、変異した蚊の毒性ヤバいらしいですからー、
 医療用に憑依薬を回すのは仕方ないですよ

 あの注射、滅茶苦茶痛いですし、
 あんなんじゃ、受けたがらない人も多いでしょうからね」

店員のそんな言葉に、
健太は「御託はいい!憑依薬を出してくれ!」と、
そう叫ぶー。

「ーーーっっ… あまねちゃんは!?」
メニューが表示されているパネルを見て、
よく”憑依指名”していた”あまね”の写真がないことに気付くー。

いや、あまねだけではない、人数が明らかに減っているー。

「ーー憑依薬が入ってこないと、仕事にならないんでー…
 あまねちゃんも、他の子たちも辞めてしまってー」

その言葉に、健太は
「う…うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」と、悲痛な雄たけびを上げながら
しゃがみ込むー。

「ーーー…た、頼むー…!あまねちゃんを呼び戻してくれ!
 お、俺は…憑依がなければ生きていけないぃぃぃ!」
健太がそう叫びながら、店員につかみかかるー。

がー、店員は
「そんなこと言われてもー無理なものは無理ですよ」
と、首を横に振るー。

しかしー…
健太はそれでも我慢ならず、普段の10倍以上の金額を払い、
”ちさと”という子に憑依したー。

「ーえへへへ…えへへへへへへへっ♡」
”ちさと”の身体で、憑依自粛の要請が出ていることを
必死に忘れようと、喘ぎ狂う健太ー。

時間いっぱいまで、ちさとの身体で快感を味わうと、
健太は、憑依から抜け出し、そのまま店を後にしたー。

”憑依自粛要請”は、その後も解消されなかったー。

”変異した毒性を持つ蚊”の毒に対抗するための、
予防薬の投与ー、
それに、その蚊に刺されてしまった人々の治療のためにも、
同様の種類の、解毒液を直接体内に注射する方法が用いられ、
激痛を伴うために、その激痛を”肩代わり”するための
スタッフが用意され、
憑依薬を用いて注射を受ける人に憑依、その本人の代わりに
注射を受けることが繰り返されたー。

報酬を高く払えば”他人の身体で注射を受ける”スタッフは
例え激痛であっても、それなりの人数、集まったー。

がー…
そうして医療用としての憑依薬の需要が高まったため、
娯楽用に回る憑依薬はさらに減っていき、
憑依自粛要請は続いていたのだー。

「ーー…いい加減にしろっ!また値上げか!」
健太が怒りの形相でカウンターを叩く。

「ちさとちゃんもいなくなってるし、何を考えてるんだ!」
健太のそんな言葉に、
顔馴染みの店員は「憑依自粛ですからねぇ…」と、首を横に振ったー。

「ーふざけんな!もういい!憑依薬をよこせ!」
健太はそう言いながら、店内の奥に向かって歩き出すー。

「いやいやいや、少し落ち着いて下さい!
 ”憑依店”が、どんな対策をしてるか、ご存じでしょう?」

店員が叫ぶー。

”憑依ホスト”や
”憑依風俗”系列の店には、当然憑依薬が保管されているー。

健太のように”強引に憑依薬を奪おうとする人間”に対する対策は
当然取られているー。

「ーうるさい!これ以上、我慢できるか!」
健太が叫ぶー。

この世界では100年以上も”憑依薬による娯楽”が当たり前のように
存在していて、その娯楽なしでは生きられない人々ー
”憑依中毒”とも呼べる人々が存在していたー。

しかし、”憑依店”が存在していれば、
その欲求を満たすことはでき、問題はこれまで起きていなかったー。

がー、
憑依自粛要請により、それが奪われてしまったー。

健太だけではないー、
憑依店を利用していた人々の一部は、
いきなり娯楽を全て奪われて、
”暴走”していたー。

既に各地で問題が起き始めていて、
混乱が発生しているー。

”当たり前のように存在している憑依”を、突然取り上げてしまうことの恐ろしさを、
”憑依”で遊んでいない人々は、想像もできなかったし、理解できなかったー。

こうして、問題が起きるまではー

「ーーーへへへへ…これが憑依薬ー…
 こ、これでー」

健太は、店の中の憑依薬の保管場所を見つけると、
そのまま笑みを浮かべるー。

「ーーー黒橋さんには、いつもご来店いただいて、
 感謝していたんですけどねー… 
 残念です」

そんな店員の言葉が聞こえて振り返ると、
店員は言ったー。

「憑依薬窃盗は、重罪ー。
 その罰則は、ご存じですね?」

店員はそう言うと、憑依薬を使い、”健太”に憑依したー。

”憑依薬の窃盗”は、あってはならない恐ろしい事態ー。
それ故に、”店の判断で死刑”にすることができるー。

「ーーー…残念です」
健太を乗っ取った店員は、そのまま健太を”処分”して、
通常業務へと戻るのだったー。

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混乱は”拡大”するー。

健太とは違い、憑依薬を奪うことに成功してしまった人間まで
現れたー。

そしてーーー

「ーーうっ… 
 えへ… 憑依自粛要請は、今日、解除しまぁす…」

突然の自粛解除ー。

憑依自粛要請は、この日、解除されたー。

”憑依”によってー…。

もう、暴走は止まらないー。
地獄の蓋は、開かれてしまったー…

おわり

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コメント

当たり前のように憑依が行われていた世界ならではの
トラブル(?)でした~★!

お読み下さりありがとうございました~!!

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