男は淫らな下準備で望まぬ絶頂へと導かれる

両手首と足首に嵌められた黒革製の枷と地下室の天井に打ち付けられた金具を遊び無く繋いでいる。そんな鎖との格闘を試みる力すら残されてはいない。
地下室の中央に設置された箱型の台に背中のみを預けさせられた裸体は、腹部を台へと縫い付けている黒革のベルトを外したいと願う意思とは裏腹にベルトを軋ませる程度の余力さえももはや紡ぎ出せはしない。
真上に伸ばさせられた手足は何の役にも立たない。台に括り付けられた裸体は疲弊も相まって暴れることも出来はしない。自分はもう、絶えず襲い来る淫猥な装置由来の快楽に為す術無く心と身体を掻き乱されるしか無い。
認めたくない現実を改めて、嫌というくらいに思い知らされながら、自由を奪われた男はまた淫らな敗北に至り望まぬ絶頂へと追い立てられた。

「あっ、うぁ、あぁぁ……っ！」

思い通りに動かせなくされた手足が、真上に伸ばし切らされた状態で無様に痙攣する。引き結ぶことも叶わなくなった口から唾液と共に絶望色の喘ぎが溢れ、男は色の薄まった精液を男根からだらしなくとぷとぷと噴き出させる。
だが、甘い地獄は終わらない。身動きを制限された裸体へと与えられた無慈悲な装置達は、男が絶頂に達したことなどお構い無しに駆動を継続し新たな絶頂を容赦無く要求していく。
その光景を、男は涙に潤んだ瞳でただただ見つめることしか出来ない。左右の乳首を乳輪ごと囲っている半球状をした器具によってもたらされる吸引とその吸引の力で引き延ばされ過敏となった突起周辺の肉を休み無い回転を行って捏ね回す器具内部に配置された二枚の白い羽の機構による摩擦の刺激をとめたくてもとめられず、乳房に食い付いた二つの半球の向こうに見える男根の根元と亀頭の真下に巻き付けられた黒いベルトと一体化しているローターの振動を振り払いたくても振り払えない男は、休息はおろか男根に萎える暇さえ認めずに絶頂を強いる残酷な器具達に何の意味も無い哀願の視線と言葉を虚しく悲痛に寄せるしか無い。

「も、もぉ、やら……とまっで、ぐれ……もぅ、いやらぁ……っ！！」

枷に重みを預け脱力させた手足を苦しげに震わせながら、男が必死に許しを請う。涙と汗に塗れ、淫蕩な体液に汚れた裸体をくねくねと力無く悶えさせながら、快感に対する恐怖を刻み付けられた男が再び迫る絶頂に怯えつつ救いをねだる。
無論、無感情な器具達はその思いに応えなどしない。男を捕獲した非道な組織に属する者が自身に下した設定に従い、己に接続されたコードを通して注がれる電力に沿って動き続ける器具達は男がすでに屈服に到達しているという情報を一切考慮に入れていない責め苦を淡々と生み出すだけだ。

「あぁっ、まりゃイぐうぅ……！ だ、じゅげでぇ……もぉ、もうぅっ！ イぎだぐ、ないぃ……っ！！」

自らの乳首と男根で繰り広げられる地獄に絶望しながら助けを欲しても、状況は変わらない。捕らわれた当初に見せていた反抗の態度を全て捨て去った声音で射精を拒んでみても、その叫びは拘束された男と器具達のみが残された地下室に響き渡るだけで何の変化も起きはしない。
その現実に壊れかけの理性を更に蝕まれながら、これが憎き敵達がこの後に予定しているより容赦の無い加虐に向けた下準備に過ぎないという真実を知る由も無い男は器具を取り付けられた乳首と男根を間抜けに震わせ、まだ雌の至福どころか異物を受け入れる感触さえも知らない度重なる絶頂で弛緩した尻穴を滑稽に収縮させつつ、我慢の概念さえも思い出せなくなった裸体を十数度目の絶頂へと導かれていくのだった。