プロジェクトT 2018/07/01 21:37

活動報告

いつもご支援・応援ありがとうございます
今回は、活動報告用の画像と、
他サイトにも投稿した小説を1話だけ載せておきます





タイトル絵だけは出来上がりましたので、こちらの載せておきます
ジャンルはもちろんおねショタもの、簡単なパズルを解いて
ゴールへ進む用なゲームになる予定です

魔女の立ち絵とイベントCGを1枚描き、
ゲームの製作がチュートリアルまで終われば
一度投稿してみるつもりです


それからhttps://ncode.syosetu.com/n8451ev/
こちらのサイトに小説を投稿してみました

妖怪のお姉さんと少年が愛を育むおねショタものになっております

こちらのブログにも1話目を挿絵付きで載せておきますので、
興味のある方は、続きを読むから閲覧してみて下さい
約16000文字ほどありますので、少し重いかもしれません




妖縁奇縁

第一話 邂逅



季節は夏真っ盛り、舞台はある町に存在する何の変哲もない民家



既に太陽は完全に沈み、辺り一面を暗闇と静寂が包み込んでいるが、
部屋に明かりがついているため、中の様子は外からでもよく分かる



その小部屋の中では、二人の男女が床に座って手を取り合っていた



片方の男は背丈も小さく、少年といって差し支えのない人間である



黒い髪に涼し気な恰好の、どこにでもいる普通の少年と言えよう



一方の女は、普通と形容するには少々無理がある出で立ちをしていた



茶色い髪に、隣に座る少年とは比べ物にならないほどの背丈、
夜とはいえ真夏であるにも関わらず、ゆったりとした着物を
涼し気な顔で着こなし、
更にその胸部には着物の上からでもはっきりと分かるほどの
豊満な乳房が備わっている



だがそれ以上に不思議なのは、頭部と腰に付いている
狐のような耳と尻尾であった



持ち主の感情に合わせて動いているとでも言うのか、
その動きは非常に精密で、どう見ても作り物には見えない



背格好から性別に至るまで、何もかも異なる二人が
少しぎこちなく手を取り合う



この不可思議な組み合わせが出来あがったのは、つい先ほどのことであった





始まりはごく普通の小さな山



大した名所や名物もないこの町の中央にある、
見晴らしの良い小じんまりとした山



かつては数少ない名所の一つだったのだが、長い間に登山者も少なくなっていき、
今ではこの山に登ろうという酔狂な人間は少なくなっていた



当然人の手が入ることも少なくなり、草木は伸び放題になっているが、
ふもとから頂上までの道だけはかろうじて手入れされており、
道を外れなければ子供でも手軽に登ることができる、そんな山



そして、冒頭に登場した少年がその山を登ろうとしたことが、
物語の始まる切っ掛けであった



少年は背中に小さなリュックを背負い、山頂から見える景色を目指して
元気よく山道を歩いている



その歩みは特に急いている様子もなく、時折上を見上げては
果実のなっている木を探してみたり、町の方に目をやっては
自分の家を探してみたりと、呑気に登山を満喫しているようだ



そうやってあちこち見ていると、ふと、道の外れに寂れた社が
建っているのを見つけた



社というものを間近で見たことがない少年は、興味が沸いたらしく、
近づいて様子を眺めてみる



慎重に草をかき分けて側までくると、少年は社の寂れ具合に驚いてしまった



屋根には何箇所も穴が空いており、柱は朽ちかけ、
今にも崩れてしまいそうなほどひどい状態であることは
少年にも一目で分かった



なんとなく社の中を覗いてみたくなった少年は、
近づいた瞬間に社が崩れ落ちてしまわないかと少し怖がりながらも
恐る恐る近づく



崩れかけた扉の穴から中を覗いてみたが、屋根の穴から差し込む光だけでは
土埃しか見えず、何があるのかは結局さっぱり分からなかった



ふと少年が足元を見ると、ぼろぼろになった御札が落ちていた、
恐らく社に貼られていたものが剥がれ落ちてしまったのだろう



少年は何が書いてあるのかはさっぱり読めなかったが、
悪い何かがこういった御札で封じ込められているというお話くらいは
知っていたので、気味が悪くなりその場を離れることにした



社の影から少年をじっと見つめる視線に気が付くことはなく、
少年は草をかき分け、急いで山道へ戻っていった





その後何事もなく頂上まで歩ききった少年は、
不気味な社のことなどすっかり忘れて、
頂上から見える景色を眺めたり、大声で叫んでみて
山彦が返ってくるかどうか確かめている



一通り楽しんでいると、丁度昼食時であることを思い出したのか、
遊ぶのをやめて近くにあった石の長椅子に座り込み、
背中のリュックから保冷箱を取り出す



中に入っていたのは、中身が傷まないようにという配慮か、
きちんと保冷剤に包まれていた弁当箱だ



山登りをしに行くということで母親に拵えてもらったお弁当を広げ、
手を合わせて食べようと意気込んだ瞬間、少年の背後から草の揺れ動く音がした



驚いた少年が後ろを振り向くと、長く伸びた草の間から一匹の狐が
ひょっこりと顔を出す



少年が持っている弁当の匂いに釣られて寄ってきてしまったのだろう、
思いがけぬ野生動物の出現に戸惑いつつも、
すぐに襲ってくる様子はなかったため、
少年は初めて見る狐をじっくりと観察することにした



当たり前のことではあるが犬と似通っている部分は多い、
だがいくつかの違いも見られる



顔は少し細く、尻尾や耳は犬よりも大きい



更にこの狐だけが特別なのかもしれないが、
よく見れば綺麗な毛並みをしており、泥汚れなどは見られない



そうして少しの間狐の様子を観察していると、
狐は少年が持つ弁当箱を真っすぐ見つめていることに気が付いた



何となく食べ物をやってみる気になった少年は、
良いものがないかと自分の弁当箱を覗いてみると、
丁度良いと思えるものが目に付く



それは前日の夕飯に母親が作ったいなり寿司だった、
残ったものを今日の登山に持って行きたいからと、
母親に頼んで弁当に入れてもらっていたのだ



少年は弁当箱に入っていたいなり寿司を全て掴み、その場に置いてみると、
少し離れて様子を見ることにした



狐は少しの間少年といなり寿司を交互に見ていたが、
やがてゆっくりと歩きだし、いなり寿司に鼻を近づける



ひとしきり匂いを嗅いでみると、安全な食べ物だと判断したのか
器用にも全てくわえ込みそのまま背後の茂みへ姿を消してしまった



少年はしばらくの間狐が消えいった場所を見つめていたが、
戻ってこないと判断して、再び椅子に座り改めて昼食をとることにした





その後、昼食を終えた少年はしばらく頂上を散策し、
あれこれとつまらぬものを夢中になって拾い集め、
片っ端からリュックの中に詰め込んでから帰路に就く



ガラクタでいっぱいのリュックを背負った少年が家に着いたのは、
真っ赤に染まる夕日が沈み始めた頃だった



一声掛けながら家の中に入った少年は
二つの返事が返って来たことで、両親が既に帰宅していることに気が付く



すぐさま台所へ行き、空の弁当箱を母親に渡すと、
弁当が美味しかったことを告げる



そして父親にも挨拶をすると、少年はすぐに自分の部屋に戻り、
リュックに詰め込んだ石ころなどを取り出して机に並べてみて、
ひとしきり手に取っては今日の思い出を反芻し始めた



その後、母親に呼ばれ食卓に着いた少年は、
食事の間中今日の思い出話を両親に話し続ける



山から見えた町の景色、途中にあった寂れた社、頂上で拾った石など、
今日体験した出来事をほとんど全て話していたが、頂上で出会った不思議な
狐のことだけは伏せていた



野生の動物に遭遇したと話せば両親が心配すると考えたのか、
いなり寿司で狐を追い払えたことなど信用してもらえないと思ったのか、
いずれにせよ、少年は狐に関することは何一つ言わなかった





食事を終えていつもと同じように入浴し、
部屋に戻って再びがらくたを眺めていると、
就寝を促す母親の声が聞こえてくる



興奮冷めやらぬ状態ながらも、
言われた通り少年は就寝することにした



がらくたを片付け、歯を磨き、涼しい風を入れるために窓ガラスを開け、
部屋の明かりを消してベッドの中に潜り込む



さすがに疲れていたのか、少年はすぐにまどろみ始め、
そのまま深い眠りに就こうとしていたが・・・



そんな少年を窓の外から眺める一つの影があった



月明かりに照らされたその影は、はっきりとは分からないが
人の形をしているように見える



「・・・ここじゃ、ここで間違いない・・・」



「おう、いたいた、この匂いは確かに昼間の・・・」



謎の影は何かをぶつぶつと呟きつつ、少年の眠る部屋へ入ろうと身を乗り出した



開かれた窓ガラスから音もなく部屋の中へ侵入すると、
そのまま物音一つ立てず少年の側までゆっくりと近づく



「よう眠っておるの・・・、起こすのはちと心苦しいが、
やはり今宵のうちに話しておきたい」



その影はゆっくりと少年の側へ近づくと、
耳元に顔を近づけてこう囁いた



「夜分にすまぬが、起きとくれんか・・・?♡」



突然耳元で囁かれた少年は声の主を母親と勘違いしてしまったのか、
瞼を擦りつつ、母親だと思い込んだまま声を掛けた



「くっくっ・・・♪ わしはお主を生んだ覚えなどないぞ♪
寝ぼけとらんで、わしの顔をよう見ておくれ♪」



少年は寝ぼけた頭と眼で影にしばらく顔を近づけていたが、
次第に目が覚めてくると、見たことのない相手だということに気が付く



影に近づけていた顔を少しだけ離しつつ、
少年は影に向かって誰なのかを尋ねた



「うむ、その様子では、一応目覚めたようじゃな」



「そうさなあ、わしが誰かと言えば・・・、一言で表すと・・・」



謎の影が名乗り出すと同時に、
月明かりに照らされた影の形が少しだけ変わっていく



「狐、かのう・・・、昼間お主と出会った狐じゃな・・・♪」



頭に耳を生やし、腰から尻尾を伸ばしつつ、
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、謎の影はそう呟いた





笑みを浮かべる狐とは対照的に、少年は驚いた表情のまま固まっていた



突然部屋に侵入した女性が頭に耳を付け、腰に尻尾を付けながら
自分のことを狐だと称している



当然すんなり信じることは出来なかったが、
暗がりでも分かるほど、特に尻尾が大きく動き
虚言だと一蹴することも出来ない



少年は明かりをつけてはっきりと影の姿を確かめるため、
暗い部屋の中にアタリをつけて電灯の紐を探し始めた



「んん? お主は一体何をしておるのじゃ・・・?」



少年の行動が理解出来ていないのか、
影から素っ頓狂な声が上がる



そんな声を流しつつ、少年は電灯の紐を掴むことに成功し、
そのまま軽く引っ張った



一拍おいて、部屋の中に煌々とした光が広がる



改めて影の姿形を見ようと向き直る少年だが、
顔を抑えてうずくまる女性の姿が目に入り、
慌てて駆け寄った



「ど、どうしたことじゃ、部屋の中が突然昼のように
明るくなったではないか・・・」



「うう、ま、眩しい・・・、すまぬがわしの体を支えてくれんか・・・」



側へ来た少年に体を預けながら、女性は少し苦しそうに呟く



少年は慌てながらも女性を支えようと、体に思い切り力を入れた



しかし、その重さは体の大きさからは想像出来ないほど軽く、
少年の力でも充分に支えられるほどだった



見た目と裏腹の軽さに困惑しつつも
少年は女性の体をしっかりと抱きしめ、倒れないように支えている



「おお、かたじけないの・・・、
どうやら眩しくて目がくらんでしまったようじゃ・・・」



「少し休めば直によくなるじゃろう・・・、しばし我慢しておくれ・・・」



女性は少年の体に顔をうずめつつ、くぐもった声でそう呟く



特に危ない状態ではなかったことに安心しながら、
少年はしばらくの間女性を支えることにした



「・・・・・・」



電灯に照らされた部屋の中で、沈黙したまま二人の男女が抱き合っている



落ち着いてきた少年は、次第に自分の置かれている状況を
改めて認識し始めた



簡素な和服に身を包んだその女性は、
抱きとめる一瞬しか顔を見ることが出来なかったが、
整った顔立ちの、充分に美人と言える容姿をしている



しかし、頭の天辺から真っすぐに伸びる耳と、
腰から垂れ下がり精巧に動く尻尾はどう見ても本物にしか見えない



それでも、手入れの行き届いた髪の毛に柔らかな体、
そして自分の下腹部に触れる巨大な乳房が、
目の前の相手を人間の女性だと少年に認識させる



少年は頬を赤らめ、胸を高鳴らせながら
女性の具合が良くなるまで抱きしめ続けた



腹部に埋まる女性の顔に、口の端が少しだけ釣り上がるという
変化が現れたことにも気付かないまま・・・





「うむ、もう充分に休めたから大丈夫じゃ♪
手間を掛けさせてすまなんだのう」



しばらくの間二人でじっとしていたが、
そのお陰で女性は体調が回復したらしく、
お礼を述べつつ少年から体を離し床の上に座り込んだ



少年は、どこか名残惜しそうな顔を見せつつも
軽く応答して床に座り女性と向き合った



「さて、どこまで話したであろうか・・・、
そう、わしが狐だと名乗ったところじゃったな」



「どうじゃろう? 明かりの下、近くでじっくりと見れたわけじゃが、
この耳と尻尾が本物であることを分かってくれたかや?」



自身の耳と尻尾を軽く撫でつつ、女性はそう問いかける



元々あまり疑ってはいなかったのか、
少年は軽く頷き、女性の言葉を信じると告げた



「おお、こんなに早く信じてもらえるのか、ありがたい♪
やはり主は、わしが見込んだ通りの男じゃ♪」



「それともう一つ、興味本位でわしの耳や尻尾を
触らなかったことについても礼を述べておこうか」



「何分、変化の勘が戻りきってないうえに元々敏感でのう、
軽率に触られると体に良くなかったのじゃ」



少年に微笑みかけながら、女性は優しい言葉でお礼を述べる



女性の言葉を全て理解出来たわけでなかったが、
お礼を言われたことだけは理解出来たので、
少年は頬を掻きながら照れ笑いを浮かべた



「それでは改めて話を・・・、そうじゃのう、
まずは自己紹介からしようではないか」



「わしの名は真狐・・・、妲山真狐じゃ」



「こんな見た目じゃが、先ほども言った通り狐じゃよ、
もっと詳しく言えば妖狐じゃが、まあお主に危害を加えるつもりは毛頭ない、
とにかくよろしくのう」



女性は真狐と名乗りながら頭を下げ、改めて少年に挨拶をする



少年もまた、慌てて頭を下げつつ自分の名前を真狐に伝えた



「ふむ、ぬしの名は栄稔 史陽というのか、良い名じゃ」



「しっかりと覚えたからの、史陽♪」



屈託のない笑顔を向けられながら名前を呼ばれ、
少年の鼓動がわずかに跳ね上がる



自分も相手のことを名前で呼ぶべきかと迷っていると、
再び真狐が口を開いた



「それでは史陽、何故わしが突然おぬしの家を訪ねたのか、
何故人の姿で狐を名乗っているのか、色々と疑問があるじゃろう?」



「それを大まかに説明するため、とりあえず昔話をしておきたいのじゃ」



「少しばかり長くなってしまうかもしれんが、聞いてくれるかや?」



真狐の表情が変わり、神妙なおもむきで少年に問いかける



その真剣な表情に少しだけ重苦しい雰囲気を感じた少年は、
緩みかけた頬を直すと、一つ頷き話を聞く体勢に入った



「聞いてくれるのじゃな、ありがとう・・・」



「昔々・・・、年数を数えてはおらぬのじゃが・・・、
恐らく200~300年も前の話かのう・・・、
わしは悪戯好きの妖怪狐じゃった」



「人の食べ物を取ってみたり、人を驚かせたりというつまらん悪戯から、
美女に化けて男を誑かすという少し危険な火遊びまでいろいろとやっていた」



それまで静かに話を聞いていた少年だったが、
話の中に聞きなれない単語が出て来たので、言葉の意味を真狐に尋ねてみる



「む? 誑かすという言葉が分からんか、そうじゃのう・・・、
まあ色々な意味があるのじゃが・・・、わしの場合は、
要するに色香で男を誘惑しておったのじゃよ」



「服を開けさせながら艶っぽい視線を向け、術をちょいと掛けるだけで、
男は簡単に支配することが出来た・・・、
ああ、お主にはそんなことをせんから怯えんでおくれよ?」



具体的にどう誘惑していたのか少し気になりかけていた少年だが、
真狐の言葉に慌てて相槌を打ちつつ、話の内容に集中し直した



「そんなことをいろいろとしている内に、誰かが呼んだのか、
どこかでわしの存在を嗅ぎつけたのかは分からぬが、
わしを退治しようと呪術師が現れた」



退治という言葉に動揺しつつも、少年は真剣な表情で話しを聞き続ける



「手ごわい相手ではあったが、そやつも男であった故に、
わしは色香を使い、術をかけて支配しようとした」



「しかし詰めを誤ってしまい、わしは敗れてしまったのじゃ」



「普通ならばそのままやられてしまう所なのじゃが、
色香が利いていたこともあったのか、やつはわしを哀れみ情けをかけてくれた」



「そしてわしは呪術によって妖力を封印され、あの山に縛られるだけに留まった、
お主が今日登ったあの山にのう」



「とまあ、まだ肝心な部分まで話が進んでおらんのじゃが、
話の内容は理解できたかえ?」



それまで真剣な表情で話しをしていた真狐が、
表情を和らげつつ少年に問いかける



少年は、率直に一番驚いたことを口にした



妖怪という空想や物語にしかいないはずの存在が実在し、
目の前にいるという事実について



「むむ? お主は妖怪を見たことがないのか・・・?」



真狐の問いかけを肯定しつつ、
少年はそもそも妖怪のことを信じている人間がほとんどいないことを告げる



「なんと・・・、妖怪を信じている者は今やほとんどおらんのか・・・、
いや、半ばそうではないかと思っておったのじゃ」



「わしは何百年とあの山に縛られておったが、そこから見える景色は年々変わり、
同時に妖怪の姿もどんどん減っていた」



「妖怪が気軽に人間と接していた時代は終わってしまったのではないかと、
何年も前から心のどこかでその懸念は芽生えておったのじゃ・・・」



目を伏せながら、真狐は少し悲し気な声で静かにそう呟く



どう声を掛けるべきか、とにかく慰めようと少年が口を開きかけた時、
真狐が顔を上げて口を開いた



「じゃが史陽、お主はすぐにわしのことを妖怪じゃと信じてくれたのう♪」



「実を言うと、わしのことをどう信じてもらおうかと
あれこれ悩んでおったのじゃが、
思うておったよりもずっと簡単に事が進んで助かったそい♪」



「おまけに、わしが人に害をなしたり、男を誑かすと聞いても
微塵も怖がらないのだから、ぬしはとても懐の深い男じゃのう♪」



自分を怖がらずに受け入れてくれた少年の態度がよほど嬉しかったのか、
真狐は耳を下げ、ゆっくりと尾を振りながら少年に笑顔を向ける



少年は頬を赤く染め、照れ笑いを浮かべながら
嬉しそうに真狐の言葉を否定した



「ふふふ、照れんでもよかろうに・・・♪」



「おっと、とりあえずそれ以外に気になった部分はないのじゃな、
では続きを、肝心な部分を話すとしよう」



「わしの封印を司っていたのは、
お主も見たはずじゃが、道中にある小さな社だったのじゃ」



「それが長い間に朽ちて行き、
いつの間にかわしの封印そのものは解かれておった」



「しかし、妖力については別な呪いが掛かっておる故、
微塵も戻っていなくてのう」



「妖力がなければわしはただの狐も同然、喋ることも出来ず、
何かに襲われればひとたまりもない」



「じゃから、出来る限り安全なあの山に留まり、
力を取り戻す機会を伺っておったのじゃが、
妖力どころか日々を生きるので精いっぱいじゃった」



「そんな時にお主が来てくれたのじゃ♪」



「そしてお主の行動によりわしの呪いは少しだけ解けて、
幾ばくかの妖力が体に戻った」



「お主にはいくら感謝してもしきれんくらいじゃよ、ありがとう♪」



満面の笑みを浮かべながらお礼を言われ、
少年は照れくさそうに笑うと共に
自分が何をしたのか少し考えてみる



昼間出会った狐に、つまり真狐にしたことと言えば、
姿形を観察し、いなり寿司を差し出したことしか思い浮かばない



少年は、何故少しだけ呪いが解けたのか真狐に尋ねてみた



「おお、そういえばわしの呪いについて言っておらんかったのう」



「率直に言えば、わしの妖力を封じておるこの呪いは、
わしが心から人を愛し、心から人に愛されることで・・・、
「真実の愛」を得ることで解けるそうなのじゃ」



「散々男を誑かし続けたわしに「真実の愛」など
見つけることが出来ぬと思うたのか、
はてまたそれを見つけた時、わしの罪は許されると思うたのかは分からぬが、
ともかくあの呪術師はわしにそう告げた」



「しかし山の中でいくら考えても、
何をしてもその「真実の愛」とやらについては一向に分からず、
わしの呪いは一切解けなんだ」



「そんな調子で百年も経ったであろうか、
その辺りからもう呪いを解くことなど諦め、
この山で一生野狐として生きようと決めておった」



感傷に浸りながら話しているのか、
どこか悲哀も込められてそうな笑みを浮かべつつ、顔を伏せる真狐



しかし、すぐに顔を上げると笑顔を浮かべながら真っすぐに少年を見つめた



「だが、そんなわしに希望を与えてくれたのがお主じゃ」



「山頂でお主と出会った時、わしは少し驚かせて食べ物を奪おうと考えておった」



「しかし、お主はわしを見ても驚かず、
おまけに自分から食べ物を恵んでくれたではないか、
それも大好物のいなり寿司を♪」



「ああ、あのいなり寿司は本当に美味じゃった・・・、
出来ることなら毎日でも食べていくらいに・・・♡」



よほど気に入ってしまったのか、真狐は頬に手を添え、
うっとりとした表情でいなり寿司の美味しさについて呟いている



少年が口を挟まずその様子をじっと眺めていると、
その視線に気が付いたのか、真狐はすぐに話を戻した



「・・・こほん、話が逸れてしもうたが、
ともかくお主はいなり寿司を恵んでくれた」



「そしてその時、わしの中に少しだけ、
今まで感じたことのない感情が芽生えたのじゃ」



「最初は気のせいだと思っておったのじゃが、
いなり寿司を平らげて少しの間休んでおったわしは、
いつの間にか人の姿に化けておった」



「そこでわしはようやく気付いたのじゃ、妖力が少しだけ戻ったことを、
それと・・・、わしの中に生まれた感情が
愛や恋といった類いのものだということを・・・♡」



「つまり・・・、少なからず、
わしはお主を好きになったということじゃ・・・♡」



頬を赤らめ顔を反らしつつも、熱っぽい視線を少年に向けながら、
真狐は気恥ずかしそうに好意を伝える



少年は、頬が熱くなり心臓の鼓動が跳ね上がるのを感じながら、
真狐の言葉を聞き間違えたのではないかと思い、
何と言ったか聞き返そうとした



しかし寸での所で思いとどまり、どう返答するべきか口籠りながら考える



そんな少年の様子を見ていた真狐が、嬉しそうに笑いながら声を掛けた



「ふふ・・・、その様子じゃと、お主もそう悪い気はせぬようじゃのう?
少し安心したぞ♪」



「何せ、人の形をしていてもわしは妖狐じゃからのう、
もしかしたら拒絶されるかもしれんとは思うておった」



着物を軽く握りしめながらそう呟く真狐、、
どうやらそれなりに勇気を振り絞った告白であったらしい



真狐に告白された瞬間、反射的に何かを聞き返さなかったことに
胸を撫で下ろしながら、少年は拒絶などしないことを真狐に告げた



「そうか・・・、史陽は優しいの・・・♪
・・・まあ、恐らく拒絶はされんと見当をつけておったから、
本当はそれほど心配していたわけではないがのう」



少年の言葉に安心したのか、真狐は余裕の笑みを浮かべ、
強がりともとれるような発言をしている



しかし少年はその言葉を純粋に受け取ったらしく、
何故自分に拒絶されないと思っていたのかという疑問を抱き、
その理由を尋ねてみた



「ふむ、それを説明する前に一つ二つほど
頼みたいことがあるんじゃが構わぬか?」



特に考えることなく、少年は真狐の問いかけに頷く



「かたじけない、まず頼みたいのは、
わしをお主の側に置いて欲しいということじゃ」



思いがけない要望に戸惑う少年だが、
真狐は気にせず言葉を続けた



「無論、出来るだけお主の迷惑になるようなことはせん、
自分の食い扶持は自分で用意出来るし、せいぜい寝床をもらえればそれでよい」



「ただ、可能な限りお主の側におりたいのじゃ」



「お主の側でお主に寄り添い、お主のことをもっと好きになりたい・・・♡」



「わしのことを・・・、受け入れてくれるかのう・・・?♡」



真狐の顔からはさきほどの余裕がいつの間にか消えており、
わずかに不安な表情を浮かべながら少年の顔を覗き込んでいる



少年は顔を赤く染めながら、
ほとんど深く考えずにその申し出を受けてしまった



「おお、受け入れてくれるのか、ありがたいのう♪」



少年が受け入れると答えた瞬間、真狐の表情が一気に明るくなり、
軽く飛び跳ね、巨大な胸を揺さぶりながら全身で喜びを現した



些細な動きでも激しく揺さぶられる巨だな胸に、
少年の目が釘付けになってしまう



「そうそう、もう一つの頼みごとも言わんとな」



少年の視線が胸に奪われ始めたころ、突然真狐が跳ねるのを止めて
再び少年に話しかける



少年は慌てて視線を戻し、真狐の顔を見つめながら話に耳を傾けた



「もう一つの頼みはな、あることを確かめてみたいんじゃよ」



「あることというのはわしの呪いが解ける条件についてじゃ」



「わしがお主に好意を持ったが故、少しだけ呪いは解けたのじゃが、
呪術師の言ったことを真に受ければ、
逆にお主がわしに好意を持った時にも呪いは解けるはず」



「未だ「真実の愛」についてはよう分からんが、
とにかく呪いが解ける可能性は探って行きたい」



真狐の言葉に、少年は再び軽くうなずく



「しかし、愛するということは少しだけ分かった気がしたのじゃが、
愛される方はよう分からんでな、
試しに手っ取り早い方法でわしに好意を抱かせてみようと思う」



手っ取り早い方法と聞き、少年は何をしようとしているのか真狐に尋ねる



「ふふふ・・・、何を・・・、とな・・・?♡」



少年の問いかけを聞いた真狐の顔に、段々と妖艶な笑みが浮かび上がる








「もちろん決まっておろう、この乳房を使って・・・、
お主をわしに惚れさせようとしているのじゃよ・・・♡」



その言葉と共に真狐は着物を肩まではだけさせ、
豊満な胸を大胆に露出させてしまった



「ほれ・・・♡ どうじゃ・・・?♡ わしの乳は大きかろう・・・?♡」



今ならさきほどのようにこっそり盗み見をする必要もない、
堂々と見てよいのじゃぞ・・・♡」



巨大な胸の上半分が露わになり、少年は思わず息をのむ



少年の目は、すぐ釘付けになってしまった



「思った通り、お主もやはり男よのう・・・♡
容易く夢中になってしもうとるではないか・・・♡」



「これがお主に拒絶されんと踏んでおった理由じゃよ、
先ほど体を預けた時、お主がわしに欲情しておったことはすぐに分かった」



「じゃから恐らく拒むまいと思ったのじゃ・・・、
例え妖怪相手であろうともな・・・、
ほれ、もっと良く見ておくれ・・・♡」



真狐は自身の胸を軽く持ち上げたかと思うと、
まるで少年に差し出すように少しだけ突き出した



持ち上げられていることでくっきりと分かる胸の形、
中央にはっきりと見える、胸の大きさを表す谷間



下着の類いを付けていないのか、
着物以外に少年の視線を遮るものはどこにもない



何よりもその胸の持ち主が積極的に見せていることもあり、
少年はより一層、食い入るように谷間を見つめ続けた



「随分気に入ったようじゃのう、
そのように顔を赤らめて息を荒げるとは、
なんとも初心な反応じゃのう・・・♡」



「ではこのようなことをされたらどうなるかや・・・?♡
ほれ・・・ほれ・・・♡」



真狐は自身の胸を横から持ち上げると、
緩やかに、しかし力強く両側から押し付ける



あたかも胸の谷間で何かを挟み込むような動きと、
力加減に合わせて分かりやすく形を変える柔らかさが
少年を更に興奮させてしまった



「ふふふ、こちらも気に入ってもらえたか・・・♡
ではどうじゃ・・・?♡ もっと近くに来て、間近で見てみぬか・・・?♡」



「顔を埋めてみてもよいぞ・・・?♡ なんならそのまま挟み込んでやろうか・・・?♡」



真狐の言葉で、少年は反射的に自分の顔が目の前の巨大な胸に挟まれ、
両側から何度も胸を押し付けられる姿を連想してしまう



興奮しすぎてしまったのか、少年の鼻から血が流れ始めた



「くっくっ・・・♡ 鼻血なんぞ出しおって・・・♡」



「わしの言葉でいやらしい想像でもしおったか?♡
お主もなかなか助平なやつじゃのう・・・♡」



「じゃが・・・、お主がここまで来れば
その想像は現実になってしまうぞ・・・♡」



「さ、来るがよい・・・♡」



真狐は両胸を支えていた手を放し、そのまま胸の側で小さく手招きをする



その動きに導かれるように、
少年は朦朧とした頭でふらふらと歩み寄っていく



「そう、良い子じゃ・・・♡ ほれ、もっと近う寄れ・・・♡」



そして少年は、言われるがままに真狐の側まで近づいた



「ふふふ・・・♡ すっかり虜になってしもうたか・・・♡」



「まあ無理もない、かつてわしは、
目を付けた男を一度たりとも逃したことはないからのう♡」



「さあ、わしに顔をよーく見せておくれ・・・♡」



妖艶な笑みを浮かべつつ、真狐は目の前まで来た少年の両頬に手を伸ばし、
真っすぐに自分の方へ向ける



少年はされるがままに顔を動かし、真狐と目を合わせた



「ふふふ・・・、思った通りの、だらしない・・・笑顔・・・」



少しの間見つめ合う二人だが、真狐に異変が訪れる



その顔に浮かんでいた妖しげな笑みは次第に消え、
悲しげな表情が浮かんできた



真狐の表情が変化すると共に、少年の意識も少しずつはっきりとしてくる



目の前にある悲し気な顔に気が付いた少年は、どうしたのか真狐に尋ねた



「違う・・・、こんな顔ではない・・・・・・」



しかし真狐は少年の問いには何も答えず、
意味の分からない言葉を呟くばかりである



「わしは・・・、そんなつもりでは・・・」



「なぜ・・・、かような痛みが・・・・・・」



再び理解出来ない言葉を発する真狐に少年が声を掛けようとしたその時、
突然真狐が少年の頬から手を放す



「変なことをしてすまぬ・・・、すぐに服を直すから少し待っておくれ・・・」



少年から手を離したと思えば、
真狐は目を伏せながらいそいそと着物を直し始める



余計に訳の分からなくなってしまった少年だが、
鼻から血が垂れ落ちていることに気が付き、
ひとまず机に置いてあったティッシュで栓を詰めることにした





「こ、これで良し・・・、それと、その・・・、
すまなかったのう・・・・・・」



服を直した真狐が、顔を伏せたまま少年に謝罪をする



こちらの話を聞く気になったと判断した少年は、
謝罪に適当な応答をして一連の流れについて説明を求めた



「あ・・・、うむ・・・、確かにお主から見れば
訳が分からぬのも無理はない・・・」



「まず、わしは・・・、わしは確かめてみたかったのじゃ・・・」



「昔やっていたように男を誘惑し、
好意を抱かせることで呪いが解けるのかどうかを・・・」



「それと・・・・・・、もう一度お主の笑顔を見たかった・・・」



段々とか細くなっていく声で、真狐は少年に行動の真意を説明する



大体のことは理解できたが、最後の部分だけが良く分からなかった少年は、
笑顔を見たかった、という部分についてもう一度尋ねた



「・・・・・・」



少しの間黙り込んでいた真狐だが、やがて小さな声で呟き始める



「その・・・、昼間お主がいなり寿司をくれた時、
わしに向けてくれたあの笑顔・・・、
あれをもう一度見てみたいと思ったのじゃ・・・」



「思えばわしの中に奇妙な感情が生まれたのは、
お主が笑顔を向けてくれた時じゃった」



「胸がざわめき、心の臓は高鳴り、頬は熱くなる・・・、
こう言えばまるで病気のように聞こえるが、
不思議と嫌な気分ではなく、むしろ心地よかったかもしれん」



「再びお主の笑顔を見ればまたあの感覚を味わえると思うたが、
そなたの顔を覗き込んだ瞬間、心地よい感情どころか、
胸の辺りを痛みが走り、悪寒が全身を包み込んだ」



「わしはそこでようやく自分の過ちに気が付いた・・・、
先ほどわしの中に生まれたのは、
してはならんことをしてしまったという罪悪感だったのじゃ・・・」



弱々しい力で自分の胸を抱きながらそう呟く真狐の体は、
夏であるにもかかわらず小刻みに震えていた



少年は手を伸ばしかけたが、真狐が再び口を開いたことで、
その動きも止まってしまう



「善意でわしにいなり寿司を、あの笑顔と感情を与えてくれたお主を、
あろうことかちょっとした好奇心や悪戯心から誘惑し、
恥ずかしい思いをさせてしもうた・・・」



「今までわしのしておったことがどれだけひどいことだったのか、
人の心を弄ぶとはどういうことなのかを、今ようやく学んだのじゃ・・・」



「もっとも、もう少し早く気付くべきだったのう・・・」



真狐は改めて少年へ顔を向け、申し訳なさそうな笑みを浮かべた



「すまんかったな、ここへはもう二度と近づかんから・・・、
今宵のことは悪い夢だったと思って綺麗に忘れてくれれば助かる・・・」



そう言いながら立ち上がると、窓へ向かって歩き出す真狐



少年は慌ててそれを制止しようと、一番掴みやすい尻尾を掴む



「ひゃうっ! こ、これ、そこを掴んではならぬ、は、放してくれ」



尻尾を掴まれた瞬間、真狐の体は大きく跳ね上がり、
今までで一番の大声を上げつつ、手を放すよう少年に訴える



しかし少年は、ここで手を放せばそのまま真狐
がいなくなってしまうと考えたのか、
より強く手に力を込めて尻尾を握りしめた



「ううっ! わ、分かった、分かったからとにかく放してくれ、
これ以上強く握られると堪えられん」



解放を訴える真狐の目に涙が浮かび始めたことに気付き、
少年は慌てて手を放す



「ううう・・・、やっと放したか・・・、おお痛い・・・」



しかめっ面を浮かべながら尻尾の付け根をさすりつつ、
真狐は再び腰を下ろした



「獣の尻尾を粗雑に扱うでない、ばかもの、
妖狐とはいえ痛いものは痛いのじゃ」



恨みがましい目で真狐に睨み付けられた少年は、
慌てて謝りつつも、先ほどまでの暗い表情が消えたことに少しだけ安堵する



「それで、ここまでしてわしを引き止めたからには
なんぞ深いわけがあるんじゃろうな?」



痛みも少しだけ収まってきたのか、
真狐は少しだけ表情を和らげながら少年にそう尋ねる



しかし少年は、そもそも何故真狐がこの場を去ろうとしたのか、
その理由が分からなかったらしく、
真狐が去ろうとしていた理由を問いかけた



少年の質問を聞いた真狐は、驚いたような表情で少年を見ながら応答する



「う、何故と言われても・・・、つまりじゃな・・・、
わしは「真実の愛」とやらを見つけるため、
そして呪いを解くためお主の元を尋ねた」



「しかしわしは、軽い気持ちでお主を深く誘惑してしもうたのじゃ・・・、
それと同時に、こんなことをしては「真実の愛」など見つけることも、
手にすることも出来んと悟ってしもうた」



「そしてお主も、こんな化け物を愛することなど出来んであろう?
人の心を弄ぶ醜悪な化け物など・・・」



段々と表情を悲し気なものに、声を弱々しいものへ変えながら、
真狐は少年にかいつまんだ説明をした



しかし少年は、何故自分が真狐を愛することが出来なくなってしまったのか、
更に問いかける



真狐は先ほどよりも更に驚きながら、しどろもどろになりながら説明を続けた



「ええと、じゃからのう・・・、
いや、これ以上どう説明すればいいのじゃ・・」



「その、逆に尋ねてみるのじゃが、仮にわしと一緒に過ごすとして、
お主は何の不安もないというのか・・・?」



「先ほどのように深く誘惑されたりすれば
お主は一生わしの言いなりになるかもしれんし、
わしの妖力が元に戻ってしまえば、
わしはまた人を傷つけ弄ぶ化け物に戻るかもしれん」



「そういうことを考えたりはしないのか・・・?」



そこまで言われて、少年は真狐が何を言いたかったのかようやく気が付き、
改めて考えてみる



話を聞く限り、真狐はかつて人に迷惑をかけて回った妖怪ではあるようだ



しかし、今目の前にいるのは、自分の過ちに気が付き反省出来る心を持ち、
尻尾を掴まれて涙目になってしまう程度の、
一部を除けばかよわい女性も同然であった



何よりも、あそこまで悲し気な表情を見せられて放っておくことは到底出来ない



少年はもう一度ここに居て良いことを、
そして真狐を愛せるよう側で見ていることを真狐に伝えた



「よ・・・、良いのか・・・? 本当に良いのか?」



半信半疑の表情で問いかける真狐に、少年は優しく頷く



「わしが妖狐でも、かつて人を弄んだ化け物でもよいのか?」



畳みかけるような真狐の問いかけに、少年はもう一度頷く



「反省はしたが、それでも時々悪戯心が騒いでお主にちょっかいをかけたり、
軽く誘惑したりするかもしれんがそれでも良いのか・・・?」



聞き流すことの出来ない言葉が出てきたことで一瞬戸惑ったが、
男に二言はないと言わんばかりに少年はまた頷いた



途端に真狐の表情が明るくなり、
さきほどのような輝かしい笑顔を取り戻す



「おお・・・、おお・・・、なんと寛大な心・・・♪」



「わしのことを、何から何まで全て受け入れてくれるというのか・・・♪」



そこまで大それたことを言った覚えはなかったが、
少年は既に訂正が効くような段階ではないことを理解していた



「嬉しい・・・、とても嬉しいぞ・・・♪
思えば、こうして人に受け入れられるなんて初めての経験じゃ・・・」



「史陽、どうやらお主はわしが見込んだ以上の人間じゃった、
わしはまた一つ主に惚れてしもうたよ・・・♡」



歓喜の表情を浮かべながら、真狐は思わず少年の手を取る



唐突な行動に頬を赤らめつつも、少年は真狐の手を軽く握り返した



「わしもお主に好いてもらえるよう、いろいろやってみようと思う、
これから末永くよろしくの・・・♡」



こうして少年の日常に、一つだけ
騒がしい声が増えることになった




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