息子の告白/6
「そんなにわたしのことを……?」
「そうだよ。だから、カノジョだって作ってないだろ。自分で言うのもなんだけど、結構モテるんだよ、おれ」
確かに、息子に恋人がいた気配は無い。もしも自分がクラスメートだったら放っておかないだろうと思っていた彼に、まったく女性への関心が無いようだったので、もしかしたら、ゲイじゃないかと疑っていたくらいである。
「母さん、好きだ」
まっすぐにこちらを見て、迫ってくる息子を、もう久美子は拒絶できなかった。ずっと思い続けてきて、その対象が母であることに苦しんで、死まで覚悟したというのである。こっちだって、彼のことを憎からず思っている。いや、愛している。愛している男から、愛を告白されて迫られているのだ。それは拒否できるわけがなかった。しかし――
「ま、待って、高典」
「母さん」
「ち、違うわ。分かったから、あなたの気持ち」
「本当に?」
「ええ」
「じゃあ、おれの童貞を貰ってくれるんだね?」
久美子はびっくりした。
「えっ、今、なんて!?」
「だから、おれの童貞を貰ってくれるんだろ?」
「た、高典……まだ、経験無いの?」
「無いよ。当たり前だろ。カノジョも作ってないのに、誰と経験すんだよ」
息子は、ちょっとムッとした顔で答えた。それはその通りだったけれど、カノジョではない人と適当に経験しているのではないだろうかと、そんな風に久美子は思っていたのだった。
「さっきのだって、おれのファーストキスだし」
「ええっ!」
久美子はさらにびっくりした。こうなると、ちょっと話が違ってくる。体を与えるのはいい。そんなに想ってくれているのなら、一度させてあげることは覚悟できる。しかし、彼が童貞ということになれば、これはちょっと話が違ってくる。童貞卒業というのは、女の処女卒業とともに、男性にとっては一生に一度のことである。その経験は思い出に残る素晴らしいものでなくてはならない。その相手が自分でいいのだろうか。
「母さんでいいっていうか。母さんじゃなくちゃダメなんだよ」
息子は言った。その覚悟は堅いようである。
「……分かったわ」
「本当?」
「うん」
久美子がうなずくと、彼は心からホッとしたような表情を見せた。
「でも、こんなところじゃダメよ。それに、シャワーも浴びさせて」
「分かったよ」
高典は、ソファから離れた。
久美子はソファの上に身を起こすと、
「もう今からするの?」
と尋ねてみた。
「母さんが嫌じゃなければね。すぐにでもしたいよ」
「分かったわ。じゃあ、シャワーを浴びるから。高典も浴びなさい」
「うん」
「先に入るわね。出たら、寝室で待っているから」