母の浮気/116
「何か飲む? 良太」
母は身を起こして言った。じゃあ、何かということで、リクエストすると、ベッドから下りた母は、グラスに水をついできてくれた。
「お茶もあったけど、水で大丈夫?」
「うん」
「ふうっ……」
母はベッドの外で、自分の分の水をごくごくと飲み下すと、
「なんか暑くなったね。ちょっと、暖房の温度、さげようか」
と言って、息子の了承を得ずに、エアコンのリモコンを手に取って、操作した。
――エアコン、入ってたのか……。
全然気にしていなかった良太は、グラスをサイドボードに置くと、ベッドに身を横たえた。イメージと違って、ラブホテルの一室は淫靡なものではなくて、快適な空間だった。少し拍子抜けしたわけだけれど、イメージ通りのいかにもこうピンクピンクしたドぎつい部屋でなくてホッとしているのも確かだった。そんな部屋で朝まで過ごすのは落ち着かないことだろう。
「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ!」
いきなり女の嬌声が聞こえてきてびっくりした良太は、ベッドのすぐ近くにある大型のテレビ画面に、四つん這いになった細身の女が、がっしりとした男に後ろから貫かれている様子が映っていた。
「ニュースでも見ようかなって思ったのよ」
母は言い訳するように言いながら、しかし、目は画面に釘付けになっている。今さっき後ろから貫かれたばかりだというのに、映像を見て、またされたくなっているのだろうか。それとも、時折、女の膣からあらわになる、男の巨根に見とれているのだろうか。
画面の中の女は、大いに乱れて声を振り絞っていた。母と経験した良太には、それが若干、嘘くさく思われた。演技ではなかろうかと思うと、興奮もあまりしないようだが、あるいは、それは、射精したばかりのせいかもしれなかった。
母は、テレビを消すと、ベッドの上に登ってきた。その目は、誘うようである。
「ねえ、良太、お母さん……またシたくなってきちゃった……」
良太は自分の推測の一方が当たっていたことが分かった。
否応があるはずのない良太は、母と交わるために身を起こすと、彼女は、
「次は、お風呂でシようか?」
と誘ってくるではないか。良太としては、浴室でするのは特別好きというわけではなく、ベッドの方が楽だと思うのだけれど、母がシたいというなら、やはり否応無い話であり、母に導かれるままに、ベッドから下りて、脱衣所を抜けて、浴室へと入った。
ゆったりとした浴室は、家の倍……まではいかないけれど、広々として、ここはここで気分が良さそうだとおもった良太は、母がマットを敷くのを見たあとに、
「これ使ってみようか、良太」
彼女が何やらボトルのようなものを手に持っているのを認めた。