息子の告白/9
「う、うん……」
久美子は、戸惑いがちに、息子に応えた。すると、彼は、照れたような顔をして、ベッドに上がってきた。そうして、母親に向かい合うと、
「まるで、夢みたいだ。母さんと、初体験ができるなんて」
屈託の無い笑みを見せてきた。
久美子は、頬が火照るのを感じた。そんなに大した女ではありません、と否定したい気持ちをあえて抑えて、彼に向かい合って、
「よ、よろしくお願いします」
と微妙極まりない言葉を口にした。高典は、ぷっと噴き出した。
「わ、笑うなんて、ひどいわ」
久美子が抗議すると、
「ごめん、ごめん」
息子は素直に謝ってくれたけれど、なお笑顔である。
「もう!」
「機嫌直して、母さん」
久美子は冗談交じりに、ぷいっと横をむくようにした。
高典は、久美子の頬に手を触れさせると、その顔を自分の方に向かせるようにして、そのあと、顔を近づけてきた。久美子は、反射的に目をつむった。少しして、唇に、粘膜の感触を得た久美子は、息子のキスをうっとりと受けた。そう言えば、キスをされたのも、実に10数年ぶりのことである。キスというのは、こんなに気持ちのいいものなのかと、改めて、久美子は考えた。
息子の唇が離れたあと、久美子が目を開くと、息子の微笑みがあった。その余裕綽々とした笑みに、本当に初めてなのだろうかと思ったけれど、彼がそう言っているのであるから、信じるしかないわけである。
「母さん……服、脱がせてもいい?」
服を脱がないとできないわけであるから、脱ぐしかないわけだけれど、脱がせてもらうのは恥ずかしすぎる。久美子は、自分で脱ぐ旨、伝えると、ベッドから立ち上がって、服を脱ぎ始めた。痛いほど、息子の視線を感じながら、久美子は、服を脱いで、下着姿になった。恥ずかしくて、もじもじとしている久美子に、
「母さん、綺麗だ……」
息子の感嘆の声がかかる。そんなことない、とやはり否定したくなったとけれど、否定すれば、そんなことない女とこれからすることになる彼を辱めることになるので、久美子は、
「あ、ありがとう」
と答えておくしかなかった。久美子は、まがりなりにも経験者。リードしなければいけない、と改めて考えて、ベッドに上がった彼女は、今度は、自分から息子に体を寄せて、その唇に、そっと自分の唇を重ねた。